2016.04.22 レヴェナント:蘇えりし者 ★★★★☆
今年度アカデミー賞で監督賞、主演男優賞、撮影賞の3冠に輝いた話題作。これは観なくてはなりますまいて。作品賞の「スポットライト」が私としては期待はずれだったので、こちらには大いに期待。さて、悲願のオスカーを手にしたレオ様の演技や如何に?
自然光のみで撮影したとのことで、とにかく画面が暗い。殆どモノクロですな。反面、川の音などの自然音、背景音の音声レベルがとてつもなく高い。セリフが極端に少ないこともあり、かな?
さて、話の内容、展開は画面の暗さに輪をかけるように重くて暗い。復讐譚なのですが、必ずしも敵役の行動が100%悪いということでは無い(?)と思うので、次第に虚無感が漂ってくるのです。前半の息もつかせぬ展開に比して中盤にやや中弛みがあり、終盤もグダグダとした感じとなるのが惜しい。
主人公が熊(グリズリー)に襲われるシーンはかなり残酷な描写に終始して、思わず目を背けたくなるくらい。熊はCGとしてはとても良く出来ていると思います。なお、暖をとるために馬の腹に入り込むのは明らかに「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」のパクリ。まあ、あちらは全裸では潜り込みませんでしたが・・・。
レオナルド・ディカプリオは極寒の中で川に入るなど真に過酷な環境の中での演技だったので、まあ功労賞という感じでしょうか。元々演技は巧いのです。敵役として「マッドマックス 怒りのデス・ロード」などで今をときめくトム・ハーディ。ただし、髭面で汚れた格好をしているので中々彼とは分からないくらい。音楽は我らの坂本龍一によるもの。重く、暗い内容にとてもマッチした重厚なものでした。
エンド・クレジットではその重厚な音楽とともに何故か男のハアハアという呼吸音が入っていました。アレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の拘りなのでしょうな。
(劇場)
2016.04.15 スポットライト 世紀のスクープ ★★
エンドロールが終わり場内が明るくなって、思わずため息をつきました。これがアカデミー賞の作品賞、脚本賞受賞作品なのか、と。カトリック教会の長年に渡る性的児童虐待の事実を暴き、ピュリツァー賞を受賞した新聞のコラム欄「スポットライト」の担当記者チームの活躍を描いた作品。2002年の実話に基づく(日本では報道されたのかな?)。
神父になるような人物の多くが何故児童の、主に男の子の性的虐待行為に走るのか?ということがまずは理解できない。原則妻帯禁止や、子供も含め毎日曜に教会に通うカトリック信者の習慣などが関係しているのでしょうか?
記者チームが如何に艱難辛苦を乗り越え、スクープしたかを描きたかったのでしょう、とにかく2時間の間、延々と取材活動に終止します。しかも展開がやたら速く、名前が出てもそれが誰だったかすぐには分からず、中々ついて行けない・・・。それらもあって映画、物語としての面白みはまるで感じられず。
ただ、エンドロールでは驚きましたね。本スクープをきっかけに児童虐待した教会が続々と告発され、それらの教会名が延々と流れるのです。酷い・・・。
記者チームの4名はマイケル・キートン、マーク・ラファロ(青い人のイメージしかない)、リーヴ・シュレイバー(半犬人のイメージしかない)、紅一点のレイチェル・マクアダムス(殆どスッピンでフェロモンを封印)と渋目の配役。
本日は本作封切り日。この映画が果たして日本国内でヒットするかどうか、見ものだなぁ・・・。
(劇場)
2016.04.14 イコライザー ★★★★
全く予備知識はなく、ただデンゼル・ワシントンが主演だからそう外れはないのでは、と期待して。アメリカのTVシリーズのリメイクらしい。リメイクするくらいだから期待して良いのでは?(と、またもや)。
この主人公があきれるほど強い。とにかく強い。元CIAの凄腕エージェントだから当たり前?いいや、それでも強過ぎる。カタルシスを感ずる前に、いくら何でもそこまでは・・・、などと思ってしまいます。特にラストのロシアでのエピソードなど。静かに攻めていくところなどは、「レオン」か「ランボー・シリーズ」に雰囲気が似ています。
悪党を倒す前に視線で行動予測をし、そのとおりにバッタバッタとなぎ倒していくのは、「マトリックス」のような近未来的な描写で面白い。
若き娼婦役にクロエ・グレース・モレッツ。余りにもドギツイ化粧なので最初は彼女だとは分かりませんでしたが、やはり美しいですな。終盤、清純な姿に戻るのでクロエ・ファンは安心することでしょう。
邦題は安易な和製英語かと思いきや、原題も「THE EQUALIZER」で、「等しくする者」すなわち、「善と悪を公平に裁く者」という意味らしい。映画の冒頭、「人生で最も大事な日は2日ある。生まれた日と、生きる意味を見つけた日だ」というマーク・トウェインの言葉が引用されます。そうか、主人公は「イコライズすること」が生きる意味だと気がついたのだな・・・。
(BS-HV)
2016.04.13 マイ・ブラザー 哀しみの銃弾 ★★★★
フランス映画のハリウッド・リメイクとのこと。リメイクするくらいだから期待して良いのでは?
