映画、ビデオ短評

★★★★★:満点(五つ星) :半星

1998.4.27〜1998.6.22  1ページ目へ  トップへ

1998.6.22 アルビノ・アリゲーター  ★★

 タイトルの「アルビノ・アリゲーター」とは、染色体異常の白いワニのことで、仲間のワニから生け贄にされる運命にあるのだとか。この「生け贄」がこの映画のテーマになっています。
 警察に追いつめられて地下のバーに立てこもった3人の強盗と、人質となった店の客との駆け引きを描いたサスペンス作品。「ユージュアル・サスペクツ」のケビン・スペイシーの初監督作品ということで、どうしても大どんでん返しやトリッキーな展開を期待してしまいました。でも、ここでのアイディアはエディ・マーフィー主演の「ネゴシェーター」で使われたもので(ごめん、ネタバレですね)、少々食い足りない感は否めません。
 また中盤で、折角使えそうな新しいネタ(!)が出てきたのにそれがその後少しも活かされていないのは、納得がいきません。
 まあそれでも退屈しないで見れたのは、最も良識的な犯人役を演じたゲイリー・シニーズの迫真の演技によるところが大きかったと思います。
 でも、大女優のフェイ・ダナウェイがこの作品に出る必然性は何だったんでしょう・・・。(?_?)
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1998.6.19 フェイク  ★★★

 FBIの捜査官(ジョニー・デップ)が、マフィアの犯罪の調査を行なうためにマフィアの一員に成りすまして組織に潜入した6年間を描いたもの。
 実話ということなのであっと驚くような展開はありませんが、アル・パチーノ扮する落ちぶれたマフィアと、主人公の友情ともいえるやりとりを、しっとり描いていて見ごたえはそれなりにあったと思います。
 ただ、主人公が潜入先の組織で具体的に何をあばき、何が成果になったのかが、ストーリーの中に十分折り込まれていないのが少々残念でした。また主人公が不在がちなことによる家庭騒動がサイドストーリーとして描かれていましたが、現実はそうだったにしても結果的にこれが物語としての展開に邪魔になったように私には思えました。
 評判の終盤のシーンも、もう少し丁寧な説明があると良かったのですが・・・。
 実在の本人は今でもマフィアから50万ドルの懸賞金がかけられていて、偽名で密かに暮らしているとか。ああ、恐ろしや。(・・;)
 ジョニー・デップは私には「シザー・ハンズ」のイメージが強いのですが、素顔も中々いいですね。
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1998.6.14 ジャッカルの日  ★★★★

 地下テロ組織がド・ゴール大統領暗殺のために雇った殺し屋(ジャッカル=エドワード・フォックス)と、それを阻止する警察側との攻防を描いたサスペンス作品です。
 まもなく公開されるブルース・ウィリス主演の「ジャッカル」は、一応これのリメイクということになっていますが、「ジャッカル」は派手なドンパチや大アクションシーン満載なのに対し、こちらの本家の方は静かに静かに物語が展開していきます。主人公ジャッカルは途中でけっこう冷酷に殺人などを犯すのですが、あくまでも淡々とした感じなのです。BGMが殆ど無いせいかも知れません。
 クールに話が展開していく中で、いくつか印象的なシーンがちりばめられています。例えば、特製の銃の試し撃ちで、西瓜を標的にして照準を微調整し、最後に破裂弾で粉々にする場面など。
 クライマックスをもう少し丁寧に描いて欲しかったですね。少々あっけない幕切れでした。
 ジャッカルが一時身を隠すために利用される、富豪の未亡人が可哀想です・・・。(T_T)
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1998.6.9 イベント・ホライゾン  ★★★

