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2013.10.11 24 -TWENTY FOUR- ★★★★★

 言わずと知れたアメリカのテレビ映画の最大のヒット作。この作品のレンタルが開始され話題となっていた頃(2003年)、私は最初の1話を見て、これはヤバイとその後は見るのは止めました。何となれば、ずっと見続ける羽目に陥り、その他の単品映画を見る時間が無くなってしまうと思ったからです。
 この度、全8シーズン、リデンプションを含め、全194話(すなわち194時間、合計8日間強)を見続けてしまったのは、huluによる連続視聴が可能であったこともさることながら、とにかく面白くて止められないからなのでした(まあ、夜更かしも出来る環境になりましたし)。
 複数の出来事が24時間のリアルタイムで進行するというのがまずもっての特徴。メインテーマは、米国への他国からのテロ攻撃に対して、主人公ジャック・バウアーキーファー・サザーランド)が如何にそれらを防いで行くか、なのですが、米国大統領の苦渋の選択も描きながら、全く予想がつかない、一難去ってまた一難的な展開が、スピーディに繰り広げられます。
 主人公が、再三テロリストや参考人を強引に締め上げる拷問や、簡単に人が殺されてしまう描写には、眉をひそめる人もいることでしょう。まあ、これらもこの作品の特徴の一つなのですがね。
 登場人物も次から次へと変わり、名前と顔を覚えるのが大変なのですが、シーズン3から登場するクロエ・オブライエン(メアリー・リン・ライスカブ)が最後まで主人公を好意的にサポートし、その容貌とキャラクターと相俟ってすこぶる印象的です。シーズン8のクロエとジャックが遠隔映像で見つめ合うラスト・シーンには、泣かされました。
 オバマ大統領が現れる前に、シーズン1での大統領は黒人ですし、シーズン後半では女性大統領が現れるなど、その先見性も一つの特徴でしょう(ヒラリーがなるのかな?)。何よりも驚いたのが、最近の化学兵器を用いたシリア内戦に米国が軍事介入するや否やという状況にそっくりなお話がシーズン7前後に登場したこと。
 ウィキペディアによれば、2014年に新シリーズの「24: Live Another Day」(全12話)が放送予定とのことですの、これも見ないわけには行かなくなりそうです。
(hulu)

2013.10.05 ハングリー・ラビット ★★☆

 ロバート・デ・ニーロと同様、このニコラス・ケイジも最近は余り大作でない作品に出まくっている、という印象があります。本作もお金が殆どかかっていないB級サスペンスという感じ。一応、劇場公開作品ですけどね。
 普通の小市民である主人公(ニコラス・ケイジ)がある組織に関わったことで様々な危機にさらされる、というありがちなストーリーです。その組織の仕組みが本作の肝。有りそうで、そうでもないような微妙な設定ではあります。現実離れしていると思い込んだら、この手の映画は楽しめません。
 前半はやや退屈な感じですが、進行するに連れて引き込まれて行きます。ラストはホラーやサスペンス映画によくある常套手段。もう少し捻って欲しかった。まあ、2作目はあり得ないと思いますが・・・。
 ニコラス・ケイジの頭髪の後退は一時期よりも止まったように見えます(羨ましい)。妻役のジャニュアリー・ジョーンズは悪くはありませんが、もう少しメジャーな女優なら映画に厚みが出たかも。名優ガイ・ピアースを使っていながら、今一つ存在感が無いところも残念でした。
(BS-HV)

2013.09.24 ヒトラーの贋札 ★★★★★

 2007年のドイツ映画で、アカデミー賞の外国映画賞に輝いた作品です。以前見た記憶があったのですが、曖昧だったので取り敢えず鑑賞することに。あ、やっぱり見ていた・・・。当然細部の記憶が飛んでいるので、そのまま再度鑑賞です。
 第二次世界大戦中、ナチス・ドイツが大量の贋札製造を 行った「ベルンハルト作戦」を、強制的に贋札作りに従事させられたユダヤ系技術者の視点から描いた作品。こういったナチス、ホロコースト絡みの映画は「シ ンドラーのリスト」、「戦場のピアニスト」などの名作が多いのですが、本作品も秀逸な作品と思います。原作が贋札作りに従事させられた実在の人物、アドルフ・ブルガー自伝ですので尚更説得力があります。
 結果は分かっているとしてもスリリングな展開に終始し、どんどん引きつけられます。ラストで解放された技術者達が眼にする、壁の向こうに居たガリガリに 痩せて死人同然のユダヤ人の姿が、ナチスの悪魔のような残虐性を物語ります。こういったナチスの凶状をこれでもかと見せつける映画をドイツが制作をしたということに、ある意味感動を覚えます。
 序盤にサービスショットの1シーンがあるのも、ポイント高し・・・。
 準主役のアドルフ・ブルガーを演ずるのは、ドイツ出身の名優であるアウグスト・ディール。「イングロリアス・バスターズ」ではナチス将校を演じていましたが、これ以上ない位のはまり役でした。
(BS-HV)

2013.09.17 オズ はじまりの戦い ★★

 本作も流行の(?)「変な副題」を持つ作品の一つ。素直な日本語としては「戦いのはじまり」でしょ、なんてことを言うから年寄りは嫌われるのです。
 ジュディ・ガーランドの主演と彼女の歌う「虹の彼方に」で、余りにも有名な「オズの魔法使い」。本作はこの前日譚とのことで、「オズの魔法使い」で偉大なるオズとされていた彼が、いかにして誕生したかが描かれます。
 私は前日譚であると同時に、「オズの魔法使い」のリメイクであるとも感じました。序盤はモノクロ、途中で目にも鮮やかなフル・カラーに変わるところや、登場人物、キャラがオリジナルと同様の傾向にあるところなど。ただし、カカシ、ライオン、ブリキ人形は登場しません。その代わりに陶器の少女が活躍するのですが、これがまた何とも言えず可愛いキャラなのです。
 幻想的でカラフルな風景なども印象的ですが、何といっても見ものは姉妹の悪の魔女レイチェル・ワイズミラ・クニス)。特にミラ・クニスのインパクトは強烈です。こんな美女、他に何の映画に出ていた?とググると、「ザ・ウォーカー」や「ブラック・スワン」に出ていたようですが、とんと記憶にござりませぬ。第2のアンジーとも言われているとのことで、なるほど、です。彼女がオリジナルに出てきた「緑色の魔女」になるとは・・・(勿体ない)。善の魔女には今を時めくミシェル・ウィリアムズが扮しますが、前者2人比べると余りにも印象薄です。
 主人公のいかさま魔法使いに、ジェームズ・フランコ。ずる賢いペテン師と善人の二つの顔を巧く表現していると思います。「スパイダーマン」に出演していた彼が、こんなにもブレイクするとは思いませんでした。
 ディズニー映画ですから基本的には子供向けなのでしょうが、1939年(!)に制作された「オズの魔法使い」を見た人には、等しく楽しめる作品であると思います。
(BD)

2013.09.14 フライト 

 デンゼル・ワシントンがアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされた作品。オスカーは「リンカーン」のダニエル・デイ=ルイスに持って行かれましたが・・・。
 奇跡的なアクロバット飛行で緊急着陸をし、多くの人命を救った機長(デンゼル・ワシントン)は、実はアル中で飲酒操縦をしていた、と言うお話。航空サスペンスというより、ヒューマン・ドラマですね。
 まずは冒頭のサービスショットにビックリ。この程度はもう修正しないんですね。続く飛行機のトラブル・シーンはかなり戦慄的です。この映画は到底機内映画での放映は出来ませんね。ただ、何故背面飛行をしなければならなかったかが、よく分かりません。
 その後は少し展開のテンポが緩くなり、ひたすら主人公のアル中絡みのお話が描かれます。頭では止めようとしているのに体がそれを欲し、誘惑に負けてしまうという典型的なアル中の姿(うん、私はまだそこまで行っていないぞ)。
 裁判のシーンからラストにかけてはいかにもハリウッド映画的展開になりますが、やはりこう来なくては・・・。安息を得た主人公の顔が印象的です(当分禁酒になりますし・・・)。
 脇を固めるのはいずれも名優のドン・チードルジョン・グッドマン。特にグッドマンのハチャメチャ演技はスゴイ。何でも出来るのですね、この人は・・・。
 少し長い(138分)ので、中盤をもう少しカットすればまとまりが良くなったと思います。飲んだら飛ぶな、飛ぶなら飲むな・・・。
(BD)