ならず者の兄とその対象的な警察官の弟の絆のお話。反目していた兄弟が、何だかんだと言ってもやはり血は争えないというまあ、ありがちなお話ですが、退屈させずに最後まで見せてくれます。
少年の頃、弟が役目を果たさなかったため兄が警察に捕まるというエピソードが途中で挿入されますが、終盤にこの布石が回収され、思わず唸ってしまいました。また、古き70年代が映像、音楽ともによく再現されていると思います。
兄にクライヴ・オーウェン、弟にビリー・クラダップ(この人を私は知らなかった)。クライヴ・オーウェンの如何にもなやくざ的態度が巧い。脇役にマリオン・コティヤール、ミラ・クニス、ゾーイ・サルダナを起用とするなど、意外と豪華な布陣です。この3人がそれぞれ不遇な女を演じているのですが、中ではやはりマリオン・コティヤールがいいですねぇ。
それにしてもこの邦題はいけません。火曜サスペンス劇場ではないのだから。原題は「BLOOD TIES」で「血の絆」ですから、まあ内容そのまんまではありますが。
(BS-HV)
2016.04.06 天才スピヴェット ★★★
「アメリ」、「エイリアン4」などのジャン=ピエール・ジュネの監督作品。ベストセラー冒険小説が原作で、10歳の天才少年・スピヴェットが授賞式のためにアメリカを横断してスミソニアン博物館まで行く道中(珍道中?)とその顛末を描いたもの。
うん、「アメリ」と同様、ポップな彩色でぶっ飛んだ映像を楽しめます。元々3D作品ということで、カメラアングルなどがとてもユニーク。またアメリカの広大な美しい景観も素晴らしい。弟の事故死という重いテーマを脇で扱いながら、陰鬱にならないところがよろしい。
スピヴェットが発明し、賞を受賞したのは、「永久機関」装置。「永久機関」は現代物理学では実現不可能なのことが判明していますが、そこは都合良く本人の口から「400年後には止まる」などと言わせています。
主人公が道中で出会う、ジュネ監督作品ではレギュラー的なドミニク・ピノンやトラック運転手役のジュリアン・リッチングスの怪演が良いスパイスになっています。あと、母親役のヘレナ・ボナム=カーターは言うに及ばず、コテコテのカウボーイの父親役のカラム・キース・レニーも良い味を出しています。
ドミニク・ピノンが主人公に話し、その後それを主人公がトラック運転手に伝える「マツの木」の話が感動的。犬やトースターの扱い方も印象的です。
(BS-HV)
2016.03.18 博士と彼女のセオリー ★★★★
天才物理学者のスティーブン・ホーキング博士の半生を描いた作品。ホーキングを演じたエディ・レッドメインがアカデミー賞主演男優賞を獲得したこともあり、気になっていたのでした。
びっくりぽん、その1:ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病に屈せずに宇宙科学の研究を進め、大成功を収めたサクセス・ストーリーかと思いきや、それのみならず後半では何と不倫絡みのお話が展開されること。
びっくりぽん、その2:ホーキンズも当時の妻も今なお存命であるにも係わらず、(やや表現は控えてはいるものの)どうどうと不適切な関係が描かれていること。本当にいいのかね、これで。
びっくりぽん、その3:当時の妻はALSの発症後でも結婚を決意したこと。それほど献身愛に満ち溢れていた彼女が何で・・・。
びっくりぽん、その4:ALS発症後でも、3人の子供を設けていること。劇中友人が「あっちはどうなんだ」という問いに対して、ホーキングが「あっちは別だ」などと応えています。う〜む、信じられない。
びっくりぽん、その5:エディ・レッドメインの演技は鬼気迫るものがあり。車いすの姿など、本人そのもの。あれならばオスカー受賞も当たり前です。途中チラ見した家人が、「本物のホーキング?」などと言っていましたもの。
本作を鑑賞し終えたホーキングは、涙を流したそうな。ホーキングも納得した良い映画なんですねぇ。
(BS-HV)
2016.03.14 スパイ・レジェント ★★★
スパイ・シリーズ小説の映画化で真新しさは殆どありませんが、そこそこ楽しませてくれます。主演が元ジェームス・ボンド役のピアース・ブロスナン、ヒロインが元ボンド・ガールのオルガ・キュリレンコというのがウリでしょうか。この二人の起用でギリギリB級映画と言われずに済みそうです。
元CIAの主人公が、ロシア大統領選を巡る陰謀に巻き込まれていく、というもの。上述のとおり、ストーリーに斬新なものはなく、デジャブ感が多いのですが、逆に安心して見ていられるということは良いことです。ただ、余りにも簡単に人が殺されてしまうのが、なんだかなぁ。
ピアース・ブロスナンは老けはしましたが、そこは昔取った杵柄、動きは敏捷でキレがあります。それにしてもブロスナンを含め、リーアム・ニーソン、シルベスター・スタローン、シュワルツェネッガー、ブルース・ウィリスなどのジジイどもは今なお元気ですねぇ。
ボンドガールを演じた際のオルガ・キュリレンコは垢抜けていなくて私はミス・キャストだと思いましたが、ここでは中々のものです(意味不明)。特にあのボディコン・スタイル(死語か)。
それにしてもロシア大統領候補をあのような扱いにするとは・・・。ロシアでは上映禁止になったのではないかな?
(BS-HV)
2016.03.06 ヘイトフル・エイト ★★★★★
正に鬼才という称号がぴったりのクエンティン・タランティーノの最新監督、脚本作品。大雪でロッジに閉じ込められたいずれも怪しげな8人を取り巻くミステリー。一応西部劇なんですな。
タランティーノ作品は、セリフが長い、本筋と関係ないセリフが多い、章(チャプター)建てになっている、過激なバイオレンス描写がある、テロップが出る、時系列が逆転する、等々の特徴がありますが、本作は更に唐突にナレーションが一部だけに挿入されたりもします。
前半、ロッジにたどり着くまでの経過が長く、セリフも多いのですが私は少しも退屈せず、相変わらずのタランティーノ節を大いに楽しみました。後半は誰が張本人であるかの密室ミステリーと相成りますが、予想もつかないあっと驚く展開と過激なスプラッター描写が繰り広げられます。
まあよく考えると、ああまで凝った計画を練らなくても十分目的は達成できたのではないかとは思います。展開を面白くするために、練りに練ったのでしょうね。
出演者はタランティーノ作品にはお馴染みの、サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ウォルトン・ゴギンズの他、紅一点のジェニファー・ジェイソン・リー。このジェニファーの演技たるや、顔を真っ赤に染めたりしてとにかく半端無く凄まじい。今年度アカデミー賞の助演女優賞にノミネートされましたが、惜しくもオスカーは手に出来ませんでした。
主人公はサミュエル・L・ジャクソンなのでしょうが、終盤ウォルトン・ゴギンズがクローズ・アップ。ラストカットも秀逸でした。
まあタランティーノ作品は好き嫌いが大きく別れるとは思いますが、私は大好きですね(きっぱり)。
(劇場)
2016.02.24 マイ・インターン ★★★
起業に成功した若手女社長(アン・ハサウェイ)が、身近な世話役にテスト採用したのは70歳のやもめ男(ロバート・デ・ニーロ)。彼の古い流儀に最初は戸惑いながらも、次第に会社仲間も含めて絆が芽生えていくというハートフル・ヒューマン・ドラマ。
とにかくデ・ニーロ扮する男が良い人間過ぎで
すね。相手が傷つかないようそれとなく諭す、冷たい待遇にも怒らない、それでいて仕事も出来る(もちろん、オールド・スタイルで)。余りにも素敵な老紳士で、私には現実味が少し欠けているような気がしましたね。特に女社長とホテルのベッドで横たわっていながら、何も起きない、起こさない(・・・勿体無い)。ハサウェイ扮する女社長も夫の浮気には寛大すぎるし・・・。
しかもストーリーもうまく行き過ぎ。ジェネレーション・ギャップはああ簡単には埋まらないでしょうに。パソコン事件もあれでは無事に済まないでしょう。
まあしかし、デ・ニーロの安心できる演技で気持よく鑑賞できるのは間違いありません。本作のユーザ評価が高いのはおそらく女性によるものなんでしょうね。
オフィスに27インチiMacが数十台並んでいて、壮観そのもの。
それにしても久し振りに見たレネ・ルッソ。余りの老けぶりに涙が出そうになりましたぞい。顎も益々大きくなってきているし・・・。
(BD)
2016.02.20 ふたつの名前を持つ少年 ★★★★
ユダヤ人に対するナチスの酷さは重々分かっているつもりですが、本作でもそれをイヤというほど再認識させてくれます。ゲットーからたった一人で逃げ出した8歳のユダヤ人少年が、ナチスの魔手から懸命に逃げる様を描いた作品。
実話だということもあって、物語的に起承転結は余り無いのですが、兎に角ひどい、つらい、惨めな主人公には同情を禁じ得ません。途中で本人を襲う残酷な事故など、何もあそこまでしなくてもとも思うのですが、何せ本人が著した自伝に基づいているのですから致し方ありません。
主人公に優しく接するポーランド人もいれば、彼を騙してナチスに売ったりするポーランド人もいて、それらの間をかいくぐって懸命に生きようとする主人公の逞しさよ!