 海王星付近で消息を絶った巨大宇宙船、「イベント・ホライゾン」号をめぐるSFホラー作品。
 どこかで見たことのある状況設定があちこちに出てきてSFとしては余り新鮮味はありませんし、SFXもそんなにビックリするほどではありませんが、話としてはまあまあ楽しめます。ただ残念なのは、ストーリーのキーとなる「コア」の実態と「その向こう」が十分に説明されてなかったこと。いっそのこと「コンタクト」のように「その向こう」をしっかり描写してもらいたかったですね。そういえば、ここでの「コア」は「コンタクト」からの模倣かも。
 また、宇宙船と外部との扉が開いたり、窓が壊れたりするシーンでは、どう考えても物理的にはあんなじゃ済まないでしょう。
 主演(?)は「ジュラシック・パーク」や「ピアノ・レッスン」のサム・ニール。私はこの人が演じた「オーメン」のダミアンが印象深いのですが、ここでもその奇っ怪さを上手く演じています。クルーの一人を演じたジョエリー・リチャードソンの美しさがやけに目立ちました。この人の演じた「チャタレー夫人の恋人」を見なくては・・・(^_^;)。
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1998.6.3 ヘブンズ・プリズナー  ★★

 全米でベストセラーになった小説の映画化ということですが、私にはイマイチ盛り上がりに欠ける作品でした。
 元警官でアル中だった主人公(アレック・ボールドウィン)が、小型飛行機の墜落現場から少女を救助したことから、マフィアがらみの事件に巻き込まれていく、というサスペンス作品です。
 この主人公の行動の動機がどうもよくわからないのです。何故あんなに自分や家族を危険に晒してまで事件に首を突っ込もうとしているのか、何が彼をつき動かしているのか。正義感の強い元警官だから、というのではいかにも安易。
 なんでも原作はシリーズものということなので、主人公の特徴を出すために、あえてああいう暗いニヒル(死語?)な役柄に設定してあるのかもしれません。
 更に判らないのが、最後に明らかになる黒幕の、主人公の命を狙う動機。(?_?) イマイチ明確でないストーリーを追っていってるうちに、いつの間にか終わってしまった、という感じです。
 ニューオリンズが舞台になっていて、「欲望という名の電車」で有名な路面電車でのアクションシーンが見ものかも・・・。
 ハンサムなアレック・ボールドウィンを見ているだけでいい!という人にはお勧め。
(ビデオ)

1998.6.1 エアフォース・ワン  ★★★★★

 これだけ楽しませてくれれば文句はありません。やはり劇場で観ておけば良かった!
 空飛ぶホワイトハウスと呼ばれている大統領専用機の「エアフォース・ワン」が、ロシア人テロリストに乗っ取られ、何と合衆国大統領(ハリソン・フォード)が「ダイ・ハード」よろしく、一人で敵に立ち向かいます。大統領としての信念を貫き通すか、家族の命を優先させるかのジレンマ、観ているほうにも十分その苦悩が伝わってきます。冒頭の拉致シーンに始まって、ハラハラドキドキの連続のストーリー展開は、見事というしかありません。特に観客には最後まで「気を抜けないしかけ」がしてあるところが、憎い!
 ちゃんとロシア人同士では、ロシア語を喋っていましたしね・・・(1998.2.27「セイント」参照)。
 監督は「ザ・シークレット・サービス」、「アウト・ブレイク」などのウォルフガング・ペーターゼン
 ハリソン・フォードも55才、実際に息が切れているんでしょう。
 テロリストのボスは、こういう役にぴったりのゲーリー・オールドマン。「レオン」での彼ほどクレージーではありませんが、信念を持った男の冷酷な恐ろしさを上手く演じています。
 副大統領役はグレン・クローズで、まあ、あんなもんなんでしょう。
 とにかく、アメリカ合衆国バンザイ!\(^o^)/と叫びたくなるようなアメリカっぽい映画です。満点×1.5を献上。
(ビデオ)