2013.09.08 スタートレック イントゥ・ダークネス ★★☆

 前作の短評に、「続編も予定されているとのことですが、次は劇場の大画面で見たいと思っています」と記述しましたが、その約束どおり(?)劇場にて鑑賞しました。
 前作を見たのは4年前ですから、果たしてお話についていけるかどうか心配しましたが、大丈夫でした。本作を初めて見た人でも十分楽しめる構成になっています。まあ、あのトンガリ耳の男は何者?程度の疑問は湧くでしょうが・・・。
 主人公のクリス・パイン、トンガリ耳のザカリー・クイントゾーイ・サルダナ(アバターのモーション・キャプチャーをこなした人ね)などの配役は前作のままですが、悪役を演ずるベネディクト・カンバーバッチの起用が本作の肝のようです。このベネちゃん、随分人気者なんですね。来日した際の映像を見たのですが、もう女の子がキャー、キャー。先日見た「裏切りのサーカス」では余りどうってことは無いと思ったのですが、確かに本作ではオーラが違うように見えます。主人公のクリスは相変わらず猪突猛進ですが、それに水を差す冷めたトンガリ耳のセリフが面白く、笑わせます。
 お話は前作に比べて分かりやすく、私のような頭でも十分理解出来ました。終始見せ場が続いて、ダレる暇がありません。一般的に第2作目は駄作となることが多いのですが、本作は例外のようです。ただし、「コア」を足で蹴って直したり(オイオイ)、致死量の放射能を浴びた人間が血清で蘇ったりなど、ご都合主義も目立ちます。
 3D作品なのですが、私は画面が暗くなるのが嫌なので、2Dで鑑賞。また、「マン・オブ・スティール」とどちらを見ようか少し迷ったのですが、これを選んで正解でした。まさに正統的なSF作品で、大満足です。
(劇場)

2013.09.05 ジャンゴ 繋がれざる者 ★★☆

「イングロリアス・バスターズ」に続くクエンティン・タランティーノ監督作品。マカロニ・ウェスタンへのオマージュ作品で、冒頭から「続・荒野の用心棒」のテーマ曲である「ジャンゴ〜!」が流れます。懐かしくて涙が出そう。
 舞台は南北戦争より2年前、つまり奴隷制度で黒人が虐げられまくっている時代です。ドイツ人の賞金稼ぎ(クリストフ・ヴァルツ)と彼に解放されたジャンゴと名乗る黒人(ジェイミー・フォックス)がタッグを組んで、黒人の妻を奴隷としている大金持ち(レオナルド・ディカプリオ)から彼女を奪う、というお話で単純明快そのもの。いいですね、こういうの。頭を空っぽにして見ることが出来ます。
 タランティーノらしく、銃が火を噴き、ダイナマイトが爆発し、血しぶきが飛び交いますが、痛快、痛快。黒人をニガーと蔑む白人がことごとく殺られます。男女を問わず・・・。とんでもなご都合主義は、ご愛嬌でしょう。
 途中で「続・荒野の用心棒」の主人公、すなわちジャンゴを演じたフランコ・ネロがカメオ出演しますが、名前を尋ねられた黒人の「DJANGO、Dはサイレント」のセリフに対して「そんなこと知ってらい」とネロが言うくだりが最高です。例によってタランティーノも顔を少し出しますが、潔くすぐに消えます。
 レオ様が珍しく悪役を演じていますが、流石に巧い。ただし、セリフが冗長で少し弛れました。惜しいのはクリストフ・ヴァルツ演ずるドイツ人が終盤で姿を消すと、とたんにテンションが下がってしまうこと。最後まで居て欲しかった。彼は本作品で「イングロリアス・バスターズ」に続く助演男優賞の2つ目のオスカーを獲得しました。とにかく素晴らしい。彼を主人公に仕立てても良かったと思います。あと、サミュエル・L・ジャクソンの怪演にも要注目です。
(BD)

2013.09.02 ゼロ・ダーク・サーティ ★★★☆

 本作は劇場公開されたら必ず観ようと思っていたのですが、丁度その頃(2013年2月中旬)体調を崩していて行かずじまいでした。早くもレンタルが開始されたので、早速の鑑賞です。
 CIAの女性分析官を中心とした綿密な追跡による、オサマ・ビンラディン暗殺までを描いたもの。タイトルは、ビンラディン宅を襲撃した午前0時30分のことを指すのだそうな。当事者の聞き取り調査を入念に行って制作したとのことですので、余り脚色は無いものとして観てみましょう。
 序盤は延々と拷問シーンが続きます。うん、多分あんな程度ではないだろうな、と(「24」の観過ぎか?)。一連の地道な追跡調査を経てようやく手がかり を掴み、精鋭部隊の突入でクライマックスを迎えます。予想どおり、エンタメ性を排したドキュメンタリー・タッチの作風ですから途中はややだれますが、何と 言っても例の屋敷の襲撃作戦が待っているのですから、我慢、我慢。
 それにしても、襲撃時、子供達の前で彼らの父母を問答無用で射殺してしまうのは、いかがなものかと。ラストのビンラディン殺害で、米国人はカタルシスを 感じるのでしょうか。何となく虚しく思うのは、9.11の報復は出来たとしても、テロが解決された訳でもなく、その後もまた繰り返されるのは目に見えてい るから・・・。
 女性分析官を演じたジェシカ・チャステインは、「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」の憎まれ役とはだいぶ異なる印象です。まあ、好演していますが、彼女を始めとして余りメジャーなキャストが使われていないので、全体的に地味な印象は免れません。まあ、この映画ならそれも良いのでしょう。
 アカデミー賞では主演女優賞ほか全5部門でノミネートされましたが、オスカーをとれたのは音響編集賞のみでした(って、これ嬉しくないだろうな・・・)。
(BD)

2013.08.30 裏切りのサーカス ★★

 ここでのサーカスとはイギリス諜報機関のこと。東西冷戦時代にソ連のKGBとの水面下の諜報活動を描いたもので、サーカスに古くから潜むソ連の二重スパイを炙り出す、というもの。原作は「ナイロビの蜂」(これは名作)などのジョン・ル・カレの小説とのことです。
 いや〜、とにかく解りにくいの一言。一度途中で見るのを諦めて、数日後、気を取り直してようやく見終えた位ですから。登場人物が多くて名前が混乱し、また状況描写もかなり説明不足。一見無関係なショットから次のシーンにいきなり入るなど、演出は巧いとは思いますが、とにかく私には難解。  
 おおよそのストーリーは把握出来たと思いますが、細かい伏線の回収などは殆ど分かっていないような気がします。原作を読んでいることが前提の映画でしょうか。あるいはDVDを買って何回も視聴させる策略とか・・・。
 同じイギリスの諜報員である007とは違って、派手なアクションシーンは皆無です。静かに、そして曰く有りげに物事が進行します。この雰囲気は悪くはありませんが、付いてこれない者は付いてこなくていいよ、とも感じられます。
 登場人物は、ゲイリー・オールドマンコリン・ファースジョン・ハートマーク・ストロングなど名優揃い。物静かな演技と相俟って、いずれも渋さが光ります。特にゲイリー・オールドマンは、「レオン」、「エアフォース・ワン」のクレイジーな悪者とは同一人物とは思えません。今をときめくベネディクト・カンバーバッチが出演していますが、そんなに良いかな〜(頭でかいし)。
 いずれにしても、一回で楽しめない映画は私としてはマイナス評価です。それにオールドマンは何であんな汚い池(?)で泳いでいるのだ?
(BS-HV)

2013.08.22 マリリン 7日間の恋 ★★★

 マリリン・モンローと言えば、私が小さい頃、モンローのを報じている新聞を見て、ひどく驚き、落胆していた兄の姿を思い出します。私にとっては、単にお尻の大きい女優という程度の認識しかありませんでしたから・・・。
 モンローは演技派に脱皮する時期にイギリスに渡り、ローレンス・オリヴィエが監督・主演する映画、「王子と踊り子」に出演します。本作はその撮影期間での彼女にまつわるあれこれを描いたもの。「王子と踊り子」に助監督として採用された青年、コリン・クラーク回顧録が原作であり、実話に基づくものとされています。
 彼女のオリヴィエとの演技を巡っての衝突と、クラークとの淡い恋(副 題どおり)が中心に描かれます。モンローが如何に魅力的で皆に愛されたスーパースターであったか、反面、如何に情緒不安定でわがままであったかも・・・。 個人の回顧録であり、実際にあのような恋の顛末があったのかどうか誰も知る由はないので、そこは割り引いて(あるいは、足して)観た方が良いように思いま す。
 ミシェル・ウィリアムズは余りモンローに似ていないと思いますが、アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされただけあって、雰囲気、体型などは申し分ないと思います(明らかにモンローより*スですが)。クラークを演ずるエディ・レッドメインは、「レ・ミゼラブル」でのマリウス役でもそうでしたが、オーラ不足は否めません。エマ・ワトソンは「ハリー・ポッター」以外で初めて見ましたが、今後大ブレイクするかどうか、微妙だと思いました(ギスギスし過ぎ)。
(BS-HV)