主人公は双子の兄弟がそれぞれの場面で交替して演じたのだとか。全く区別はつきませんなぁ。
ドイツとフランスの合作で、監督もドイツ人。自国をこういう形で描ききってしまうことには感心させられます。アンジー監督の「アンブロークン」の公開を1年以上も止めていたどこかの国は見習うべきだな。
英語での原題は「RUN BOY RUN」で、こちらの方がはるかに内容をうまく表していると思います。オープニングのテーマ音楽は、古き良き時代のヨーロッパ映画のようなノスタルジックなもの。このムード、たまりませんなぁ。
(BS-HV)
2016.02.13 スティーブ・ジョブズ ★★★★
こういうマニアックな作品はいつものシネコンでは上映されないので、止むを得ず新宿まで。
アシュトン・カッチャー主演で2013年に公開された「スティーブ・ジョブズ」と同じタイトルでややこしい。少し工夫は無かったものか。ただし、あちらがジョブズの半生を描いているのに対して、こちらはMacintosh、NEXTcube、iMacのそれぞれの発表会本番直前のエピソードのみを描いていて、かなり斬新な構成です。「トレインスポッティング」などのダニー・ボイルの監督作品。
ドキュメンタリー風に描きながらもカットバックをうまく挿入して、最後のエピソードで物語の流れを一つにまとめています。彼の成功への飽くなき執念、かつてタッグを組んでいたスティーブ・ウォズニアックへの反発、娘であるリサとの確執などが中心に描かれますが、いずれも如何に彼がこだわりが強く傲慢で偏屈であったかを再認識させられる仕掛けとなっています(汗)。やっぱりな〜、という感じ。
ジョブズを演ずるのは今やすっかりメジャーになったマイケル・ファスベンダー。本人に似ているかと言われると、うん、似ていません(きっぱり)。彼を公私共にサポートする女性エンジニアにケイト・ウィンスレット。この二人の掛け合いが面白い。脚本がうまい。ということで、この2人は第88回アカデミー賞で主演男優賞、助演女優賞にノミネートされています。特にケイトが巧いねぇ。
iMac発表時のジョブズは、黒いTシャツにジーンズと言うお馴染の格好。このスタイルと初代iMacの組み合わせには涙腺を刺激させられます。周りからもすすり泣きが聞こえたような・・・。
(劇場)
2016.02.05 オデッセイ ★★★
リドリー・スコットが監督し、第88回(2016年)アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、脚色賞など7部門にノミネートされた話題作。前評判が相当良いので、公開初日にいそいそといつものシネコンに出かけて行ったわいな。事故で火星にただ一人取り残された主人公のサバイバルと、極めて困難な彼の救出作戦を描いたSF作品。
映画開始早々、睡魔に
襲われ始めた私。午後の2時過ぎからの上映なんぞ選ばなければと思ったのですが、後の祭り。色々な展開が科学的理論に基づいているようなのですが、眠くて益々ボケた私の頭ではどうも理解しがたい・・・。食料供給作戦はどうなった?とか救出作戦の際のあのロケットはどうして発射出来た?など分からずじまい。
そんな私でも気になった2つの事柄。あんな極めて成功率の低い救出劇を全世界にライブ中継するのは絶対あり得ないでしょ。もう一つは中国がいい所で関わっていること。特に本作のスポンサーになっている訳ではないのに、やはり大市場であることをハリウッドが意識してゴマをすっているのですかね。
不屈の根性、植物学者の本領発揮、あんな窮地でもあのユーモア、などマット・デイモン演ずる主人公は魅力的に描かれてはいます。特に後半やせ細った体は本当に作ったのか、それともCGのなせる技か・・・。
どうしても「アポロ13号」や「ゼロ・グラビティ」と内容が似ているので比べてしまいますが、残念ながら超えていませんねぇ。まあ、寝ぼけていた私には評する資格は無いのかも・・・。
(劇場)
2016.01.15 ザ・ウォーク ★★★☆
珍しく試写会のチケットが当たった「ザ・ウォーク」は、高所恐怖症なら悶絶、失神必死の体験型映画。何しろかつてのワールド・トレード・センター(WTC)のツインタワー間にワイヤを張り、そこを命綱無しで往復した男の実話に基づくお話なのです。地上411m、110階の高さですぞ。一般人からは狂気の沙汰としか思えませんし、しかも立派な犯罪なのです。芸術性?哲学的?う〜む、無理がありますなぁ。
その逐一を3DのCG/VFXでこれでもか、と見せつけてくれます。宣伝文句の「手に汗握りながら号泣」とまでは私は行きませんでしたが、随所で足がすくんだのは事実です。しかも、渡りきったかと思うとまた引き返し、ワイヤの上に寝転んだりする始末。「もうやめてくれぇ」と言いたくなります。
そんなとんでもない男を演ずるのが、ジョセフ・ゴードン=レヴィット。随分若作りになっています。師匠役に御大ベン・キングズレー。貫禄の演技です。恋人役にシャルロット・ルボン。この人はつい最近見た「マダム・マロリーと魔法のスパイス」でのヒロイン役。奇遇だ(という程でもないか)。
実話なのに何故か当時の映像は全く残っていないとのこと。あれだけバシャバシャ写真を撮っていたはずなのに。少し怪しい?
