映画、ビデオ短評

★★★★★:満点(五つ星) :半星

1999.1.14〜1999.3.14  1ページ目へ  トップへ


1999.03.14 闇を見つめる瞳 ★★★

 「ゆりかごを揺らす手」の制作スタッフによるこれはかなり怖いスリラー。アメリカでは養子縁組をした側と生みの親側のトラブルは山のようにあり、これはそういう実話に基づいた作品だそうです。
 子供が作れないある夫婦が施設からミステリアスな少女を里子にもらいます。ところがその少女の親は手配中の凶悪な殺人犯人で、警護の網をくぐり抜けてその少女を取り戻そうとその夫婦に迫っていきます・・・。
 余り捻ったところがなくて直球勝負なのですが、スリラーという意味では取り敢えず成功しているでしょうね。けっこう怖がらせてくれます。しかし後半かなり強引に突き進んでしまい、結末の鍵を握る少女やその父親、母親の心理をもっと丁寧に描写して欲しかったという気持ちが残ります。キレたサイコな男だから何をやってもいいんだ、というのでは余りにも単純というもの。
 その凶悪きわまりない男を演じているのはキース・キャラダインで、彼のキャラクターを意識して脚本が書かれたというだけあって、しっかりその役にハマリきっていました。その相方、すなわち少女の母親はブレード・ランナー以来の出演になるダリル・ハンナ
 実はこれは98年11月の劇場公開作品で、ビデオ発売はこの4月下旬なのだそうですが、販売元のk2エンタテインメントが募集したプレビューに応募して、送られてきたビデオによる鑑賞なのでした。画面の左上に常に「SAMPLE」と表示されてしまうビデオなのです。(^_^;)
(ビデオ)

1999.03.11 沈黙のジェラシー ★★★

 「沈黙の・・・」はスティーブン・セガールの専売特許かと思っていましたが、そうでもないのですね。原題が「Hush(沈黙)」ですからそう付けたのでしょうが、安易だなあ・・・。
 内容は相当怖いホラーです。一人で牧場を営んでいる母親(ジェシカ・ラング)の所へ一人息子が初めてフィアンセ(グウィネス・パルトロウ)を連れて帰省します。やがて二人は「出来ちゃった」結婚をして母親と一緒に住むようになるのですが、初めは優しかったように見えた母親が、次第に嫁イビリをするようになっていきます・・・。
 優しく友好的に見えていた隣人が実は恐ろしい人間だった、というのはハリウッド映画にはよくあるパターン。でも、嫁と姑という関係は斬新かもしれません。アメリカでも嫁イビリはあるのだなあ、と変に感心してしまいました。
 最後があれでは物足りないという感じがあるかもしれませんが、あそこで止めておいたのは正解でしょう。天下の大女優、ジェシカ・ラングに敬意を表した、ということもあるのかも知れません。彼女は22年に及ぶ女優生活で初めて悪役になったんだそうな。やや鼻が低いものの、セクシーな魅力あふれる人ですね、あの人は。
 一方今や売れっ子のグウィネス・パルトロウですが、私にはこの人は余り美人には見えません。胸も薄いですし・・・。(^_^;) 最初はひ弱な感じでおどおどしていたグウィネスが、終盤いきなり自信満々の気丈な女に豹変するのも、やや不自然。
 ご家庭でお嫁さんとお義母さんが一緒にこれを見ると、相当気まずくなるでしょうね。(^o^)
(ビデオ)