1998.5.30 ガタカ  ★★★

 新聞などではかなり好評のようでしたが、ストーリー展開がやや平たんで私はイマイチのれませんでした。
 遺伝子的に欠陥を持つ主人公(イーサン・ホーク)が、障害者ではあるが優れた遺伝子を持った別の男に成りすまし、宇宙ロケットの会社「ガタカ」に入って宇宙飛行士を目指す、という近未来SF・サスペンス作品です。
 序盤で「別人に成りすますには血液や毛髪の細胞が大事であって、顔は関係ない」という説明がなされますが、この大前提でこの物語は進行することを納得しておかないと、あとで腑に落ちない場面に色々出くわすことになります。
 イーサン・ホークと、その恋人役のウマ・サーマンは二人とも人間(地球人)離れした顔をしていて、二人がいるだけでSF的雰囲気をかもしだしています。(^.^)
 ただストーリー的にはSFというよりも、むしろ主人公の自分の希望を叶えるためのすさまじい努力や、優れた遺伝子を持つ弟との葛藤と愛情を描いたヒューマン・ドラマといった趣があるように思えます。
 イーサン・ホーク、なかなか個性的な魅力があります。ウマ・サーマンはギョッ(*_*)とするくらいの美女ですが、役柄としてはどうでもいい感じでした。
 「GATTACA」をあしらったクレジット・タイトルがしゃれていて、音楽がまた泣かせてくれます。
(劇場)

1998.5.25 ジャッキー・ブラウン  ★★★★

 クエンティン・タランティーノの「レザボア・ドッグス」、「パルプ・フィクション」に次ぐ長編第3作目の監督作品で、銃の密売人(サミュエル・L・ジャクソン)と、スチュワーデスでその代金の運び屋である主人公(「ジャッキー・ブラウン」=パム・グリア)の駆け引きを描いたサスペンスです。
 相変わらずセリフが多くて長い、説明のテロップや画面が入る、ゆっくりと時間が流れる、といったタランティーノのならではの独特の雰囲気があり、そのためにストーリー展開が極めて丁寧に説明されている映画となっています(だから上映時間は2時間34分!)。普通のサスペンス映画なら多分この半分の描写時間で済まされていることでしょう。
 特に大げさなアクションシーンも、ハラハラドキドキもなく、あっと驚くどんでん返しもないのですが、何となく引きつけられる魅力のある映画に思えたのも、タランティーノの青春のアイドルだったパム・グリアの魅力が大きく貢献しているのでしょう。彼女は何と48才(役柄は44才)なのですが、いわゆるダイナマイト・ボディの持ち主。少し曲がった口でクールにセリフを吐くのが何ともカッコイイ。また彼女に絡むサミュエル・L・ジャクソンが、ここでも冷酷なのに気のいい悪役をうまく演じていて、喝采もの。
 でも、ロバート・デ・ニーロをあんなどうでもいい役で使ってはいけません!
(劇場)

1998.5.22 スターシップ・トゥルーパーズ  ★★★★

 原作は、映像化は不可能と言われていたR・A・ハインラインの「宇宙の戦士」で、人類とバグス(虫けらども)の戦いを描いたSF作品です。「トータル・リコール」や「氷の微笑」など、ショッキング描写が得意なポール・バーホーベン監督が、ここでもしっかりやってくれています。
 人間の首や手足が吹っ飛んだり、頭から脳味噌が吸い取られたりの残酷シーンや、子供たちに小さな虫まで踏ん付けさせるといったシーンに、眉をひそめる人は多いことでしょう。また相手が虫とはいえ相当好戦的に描かれていることから、戦争賛美ではないか、などといった議論をかもしだしたのも無理はありません。
 まあでもこの手の映画は、余りそんな深刻に考える必要はなく、フルCGで描かれたバグズなど、驚異的なSFXに感心し、楽しめたらそれでいいのではないでしょうか。ただ、俯瞰映像はさすがにド迫力(例の「奴らは群れでやってくる!」です)がありましたが、クローズアップ・シーンでは動きがややぎこちなく、見にくかったのが残念でした。あの辺が技術の限界なのでしょうか。
 最後に相手のボスがあっけなく捕まってしまうこと(取り巻きのバグスは一体何をしていたのでしょう?)や、そのボスが余りにも間抜けな顔(?)をしていたのが、興醒めでした。
 まあでも、毒気を含んだ「スター・ウォーズ」に「軍隊もの」を絡ませた、といったふうで、結構楽しめる作品であることは間違いありません。若い男女の混浴シャワーシーンもあることですし・・・(^_^;)
(劇場)