9.11で消滅したWTCのかつての姿を眺めるのは、とても辛い。ましてや身内の人々は耐えられないのでは?津波のそれのように「本映画にはWTCの映像が含まれます」などというテロップが必要なのかも。
(劇場、3D)
2016.01.13 マダム・マロリーと魔法のスパイス ★★★★
料理ものに外れなしと言います(私が勝手に)が、本作も例外ではありません。何とスティーヴン・スピルバーグが制作を担当し、「サイダーハウス・ルール」、「ショコラ」などの名匠ラッセ・ハルストレムが監督をしています。
南フランスの片田舎が舞台。インドからやってきたインド料理人一家と地元のフレンチ・レストランのオーナーが、それぞれの料理、文化の違いなどでことごとく衝突します。しかし、インド一家の次男が天才的料理人であることから次第に両者が歩み寄って行く、というお話。
前半の見所はインド人の父親とレストランのオーナーとの激しい攻防。今でも人種差別のひどいフランスですから(恨み)、あのようにインド人を毛嫌いするのはいわば当たり前でしょう。中盤以降、インド人の次男が才能を発揮していき、料理ものらしいハートウォーミングな展開となります。
邦題やビデオパッケージからはヘレン・ミレン演ずるマダム・マロリーが主役のように思われますが、そうではありません。主役はあくまでもマニシュ・ダヤル演ずるインド人の次男なのです。超ビッグなヘレン・ミレンを前面に押し出して稼ごうとする配給会社の魂胆が見え見えで、やや脱力・・・。
インド人の父親役のオム・プリは、強烈な個性の持ち主(インドのダニー・トレホか?)。むしろ彼が主役と言っても良いのかも。
(BS-HV)
2016.01.08 ブリッジ・オブ・スパイ ★★★★☆
スティーヴン・スピルバーグが監督、コーエン兄弟が脚本、トム・ハンクスが主演という黄金メンバーでタッグを組んだ、実話に基づく作品。うん、このチーム構成で駄作となる訳がありません。東西冷戦下の1960年、米国が捕らえたソ連のスパイを弁護し、そのスパイとソ連側に拘束された米兵の人質の交換交渉をやり遂げた弁護士のお話。
何が良いかというと、とにかくストーリーが分かりやすい。決して単純なお話ではないのですが、脚本が良いのでしょう、並行して描かれるお話との関連性がしっかり理解できます(年寄りにはこういう分かりやすさが大事)。加えて、交渉の舞台が東ベルリンで、時あたかもベルリンの壁が建設される時期が背景というのも、興味深い。
誰もが憎む敵国のスパイを、法の名の下に尊厳を持って公正に弁護していく姿勢には素直に感動させられます。加えてラストに向かってのスリルとサスペンスも、これぞ正に映画という感じで、大満足。
弁護士を演ずるのはトム・ハンクス。余裕の演技です(顔が膨れてきたけど)。彼よりも存在感があったのは、ソ連の老スパイを演じたマーク・ライランス。セリフは少ないのですが、強い信念を持った冷静な男を見事に演じています。こんな名優はもっとクローズアップされてしかるべき。
スピルバーグは、このような誰でも興味を持つような作品を掘り起こすのが上手いですな。今年度アカデミー賞の有力候補ということですが、さて如何なものでしょう。
(劇場)
2016.01.06 誰よりも狙われた男 ★★★
B級ムードがプンプンの邦題ですが、「寒い国から帰ったスパイ」、「ナイロビの蜂」、「裏切りのサーカス」などのジョン・ル・カレの原作ですから、まあ見てみようかと。ドイツのハンブルグを舞台としたスパイ映画です。
ハンブルクに密入国したチェチェン人を巡って、ドイツの諜報員、警察、CIAなどの組織の駆け引き、思惑が描かれます。前半、その背景の把握にやや時間がかかりましたが、次第に各組織の立ち位置がわかるようになります。「裏切りのサーカス」ほどは分かりにくくないので、まあ良しとしましょう。結末は大方の予想どおりではないと思いますが、まあこの方が余韻があって良いかな、とも。
ドイツ人がおしなべて英語を話すのは、やはり違和感が拭えません。その割には中東人には母国語を話させている・・・。
主役は急逝して本作の一般公開を迎えることが出来なかったフィリップ・シーモア・ホフマン。死因は薬物の過剰摂取とのことですが、本作でもどうも不健康に見えてしまいますねぇ。それでもその怪演は相変わらず健在ではあります。
ウィレム・デフォー、ロビン・ライトの御大の他、今やすっかり名女優と化したレイチェル・マクアダムスが脇を固めます。
フィリップ・シーモア・ホフマン、惜しい人を亡くしました。享年46歳、合掌。
(BS-HV)
2015.12.21 スター・ウォーズ/フォースの覚醒 ★★★★
兎にも角にもスター・ウォーズの新作です。全世界で大ヒットし、初日3日間の観客動員数は日本でも歴代1位に肉薄しているのだとか。内容の出来不出来に関係なく、これはマスト・アイテムですな。
第1作目のエピソード4が1977年、最近のエピソード3が2005年の公開ですから、それぞれ38年、10年の時を経ての新作です。本作はエピソード7で、どうやらこれも3部作の第1作目となるらしい。
まあ内容としては既視感一杯の
展開に終始しますな。エピソード4のリメイクか?などという意地悪なコメントもあったり。一方で例えば「ハリーポッター」シリーズなどは回を追うごとに雰囲気が変わってしまいました(ダークな感じに)が、本作はその世界観はブレていないので、安心して見ることが出来るとも言えます。また初期メンバーも登場してオールド・ファンも喜ぶ仕掛けとなっていますが、彼らの相関があっと驚くことになっていて、意外な(残念な)展開になったりもします。
VFX映像はさぞかし進化しているかと思いきや、そうでもありません。これまでの作品のインパクトが強過ぎたのかも。
ニュー・ヒロインはデイジー・リドリー。これまでの経歴は余りなく完全な抜擢のようですが、なかなか良いと思います(やや演技が硬いか)。相棒役のジョン・ボイエガも新人と言ってよいようです。驚いたのはハリソン・フォードの若々しさ。御年73歳ですぞ。まあ、CG化粧をしているのかも。それにひきかえ、キャリー・フィッシャー(レイア姫)は老けたこと。殆どお婆ちゃんです。マーク・ハミル(ルーク)がなかなか登場しないと思っていたら、そうですか、今後に期待ということなのですね。
次回作、どうか本作の記憶が飛ばないうちに公開されますように・・・。
(劇場)
2015.12.15 杉原千畝 スギハラチウネ ★★★☆
第二次世界大戦下、ユダヤ系難民に独断でビザを発給し、6,000人の命を救った杉原千畝の半生を描いた作品。日本の制作ですが、監督はチェリン・グラックというアメリカ人です(変なの)。
杉原は、ビザの発給だけでなく、スパイ活動も行い、更には世界大戦への日本参戦阻止を軍部に訴えたことなども描かれます(知らなかった・・・)。
肝心のビザの発給がいともあっさりと描かれていて、やや脱力。もっと外務省とのやりとりがあったはずで、外務省訓令を無視せざるを得ない苦悩なども描かれてよかったのではないでしょうか?公開禁止とならないよう、政治的意図が働いたのかなとも勘ぐったり。ようやく外務省が正式に杉原の功績を認め、名誉回復したのは2000年になってからですものね。
日本のシンドラーとも呼ばれることもありますが、シンドラーはユダヤ人労働力を当てにして結果的に命を救ったという事実があります。杉原の行為は全くの人道的見地からであり、そこがシンドラーとは根本的に異なります。
杉原を演ずるのは唐沢寿明。うん、悪くはないですが余りにも実際の杉原の面影と違い過ぎます。例えば、岸谷五朗あたりが良かったのではないでしょうか?(全くの思いつき)まあ、集客力ということからは止むを得ないかな。それで結果的に杉原千畝の存在を知る人が多くなるのでしょうから。
(劇場)
2015.11.27 007 スペクター ★★★★
先行上映ということがどういう意味を持つのかよく分かりませんが、ともかくも12月4日の本公開に先駆けての鑑賞です。007シリーズの24作目であり、ダニエル・クレイグがボンド役の第4作目となります。まるでボジョレー・ヌーボーのような宣伝文句で、「シリーズ最高傑作」などと言われていますが、どうなのでしょう?