2013.08.13 アーティスト ★★☆

 2012年のアカデミー賞で、10部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、主演男優賞を含む5部門でオスカーを取った作品です。何が驚いたかって、1930年代のハリウッドのサイレント映画を題材としているのに、れっきとしたフランス映画であること。ただし、流石に字幕(無声映画のね)は英語です。
 本作はモノクロで無声映画の体裁を採っていますが、途中や終盤では音声が入る、というやや中途半端な展開。まあ、逆にそれで救われた感じもあったり・・・。
  サイレント映画の大スターがトーキー時代となって凋落して行くも、逆に大スターとなって行く女性の愛を受けて復活するという、予定調和(詰まらないとも言 う)のストーリー。モノクロ映画を見たのは「シンドラーのリスト」以来ですが、更に無声で大げさな身振り手振りの演技に、所々字幕が入るというのは、最初 のうちは新鮮には写ります。ラストの2人のタップダンスは素晴らしい。
 主演のジャン・デュジャルダンが流石の演技。ヒロインのベレニス・ベジョは私としてはイマイチですが、夫が本作の監督のミシェル・アザナヴィシウス。監督は自分の女房を使いたがるんだよね・・・。
 本作はアイディアの勝利なのでしょうが、反面あざとさも免れません。今やモノクロ、無声映画は見ていて私は少なからずフラストレーションが溜まります。こういう映画は当分見なくていいな・・・。
(BS-HV)

2013.07.29 終戦のエンペラー ★★★☆

 果たして日本国天皇に太平洋戦争の責任はあったのか?を問うた作品。日米合作のハリウッド映画ですが、制作は奈良橋陽子という、劇中にも登場する天皇の側近である関屋貞三郎にあたる人物。第2次世界大戦の天皇の責任などというこれまでタブー視されていた史実を初めてテーマに取り上げた、ということで注目すべき映画と言えるのではないでしょうか?
 奈良橋が祖父から聞いていたお話に基づいているとのことなので、大方は事実なのでしょう。ただしハリウッド映画ですからフィクション部分は当然あって、実在のフェラーズ准将と架空の日本人女性との恋愛がサイドストーリーとして語られます。
 序盤の見せ場はやはりマッカーサー元帥厚木飛行場に降り立つ場面。演ずるトミー・リー・ジョーンズは余りマッカーサーには似ていないと思いますが、貫禄は十分です。
 結論が分かり切っているお話ではありますが、流石にハリウッド映画、そこそこサスペンスフルに仕上げています。マッカーサーは大統領を狙っていたこともあり、まああの結論しか無かったということは大いに理解出来ます。
 これまでの映画やドラマでは、日本国天皇は後ろ姿程度しか見えなかったのが、本作では堂々とお顔が現れるだけでなく、お話もされます。演ずる片岡孝太郎も随分緊張したのではないかな。皇居ロケが許されたということなので、宮内庁も了承済みなのでしょうね。
 主人公フェラーズを演ずるのは、「LOST」の大ヒーロー、マシュー・フォックスだったのは私としては嬉しい限り。日本人女性、アヤには、出来ればもう少し美形を当てて欲しかった・・・。
 当然ながら観客は私も含めて年配者が多く、上映中に携帯電話が鳴ったり、咳き込んだり、途中でトイレに行ったり・・・。
(劇場)

2013.07.19 ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜 ★★★★

 2012年のアカデミー賞で作品賞主演女優賞ヴィオラ・デイヴィス)、助演女優賞オクタヴィア・スペンサージェシカ・チャステイン)にノミネートされた話題作。一つの作品で助演女優賞に2人もノミネートされるのは、珍しいのではないかな。ただし、オスカーを手にしたのはオクタヴィア・スペンサーのみ。
 実話に基づくお話で、原作、本作品とも本国で大ヒットしたのだそうな。ここでの「ヘルプ(The Help)」というのは、黒人のメイドのことで、ザ・ビートルズには関係ありません(^_^;)。1960年代のアメリカ南部のミシシッピーを舞台に、差別を受けるヘルプらとそれらの実態を公にしようと奔走する白人女性とのつながりの物語。
 黒人差別を扱った映画はごまんとあると思いますが、本作品は登場人物が殆ど女性ばかりで、終始女性の視点でそれほど悲惨ではなくむしろユーモアを盛り込んで描かれています。まあ、当時の実情はこんなものだったのでしょう(今でもかも)。
 主演のヴィオラ・デイヴィスも好演していると思いますが、どんぐりまなこのオクタヴィア・スペンサーの存在感は強烈です。ジェシカ・チャステインもノミネートされるだけあって、憎まれ役を好演していますが、少し損な役柄ですね。一番涙腺を刺激されたのは、白人女性(エマ・ストーン)を小さい頃から育ててくれた老メイド(シシリー・タイソン)のエピソード。後で分かったのですが、何とシシリー・タイソンはマイルス・ディビス元妻で、アルバム「Sorcerer」の写真の人だったのでした。
 感動的な如何にも映画らしい映画ですが、146分という尺はちと長過ぎます。
(BS-HV)

2013.07.13 ダイ・ハード/ラスト・デイ ★★★

 ダイ・ハード・シリーズの第5作目。例え愚策であっても、ダイ・ハード・シリーズと知って見ないわけには行かないのは、第1作目が余りにも素晴らしかったから。
 その第1作目から24年も経ち、世界一ツイていない男、ジョン・マクレーンを演ずるブルース・ウィリスもとうに髪の毛は抜け落ち、すっかり老いてしまいました。前作同様、ブルース1人ではもたないので、本作では実の息子(ジェイ・コートニー)とタッグを組みます。
 舞台はモスクワで、終盤ではあのチェルノブイリで怒涛のアクションが展開されます。前半の、意味なく車がドンドン壊れていく凄まじいカーチェイスが見ものなのでしょうが、それほどインパクトが感じられないのは、もはやこういう映像に頭が麻痺しているのか・・・。高いビルから窓を蹴破って落下する、などというのも、ダイ・ハード(中々死なない)というよりも、単なるご都合主義としか映らなくなっています。終盤のヘリコプター・シーンは流石に、おお!と思わせてくれますが、特典映像によれば殆どCGによるもの。人物以外は何も要らないのですね。
 どなたかによれば、チェルノブイリはロシアではなく、今はウクライナで あり、どうやって国境を越えた?などというご指摘もありました。なるほどね。それよりも今の時期、チェルノブイリを取り上げるのはどうかと思いますし、更には放射能の中和剤などという夢の様な代物も出てくる始末。科学的考証などはすっ飛んでいます(日本への思いやりも)。
 流石にこれがシリーズ最後の作品でしょう。これ以上延ばすのは、第1作に失礼というものです。
(BD)

2013.07.12 クラウドアトラス ★★☆

 監督が「マトリックス」のウォシャウスキー弟(兄が性転換したので、兄弟ではない)ということで、注目していました。時代も場所も異なる全部で6つのお話が並行して描かれていく、という作品です。だからと言って群像劇とは少し違うような・・・。
 1840年台のお話から、2144年の未来のお話まで、脈絡無く切り替わって描かれます。最初はどれがどの話なのか混乱しますが、見ているうちに次第に(何となく)分かってくるという塩梅。一応時系列どおりに描かれるのが、せめての救いかも知れません。
 冒頭、トム・ハンクス演 ずる老人(最初はトムと気が付かなかった)が思わせぶりに「最後は一つにまとまる」などと宣いますが、6つのお話は個々にエンディングを迎えても、それら が一つに収束なんぞはしてないと思います。もっと注意深く見ていれば共通点を見いだせるのかも知れませんが、何せトム・ハンクス、ハル・ベリージム・ブロードベントヒューゴ・ウィーヴィングヒュー・グラントスーザン・サランドンなどが、6つのお話にそれぞれメイクを変えて一人何役ででも登場するので、どうしてもそちらに興味が向いてしまいます。トムやハルはどうメイクしても分かりますが、どう見ても誰か分からない人物も少なくありません。それらはエンド・ロールで明かされるので、あっと驚いてしまいます。一番の驚きは、韓国出身のペ・ドゥナが変身した白人女性メキシコ女性。このメイクは凄い・・・。
 かなり実験的作品と思いますが、果たして製作者側の意図が成功したかどうかは疑問です。へたすれば、「何が何だか分かんな〜い、変身だけが面白〜い」としか言われかねません。
(BD)