1999.03.07 スネーク・アイズ ★★★★

 「ミッション・インポシブル」や「アンタッチャブル」をヒットさせたブライアン・デ・パルマ監督の最新話題作。
 1万4,000人の観衆の見守るボクシングの試合中に国防長官が狙撃され、居合わせた地元刑事(ニコラス・ケイジ)が殺人犯人を追うことに。長官の護衛には彼の親友のエリート海軍中佐(ゲーリー・シニーズ)が担当していたのでしたが・・・。
 冒頭、かなりハイになった主人公の刑事の行動を、デ・パルマ監督得意の長回し(1台のカメラでカットなしに回し続ける)で13分も撮り続け、見ているほうは目がくらくら。これ以外にも、ホテルの各部屋を盗み見的に天井側から俯瞰していくシーン、「藪の中」よろしく各人が事件との関わりを説明するための回想シーン、画面を二つに割って別の場所で起きていることを同時に見せるシーンなど、映像の面白さは随所に見られます。
 中盤までは息をもつかせぬ緊張感とテンポでグイグイ見せてくれるのは、さすがです。しかし残念なことに肝心の終盤で息が切れてしまいます。たたみかけるように進んできてラストがあの程度ではガッカリ・・・。もう少し工夫や捻りが必要でした。序盤であんなにハイになっていた主人公が終盤では借りてきた猫のようにおとなしくなるのも何だか不自然。「信じていた者に裏切られ、大事なモノを失って落胆した」という説明なのでしょうが、あのハイ・スピードの展開の中でそこまで観客に理解しろといっても無理でしょう。
 また途中までけっこう複雑な展開なのですが、ある時点であっけなく謎が説明されてしまいます。あの辺はもう少し引っ張ってくれてもよかったと思うのですがね・・・。
 ここでのゲーリー・シニーズ(「アルビノ・アリゲータ」など)の存在感は圧倒的で、ニコラス・ケイジを完全に喰っていました。蛇が獲物を狙うようなあの鋭い顔つきは、スゴイの一言・・・。いい役者です。
 なお、この映画はエンド・クレジットの最後の最後まで見ていなければいけません。観客に話題提供するための「ある物」が映し出されるのです。私の加入しているMLでも色々取り沙汰されています。(^^)
(劇場)

1999.03.04 ライアー ★★★

 タイトルどおり「嘘」がテーマのサスペンス。主要登場人物は3人で、殆ど警察の取調室が舞台。
 娼婦殺人の容疑者を、二人の刑事がポリグラフで追及するところから物語が始まっていくのですが、次第にこの二人の刑事の私生活まで絡んで、事件があらぬ方向へ進んでいきます。派手なアクション・シーンやあっと驚く展開もないのですが(ラストを除いて)、斬新なカメラワークとともに、現実と虚構が入り交じった世界に観客を引き込んでいく手口は見事。ただしぼんやり見ているとストーリーが判らなくなる可能性はあります。劇場公開では、見終わって「あれー、なんだったのー???」という顔をして出てくる観客が多かったとか・・・。
 犯人がはっきりしないというのは「氷の微笑」でもありましたが、この映画もそう。製作者や監督が、観客の?マークだらけの顔を見てほくそ笑むという類いでしょうか。やや消化不良になるのはやむを得ないところでしょう。
 しかしポリグラフなんていうものは今でも使われているのでしょうか?今日の目で見るとかなり前時代的なローテクの極みのように映るのですが・・・。
 配役はティム・ロスマイケル・ルーカークリス・ペンといった面々で、いずれも渋い演技が光ります。
(ビデオ)

1999.03.01 クロスゲージ ★★★

 キーネン・アイボリー・ウェイアンズ(「グリマーマン」でセガールとコンビを組んだ)が制作、脚本、主演したサスペンス・アクション作品。
 元狙撃手で死刑を宣告された主人公が、ある実業家の狙撃を条件に社会復帰が許される。ところが彼が狙撃をする前に予期せぬことが起こり、彼が犯人として仕立てられてしまう。追われながらも真相を究明しようとする彼と、彼の前に立ちふさがる政府組織との攻防・・・。
 テンポよく話が展開し、飽きることはありませんし、ラストのヒネリもけっこう効いています。アクション・シーンもそれなりに見せてくれます。しかし、強引に引っ張っているという感が否めませんし、何となく安っぽさが全編に付きまとってしまっています。拳銃を出したと思ったら実は拳銃型のライターだった、といった類いの思わせぶりなシーンがあちこちに出てきますが、余りセンスがいいとは思えません。群衆に主人公が追っかけられるシーンは、殆どコメディのノリ。
 主人公のキーネンはケッコウ無表情。ジョン・ボイドはすっかり悪役が型にはまっていて、うまい俳優です。話のキーマンとなったポール・ソルビーノミラのお父さん(!)。ヒロインのジル・ヘネシーは少しマルシア入っていて、なかなかキュートです。主人公と安易に恋に落ちない設定が、かえって良かったと思います。
 私も将来はスキン・ヘッドにしようかな・・・。(^_^;)
(ビデオ)