原点回帰映画ですかな。シリーズ初期の数作品でボンドの宿敵であったスペクターが
本作で久方ぶりに登場します。冒頭の銃発砲シーン、女体をモチーフにしたタイトル・バック、セリフの「ボンド、ジェームス・ボンド」、エンディングの「ジェームス・ボンドのテーマ」など、ファン・サービスも満載。カーチェイス、ヘリコプター・シーンなどもそれなりに楽しませてくれます。
一方でクレイグ作品での殆ど笑いの無いダークな雰囲気は本作でも健在(?)です。また驚くべきボンドの幼少時の秘密が明かされたりしますが、ボンドの私生活や個人的事情に踏み込むのは、007シリーズとしてはルール違反だと思うのは私だけでしょうか?
ボンド・ガールの一人は、何と御年51歳のモニカ・ベルッチ。当然歴代ボンド・ガールの中で最高年齢です。喪服姿のシルエットの美しいこと。もう一人はレア・セドゥ。スタイルは申し分ないのですが表情に色気が乏しくて、私としては余り好ましく思えません。悪役のクリストフ・ヴァルツも、いつになく本作では余り迫力がありませんでした。ラストが呆気ないというせいもあるのかも。
それにしても本作でも痛感しましたぞい、やはりショーン・コネリーのボンドは最高だった、と。
(劇場)
2015.11.18 アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜 ★★★★
タイムトラベルもののラブ・ストーリーです。冒頭、過去に戻ってやり直せるなどという話が唐突に出て、脱力してしまいます。我慢して見続けていると、中々巧いストーリー展開になっており引き込まれてしまいました。
会社員時代、研修で「今の自分が一番幸せ。何故ならこれまで色々な分岐点で自分が最も良い選択をしてきたはずであり、今日(こんにち)はその集積であるから」と教わり、成る程と思った次第ですが、本作にはそれを想起させられます。
布石が回収されるラストの父親と息子の関わりの件(くだり)、泣けますねぇ、こういうの。男女間のラブ・ストーリーというよりも、親子、家族の絆の物語と言った方が良いのかもしれません。
主人公役のドーナル・グリーソンは、最初は軽薄そのものと言った印象ですが、次第に好ましく見えてくるから不思議。ヒロインのレイチェル・マクアダムスはとてもキュート。この少し前に見ていたTVドラマ「トゥルー・デテクティブ」の捜査官役とは別人のようです。父親役のビル・ナイが良い味を出していて、本作に厚みをつけています。
邦題の副題は不要ですね。
(BS-HV)
2015.11.11 ミケランジェロ・プロジェクト ★★★★
第二次大戦下、ナチスによって略奪された世界的美術品を取り戻すために結成された特殊部隊の活躍を描いたもの。実話なのだそうな。その部隊は「モニュメンツ・メン(THE MONUMENTS MEN)」と呼ばれ、それが本作の原題にもなっています。ただしこの構成メンバーは美術の造詣があっても戦闘はズブの素人。まあ、それが本作のポイントの一つでもあるわけですが。
ストーリーはとても興味深いのですが実話であることもあり、いわゆる映画としての盛り上がりに欠けます。見せ場なのにいやにあっさり描いている。まあその方がリアリティがあって良い、という見方もあるでしょうが。
嬉しかったのはつい先日ベルギー・ゲントで見てきた祭壇画「神秘の子羊」が大きく取り上げられていたこと(★一つ加点)。逆に残念だったのは、同じくブルージュの大聖堂にあるミケランジェロの「聖母子像」も
大きな役割を果たしていたのに、その見学がツアーに組み込まれていなかったこと。大聖堂の近くまで行ったにも係らず、です。映画を先に鑑賞していれば休憩時間などに足を運べたかも知れないと一瞬思ったのですが、帰国が11月4日、映画の公開が11月6日ですからそれは所詮無理なお話・・・。
ジョージ・クルーニーの監督・脚本・主演で、マット・デイモン、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、ケイト・ブランシェットなどの豪華布陣です。
なお、本作は2013年に製作されましたが、日本公開は延期されていました。一時は公開中止などとも。噂では、日本も戦時中アジア諸国に対して似たようなことを行っており、それらが蒸し返されることを避けたい政治的圧力からだとか。う〜ん、あり得る。
(劇場)
2015.11.04 ファンタスティック・フォー(2015) ★★
ブリュッセルから成田へ帰る際の機内映画。余り観るべきものがないので、仕方なく本作をチョイス。ファンタスティック・フォーは2005年とその続編が2007年にリリースされており、何故かその2作とも私は観ています(しかも1作目も機内映画)。所詮アメコミなので内容には期待できませんが、ジェシカ・アルバの魅力で持っている作品でした(キッパリ)。本作はその3作目の続編かと思いきやそうではなく、1作目のリメイク、リブートとも言うべきもの。
超能力を得るまでにえらく時間をかけているし、かなりダークな作風に仕上がっています。敢えて1作目をおさらいする必要があったのかどうか。無かったでしょう。紅一点のケイト・マーラも到底ジェシカ・アルバにはかないません。
(機内映画)
2015.11.04 Self/less ★★★★
日本未公開映画らしい。しかし、SFスリラーと知って観ることに。がん末期の大富豪の男が、延命のために若い男の体に意識を移植するという、とんでも映画。でも、私はこういうのが好き。しかもそういう外面的なことで終始させず、人間の本質や良心は如何にあるべきか、尊厳とは?