2013.07.08 ラヴ・ネヴァー・ダイズ ★★★★☆

 何とあの「オペラ座の怪人」に続編があったのです。アンドリュー・ロイド=ウェバーの制作・作曲ですから、決してまがい物ではなく、れっきとした「オペラ座の怪人2」です。ですから当然、ファントム、クリスティーヌ、ラウルが登場します。マダム・ジリーとその娘のメグまでも。本作はオーストラリアのメルボルンでの舞台公演を映像化したもので、劇場公開用映画ではありません。
 舞台はパリではなく、アメリカのブルックリン。しかもあれから10年後の設定です。ストーリーはまあ陳腐なものと言わざるを得ませんし、え?ファントムとクリスティーヌってそんな間だったの?とか、ラウルが堕落し過ぎだろう、などの違和感も感じられます。
 しかしそれを補って余りある楽曲と映像です。ロイド=ウェバーの曲作りはやはり巧いですね。「オペラ座の怪人」での挿入曲をさり気なく用いて、併せて新たに魅力的なフレーズの曲を書き上げています。代表曲は冒頭ファントムが熱唱する「Til I Hear You Sing」でしょう。心に染み入るメロディーで、繰り返し聴きたくなる名曲です。
 ロンドンでのオリジナル・キャストは「25周年記念公演」と同じく、ファントムにラミン・カリムルー、クリスティーヌにシエラ・ボーゲスだったとのことですが、ここでは別のキャストとなっています。ここでのファントム役(ベン・ルイス)やクリスティーヌ役(アンナ・オバーン、あんなお婆ーん?)も悪くありませんが、歌唱力をラミンとシエラと較べてしまうとその差は歴然。ただ、ベンは長身で美形なので、ファントムとして見栄えがします。
 コニーアイランドにあるサーカス小屋がベースとなっているので、古風で華やかなショーも楽しめます。やや猥雑な感じがしますが、これはわざとそうしているのでしょう。
 失敗作との評も少なくないようですが、私は十分楽しめました。
(BD)

2013.06.27 デンジャラス・ラン ★★★☆

 原題は「SAFE HOUSE」で、世界各地にあるCIAの「隠れ家」を指しているとのこと。元CIAのエージェントの重要危険人物と現役CIA社員が一旦その隠れ家に入るも、謎のグループに襲撃され命からがら共に逃走するという展開です。邦題はその原題を皮肉って、その対極であるということを表しているのですな、これは。
 興味の的はデンゼル・ワシントン演ずる元CIAの男は何をしたのか、しているのか、また彼を襲う一味は何なのか、ということ。暗めのざらついた映像で終始し、スリリングな追跡劇を助長しています。この緊迫感はかなりのもの(心臓に悪いかも)。
 CIAの内幕を暴くというネタは使い古された感が無きにしもあらずですが、迫力に満ちたプロットで押し切っており、最後まで飽きさせません。現役CIA社員にその男が「上司に後は任せろと言われたら、責任をなすりつけられるぞ」と忠告しますが、それが最後で強烈なオチとなるのも面白い。ただ、結末が少し安易かも。あんなことをすれば彼に追及の手が伸びて、ただでは済まないでしょうに。
 現役CIA社員を演ずるライアン・レイノルズはやや重みに欠け、ミスキャストかも。減点要素だな。女上司のヴェラ・ファーミガは、こんな役でもフェロモンむんむんですが、残念な退場でした。
 それにしてもデンゼル・ワシントンの演技の重厚さは素晴らしい。わたしゃ、髪の毛が短い方が好きですけどね。
(BS-HV)

2013.06.19 華麗なるギャツビー ★★☆

 先日某テレビ番組で取り上げられているのを見て、俄然見たくなり、いつものシネコンに足を運びました。有名な本作ですが、私は1974年のロバート・レッドフォード主演のものも未見でした。
 不安だったのが、監督がバズ・ラーマンであったこと。彼が監督した「ロミオとジュリエット」は余りにも原作とのイメージが違いすぎて、私としては珍しく途中で見るのを止めたほどでした(レンタル料、損した)。
 原作はF・スコット・フィッツジェラルドの「グレイト・ギャツビー」で、名作なのだそうな。好景気でどんちゃん騒ぎする1920年代のアメリカが舞台。ニューヨーク郊外の大豪邸で夜な夜な豪華なパーティを開いているのは、ジェイ・ギャツビーという謎めいた男。彼は何故そんなことをしているのか?というのが本作の肝。
 アカデミー賞で衣裳デザイン賞の オスカーを獲得しただけあって、パーティ場面を始め、女性陣の衣装は豪華絢爛雨あられ・・・。ストーリーとしては人妻との叶わぬ悲恋を描いたもので、そう 特筆するような物語とは思えないのですが、原作とは違うのでしょうか?。あんなに大富豪であれば、何も人妻に拘らなくとも入れ食いでしょうに・・・。
 相変わらずレオナルド・ディカプリオはトッチャン坊から抜け切っていないし、狂言回し役のトビー・マグワイアは相変わらずヘラヘラしているし、ギャツビーが命をかける人妻役のキャリー・マリガンは、それほど魅力的では無いし・・・。
 前夜寝不足ということもあって、途中で少しウトウト・・・。
(劇場)

2013.06.18 人生の特等席 ★★★★☆

 「グラン・トリノ」を最後に俳優業を辞めると宣言していたクリント・イーストウッドが、それを翻して主演した作品。ただし、監督は彼ではなく、これまで多くのイーストウッド監督作品の副監督などを務めてきたロバート・ロレンツで、初の監督作品になるとのこと。劇場で観たいと思っていたのですが、見逃していました。
 メジャーリーグの老スカウトマンである主人公(イーストウッド)は寄る年波に勝てず、視力を始めあちこちに支障が出ています。その一人娘(エイミー・アダムス)はある理由で彼と疎遠になっていたのですが、父親の体の状態を知り、彼をサポートするために一緒にスカウトの旅に出て行く、と言うお話。
 冒頭から終始、イーストウッドの年寄りネタで笑わされます(てゆーか、大いに身につまされます)。キャラは「グラン・トリノ」の延長線で、頑固一徹そのもの。ただ、イーストウッドは悲しくも老け過ぎましたね。特に首周りのシワ・・・(言えた義理ではありませんが)。フラッシュバック・シーンに若い頃の映画の1シーンを使うことことが出来るのも、彼ならばのこと。
 終盤のまとめ方がやや強引な気もしますが、とても嬉しい展開になり、拍手喝采を贈りたくなります。憎まれ役は一見して分かり、調子に乗った彼らが最後にしっぺ返しを食らうという展開で、いかにも映画らしい映画と言えます。
 原題は「TROUBLE WITH THE CURVE(カーブの災い?)」で、THE CURVEは野球のカーブボールと更に別の意味(ごまかし、策略)も含んでいるのだろうとのこと。邦題については、娘ののセリフで、「厳しいスカウトマン生活も特等席だ」などと出てきます。
 脇を固めるのは名優ジョン・グッドマン。そしてロバート・パトリック。「T2」での液体金属男も随分と老けてしまいました。娘の恋人役であるジャスティン・ティンバーレイクはどこかで見た顔だと思っていたら、SFサスペンス「TIME/タイム」の主人公役でした。シンガーソングライターでもあるのだそうな。
 とても良い作品に感謝、感謝ですが、これがイーストウッドの最後の出演作品とならないことを祈るばかりです・・・(無理かな)。
(BD)