1999.02.27 フラッド ★★

 「FLOOD」は洪水という意味で、原題も「HARD RAIN」(どしゃ降り)ですから、その名のとおり「お水」がいっぱいの映画です。
 豪雨で現金輸送車が立ち往生。待ちかまえていたかのようにそれを襲う強盗一味。そうはさせまいと現金を守ろうとする現金輸送警備員と駆けつけた保安官グループ。ダムが決壊して水に沈む街の中での3者の攻防・・・。
 巨大なプールの中に街のセットを作り、その中ですべて撮影したというのですから、スゴイ。街が時間とともに水没していくのは、水を増やしたのではなく、セットを沈めた(!)というのだから、スゴイ。
 でもスゴイのはそこまで・・・。ストーリーには余り工夫がみられず、何となく発散していてまとまりに欠ける印象です。善から悪への転換があまりにも短絡的でがっかりさせられてしまいます。
 主人公役のクリスチャン・スレーターも魅力薄。ヒロインのミニー・ドライバーは、「グッド・ウィル・ハンティング」の時よりはマシだったかも。
 名優、モーガン・フリーマンを完全な悪人として描けなかったことが、彼のハリウッドでの地位を象徴しているようで、面白かったと思います。
 ああ、水酔い・・・。(>_<)
(ビデオ)

1999.02.23 ブラック&ホワイト ★★★★

 ロス市警の新人警官(ロリー・コクレイン)が凄腕の女性警官(ジーナ・ガーション)とペアを組み、ある連続殺人事件を追っていくうちに、その女性警官が容疑者として浮かび上がっていく、というサスペンス。
 ジーナ・ガーション主演とはいえ、いかにもB級風だったので余り期待はしなかったのですが、それが幸いしたのか、まずまず楽しめました。まあロス市警の警官が主人公だと、だいたい上司やでしゃばりなFBIとの確執の中で事件を追っていくというパターンになるのですが、ここでも例外ではありません。しかもその警官が容疑者になるなんていうのもありふれているのかも。そしてその警官の隠された過去が絡む、とくると殆どどかで見たようなストーリー展開。
 そういうことが分かっていても、けっこう引き込まれていくというのはやはり演出がうまいからなんでしょうね。やや犯人を無理に特定させる、わざとらしさは残るとしても・・・。ただエンディングはあの一歩手前で止めて欲しかった。そしたらもっと後味は良かったでしょうに・・・。
 特徴的な口元を持ったジーナ・ガーションは、ここでも極めてセクシーで魅力的。
 なお「ブラック&ホワイト」とはこの映画では「チェス」を指しているのですが、話の展開には殆ど意味をなしていません(と思います)。
(ビデオ)

1999.02.22 ムトゥ 踊るマハラジャ ★★★

 年間800本は作成しているというインド映画の、これは超話題作品。日本でも劇場公開時、途中で拍手が起こる(!)など、随分評判が良かったようです。
 大富豪のマハラジャに仕える主人公・ムトゥ(ラジニカーント)と劇団女優(ミーナ)とのラブ・ストーリーを中心とした、テクノ・ビートにのったミュージカル的超エンターテインメント映画。マイケル・ジャクソン風あり、マドンナ風あり、ブルース・リー風あり、ベン・ハー風あり、スピード風ありの、要は何でもありの2時間46分(!)。
 最初は、チープさと豪華さが混在した独特のセンスに、ややついていけない感じがありましたが、中盤以降のストーリー展開はけっこう楽しめました。同じダンス・シーンで何回もカラフルに衣装を換えたり、スローモーションなのに音楽にピタッと合わせた編集などは見事。ただ、ムトゥの動作にいちいち大げさに付く効果音や、古風なコメディ的なアクションなどは、好き嫌いが分かれるところでしょう。良くない画質やモノラル音響などもチープさの要因になっています。
 色々な発見もありました。インド国内でも地域によって通じないほど多言語である、時々英語が混じる、裕福な人間は一様に太っている(ヒロインのミーナはムチムチお腹)、濃厚なラブ・シーンはご法度、など。
 スーパー・スターのラジニカーントは梅宮辰夫入っていましたし、可愛いミーナは富士真奈美入っていました。(^o^)
 インドは、核実験などせずに、このような映画を作るだけにしてくれればいいのですが・・・。(-.-)
(ビデオ)