という哲学的内容となっており、予想外に惹きつけられました。捻りもあって展開も予測出来ません。
富豪の男に御大ベン・キングズレー。圧倒的な存在感です。意識を移された男にライアン・レイノルズ。やや没個性かな。この男の妻役にナタリー・マルティネス。ラテン系で魅力的な女性です。ジェニファー・ロペスとミシェル・ロドリゲスを足して、3で割ったかのよう(笑)。
う〜む、やはりこのスケール感では劇場公開に至らないのか・・・。勿体無い。
(機内映画)
2015.10.28 マッドマックス 怒りのデス・ロード ★★★
公開時からかなり高評価の作品でした。それを成田からブリュッセルに向かう機内映画で観ることが出来たのは、良かったのか、悪かったのか。マッドマックスと言えば、メル・ギブソン主演で3作がシリーズ化されていますが、もはや30年前のこと。本作に繋がる何かがあるのでしょうか?
ストーリーは単純、映像はハチャメチャ。そのハチャメチャが評価されているのでしょう。やはり、小さなディスプレイではダメですね。
行きがかり上、大きなトラブルに巻き込まれた不幸な男にトム・ハーディ。悪のボスを裏切って逃走する女闘士にシャーリーズ・セロン。セロンは片腕が無く坊主頭で、フェロモンを封印。う〜む、この役ならセロンでなくてもよかったような。
退屈はしませんが、特別のめり込むような作品ではありませんでしたね、私には。
(機内映画)
2015.10.28 ラブ&マーシー 終わらないメロディー ★★
「ザ・ビーチ・ボーイズ」のリーダーであったブライアン・ウィルソンの半生を描いたもの。ブライアン・ウィルソンが曲作りに心を込め、そのプレッシャーから精神を病んでいく様が、若き日と後年とで異なる俳優によって演じられます。前者はポール・ダノ、後者はジョン・キューザック。キューザックは殆ど本人には似ていませんが、意外と違和感なく観ることが出来ます。
ただ、「ジャージー・ボーイズ」のように往年のヒット曲が大きくフィーチャーされないのは拍子抜け。ブライアンの苦悩も見ていると「もう沢山」という感じになりました。
(機内映画)
2015.10.28 ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声 ★★★★
よくある音楽にまつわるサクセス・ストーリーものかと思って観たら、果たしてそのとおりでした(笑)。天才的な素質を持つ一方でかなりの問題児である少年を、厳格なベテラン教師が育てていく、というお話。「セッション」か? いじめっ子の存在など、色々な障壁があるというのもお約束。ただし、最後にボーイ・ソプラノの宿命の声変わりまで描かれ、再出発していくというのは新しい視点かも。終盤の義理の母との関係は、あれれという感じ。少し都合が良すぎる・・・。
フォーレのレクイエム「ピエ・イエス」や「メサイア」などをしっかり聴かせてくれて、これには満足。
主人公の少年はオーディションで選ばれた新人とのこと。歌唱力はまあ及第かな。ベテラン教師役に淡々と演ずるダスティン・ホフマン。校長役に益々貫禄がついたキャシー・ベイツ。
良作ですが、すぐに忘れそう・・・。
(機内映画)
2015.10.20 ヘラクレス ★★
大作風ですが実はおバカ映画。ドウェイン・ジョンソンが登場するとどうしてもB級ムードの筋肉映画になってしまいます。
12の難業を成し遂げた半神半人のヘラクレスは実は人間であり、仲間の者と力を合わせて戦う、といったお話なので、むしろ説得力が出るはずなのですが・・・。
展開が散漫で集中できない、引き込まれない。「300」に似たVFXにも驚かない。登場する4人の美女は顔が似ていて区別出来ない。期待したアマゾネスが登場しない。
ジョセフ・ファインズが出ていますが、情けないほど役になりきっていますね。得なのか、損なのか。ジョン・ハートの落ち着いた演技が救いか。
(BS-HV)
2015.10.17 欲望のバージニア ★★★☆
その手の映画を連想させるこの邦題は酷いですね。禁酒法時代のバージニア州で、密造酒ビジネスで稼いだ三兄弟と悪徳取締官の攻防を描いた実話をベースにした映画だというのに。原題は「LAWLESS」ですから、そのまま「ローレス」で良かったのでは・・・。
まあ映画ですから脚色、誇張があるにせよ、本来と逆転した設定、つまり悪者であるべき密造者とそれを摘発する正義であるはずの取り締まり側が逆転して描かれているのです。観る側も自ずと密造三兄弟を応援する羽目に。
それにしても三兄弟は不死身です。特に次男はあんな状態が2回もあったにも係らず、です。その割にはラストがあんなではなぁ・・・。
配役も地味ですが豪華です(意味不明)。主演の三男坊を演ずるシャイア・ラブーフを始めとして、ゲイリー・オールドマン、ガイ・ピアース、トム・ハーディ、ジェシカ・チャステイン等々。ガイ・ピアースの悪役ぶりにビックリ。ジェシカ・チャステインは終わってから「ゼロ・ダーク・サーティ」の主役を演じていたことに気がつきました。
お約束でエンド・クレジットで実際の三兄弟の姿が映し出されます。だいぶイメージが違いますなぁ・・・。
(BS-HV)
2015.10.05 ラストベガス ★★★
昨今流行りのジジイ映画。何せ顔ぶれが凄いのです。ロバート・デ・ニーロ、モーガン・フリーマン、ケヴィン・クライン、マイケル・ダグラスというオスカー俳優の4人。ただし、シュワちゃんやスターロンのようにヒーローでも何でもなく、とにかく前立腺が気になる70歳代の情けないジジイ達。
小さい頃から親友であった4人の最後の独身男(ダグラス)の結婚を祝うために皆んなでラスベガスに集まり、ギャンブルをしたり、ビキニコンテストの審査員になったり、パーティでどんちゃん騒ぎをするというお話。
全編にユーモアが溢れ、適度にジーンとさせてくれるハート・ウォーミング・ストーリーと言ってよいでしょう。こんな配役ですからどんな脚本でも許すべきなのでしょうが、どうも腑に落ちないところが少なからずあります。デ・ニーロとダグラスの確執はあんなことでは治らないと思いますし、クラインの終盤の行動がいかにも安心、安全のハリウッド的でもったいない。紅一点のメアリー・スティーンバージェンが演ずるクラブ歌手との関係もいかにも短絡的。