2013.06.16 レッド・ライト ★★☆

 ロバート・デ・ニーロシガーニー・ウィーヴァー。 デ・ニーロは昨今は大作以外にも多く出演しているとは言え、ハズレがないという安心感が何となくあります。シガーニー・ウィーヴァーは「エイリアン」時代 からの大ファン。まあ年齢がほぼ同じということもあり、親近感(?)を覚えます。その2人が共演するというのですから、観ないわけには行きません。
 伝説的な超能力者(デ・ニーロ)とそのイカサマを見破ろうとする2人の科学者(ウィーヴァーとキリアン・マーフィ)の対決を描いたもの。序盤の超常現象をイカサマと見抜いていく2つのエピソードが面白い。うん、まあこんなところだろうなと。中盤以降のデ・ニーロとの対決となると、途端にシリアスになっていきます。
 まあとにかく、デ・ニーロの貫禄が凄いこと。余裕の演技です。ウィーヴァーは悲しいかな、観る度に老婆化していて可哀想。その上、途中退場とは何事か・・・。
 私が見る限り悪人役の方が多いキリアン・マーフィも熱演しています。そして彼が熱演しいている訳が、最後の最後で分かるという仕掛けです。後から伏線が散りばめられたということを気付かされます。
 超常現象の殆どがインチキというようなお話は私は大好きで、その手の本を何冊か読んでいますが、この結末はどうでしょう?まあ、こうでないと映画にならないというのも分かりますが・・・。
(BD)

2013.06.13 ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 ★★★☆

 第85回アカデミー賞で、監督賞アン・リー)を始め、撮影賞、作曲賞、視覚効果賞の4冠に輝いた本作。久しぶりにApple TVでの鑑賞です。
 原作はベストセラー小説とのことですが、ストーリーとしては「インド人少年が獰猛なベンガルトラと一緒に漂流するお話」で、食うか食われるかの厳しい状況描写はありますが、極めて単純な展開のように終盤までは思えます。ただし、ラストでそんなに単純なお話ではないことに気付かされます。どちらが本当なのか、その判断を観客に完全に委ねているところが本作の肝でしょう。オランウータンが母親で、ハイエナはコックだったのか?では、トラは誰?などと。
 映像は視覚効果賞に輝いただけあって、全編美しくも幻想的。まあ、これ見よがし的なところも無きにしもあらずですが・・・。「アバター」からの影響もあるのではないかな。3Dで鑑賞することを前提としているようですが、2Dでもクジラのジャンプなど、その迫力は十分伝わってきます。
 ベンガルトラを始めとして、登場する動物たちは全てCGなのだそうな。もはや実写より楽なのでしょうね。途中でたどり着く無人島のミーアキャットの数に呆然。あんたら何を食って生きているのだ?
 ジェラール・ドパルデュー御大をあんなちょい役で使ったのは何故? 少年時代と成人後の主人公であんなにギャップがあるのは何故?
(Apple TV)

2013.05.31 オブリビオン ★★★

 トム・クルーズが来日し、戸田奈津子を引き連れて大々的に宣伝していた本作。予告編などからも久々のSF大作であろうと(勝手に思って)、封切り初日にいつものシネコンに向かいます。相変わらずガラガラであることは置いといて・・・。
 来日したトムが、是非2回見て欲しい、と言っていましたが、真意が分かりました。前半に較べて後半のストーリー展開が速すぎて、とても分かりにくいのです。モーガン・フリーマン御大が真相をセリフで言ったはずなのですが、私は聞き逃したか、理解できなかったようです。見終えてあれこれ考えて、ようやく大筋が分かったような・・・。でも8割位しか理解出来ていないかも・・・。
 人物以外はオールCGであろう映像はそれなりに美しく見栄えが良いのですが、過去のSF作品(「マトリックス」、「SW」、「2001年宇宙の旅」など)の既視感が一杯で、斬新なところがありません。まあ、それら作品へのオマージュということなのかも知れませんが。
 中盤のシーンで流れるプロコル・ハルムの「青い影」で救われましたよ。
 ラストは何ともハリウッド映画らしい終わり方ですが、3歳の娘が出来るような状況でしたっけ?いつ?
 ヒロインは「007/慰めの報酬」でブレイクしたオルガ・キュリレンコですが、どうもこの人は無表情で演技が固く、私は余り好きではありません。むしろもう1人のパートナーのアンドレア・ライズブローの透明感溢れる雰囲気を好みます。って、私の好みはどうでもよいか・・・。
 本編開始前に「アフター・アース」という類似のSF映画の予告編が流れていましたが、ウィル・スミス親子の出演なので多分私はパスです。
(劇場)

2013.05.29 メン・イン・ブラック3 ★★☆

 人気SFコメディのシリーズ第3弾。何と2作目から10年も経っています。
 白人(トミー・リー・ジョーンズ)と黒人(ウィル・スミス)のチグハグ・コンビが活躍するというパターンも、さすがにジョーンズが歳を取り過ぎて(66歳)辛かったらしく、過去にタイムスリップして若いジョーンズ役(ジョシュ・ブローリン)とスミスが極悪エイリアンと戦うという構成になっています。うまく考えたね。
 しかし、2作目で既に1作目の特徴であった「周りはみんなエイリアン状態」とか「記憶消去装置ネ タ」などが余りインパクトが無くなっていましたが、本作では更にそれが顕著です。特にギョッとするようなエイリアンが余り登場しないというのは、このシ リーズとしては寂しい限りです。ジョーンズが現実には居ないというタイムパラドックスも分かりにくいし、2作目のような超セクシー・エイリアンが登場しな いのも物足りない。
 ただ、若きジョーンズ役のジョシュ・ブローリンは雰囲気が似ていて、まあ合格点。エマ・トンプソン姉御もはじけた演技で頑張っています。
 ドタバタに終始する本作も、ラストでスミスのルーツが明かされて、ややシンミリとさせられるという寸法です。しかし、4作目はもう辛いね。
(BS-HV)

2013.05.21 マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 ★★★

 まあ、あのメリル・ストリープですから、サッチャーに激似の成り切り演技が見られるのだろうな、という期待とともに鑑賞。
 映画は86歳の晩年(87歳で逝去)の生活ぶりからスタートします。頬かむりした老婆がよたよたと歩いて買い物をしたり(それらしき体型を見よ)、亡くなった夫の幻影とお喋りをしたり・・・。その後は終始、現在と過去の時系列が交錯されて描かれますが、やや鬱陶しいし、分かりにくい。
 若いマーガレットが如何にして上り詰めたのかをあっさりと描写し、動機、背景の深堀りが殆ど無いの ももの足りません。バランス的に認知症の症状が出まくりの現在のシーンに多くの時間を費やしているので、女性として初めて英国首相になった人物のサクセ ス・ストーリーという感じはなく、むしろ衰えた晩年の老婆の悲哀ばかりをを感じさせてしまうという塩梅。鉄の女(「THE IRONLADY」)という印象は余りありません。果たしてこれが製作者の意図だったのでしょうか。
 メリル・ストリープは本作で主演女優賞のオスカーを獲得しただけあって、もう完璧の演技と言ってよいと思います。ある角度によっては、本人そのもの。でも、単なるソックリ・ショーだけで終わってはいけないでしょう、こういう映画は・・・。
 エンドロールにJ.S.バッハのプレリュード1番が流れて、何かとても救われた気持ちになったことでした。
(BS-HV)

2013.05.20 エクスペンダブルズ2 ★★★

 主役級のアクション・スターが多数勢揃いして(殆どそれだけで)驚かせてくれた「エクスペンダブルズ」(消耗品軍団)の第2作目。今回もシルヴェスター・スタローンが主演して、前作では顔見世的だったアーノルド・シュワルツェネッガーブルース・ウィリスがストーリーにそこそこ絡み、ジェイソン・ステイサムジェット・リードルフ・ラングレンが引き続き登場します。更には新たにチャック・ノリスジャン=クロード・ヴァン・ダムを起用し、どうだ、参ったか!とでも製作者は言いたいようです。ただし、今回は何故かミッキー・ロークは欠場。
 ハチャメチャなツカミがあって本題に入りますが、そのストーリー自体は極めて単純です。相変わらずの半端ない火薬の量を使ったドンパチが繰り広げられますが、まあとにかくご都合主義ここに極まれり、という感じです。行き詰まった展開では必ず唐突に救いの主が現れますし、味方チームは弾が当たるどころか、かすりもしない、とか、飛行機がクラッシュしても全員無事、等々。
 シュワちゃんに向かって「溶鉱炉で溶かすぞ」と言ったり、シュワちゃんが「アイル・ビー・バック」と言うと「戻らなくても良いからここにいろ」と言ったり、スターローンに向かって「ボクシングを少し習ったら」と言ったりなど、他作品からの小ネタも色々用意されています。ややわざとらしいけど・・・。
 紅一点でユー・ナンなる中国系女優が加わっていますが、役割がよく分からない上に華(色気)もなくてミス・キャスト、と私は思います。
 とにかく、スターローン、シュワちゃん、ウィリスの3人が同一カットに収まっているシーンをひたすら愛でる映画です。でも、そろそろお腹いっぱいかも・・・。
(BD)