1998.5.20 誘惑のアフロディーテ  ★★

 ウッディ・アレンが監督をし、また自らも主演しているコメディタッチの恋愛ものです。
 原題は「Mighty Aphrodite」で、「アフロディーテ」はギリシャ神話の中に出てくる美と愛の女神です。そのためか冒頭から所々にギリシャ劇風の進行役(?)グループが登場するユニークな構成をとっていますが、こういうしかけは人によって好き嫌いの分かれるところでしょう。
 ズバリこの作品は、タイトルどおり、ヒロインを演じているミラ・ソルヴィ−ノの魅力が売り物だと思います。私もビデオパッケージの彼女を見て、これを観る気になったのですから・・・(^_^;)
 彼女は、限りなくゼロに近い知性を持った(実際はハーバード卒のインテリだとか!)純真な娼婦役をうまく演じており、これでアカデミ−助演女優賞を受賞しています。
 ストーリーは、後半を強引にまとめた感があって、フウーン、という感じ。
 しかし、「プリティ・ウーマン」といい、これといい、本当にこんな魅力的な娼婦っているのでしょうか?
(ビデオ)

1998.5.18 シャイン  ★★★★

 スピルバーグが、「10年に1本の作品!」と絶賛したという作品です。地元オーストラリアのアカデミー賞(そんなのがあるとは知りませんでした)では、最優秀作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞など、主要9部門を独占したのだそうです。
 オーストリアの実在の天才ピアニストである、デヴィッド・ヘルフゴットの感動的な生涯を描いたもので、クラシック・ファンにはこたえられない映画でしょう。また、挿入曲の大半は、本人自身が演奏したものだそうです。
 異常なまでに厳格な父親の屈折した愛情が、結局息子の精神を蝕んでしまうというのは悲劇ですが、もっと悲劇なのは、そのことをこの父親は最後まで気付かなかったことだと思います。
 成人した主人公を演じているジェフリー・ラッシュが素晴らしく、「レインマン」のダスティ・ホフマンの演技を彷彿させました。
 精神に異常をきたし落ちぶれていた主人公の人生を、彼の前に現れたある女性の愛情が、輝かせ始める、というところがタイトル(Shine)の由来となっています。
 このタイトルをプリントしたTシャツを見て、「何で『死ね』なんだ?」といった者がいたとか。(^o^)
(ビデオ)

1998.5.16 テルマ&ルイーズ  ★★★

 「エイリアン(1)」、「ブレード・ランナー」などで有名なリドリー・スコットが監督した、典型的なロード・ムービーで、一般的には評判のいい映画のようです。
 平凡な主婦テルマ(ジーナ・デイビス)と退屈なウエートレスのルイーズ(スーザン・サランドン)が旅に出て、ある事件をきっかけに後戻りできなくなっていく一方で、本来の自分を見い出していく、というストーリーです。
 話自体は興味深く展開して行き、こういう生き方もあるのだろうな、とは思います。でも果たして世の女性方は、この二人の考え方、生き方に本当に共鳴するのでしょうか?あれで本当に自らを解放した、自己を見いだした、ということになるのでしょうか?
 スーザン・サランドンは渋く、ジーナ・デイビスはけっこう魅力的。ハーベイ・カイテルが真摯な刑事役でここでも好演。なんとあのブラピが、チンピラ役で出演していますが、これで彼は注目されたのだとか(この映画は91年の作品)。
 それにしても、ルイーズがかつてテキサスで体験したことが、最後まで明かされなかったのが気になります。
(ビデオ)