かっこよさではケヴィン・クラインが一番かな。主役格のダグラスはいやにお顔が老けて醜くなりました。卑屈な役柄のデ・ニーロは損しているかも。フリーマンは相変わらず余裕の演技。あのダンスが素晴らしい。
(BS-HV)
2015.09.29 ブレイキング・バッド ★★★★★
日本では余りポピュラーではないようですが、本国アメリカでは超人気作品で、史上最高の評価を受けた作品としてギネス認定されたのだとか。それを証明するようにエミー賞、ゴールデングローブ賞で累計49部門でノミネートされ、12部門で受賞しています。米国では2008年1月から2013年9月までの期間にケーブルチャンネルで放映されたとのこと。
うだつの上がらない化学教師である主人公が、突然肺がんで余命わずかと宣告されたのをきっかけに、持ち前の化学の専門知識を活かして、ドラッグ製造などの悪の道に進んでいく、というお話。
登場人物が少なく、各々の人物がじっくり描かれるので感情移入しやすく、脚本の巧さと相俟ってすっかりハマってしまいました。全5シーズン、全62話をNETFLIXの無料視聴期間内に見終えなければいけないということもさることながら、次のエピソードが気になって短期間に連続視聴し、またまた睡眠不足に陥ったのでした。
ただ後半、主人公が悪魔と化して間接的にも直接的にも残酷な殺人を繰り返すことにやや抵抗感が・・・。主人公なのですから最低限の倫理観は持って欲しいと思うのですが、それをことごとく裏切ってくれるのです。それ故ラストはむしろ清々しく、また見終えた後も余韻を残すことになります。いいのだ、うん、ああなるべきなのだ、と・・・。
主人公役のブライアン・クランストンはもちろんのこと、ジャンキーな相棒役のアーロン・ポールの演技が素晴らしい。また数々登場する悪役の中では、極めて冷静な経営者と残虐なマフィアのボスの2つの顔を併せ持つジャンカルロ・エスポジート演ずるキャラクターが印象に残ります。文字どおり、彼は2つの顔を持って散ることになるのですが・・・。
アメリカのTVドラマはやはり質が高いものが多いですね。日本のくだら〜ないTVドラマの製作者は少しは見習ったらいかがでしょうか。
(NETFLIX)
2015.09.14 キングスマン ★★★★
本作の予告編を観て、果たしてコリン・ファースはエージェント役などできるのだろうか?と思っていました。観てみてビックリ。キレッキレのアクションを見事にこなしているのです(まあ、映像処理もあるのでしょうが)。更にビックリしたのが、完全なおバカ映画であるということ。「キック・アス」のマシュー・ヴォーン監督が、エロ、グロ、ナンセンスを更に高めています。また、スピーディな展開とあっと驚くキャラの登場に全く退屈はしません。若者達を一流のエージェントに教育していくという流れが並行してあるのも、面白みを加えています。
まあ、教会でのシーンや花火(?)のシーンは賛否が別れるところでしょうが、スタイリッシュな映像処理をしているので、ギリギリ許容範囲でしょうか。
ただ、主人公と思っていたコリン・ファースのあの扱いは残念ですね。後を引き継ぐタロン・エガートンは、いかにも子供っぽく、軽く見えてしまいます。脇を固めるのは、マイケル・ケイン、サミュエル・L・ジャクソン、マーク・ストロングの重鎮たち。マイケル・ケインの扱いが良かったのか、悪かったのか・・・。
驚いたのは、両足義足の女性殺戮マシーンのアクション。斬新の一言。もっと驚いたのが、某国王女の終盤のセリフ。直訳の字幕ということもあり、一瞬館内が凍りつきましたぞい。
(劇場)
2015.09.06 ワン・チャンス ★★★
イギリスのタレント発掘番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」で認められ、プロ歌手デビューを果たしたポール・ポッツの半生を映画化したもの。まあ、男性版スーザン・ボイルというところでしょうか? 両名に共通しているのは、見た目の非スマートさ。しかし、才能があって努力をすれば世の中からは外見に関係なく認められるという典型でしょう。両名の「ブリテンズ・ゴット・タレント」での動画(@YouTube)はいつ見ても感動的です。
本作のタイトルはプロデビュー・CDアルバムと同じですが、実は私はそのCDを聴いた時、余り感銘を受けませんでした。楽譜に忠実過ぎて感情がこもっていない気がしてならないのです。まあ、それは本映画の出来とは関係ありません。
サクセス・ストーリーとしては王道を行っていますので、安心して見ていられます。ただ、折角挿入曲は本人の吹き替えなのですから、ブレイクした後の歌をじっくり聴かせて欲しかったと思います。
(BS-HV)
2015.09.01 マラヴィータ ★★★★☆
これは拾い物でした。2時間しっかり楽しめます。マーティン・スコセッシが制作指揮、リュック・ベッソンが監督、ロバート・デ・ニーロ、ミシェル・ファイファー、トミー・リー・ジョーンズが出演という豪華な布陣。その割には大作風ではなく、むしろB級テイストも少しあったり。
証人保護プログラムの元マフィアのボスの家族が、彼らに復讐しようとするマフィアと闘うというお話。極めてオーソドックスな展開で分かり易く、私なんぞは安心して見ていられます。
元マフィアの夫だけでなく、その妻、娘、息子までが瞬間湯沸器のような過激な行動を取るのが、痛快といえば痛快。残虐といえば残虐。まあ、あんなことして警察によく捕まらないものだと思いますが、その辺は見て見ぬふり(笑)。マンドリンをフィーチャーした如何にもなイタリアン・ムードのBGMもよろしい。
デ・ニーロは元々マフィア役のイメージがあるので、ハマりきっています。もっとハマっているのが刺客のリーダ格のイタリア人役。見たことあるけど、誰だったろう?