2013.05.16 最強のふたり ★★★

 フランス映画としては「アメリ」を越す大ヒット、3ヶ月以上のロング・ラン公開、実話に基づく映画、東京国際映画賞でグランプリを獲得、ハリウッド・リメイクが決定、など話題に事欠かない本作品です。どんなんかなぁ、とレンタルして見ることに。
 首から下が麻痺した大富豪の男と、スラム出身の黒人の介護人との立場を越えた友情物語、と言ったところでしょうか。見ながらすぐ思い出したのが「ドライビングMissデイジー」。あちらは何かしっとりしたストーリー展開でしたが、本作の方はあっさりと明るいコメディ仕立てとなっています。結構下ネタも多かったり。
 二人の俳優(フランソワ・クリュゼオマール・シー) も巧いし、感動的なお話であることは間違いないと思いますが、冒頭書いたようなお化け映画になる作品かと言うと、少し違うような気がします。行列の出来る ラーメン店が、口コミなどで行列が絶えなくなっているけど、実は隣のお店と味は変わらない、という現象に似ているのではないかな・・・。
 それに邦題がしっくりきませんね。原題は「触れ合えない人々」と言う意味らしいのですが、最強なのは二人ではなくてその「絆」なのですよね。ラスト・クレジットに実際の二人がチラリと写されます。あれ、介護人は黒人では無い・・・。
 それにしてもこんなに評判の良い映画を、まあ普通程度の映画、としか思えない私はやはりどこかおかしくなっているのでしょうか・・・。
(BD)

2013.05.14 ホビット 思いがけない冒険 ★★★☆

 センスの悪い副題との印象が強かったこの映画、ついこの間まで劇場公開されていたと思っていたら、もうレンタル開始となりました。
 「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンが、再びトールキンの原作を取り上げた新3部作の第1作目。時代は「LOTR」から60年前に遡って、フロドの叔父であるビルボが主役となります。まあ、時系列が逆転して映画公開されるのは「スター・ウォーズ」シリーズと同じですね。
 イアン・マッケランヒューゴ・ウィーヴィングケイト・ブランシェットなど、同じ配役も少なくありませんし、例のゴラムの他、奇抜なクリーチャーもワラワラと登場し、ジェットコースター的アクションを楽しませてくれるなど、雰囲気としては「LOTR」とおんなじって感じ・・・。
  しかし、VFXとしてのスケールは一段とダイナミックになっていて、映像だけでも一見の価値はあると思います。劇場の大画面で見るべきでしょうね。それに しても、序盤のホビットの家にドワーフの面々が集まるシーンは冗長そのもの。第一、何故あんなに多くの食料を買いこんでおくのだ?
 当然ですが、「LOTR」と同じ配役の人々が老け込んでいるのは気になります。特にクリストファー・リーなどは殆ど死神・・・。最大の問題は、主人公のホビットを演ずるマーティン・フリーマンキャラがたっていないこと。41歳ですから老け顔で当然ですが、この手のファンタジーであれは無いでしょう。
 とは言いつつ、2作目、3作目もダラダラと見ることになるような気がします。
 原題が「THE HOBBIT: AN UNEXPECTED JOURNEY」ですから、「思いがけない冒険」と言う副題は止むを得ない気がしますが、原作本と同じく「ホビットの冒険」で良かったのでは・・・?
(BD)

2013.05.11 ミッドナイト・イン・パリ ★★☆

 ウディ・アレンの作品には余り食指は動かないのですが、第84回アカデミー賞で脚本賞のオスカーを獲得しているので、まあ観てやろうかと・・・。このタイトル(「MIDNIGHT IN PARIS」)、どこかで聞き覚えがあると思っていたら、ジョン・ルイス(MJQのピアニスト)の古いアルバムのタイトル及び挿入曲と同じ。著作権上、大丈夫なのでしょうか?
 パリの生活に憧れるアメリカ人男性(オーウェン・ウィルソン)が、パリの旅行中、午前0時を過ぎると過去にタイムスリップして、ヘミングウェイフィッツジェラルド夫妻ピカソなどの超著名人と交流を持つ、というファンタジー・コメディ。
 オープニングは、古風なジャズ・バンド曲とともにスライド・ショーのように現れるパリの観光名所の映像。本作品のツカミとしてはとても良いと思います。
 タイムスリップして有名人と会うというのは、最初は面白いと思いましたが、ダリTSエリオットロートレック(その他私が知らない人も)など、余りにも偶然に多くの人と出会ってしまうので、次第に嘘っぽく見えてきてしまいます。まあ、元々大嘘な話には違いありませんが。
  また、それら著名人との会話の中には、有名なエピソードにまつわることもあるようで、それらの知識があればより楽しめたのだと思います。私はヘミングウェ イがタイトル(「誰がために鐘は鳴る」)を明かさずにそのストーリーの断片を熱く語る、というところあたりしか分かりませんでした。
 婚約者役のレイチェル・マクアダムス、ピカソの愛人役のマリオン・コティヤールが魅力的。あと話題は、サルコジ元大統領夫人のカーラ・ブルーニが美術観光ガイド役で出演していることでしょうか。元スーパー・モデルだけあって、中々のものです。
(BS-HV)

2013.04.27 ラストスタンド ★★★★

 アーノルド・シュワルツェネッガー10年ぶり復帰作。前回の最後が「ターミネータ3」で55歳でしたから、御年65歳ということですか。最近はシルベスター・スターロンブルース・ウィリスリーアム・ニーソンなどのジイさん達が頑張っていますね(私も見習わねば)。
 土曜日で本作の封切り初日にも関わらず、いつものシネコンは相変わらず、ガラガラ(どうか潰れませんように)。
 タイトルは「The Last Stand(最後の砦)」 で正に映画の内容をそのまま示していますが、ひょっとしてシュワちゃんの映画出演の最後も匂わせて、動員数を稼ぐという魂胆もあるのかも・・・。護送途中 で脱走した極悪の麻薬王及びその武装集団と、シュワちゃん扮する田舎の保安官が少数の仲間とともに死闘を繰り広げるというもの。ストーリーは単純明快で、捻りも全く無し。
  序盤で仲間が元カルフォルニア州知事のシュワちゃんに、「ロスって変な街だよね」的な発言をするので、笑ってしまいました。見ものは派手なドンパチとカー チェイスですが、余り工夫も無いし、ラストもややあっけない。それでも最後まで画面に引きつけられるのは、やはりシュワちゃんの魅力でしょうか。ぶっ倒れ たシュワちゃんに、周りが大丈夫かと声を掛けると「Old・・・(年だな)」というくだりにも笑いました。
 脇役としては、強烈な個性のルイス・ガスマンピーター・ストーメアが好演。ただし、私はやはりフォレスト・ウィッテカーはどうも好きになれない・・・。
(劇場)

2013.04.19 リンカーン ★★★

 スティーヴン・スピルバーグが制作、監督し、第85回アカデミー賞で最多12部門にノミネートされ、主演のダニエル・デイ=ルイスが史上初となる3つ目の主演男優賞を獲得したという、すご〜い映画「リンカーン」がようやく公開されました。平日の金曜日にしてはまあまあの入りで、本作の前評判のほどが伺えます。
 作品は、任期2期目の大統領エイブラハム・リンカーンが、奴隷制度の撤廃を定めた合衆国憲法修正第13条の成立に向け、心血を注いで行く過程を地味〜に描いたもの。ですから「プライベート・ライアン」よろしく、南北戦争を舞台にした戦争スペクタルものを期待していると、肩透かしを喰らいます。
 あの手この手で、リンカーンが反対派議員の切り崩しに奔走する過程はそれなりにサスペンスフルではありますが、正直言って私には退屈でした(睡魔に何回か、襲われもした)。ということで、本作は私にはダニエル・デイ=ルイスの神がかり的演技をひたすら感心する作品となりました。アゴ髭がしゃくれた横顔は瓜二つであり、緩急つけた仕草、しわがれ声の話し方は、本人にソックリであることは間違いありません(多分)。
 一つ感動的なシーンを挙げるとすると、トミー・リー・ジョーンズ演じた共和党議員の黒人家政婦とのエピソード。当時としてはもの凄いことだったのでしょう。
 作品賞、監督賞、脚色賞を他作品に譲ったのは、公正な結果であると思ったことでした。
(劇場)