1998.5.11 ボディ・バンク  ★★★★★

 原題は「Extreme Measure」(どう訳すのでしょうか?「極端な基準」?「過激な対策」?)ですが、もう少しましな邦題がつけられないものでしょうか。これではまるでB級ホラー映画です。
 余りにもショッキングな内容なので、今まで何回も映像化が見送られてきたのだとか。さすがに見応えのあるミステリー・サスペンス仕立ての作品になっています。それと同時に、極めて重いテーマを持った社会派ドラマと言うこともできるでしょう。
 この映画のテーマは人体実験ですが、それがお金や名誉のためでなく、本当にそれを実現するためには何でもしてしまう人々の支援で成り立っている、というところが恐ろしく、また現実味を帯びた生々しさがあります。
 終盤で、人体実験を行なっているボス(ジーン・ハックマン)が主人公(ヒュー・グラント)を味方に引き込もうと説得する場面がありますが、見ているものを思わず「うん、それがいいかも」と思わせてしまったりします。
 結局、医学の倫理を貫き通すことでこの話は終わりますが、見終わった後に本当にそれで良かったのか、しみじみ考えさせられてしまいました。
 それにしてもこのところ、ジーン・ハックマンは悪役(?)ばかりですね。
(ビデオ)

1998.5.9 シャロウ・グレイブ  ★★★

 「Shallow Grave」、すなわち「浅い墓」が、象徴的にテーマとなっているサスペンス作品です。
 仲の良い男二人と女一人のルームメイトが、もう一人のルームメイトを募集し、やってきた男が莫大なお金を残して変死したことから、事件が始まります。
話はどんどん進展していくので退屈することはありませんが、あっと驚くようなひねりや展開はありません。
 普通の日常生活の中で、ある日突然とんでもない事件が起こったのをきっかけに、人間が本来持つ金銭欲、残酷さ、狡猾さ、弱さが次第に露呈されていき、最後には、うん、こうなるのもしょうがないのだろうな、と哀れな共感を覚えさせられます。
 マフィア絡みの大金を横取りする、という点では「バウンド」を思い出させますが、こちらはあちらと違って、後味は余り良くありません。序盤でも相当気色悪い場面もありますしね。(¨;)
 やはり、男二人と女一人って、結局だめになるのですね。(-.-)
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1998.5.6 レザボア・ドッグス  ★★★

 クエンティン・タランティーノの第1回監督作品で、彼自身も脇役で出演しています。
 原題は「Reservoir Dogs」(貯蔵所の犬ども、?)。
 宝石店の強盗を企んだ一味が、誰かの内通によりそれが失敗して、お互いに疑心暗鬼になってやがて壮絶な殺し合いが・・・という、サスペンス作品です。
 話の展開自身は、それなりに楽しめますが、やはり、一風変わった映画だと思います。なにか虚無感の漂う、乾いたムードに終始しています。BGMが一切無かったせいかも知れません。
 冒頭、主な出演者達が雑談をしているのですが、全く本筋に関係ない猥談(マドンナLike A Virginの意味はああいうことだったのですね)や、食堂でチップは必要か、といったようなことを延々と話しているのです。また、宝石店襲撃シーンが一切映像では現れず、殆どが倉庫の中のシーン進められ、言わば舞台劇風であったりします。主要人物の登場シーンにわざわざ大きなテロップが出たりね。
 捕らわれた警官に対するリンチの場面はショッキングですし、また何であんなに安易に殺し合えるのか、見終わった後は、やれやれ、という感じです。
 それぞれひと癖もふた癖もありそうな出演者達の中で、断トツにハーベイ・カイテルがキマッテいました。
(ビデオ)