1999.02.18 パルメット ★★★

 ムショ帰りの男(ウッディ・ハレルソン)がある富豪の妻(エリザベス・シュー)から義娘の偽装誘拐を依頼され、実行していくうちにその裏に隠された罠にはまっていくというサスペンス作品。
 ストーリーとしてはヒネリもあって悪くありませんし、前半の展開も興味深いのですが、途中からいきなりB級風になってしまうのが残念です。ある男が絡んだ死体処理の方法や最後のオチがいかにも安っぽくていけません。2人目が犠牲となる必然性もイマイチ不明ですし・・・。
 そんな欠点を十分補っているのが、エリザベス・シュー。ここでの彼女はすこぶる付きでセクシー。(^_^;) 「バック・トゥー・ザ・フューチャー」や「セイント」ではそんなに目立たなかった(?)のですがね。ウディ・ハレルソンは可笑しいくらいに非運な男を好演。その恋人役のジーナ・ガーションはどうでもいい役でした。
 なお、パルメット(Palmetto)というのは椰子のことで、ここではPalmetto Stateとしてサウス・カリフォルニア州のニックネームの意味で使われています。アメリカの全ての州にはこのようなニック・ネームが付いているのです。例えばフロリダ州はSunshine State、オレゴン州はBeaver Stateとかね。(^.^)
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1999.02.12 大いなる遺産 ★★★★

 フロリダの漁師の家で育った主人公が、幼なじみの女性に心を奪われながらもニューヨークで絵の才能を開花させていく・・・。英国の文豪、チャールズ・ディケンズの名作「大いなる遺産」を、現代風のファンタジックな作品にリメイクしたものです。
 ストーリーとしては特に捻ったところはなく、そう盛り上がるわけではないのですが、何となく心を惹かれる作品に仕上がっています。特に序盤の少年と少女のふれあいをファンタジックに描いた美しいシーンが印象的。予告編などでお馴染みの、例の噴水の水を一緒に飲んでキスをする場面ですね・・・。主人公のモノローグも効果的です。
 幻想的な映像もさることながら、ヒーローとヒロインを演ずるイーサン・ホークグウィネス・パルトロウの魅力で見せてしまう映画とも云えるでしょう。特にイーサンにはあのように上目遣いに見つめられたら、ウマ・サーマン(イーサンの奥さん)ならずともイチコロでしょうね。グウィネスは決して美人ではありません(エラもはっているし)が、スラリとした肢体がとても魅力的。また、ロバート・デ・ニーロの出演が、この映画をいっそう重厚な作品に仕立てています。
 個人的には、グウィネス演じるあんな我がままでジコチュウな女はご免ですけどね・・・。(^_^;) 
(ビデオ)

1999.02.07 ユー・ガット・メール ★★★

 「めぐり逢えたら」から6年ぶりに共演を果たしたメグ・ライアントム・ハンクスの、これは電子メールが取り持つラブ・コメディ。監督も「めぐり逢えたら」と同じノーラ・エフロン(女性)です。文通相手が実は同僚だったという1940年の「街角」という映画のリメイクなんだそうな。
 「You've Got Mail」は、AOL(America Online)でメールが届いたことを知らせる音声メッセージ(何故か男の声なのだ)のこと。まあ、EudoraProのチャイムとともに現れる奇怪な郵便屋さんのようなものですね。
 ニューヨークで小さな本屋を営むメグと大手チェーン書店の経営者であるトムが、顔を会わせては反目しながらも、実はお互い相手の素性を知らぬ間にメール友達になっていて、ネット上では互いに惹かれていく、という極めてベタなストーリー。ネット上の恋愛なんかきょうび日常茶飯事で(多分ね)、今更という感じがしないでもありませんが、センスのいいウィットとユーモアが満載でけっこう楽しめます。冒頭、お互いの同棲相手が外出すると嬉々としてメールを始めるシーンがありますが、あの気持ち、良く判ります。(^_^;) ベタな展開ではありますが、この手の映画はあっと驚くヒネリや予想外の結末などあろうはずがなく、収まるところに収まってそれで皆がハッピーになろうというもの。
 何といっても37歳の今なおしぐさや笑顔が少女のようで可愛い、メグ・ライアンが極めて魅力的です(周りの女性客から盛んに「可愛い!」が連発されていました)。トムはやや太り過ぎ。
 封切り1週間前の先行レイト・ショーの劇場観賞でしたが、やけに画面が暗いのが気になりました。
(劇場)

