映画、ビデオ短評

★★★★★:満点(五つ星) :半星

2003.10.5〜2004.3.1 1ページ目へ  トップへ


2004.03.01 アバウト・シュミット ★★★★

 いつ行ってもレンタル中で、中々ゲットできなかった作品。見れないとなると益々見たくなるものです。(^_^;) 先般放映されたゴールデン・グローブ賞の授賞式で、最優秀主演男優賞を受賞したジャック・ニコルソンの余裕の表情が印象的でした。本年度アカデミー賞主演男優賞にもノミネートされましたね。
 主人公ウォーレン・シュミット(ニコルソン)が66歳の定年を迎え、会社の自分の個室で寂しそうに物思いに耽っているいるところから、物語は始まります(むむ、良い雰囲気だ)。66歳まで働けるというのは何とも羨ましい限りですが・・・。
 彼の後任が小生意気な若造で、彼が訊ねて行っても邪魔者扱い。別れてから大声でなじる彼。長年連れ添った妻にも、不満タラタラ・・・。彼の言葉を遮って自分ばかり喋る、座り方がイヤ、などなど(いいぞ、いいぞ)。そんな主人公に突然災難が・・・、という展開です。
 フォスター・プランの義理の息子への手紙、という形で主人公の心情を吐露していく、という巧い進行。しかも、実際とは違うきれい事に糊塗してしまう手口も絶妙です。
 前半のテンポの良さに比べ、後半やや足踏み状態となるのが残念。もう少し、キビキビと進めて欲しかった。ラストはありきたりではありますが、ニコルソンの名演技と相俟って、泣かせられます。結局、人生ってそんなものなのですねぇ・・・。
 アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたキャシー・ベイツは、ひたすらあの入浴シーンが衝撃(笑撃?)的。見たくはありませんでした。(-.-)
 本作品のシュミットに、自分の将来、或いは現在を重ね合わせ、身につまされる世の男性は多いことでしょう。彼の不幸の一番の原因は、退職した後、全く無趣味であったことだと思います。その点、私は大丈夫かな・・・?(^_^;)
(DVD)

2004.02.22 ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還 ★★★★★

 とにもかくにも三部作の最終章です。いかに話があちこち飛ぼうと、主人公らが絶体絶命のピンチを迎えようと、これで物語が完結するのですから観ていて安心。第一部などは、満足感に浸りながらも、ええ?という感じでしたから・・・。
 休日の早朝8時からのシネコンでの上映。起きてから水分を一切取らずに、3時間23分の上映時間に備えます。ど真ん中で両脇、前の席に誰もいないという好環境での観賞でした。(^_^)
 冒頭のゴラムのエピソードは秀逸。いかにもこれがゴラムの前身だなあとつくづく感心させられるような男優(アンディ・サーキス)の起用です。と思ったら、サーキスはゴラムのCGのサンプリング演技をしていた当人だったのですね。似ているはずです。
 アラルゴン(ヴィゴ・モーテンセン)やガンダルフ(イアン・マッケラン)を中心とした城などでの大戦闘シーンと、フロド(イライジャ・ウッド)とサム(ショーン・アスティン)がゴラムに邪魔されながらもひたすら指輪を滅びの山に捨てに行く、という主に二つのストーリーが交互に展開されます。トールキンの原作はもっと複雑なのでしょうが、これは極めて判りやすくて結構・・・。
 とにかくそれぞれのシーンに興奮すること、しきり。大きな城の俯瞰映像や両軍の大戦闘シーンは、CGであると判っていても圧倒的な迫力です。しかし、明らかに「スターウォーズ」へのオマージュですね。
 フロドとサムの道行きが、対称的な静のシーンでアクセントになっています。今回の主役はフロドではなく、サムですね。彼の忠誠心と勇気に拍手。
 突っ込みどころも満載でした。最初から鷹に乗って滅びの山に行ったら・・・、とか。(^_^;)
 それにしてもエピローグが幾つもあって、長すぎました。ここをカットしてでも、冥王サウロンの造形を見せて欲しかった・・・(DVDの長尺版待ちでしょうか)。
 誰かではありませんが、「いやあ、映画ってホントにいいですねぇ」と叫びたくなる質量とも大満足な作品です。オスカー、確実にいただきでしょう。(^_^)
(劇場)