1998.5.4 ボルケーノ  ★★

 「ダンテズ・ピーク」と同様な、火山噴火の大パニック映画。こちらは、なんとロスの街にマグマが噴火し、通りが溶岩の川になってしまいます。
 封切り時には、かなり評判になっていたので期待して見たのですが、外れてしまいました。街に火の玉が降り掛かり、通りを灼熱の溶岩が流れる、といった映像はさすがにド迫力があります。ただ、話の展開に工夫が殆ど見当たりません。
 災害の兆候が現れるけれどなかなかそれを信じようとしない人々がいて、結局犠牲者が出てしまう、正義感が人の百倍もあるような主人公がいて、なんとか危機を脱出する、というお定まりのコースはそれでいいでしょう。でも何かもう少しヒネリが欲しかった。ここではただ迫りくる溶岩をせき止め、進路を変えるだけ。まあ自然の持つ大きな力の前には、人間はいかに無力かということなのでしょうが・・・
 また、こういうパニック映画には付きものの、サイド・ストーリーも幾つかちりばめられていますが、どれもこれも何となくわざとらしさが残ります。
 気になったのは、あれほど自分の職務に対する責任感の強い主人公(トミー・リー・ジョーンズ)が、自分の娘のためとなると、利己的な言動に走っていたこと。よく理解できない設定です。
 最大の問題は、最後にあのような絶望的な状況下で、主人公を含む3人が「何のアイディアもなく」無傷で助かってしまったこと。あれはいくらなんでもないでしょう。(-_-#)
(ビデオ)

1998.5.3 ディアボロス  ★★★★★

 原題は「The Devil's Advocate」で、「悪魔の弁護人」というところでしょうか。
 キアヌ・リーブスはこの映画に全力投球するために、大金を積まれた「スピード2」の出演依頼を断ったのだとか。
 フロリダに住む新進気鋭の無敗の弁護士(キアヌ・リーブス)が、ニューヨークで大きな法律事務所を経営している権力者(アル・パチーノ)に引き抜かれ、妻ともどもマンハッタンに引っ越します。そして、その後も難しい事件を担当させられるにもかかわらず、無敗記録を続けていくのですが、やがて彼の回りで奇怪なことが起こり始めます。
 人間は、虚栄心から真実をねじ曲げ、自分を失ってしまってはいけない、というのがこの映画のテーマだと思います。それを伝えるためにやや説教めいた部分があったりしますが、全編に漂う得も言われぬ不安感が、恐怖をじわじわと呼び起こし、話の展開にどんどん引き込まれていきます。また、物凄いSFXが要所に瞬間的に使われていて、ギョッとするほど効果的です。(¨;)
 最後の大どんでん返しは、やや安易と言えなくもないですが、これがないと後味が悪すぎになりますね。
 キアヌ・リーブスは、男が見ても惚れ惚れするようなキリリとしたいい男に今回は仕上がっています。
 アル・パチーノは、相変わらずオーバー・アクションですが、今回の役柄にはぴったりで大熱演。セリフもいやになるくらい長い。女性の無修正(?)映像も大サービス。(^_^;)
 エンドタイトルで、ザ・ローリング・ストーンズの「Paint It Black(黒くぬれ)」が流れて、納得です。
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1998.5.2 エイリアン4  ★★★★★

 誰もが「エイリアン3」の最後を観て、このシリーズも完結したな、と思ったことでしょう。それをリプリーのクローンを作るという、とんでもないアイディアで、エイリアン最新作を復活させました。拍手!
 「エイリアン」(1作目)を観て、従来の映画にない恐ろしさに度肝を抜かれたのが、今から約20年前。主人公リプリー役のシガニー・ウィーバーの顔に、小じわが目立つようになったのも無理はありませんね。
 期待どおり、しっかりのめり込んであっという間に1時間50分がたってしまいました。
毎回このシリーズは監督が替わっていますが、今回はジャン・ピエール・ジュネの作品で、彼の独特の暗い映像感覚は、このシリーズにぴったりです。ゴシック的な映像美に加えて、前後左右に飛び回る重厚なドルビー・ディジタル・サラウンド音響にも圧倒されました。
 宇宙ステーションからの脱出劇、エイリアンの攻撃手法、ロボットが絡むところ等は従来のシリーズと比較して、特に斬新というほどではないでしょう。新しもの、という点ではなんといっても新種のエイリアンの登場です。でもこれは私に言わせると、シリーズ上ではルール違反。従来のいわゆるエイリアンのイメージを、大きく損ねていると思います。冷酷無残で血も涙もないクリーチャーに、感情を表現する「眼」が付いていてはいけませんね。あれではまるで「ザ・フライ」です。
 ロン・パールマンドミニク・ピノンの存在感は相変わらず。ウィノナ・ライダーの役は誰でもいい、という感じ。
 あ、それからこの映画を観た後で、食事をするのは止めたほうがいいです。特にスパゲティなどは。(^_^;)
(劇場)