1999.02.06 仮面の男 ★★★★★

 これはフランス中世のヒーロー、四銃士の後日談を描いたもので、主人公はこの四銃士。決して双子の王を演じるレオナルド・ディカプリオが主人公ではありません。デュマの原作「鉄仮面」を大胆に脚色したものですが、第一級のエンターテインメントに仕上がっていると思います。
 悪政で庶民を苦しめる若きルイ14世の替わりに、双子の弟であるフィリップを王に立てようと企てる、今は年老いた四銃士のうちの3人。四銃士の残りの一人、ルイに忠誠なダルタニアンがそれを阻止せんとするのですが・・・。
 132分の長尺物なのですが、極めて判りやすいストーリーで終始テンポよく物語が展開するので、飽きることは全くありません。
 四銃士のそれぞれ異る人物像が明確に描かれており、それらを演ずるオスカー級の名優達、ガブリエル・バーンジョン・マルコビッチジェレミー・アイアンズジェラール・ドパルデューの力演が大きく物を言っています。特にここでもジョン・マルコビッチが非運な役柄を迫真的な演技で演じていて、最高です(かなり身びいきかも・・・)。まあ、ジェラール・ドパルデューの汚い尻は見たくはなかったですがね・・・。
 終盤明かされるある事実は途中で読めてしまうのですが、ああいう展開で父と子(母と子ではなくて)が絡むと泣けてしまうのですよね。伏線もうまく活きていましたし・・・。
 とにかくこれぞ映画!という大活劇で、こういうものはやはり映画館で見るべきでした。
 ディカプリオ、デカ頭・・・。
(ビデオ)

1999.02.05 狼たちの街 ★★

 ロス市警の荒くれ刑事が主人公で、謎っぽい女が絡み、事件を追ううちに組織悪が浮かび上がるという、背景や状況設定が「LAコンフィデンシャル」に良く似ているバイオレンス・アクション映画です。違うのはこちらはストーリーが散漫で、展開の方向が一向に定まらない、ということ。(-.-)
 帽子を目深かに被りスーツをバシッと決めた4人組刑事が、マフィアのボスをいたぶる冒頭のシーンはかなりカッコ良く、その後の展開が期待されたのですが・・・。どうも主人公(ニック・ノルティ)の女関係が絡むとストーリーがなにやらグチャグチャしてしまって、締まらなくなります。浮気がばれて女房(メラニー・グリフィス)から平手打ちを喰らい、しょげ返っているようではね・・・。この手の巨大な組織悪に挑むというようなものは、下手なサイド・ストーリーを付けずに直球勝負の方がイイと思うのですが・・・。
 だいたい、見ているものが誰でも分かってしまうような死因を、最後になって主人公が気がつくなんてのもいただけません。マフィアのボスやFBIの刑事をあんなに痛めつけているのに、何のお咎めもないというのも不自然。
 私のお気に入りの俳優、ジョン・マルコビッチが悪玉のボスで登場していますが、あんな使い方ではもったいないです。彼の個性がもっと滲み出るような役でないと。
 事件に絡む主人公の浮気の相手を演じているのは、ジェニファー・コネリー。日本では「LUX, Super Rich」のCMで有名ですが、この人の超弩級の胸は一見の価値ありですぞ。(@_@)
(ビデオ)

1999.02.02 ロレンツォのオイル ★★★★★

 これはスーパーマンとスーパーウーマンのお話です。
 発病後2年以内に確実に死に至る難病の「副腎白質ジストロフィー」にかかった息子(ロレンツォ)を、医学知識の全く無い夫婦が、超絶的努力によってその病気の薬を自ら作り出してしまうという、殆ど信じられない、しかし「実際の話」を描いた映画です。発病当時小学生だったロレンツォは、現在は機能回復の訓練はしているものの、立派に成人しているとのこと。その薬の名が「ロレンツォのオイル」で、今なお世界中で使われています。
 この映画は、「自分の子供の命を救うために、親はどこまで努力ができるか」、「死と隣り合せで苦痛で苦しんでいる患者の延命行為は、正しいか」、「ある医療行為について、統計的数値による医学的根拠の立証まで、それを施(ほどこ)さないことは正しいか」、「医師は、患者の親族の真意を完全に理解することはできるか」など、多くの問題を投げ掛けていると思います。そして製作者はその答えも暗示しています。
 映画としても、夫婦の凄まじい超人的努力と、演ずるニック・ノルティスーザン・サランドンの迫真の演技と相まって、最後まで圧倒されてしまう一級の作りになっています。ロレンツォ役のザック・オマリー・グリーンバーグも幼いながらも驚くべき演技力で、泣かされます。
 子を持つ親はもちろんのこと、世の全ての医師に是非見てもらいたい映画です。
(ビデオ)