2013.04.08 ヒューゴの不思議な発明 ★★☆

 第84回アカデミー賞で最多の11部門にノミネートされ、5つのオスカーを獲得しましたが、それが撮影賞、美術賞、音響編集賞、録音賞、視覚効果賞という主要部門では無かったことが、この作品の出来を端的に表していると思います。マーティン・スコセッシ監督の1930年代のパリを舞台とした本作は、確かに映像的には目を見張るものがあると思いますが、前半と後半のチグハグな展開、演出には、首を傾げざるを得ません。
 終始、孤独で可哀想な主人公の少年(エイサ・バターフィールド、可愛いけどダイコンだ)。終盤の展開があるならば、何故最初からそういう態度に出なかったのかと怒りもさえ感じられる、ベン・キングズレー演ずるキーとなる老人(我が侭で、気まぐれなだけでしょ)。少年を支える役割なのに、ちっともそうは見えないクロエ・グレース・モレッツ演ずる少女。存在意義がよく分からない鉄道公安官。
 更にはキーとなるはずの機械仕掛けの人形の役割がよく分かりません。少年の父親(ジュード・ロウ)のこの機械人形との絡み方もいまいちハッキリしない。第一、何故彼は死んだのか。原作はベストセラーとのことなので、映像化にあたってはかなり端折っているのかも知れません。
  映像的にはレトロな機械が好きな人なら大喜びしそう。アナログ的な歯車の動き、それらが発する物理的な響き、油が薄く乗った金属の輝きなど・・・。映画草 創期へのノスタルジー、オマージュも人によって感じ方は様々。昨今のCG全盛期作品をあざ笑うのは、傲慢と言えるかも知れません(やや意味不明)。 「ニュー・シネマ・パラダイス」には遠く及ばないし・・・。
 それにつけても、フランス、パリを舞台にしていながら登場人物が全て英語で話す、ということに欧米人は違和感を感じないのでしょうか・・・。
(BS-HV)

2013.03.02 アルゴ ★★★★☆

 昨年10月に封切られた本作品は評判が高いのは分かっていましたが、何となく見逃してしまっていました。先日のアカデミー賞の作品賞発表で、オバマ大統領夫人が読み上げたのはこの「アルゴ」。これはレンタル開始まで待つしかないなと思っていたら、何と(いや当然ながらの商業主義で)リバイバル上映が始まったのです。早速近くのシネコンへ。
 1979年にイランで起きたアメリカ大使館人質事件での、実際にCIAが行った驚くべき救出作戦を 描いたもの。当時の実際の映像を時折交えていますが、画面の縦横比が異なるので区別出来る程度で、前半はまるでドキュメンターを見ているような錯覚に陥り ます。CIAがあれこれ検討した救出作戦の中で選択されたのは、ほんまかいな、と思えるような代物。それが事実というのですから、本作の映画としての成功 は決まったようなものです。
 救出が成功することは分かっていても、後半の幾つかのシーンでは手に汗を握ってしまうという塩梅です。飛行機がイラン領空外を越えた際には、恐らく観客の殆どが心のなかで拍手喝采を送ったことでしょう。エンタメ映画としても十分な見応えがあります。
 それにしても、米国が感謝すべきは自らの危険も承知の上で、私邸に匿ってくれたカナダ国大使夫妻ですね。それにあの使用人も。
 ただ、事実に基づくと言っても、脚色した部分は少なからずあるのでは無いかと感じました。命令に背いた主人公はその後懲罰が全くなかったのか、とか、ギリギリのタイミングで電話に出れた、とか、あの状態であれば飛行機は止められたのでは無いか、等々。
 作品賞のオスカーが決まると、イランのメディアは一斉に反発して、イラン側から見た映画を制作することにしたそうです(それはそれで楽しみかな)。
 エンド・ロールで実際の人物の写真と演じた俳優が対比されますが、一人(人妻)を除いて完璧にソックリでした。
 本作は今回のアカデミー賞で7部門にノミネートされており、作品賞、脚色賞、編集賞の3冠を達成しました。監督、主演したベン・アフレックは両賞にノミネートはされませんでしたが、前作の「ザ・タウン」の出来と言い、この人は今後も監督として期待出来ますね。それにしても彼が草刈正雄に見えてしょうがなかったのは、私だけでしょうか・・・。(^_^;)
(劇場)

2013.02.27 世界にひとつのプレイブック ★★

 アカデミー賞の主要8部門にノミネートされたなどということが無ければ、まず劇場で観ようとする気持ちなど起きなかったことでしょう。何せ、フツーのラブコメなのですから。
 おりしもアカデミー賞の授賞式の当日。ですから、ジェニファー・ローレンス主演女優賞のみオスカーを獲得、ということを知っての鑑賞です。いつも行く郊外のシネコンと違って、都心の繁華街の劇場。流石に混み具合が違います。いや、やはりアカデミー賞の煽りもあるでしょう。それにしても画面が暗くて見ずらいね、この劇場は。
 え〜と、正直言って私は恐らく3分の1位は眠っていたと思います。(^_^;) 前半のキレた二人の人物描写、息子思いの両親(デ・ニーロが良い親父を演じていたね)の絡みなどから、気がつけばクライマックスのダンス・シーン。で、お約束の結末でハッピー・エンド。ラブコメの王道を行っていると思います(全部見なくとも分かりますって・・・)。
  妻の不倫現場に遭遇しても相変わらず妻とよりを戻そうとする男、夫を交通事故で失って、誰彼かまわず寝まくる挙動不審の女の二人に、まず感情移入が出来ま せん。途中の展開はよく分かりませんが、ダンス・シーンが見ものであることは間違いないでしょう。ここでの白い衣装に身を包んだジェニファー・ローレンス は相当**く、眼が覚めます。(^_^;) どこかで見たことのある顔だと思っていたら、「X-MEN: ファースト・ジェネレーション」で、若いミスティークを演じていたのでした。やはり、この人は眼が人間離れしているね。
 原題は「Silver Linings Playbook」で、Silver Liningsは銀の裏地のことで、その反対側は光が差している、という諺らしい。Playbookはアメフトで用いる作戦ノートのことなんだそうな。まあデ・ニーロ親父がアメフトに狂っていたので、映画の展開からして何となく分かったような、分からないような・・・。
 「マイ・シェリー・アモール」 、「マナクーラの月」など有名曲が挿入されていましたが、特に嬉しかったのはデイブ・ブルーベックの変拍子の「アンスクエア・ダンス」。とても懐かしく、ここでも眼が醒めたのでした・・・。(^_^;)
(劇場)

2013.02.23 リアル・スティール ★★★

 予告CMなどからほぼ全容が想像できること、「トランスフォーマー」と同様、日本のアニメに大きく 影響されている(ようである)こと、などから何となく敬遠していた本作品。溜め込んでいたHDDが一杯になって、見ないうちに消すのも勿体無くての鑑賞で した(何じゃそれ)。
 舞台は近未来で、ローマ時代の「グラディエーター」よろしく、人間や動物の代わりにロボット同士を戦わせてお金をかけ、楽しむという世界。何となく脱力モードに突入しそうですが、CGのロボットの動きがさすがに卓越していて、映像的には見応えはあります。
 ストーリーはまあ「ロッキー」そのもので ベタベタ、と言ってよいでしょうね。斬新さは全くありませんが、弱者が地の底から這い上がって行くというサクセス・ストーリーは万人受けするわけですか ら、むしろ敢えてそういう路線を狙ったものとも言えそうです。終盤は思わず応援をしている自分に気がついたり・・・。ただ、近未来ではあんな動きをするロ ボットは絶対制作出来ないと思います。
 打算的なダメ親父に今をときめくヒュー・ジャックマン。どんな役でもこなせる器用な人なのですね。憎ったらしいほど大人のような言動を取る息子役に、ダコタ・ゴヨ。ダコタって、男の名前としてもOKなんですね・・・。とても懐かしくて(?)嬉しかったのは、ヒュー・ジャックマンを恋し、サポートする女性役にエヴァンジェリン・リリーが登場していたこと。「LOST」のヒロイン、ケイトなんです。横顔のシルエットが美し過ぎる・・・。
 お話は予定調和で終わるわけですが、これしかないでしょう。本作、意外と拾い物かも知れません。
(BS-HV)