因みに「マラヴィータ」とは一家が飼っている犬の名前。それほど活躍しなかったけどなぁ・・・。
(BS-HV)
2015.08.20 ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション ★★★★
シリーズ5作目。主演のトム・クルーズが制作にも加わっています。このシリーズは、何と言ってもトムがノー・スタントで危険なアクションをこなしているというのが最大のウリでしょうか? いずれにしても彼のやりたい放題の映画であることは間違いありません。
ツカミで例の飛行機しがみつきシーンが
披露されますが、予告CMでさんざん見せられているのでインパクトに欠けるのは惜しいところ。しかもこのシーンはその後のストーリーには全く関係しません。ストーリーとしては、トムが謎の組織(シンジケート)の正体をあばき、それを壊滅させるために奮闘するというお話。彼をサポートする仲間3人に加えて、敵か味方か不明の謎の美女が重要な役割を果たしています。本シリーズに付き物のミッション伝達シーン、小道具、変装なども健在です。
ただ、これまでのシリーズのようなあっと驚くアクション・シーンは余りありません。まあ一番の見所は、ヘルメット無しでのバイクチェイス・シーンでしょうか。ウィーンのオペラ座シーンはまだしも、水中シーンなどは余り訴求力は無し。ラストの布石を回収するシーンは流石にお見事。このようなカタルシスが無くてはいけません。
謎の美女役にレベッカ・ファーガソン。余り出演作は多くないようですが、キャサリン・ゼタ=ジョーンズを大柄にした感じで、中々良いのではないでしょうか。脇を固めるのは、ジェレミー・レナー、サイモン・ペッグという売れっ子達。御大アレック・ボールドウィンも出ていますが、益々貫禄が付きましたね。悪役のショーン・ハリスの声に痺れる・・・。
御年53歳のトム・クルーズ、次回作もあるのでしょうな。
(劇場)
2015.08.19 トゥモローランド ★
大型客船「ダイヤモンド・プリンセス」の船内劇場での鑑賞。ディズニー・ワールドでの人気アトラクション、「イッツ・ア・スモール・ワールド」に絡めた映画であると劇場公開時は派手な宣伝をしていたので、それなりに期待をして見てみました。
SFファンタジーなのでしょうが、時系列も含め、あれこれひねくり回していて脈絡が掴み見づらい。前席の夫婦は始まって10分したら席をたちました。終演後も「何なんだ、あれは」などという声もあちこちで聞かれました。ディズニー映画と思って観た小学生などは殆ど理解できないのではないでしょうか?
せっかくジョージ・クルーニーを使っているのに勿体無い。ただ、ロボットの少女役はとても可愛らしく、演技もしっかりしていました。
通常の劇場鑑賞なら「金返せ」ですが、まあ無料ですからよしとしますか(って、旅行代金に含まれているか・・・)。
(船内劇場)
2015.08.19 シンデレラ ★★★
大型客船「ダイヤモンド・プリンセス」の船室での映画。劇場公開時は評判は良かったようですが、私は当然ながら今更という思いが先に立ってパスしていました。船内での色々なイベントの間をぬっての鑑賞です。
まあ忠実に一般的に知られたストーリーに沿っているのではないでしょうか?継母とその2人の娘のひどい仕打ちを乗り越えて大ハッピーエンドを迎えるのは、やはり気持ちの良いものです。
ただ、シンデレラ役のリリー・ジェームズは顔が四角でエラが張っており、シンデレラのイメージ(どんな?)と違う気がしました。継母役に安定のケイト・ブランシェット。憎たらしさの中にも秘めた悲しみを巧く表現していました。ヘレナ・ボナム=カーターも魔女役で登場。
今更ながら気が付きました。0時を過ぎて魔法がとけて全て元に戻ったのに、何故ガラスの靴だけそのままだったのだろうと・・・。
(船内映画)
2015.08.06 ジュラシック・ワールド ★★★
「ジュラシック・パーク」シリーズの第4作目。第1作目から22年、第3作目からも14年経っています。こういう人気シリーズの新作はよほどより良く作らなければファンは満足しません。本作の出来栄えや如何に。
背景は、かつてジュラシック・パークが建設された島に新たなテーマ・パークが開設されたという設定です。テーマ音楽や小ネタなどはオールド・フアンには懐かしく思われる反面、既視感が一杯。
大事なことですからもう1回言います。既視感が一杯(クドイ)。斬新さや捻りが殆ど見受けられません。誰が襲われて、誰が助かって、誰が殺されるかすぐ分かるという按配。それまでの悲劇に懲りずにバカな行動を取るのも、わざとらしい。脳天気な兄弟にも腹立たしい。第1作目での恐竜の初登
場シーンのような感動よ、もう一度、というのは欲張りなのでしょうかねぇ。
VFXやサウンドは流石に迫力がありますが、格段に進化しているとは余り思いません。それだけ、前作までのVFXが優れていたということなのでしょう。
主人公役のクリス・プラットやブライス・ダラス・ハワードが個性的でないのが惜しいところ。第1作目のサム・ニール、ローラ・ダーンが偉大に感じられます。やはり脇役を含めてメジャーな俳優を使っていないのが悪いのでしょうか。
印象的なラスト・シーンは、エンドロールの最後にもってくるべきでした。最後まで見ないで席を立った人々が悔しがるように・・・(毒)。
(劇場)
2015.08.02 あなたを抱きしめる日まで ★★★★
幼い息子と強制的に引き離された英国の修道女が、年老いてからその息子を探すために米国を旅するというお話。実話に基づいているのだそうな。英国アカデミー賞を受賞したり、米国アカデミー賞、他にノミネートされたりしている話題作なのですねぇ。
アイルランドに実在したマグダレン修道院の過酷で陰惨な実態を描いた「マグダレンの祈り」という映画がありましたが、本作は言わばそのアナザー・ストリーの様相を呈しています。
ミステリー的な面と併せてユーモア的要素もあり、最後まで退屈せず観ることが出来ました。特に終盤の展開には胸を打たれます。一方でかつて修道女だったとは思えないような主人公の過激で大胆なセリフが飛び出したりして、驚かされもします。
主演は御大ジュディ・デンチ。言うことはありません。もう80歳なのですねぇ。本作の原作著者でもあるジャーナリスト役はスティーヴ・クーガン。彼もとても控えた良い演技をしていました。若き日の主人公役がジュディ・デンチにそっくりなのもプラス要素。
実話に基づく映画ではお約束の実際の映像がエンドロール前に映しだされます。それぞれよく似ていますし、主人公がまだ健在なのも何より。
原題は「PHILOMENA」で主人公の名前の「フィロミナ」だけなのですが、これにこの陳腐な邦題を付けるのは如何なものかと・・・。
(BS-HV)
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