1999.02.01 キリング・タイム ★★★

 マフィアのボスを女の殺し屋を雇って殺させ、更にその殺し屋も仲間を使って抹殺しようと企む刑事。ところがマフィアのボスがまだ殺されていないのに、手違いから仲間がその女殺し屋を殺しにかかってしまった・・・。
 98年のサンダンス映画祭で最優秀撮影、編集彰を受賞したイギリス映画で、新感覚のバイオレンス・アクション映画です。
 時刻が表示されて、時間の経過に連れてドキュメンタリー風に描かれる展開がなかなかユニークです。シリアスなストーリーなのですが、一方で女殺し屋を狙う側の手違い、勘違いが徹底的に滑稽に描かれていて、楽しめます。なによりも黒のレザーに身を包んだスタイル抜群の女殺し屋(ケンドラ・トーガン)が、カッコ良すぎ。なんであんなに足が長いのでしょう。しかも彼女はイタリアの殺し屋で、英語が一切喋れないのです。そしてこのことが結末への伏線となっています。
 残念だったのは、彼女のガンさばきが極めてぎこちなかったこと。あれでは弾が標的に当たりそうもないのですが・・・。(-.-)
(ビデオ)

1999.01.31 陰謀のシナリオ 

 イヌイットの少年が謎の変死を遂げ、同じアパートに住むヒロイン(ジュリア・オーモンド)が彼の足取りを探っていくうちに、隕石落下に絡む巨大な組織的陰謀が明らかになっていく・・・というサスペンス作品です。
 隕石落下、グリーンランドの基地、謎の寄生虫などを含め、随分面白そうな要素があるにも係わらず、全くの期待外れ。展開が雑で、ストーリーが散漫、125分と冗長・・・。
 これでは劇場公開が出来なかったのは無理もありません。せっかく名優ガブリエル・バーン(「ユージュアル・サスペクツ」など)を使っているのに、これでは彼も不本意でしょう。
 まあ殆ど「火曜サスペンス劇場」という感じですね。(-.-)
(ビデオ)

1999.01.27 スイート・ヒアアフター ★★★

 97年カンヌ映画祭でグランプリを受賞し、アカデミー賞でも2部門にノミネートされた話題作。カナダ映画で、原題も「The Sweet Hereafter」(「穏やかなその後」)です。
 小さな町のスクールバスが厳寒の湖に転落し、一人の少女(サラ・ポーリー)を残して22人の児童が死亡。悲しみに暮れるその町に、事故の責任者を相手に訴訟を起こすために、一人の弁護士(イアン・ホルム)がやってきます。調査を進めるにつれて次第にその町の複雑な人間関係(不倫や近親相姦!)などが明らかになっていきます。ようやく弁護士が訴訟に持ち込もうとすると、最後にその生き残った少女があることをしかけます・・・。
 「ハンメルンの笛吹き」(ドイツの童話)を引用しながら、淡い色の美しい映像とともに、静かに静かに物語が進んでいきます。しかし製作者の意図は必ずしも明確には表現されません。見方によっていかようにも解釈ができるというか、何がなんだかわからない、というか・・・(^_^;)。少女は、笛吹きになりたくなかったのか、一人だけ取り残されたくなかったのか。父への復讐だったと解釈するのが私としては一番納得するのですが・・・。でも不倫はともかく、近親相姦を絡めたのは何が言いたかったのでしょう?
 イアン・ホルムは「エイリアン」でのサイボーグ役の印象が、私には強烈に残っています。ここでもいい演技をしていて、特に自分の堕落した娘をかつての記憶とダブらせて悲嘆するシーンには泣かされます。サラ・ポーリーは、ウマ・サーマンにソックリでした。
(ビデオ)