2013.02.09 アウトロー ★★★★

 派手な前宣伝があって、かつ評判もまずまずのようで、それならばといつもの劇場へ。土曜日の午後の上映に、直前のネット予約で最上の席が確保できるというのは、やはり田舎のシネコンの証ですな(と言っても一応23区内ですが)。
 何でも原作はベストセラーのシリーズものとのこと。従って、これはMIPと同様に、トム・クルーズのヒットシリーズになるのでしょうか?原題は主人公の名前の「JACK REACHER」です。
 バリバリのアクションものを想像していたのですが、しっかりした謎解きものでした。そう複雑な展開はなく、古風で地味なところがかえって素直に楽しめました。違和感があったのは、銃を捨てて殴りあったりしたこと(何もそこまで古風にしなくとも)、裏切り者の設定が安易過ぎること(いきなりB級テイストになってしまう)くらいでしょうか。
 殆ど危機らしい展開が無く、スーパーマンと化した主人公の行動を安心して見ていることが出来ます。ただトム・クルーズも年齢を感じさせる風貌になりましたね。スタント無しでこなした、と言ってもカーチェイス以外はそう曲芸的シーンは無かったような・・・。まあ、マット・デイモンマーク・ウォルバーグでも十分務まるとは思いますが、やはり格が一段違うと言うことになるのでしょうね。
 タッグを組む女性弁護士にロザムンド・パイク。「タイタンの逆襲」や「ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬」などに出演していますが、まあ余り派手さも無く、個性的でも無く、可も無し、不可も無しといったところでしょうか。御大ロバート・デュヴァルが主人公を(都合よく)サポートする元海兵隊員として登場し、厚みを付けます。死ななくて良かった・・・。
 まあ、原作ネタは沢山ありそうなので、このシリーズは期待できるのではないでしょうか?良い共演者を選べばだけどね・・・。
(劇場)

2013.01.14 スリーデイズ ★★★★

 フランス映画のリメイクで、監督が名作「クラッシュ」や「告発のとき」のポール・ハギスと知って、それでは見てみようかと・・・。無実の殺人罪(と主人公は思っている)で投獄された妻を脱獄させようと奔走する男のお話?!。あれ、最近「プリズンブレイク」を見終えたばかりなのに、また脱獄のお話ですか・・・。
 「プリズンブレイク」同様、こちらも最愛の妻、子供のためなら手段を選ばない強〜い信念を持ち続ける男の心情に、まずは心を動かされます。加えて脚本の巧さもあって、一瞬足りとも眼を離せない展開の連続。最後まで緊張感が続きますし、謎解きの面白さもあります。
 計画、実行、挫折、練り直し、実行、挫折の繰り返しに、勇気、頭の回転、運の良さなどが要素として加わるというのは、「プリズンブレイク」の影響でしょうか。それでも見応え充分です。大方の観客の予想を裏切る結末というのも、これはこれでアリだと思います。
 平凡で非力な一介の大学教授が、妻と子供のために大変貌を遂げるという主人公にラッセル・苦労、いやクロウ。もう少しダイエットして欲しかった。その妻はエリザベス・バンクス。後半はスッピン状態ですが、中々の美形。そしてもう一人の美形が、主人公を結果的にサポートすることになるオリヴィア・ワイルド。エラが目立ちますが、中々です(意味不明)。父親役に大ベテランのブライアン・デネヒー。こういう感じの父親になりたいものです(もう遅いって)。リーアム・ニーソンがカメオ的に出演。
 ポール・ハギスは脚本家出身(「ミリオンダラー・ベイビー 」、「父親たちの星条旗 」など)だけあってそつが無く、期待を裏切りませんでした。これまた名作です。
(BS-HV)

2013.01.04 プリズンブレイク ★★★☆

 アメリカのTV映画のベスト3の1つとのこと。後の2つは言わずと知れた「24」と「LOST」です。「LOST」を見終え、次は本作を選びました。全4シーズン、全88話、総時間数約3,800分、約63時間。それでも「LOST」の86時間には及びません(幸いにも)。
  死刑宣告を受けた兄が収監されている刑務所に、わざと主人公の弟が罪を犯して入所し、兄を脱獄で救おうとするシーズン1から物語は始まります。脱獄不可能 と言われている刑務所からいかに脱出するか。事前に綿密に計画を立て、数知れない危機を咄嗟の判断で乗り越えて行く、というサスペンス溢れる展開。流石に シーズン1はよく練られていると思います。
 シーズン2では脱獄に成功した面々がいかに逃走、逃亡を続けるか、という展開。シーズン3は再び脱獄のお話。ただし、今回はアメリカではなく、パナマの凶悪罪人のみを収監している恐ろしい刑務所。ここでの絶望的描写には息を飲みますが、この辺から脚本が怪しくなって来ます。一緒に脱獄をせよと主人公が命じられる人物の正体が全く以て不明。結局最後までこの人物の存在意義は私にはよく分かりませんでした。
 シーズン4では敵と味方の攻防が、いや誰が敵で味方かも刻々と変わるという混乱的展開が。それなりに見応えはあるのですが、主人公の母親が現れるに至っては、まるで投げやりの脚本としか思えません。最終的解決も、死んだであろう人物を再登場させて、強大な権力を持たせて一気に納めようとしています。どう見ても無理がアリアリ。
  当初シーズン7までの予定が打ち切られたとのことですが、それもむべなるかな。簡単に人を殺しすぎる、死んだはずの人間が再登場する、深手の傷を負った人 物が次のシーンでは驚異的な回復をしている、相手を欺く仕掛けの材料がすぐ調達出来、設定の時間が余りにも短過ぎであるなど、ご都合主義を挙げたらキリがありません。
 本作は主人公・マイケルを演ずるウェントワース・ミラーの魅力によるところが大きいと言えるでしょう。風貌からして、多民族の混血らしい。次は極悪人でありながらどこか愛嬌のあるティー・バックことロバート・ネッパー。巧い演技です。
 ところで、Huluでは放映されていないのですが、シーズン4のラスト4年間の空白を埋めるエピソードである「ファイナル・ブレイク」が実はあるのだそうな。文字どおり、3度目の最後の脱獄のお話とか・・・(もういいかな)。
 それにしても布石はあったとは言え、あのラスト・シーンには驚きました(胸が詰まりました)。まあ、人々の達観した表情には救われはしましたが・・・。
(Hulu)

2012.12.22 レ・ミゼラブル ★★★★☆

 ご存知、ヴィクトル・ユーゴーの原作「ああ無情」は、ミュージカル化して世界的に大ヒットしました。本作はその映画化版。これまでのミュージカル映画のようなアテレコではなく、実際の演技の中で歌っていることをアピールポイントにして、本作は盛んに宣伝されていました。
 前評判が高い作品であり、また封切り日の翌日の土曜日とあって、劇場はいつになく席が埋まっていました。
 ふむ、ほぼ100%、セリフは歌われています。これを不自然と思ったらミュージカルは楽しめません。映像はリアリティ一杯のど迫力で、正に映画そのもの(ん?)。
 それが故に歌唱は、歌をしみじみと、或いは朗々と歌い上げるという感じがややもすると無くなっています。最大の聴きものであろう「夢やぶれて」(I Dreamed A Dream)においても、アン・ハサウェイが余りにも感情移入し過ぎ(殆ど泣きながら)で、私としてはやや違和感ありでした(それでも私は涙を堪えるのに必死でしたが)。後で録画しておいた2010年10月のロンドンにおける「レ・ミゼラブル、25周年記念コンサート」での同曲と聴き比べてみました。レア・サロングの歌うそれは感情を込めながらも歌として(?)歌い上げ、私にはより素晴らしく聴こえたのでした。この辺は評価の別れるところでしょう。
 それにしてもジャン・バルジャン役のヒュー・ジャックマン神懸かり的演技が余りにも凄すぎて、他の登場人物が霞みます。ジャベール役のラッセル・クロウを以てしても・・・。
 ジャン・バルジャンが市長になるまでの前半の展開がやけに速い割には、後半は若者の恋とフランスの体制に立ち向かう学生たちの行動が丁寧に描かれます。ラストはいかにもミュージカル映画らしく、大いに盛り上がってクロージング・タイトルを迎えます。
 観客の拍手が沸き起こり、クロージング・タイトルが終わるまで席を立つ人は少なかったのは、この映画の素晴らしさを物語っているのでしょう。
 なお、フランス人である登場人物は、当然ながら全て英語で歌うので、覚悟しましょうね(しつこい?)。(^o^)
(劇場)