1998.4.30 陰謀のセオリー  ★★★★

 原題は「Conspiracy Theory」で、熟語的に世界に流布する様々な陰謀を指しているのだそうです。
 世界の大地震はNASAが起こしている、CIAがアメリカの一般市民を使ってLSDの実験を行っている、アメリカ政府がイランの反政府運動を扇動している、などなど。
 メル・ギブソンジュリア・ロバーツの共演ということで、随分期待して観ました。ストーリが良く練られたサスペンス作品だとは思いますが、残念ながら後半から終盤にかけてやや盛り上がりに欠けましたね。
 世界は陰謀に溢れていると吹聴してやまない、強迫観念症気味のタクシー・ドライバー(メル・ギブソン)が、何故か自分が身を守ってやらなければいけないと思い込んでいる司法省の女性弁護士(ジュリア・ロバーツ)ともども、やがて本当の陰謀に巻き込まれ、正体不明な組織から命を狙われていく、というお話です。
 何故、主人公が命を狙われるのか、中盤以降までなかなか明かされず、ややいらついてしまいました。もう少し種明かしを前にやっても良いと思いましたし、その種明かしもただ悪党に喋らせるのではなく、もう少し映像で見せるとか工夫してもらいたかったですね。
 また、終盤、主人公の告白を女性弁護士があっさり信じるのには、少々拍子抜け。もっと人は疑わなければいけません。(^_^;) 最後のどんでん返しは無かった方が良かったかも。
 ジュリア・ロバーツは、インテリっぽさが前面に出て、色気不足。メル・ギブソンは好演ながらもサイコっぽさでは、デ・ニーロニコルソンには負け。
 懐かしくも、「Can't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋している)」がこの映画のテーマ曲になっています。
(ビデオ)

1998.4.27 コン・エアー  ★★★★

 劇場公開時見逃してしまっていたので、見たいと思っていた作品です。やはりこういう映画は大画面で見るべきでした。内容的にも、まあまあ期待を裏切らないエンターテインメントに仕上がっていると思います。
 過失致死で服役中の主人公(ニコラス・ケイジ)が、仮釈放で故郷の家族の元へ飛行機で帰還するのですが、その飛行機が凶悪犯の護送用(これがコン・エアー)で、それが離陸後凶悪犯に乗っ取られることから事件が始まります。
 色々な特徴を持つ凶悪犯の登場時の描写などでは、ややこけ威し的で、仰々しさが鼻につく演出だなあ、とか、後半のプロットが説明不足で大味だなあ、とかありますが、製作者側の、いかにして観客を喜ばそうかとの努力の跡が良く解るので、それに免じて許すことにしましょう。(生意気な!m(_ _)m)
 それにしても主人公のアメリカ的正義感は度を超していて、おいおい、それはないんじゃないの、と思ったのは私だけだったでしょうか。解放されて、愛する家族に会えるチャンスを、服役仲間の黒人と女性護送官を救うためにみすみす潰すのですから・・・
 ニコラス・ケイジは珍しく長髪(かつらじゃないでしょうね)を振り乱しての大熱演。
 凶悪犯のリーダ格を演じたジョン・マルコビッチの個性は強烈です。私はこの人が「シークレット・サービス」(主演:C・イーストウッド)のサイコ的な犯人役を演じたのを見て以来、この人のファンになりました。
 途中から搭乗してくる「羊達の沈黙」のレクター博士もどきの連続殺人鬼は、ただ思わせぶりで結局何もせずじまいだったのですが、一体あれは何だったのでしょう。(?_?)
(ビデオ)