1999.01.25 コレクター ★★

 連続誘拐・殺人犯を、プロファイルを駆使して追いつめる刑事(モーガン・フリーマン)の活躍を描くサイコ・サスペンス。原題は「Kiss the girls」で、「コレクター」などという陳腐な邦題よりこちらの方が良かったのに・・・。
 原作はアメリカで大ベストセラーになったそうな。だとしたらこの映画化は失敗でしたね。私は最後まで余り緊迫感が伝わってきませんでした。
 まず、冒頭の本題とは関係ない、主人公の立場を紹介するようなエピソード(この手の映画にはよくありますよね)が、全然インパクトがないのです。観客にひとつ儲けた、と思わせる位のものにしなくては・・・。
 終盤まで犯人は不明なのですが、その動機や心理描写が説明不足なために、犯人が誰か判ってもなかなか説得力がありません。もっと伏線を用意してくれなくてはね。一緒に捜査に加わる女性インターン(アシュレイ・ジャッド)もその関わり方が強引すぎます。
 モーガン・フリーマンは相変わらず渋く、アシュレイ・ジャッドは、「ノーマ・ジーンとマリリン」の時より断然良くて光っています。俳優はA級、映画はB級の典型でした。(-.-)
(ビデオ)

1999.01.24 マイケル・コリンズ ★★★

 和平の道を少しずつは歩んでいるとはいうものの、今なお紛争が続いているアイルランドとイギリス。この映画は20世紀初頭、それまで700年もイギリスの支配が続いていたアイルランドが、植民地状態から抜け出すきっかけを作った実在の人物、マイケル・コリンズの31歳という短かくも激しい生涯を描いたものです。
 前半はドキュメンタリー・タッチでイギリスとのテロによる攻防を描き、後半は内紛を絡めた政治的ストーリーでじっくり見せてくれます。北アイルランド問題を勉強するには、格好の材料ではないでしょうか。
 でもどんなに彼がヒーロー的に描かれていたとしても、テロで容赦なく殺人を犯す両国の悲惨な戦いの歴史を、どうしても一方では冷やかな眼で見てしまうのは仕方がないことでしょう。彼がイギリスの手によるのではなく、かつて仲間だった者の側の銃弾に倒れたのも一層悲劇的で空しさが増します(ごめん、ネタバレですね)。
 コリンズを演じているのは彼自身もアイルランド出身のリーアム・ニーソンジュリア・ロバーツが彼の婚約者役で出演していますが、彼女の良さが余り活かされていないような・・・。
 こちらで「アイルランド紛争の歴史」とともに実際のコリンズの写真が見られますが、うーん、ニーソンよりいい男かも・・・。
(ビデオ)

1999.01.20 ハミルトン ★★★

 ハリウッド映画ライクでありながら、珍しくもこれはスウェーデン映画なのです。「ピース・メーカー」と同じテーマの、テロリストによる核弾頭の強奪とそれを阻止する側の攻防を描いたもの。というか、序盤は「ピース・メーカー」と全く同じですね。
 途中までは誰が主人公なのか判らず、いきなり「ああ、あなたがヒーローだったんですか・・・」という感じ。そこそこ見せ場が散りばめられていてまあ退屈することはありませんが、どこかで見たことのあるような場面の連続・・・。
 ロシア人同士の会話のシーンなのにたどたどしい英語になっていると思ったら、わざわざロシア語を英語に吹き替えたらしい。ったく、お子様向けの映画じゃないんだから・・・。
 「ハミルトン」というのは主人公の名前で、ピーター・ストーメア(そんなにマイナーな俳優ではないらしい)が演じていますが、その割にはイマイチ存在感が希薄です。
 「スター・ウォーズ」3部作の大ヒーロー、ルーク役のマーク・ハミル(!)が老けてしまって、悪玉を演じていたのがいかにも悲しい・・・。(;_;)
(ビデオ)

1999.01.18 悪魔を憐れむ歌 ★★★★

 凶悪殺人犯人を処刑室に送り込んだ敏腕刑事(デンゼル・ワシントン)と、それがきっかけで彼に取り憑く悪魔(悪霊)との凄惨な戦いを描いたオカルト・ホラー作品。悪魔というのはあんなふうに、人間にリレーのように次から次へと乗り移って行くものなんですね。悪魔の視界を表現したエフェクトには、シュワちゃんの「プレデター」を思い出しました。
 終盤までは予告編などで知っていた範囲内の展開でしたが、ラストの主人公の起死回生の「しかけ」が、この映画のすべてと言っていいと思います。途中で先が読めてしまっていても、このシーンだけは俄然画面に引き込まれてしまいました。冒頭の不可解なシーンがつながっていくあたりの展開も、なかなか見事。 
 ただ、悪魔は何故もっと早く死刑囚から逃れていなかったのか、とか、冒頭で主人公には何故乗り移れなかったか、とか、ラストはタバコではなくてピストルの方が確実なのに、など、疑問点はやや残りましたが・・・。
 ラストのラストのワン・ポイント、あれは無かった方がいいと思ったのは私だけでしょうか?
 脇を固める、ジョン・グッドマンドナルド・サザーランド等も好演。
 ローリング・ストーンズの大ヒット曲、「Time Is On My Side」のイメージが悪くならなかったかな・・・?
(ビデオ)

1999.01.17 フェノミナン ★★

 平凡な自動車整備工(ジョン・トラボルタ)が、ある時得体の知れない光を浴びてから回りの者が気味悪がるほどの超能力を身に付けてしまった・・・。これはSF映画かと思わせて、さにあらず、感動的な(?)ヒューマン・ドラマなのです(これ以上の描写はネタバレになってしまう)。泣ける映画ということでも話題となったとのこと。原題も「Phenomenon(現象)」です。
 超能力を使っていくらでも金儲け出来そうなのに、素朴で身近なところでのアイディアを、回りのもの皆と分かち合おうとする純朴な主人公。彼と距離を置きながらも、次第に彼の優しさに惹かれていく未亡人(キーラ・セジウィック)。彼が彼女に髪を切ってもらい、ヒゲを剃ってもらうシーンが話題になったようです(私はそんなに感じ入りませんでしたが・・・)。愛の表現方法の新しいアイディアですね、これは。
 前半のSF的な展開から、後半からは常識的な物語になりますが、かえってその方が納得がいくでしょう。アクション映画とはまた違った味の、トラボルタの演技を楽しむ映画とも言えます、ね?
(ビデオ)

1999.01.15 犯罪心理捜査官2 ★★★★

 いかにもB級的な感じだったので余り期待しなかったのですが、どうしてどうして中身はA級で、随分楽しめました。
 「羊達の沈黙」と同様、プロファイルによるサイコ的な連続殺人の犯人探しで、殺人の動機やその手口の解明にグイグイ引き込まれてしまいます。それに加えて、主人公の女性捜査官(ケリー・マクギリス)の封印された過去のある出来事を絡めて、極めて興味深い展開に描かれています。
 1作目の「犯罪心理捜査官」は未見ですが、ヒロイン役も異なっていますし、これは単独でも十分楽しめる秀作だと思います。少し残念だったのは、ラストの展開が平坦だったこと。もう少しヒネリや工夫があればもっと良かったのに、と思います。
 ケリー・マクギリスはそれなりに好演していますが、彼女や犯人役にもっとメジャーな俳優を配していれば、かなり大作っぽくなったのではないでしょうか?
(ビデオ)

1999.01.14 スクリーム2 

 本国のアメリカでも日本でも主に若い人達の間で評判になり、かなりヒットしたということですが、私にはアンビリバボです。
 第2作目だから当然と言われればそれまでですが、これは1作目を見ていないと展開が殆どチンプンカンプンで分からない映画なのです(私は1作目を見ていましたが、それでも良く分からなかった(^_^;))。
 真犯人の意外性もそれなりの限度があってしかるべきというもの。これでは、「実は隣町のタバコ屋のおばちゃんが恨みを持っていた」というのと同じで、ルール違反といわれても仕方がないのではないでしょうか。また1作目でもそうでしたが、本作でも盛んに劇中で「映画の2作目は面白くないか?」などという茶化した議論が出てきますが、ワザとらしくてシラケてしまいます。更にいくらジェットコースター・ショッカー・ミステリーだといっても、余りにも安易に人を殺し過ぎなのでは・・・。
 ヒロインのネーヴ・キャンベルは一見美形ですが、良く見ると殆ど「猿の惑星」。m(_ _)m
 またしても若い人とのギャップを感じて、落ち込んでしまう私でした。(-.-)
(ビデオ)