2004.02.16 アイデンティティ ★★★★

 「ニューヨークの恋人」などのジェームズ・マンゴールド監督による、サイコ・ミステリー。モーテルに集まった(集められた)11人が次々に殺されていくという、どこにでもよくありそうなお話。ところが次第に捩(ねじ)れて行ったかと思うと、ラストに、おお、そう来るか!!という大どんでん返し(?)が二段に渡って待ち構えています。
 プロローグで、盛んに「解離性同一性障害」などの言葉が、連続殺人犯に絡ませて表示されます。後で見直したら、誕生日の日付なども・・・。これで結末が予見できる人はエライ!途中の展開でも、ふむ、ツメが甘いなとか、ええ?というシーンがあるのですが、最後の設定でそうかそれならば、と納得できます。ミス・ディレクションの工夫もここまでしないといけないということでしょう。脚本家も大変ですね。
 ただ、斬新なアイディアはお見事ですが、一方で少々納得がいかない点も・・・。本人以外の、特に精神科医まであのシチュエーションが判る設定であることや、ラストの護送の方法が安易すぎること、など。
 序盤の数名がモーテルに集合するきっかけの時間軸を遡る描写は、「メメント」のパクリ的ではありますが、一気に観客を引き込んでしまう手法はお見事。
 主役は、相変わらずトッちゃん坊やのジョン・キューザック。安心して見れる演技です。怪しげなレイ・リオッタも予想どおり、怪しい・・・。(^_^;) クレア・デュバルも負けず劣らず、怪しく吠えます。死刑囚役のプルイット・テイラー・ヴィンスの瞳の揺れが、スゴイ。
 でも、「シックス・センス」、「アザーズ」と同様、二度と同じアイディアは使えません。(^_^)
(DVD)

2004.02.08 トゥームレイダー2 ★★

 プレミア誌で「大丈夫か、ヤン・デ・ポン監督」などと言われ、星一つ(四つ星が満点)。そんな不評をものともせずに、ビデオ・ショップでは山ほど陳列して、大作をアピール。ゲームの愛好者も狙っているのでしょう。
 今回のララ・クロフト(アンジェリーナ・ジョリー)は、世界征服のためにパンドラの箱を狙う男(シアラン・ハインズ)と攻防を繰り広げ、ギリシャ、中国、アフリカを飛び回ります。
 確かに、高層ビルからのダイブ、ロープでの逆さ釣り落下などの見せ場はありますが、全体として凡庸。おお、そう来たか!などと言うようなヒネリや意外性が全く無いのです。雰囲気的にもインディ・ジョーンズ、007、ロード・オブ・・・、ハリポなどのゴチャマゼ状態で、新鮮味なし・・・。終盤のクリーチャーも何処かで観たような気がします。
 アンジェリーナは殆どのアクション・シーンをスタント無しで頑張ったらしい。大きな胸と唇は相変わらず。でももう、一児のお母さんなのですね。
 「トータル・フィアーズ」でロシア大統領役で好演したシアラン・ハインズも、本作品では平凡な悪役以上ではありませんでした。
 ところでパンドラの箱からはこの世の全ての災厄が飛び出していって、箱の中には「希望」だけが残っているはずですから、開けても良かったのでは・・・?(^_^;)
(DVD)

2004.02.02 ミスティック・リバー ★★★★

 かなり好評との噂のうちに、何とアカデミー賞で作品賞、監督賞(クリント・イーストウッド)、主演男優賞(ショーン・ペン)、助演男優賞(ティム・ロビンス)、助演女優賞(マーシャ・ゲイ・ハーデン)、脚本賞の主要6部門にノミネートされてしまいました。早速近くのシネマ・コンプレックスへ。上映開始間際で慌てて座った隣りの席には、何と乳飲み子を抱っこしたお母さんが!?。最悪の観賞環境を覚悟して、スタートした画面に見入ります。(-.-)
 ショーン・ペンの悲痛な表情のカット写真だけが予備知識。多分殺人が起こるのだな、と冒頭から身構えます。3人の少年が出て、一人がショーン・ペンにソックリ。そうか、これも「スタンド・バイ・ミー」の類いかななどと思っているうちに、陰惨な展開が・・・。
 やや前半ユルイ感じがするものの、中盤以降全てに計算し尽くされたかのような密度の濃い構成に唸らされます。イーストウッド、やりましたね。
 ミステリーとしてはやや隙がある(通報時のあんな大事なことを最初に気が付かない、ハーデンの言動が腑に落ちない、殺人の動機が弱い、等)ものの、緊張感は最後まで持続します。ラストで観客は突き放され、一人の男の(いや、二人か)呪われた運命を嘆かずにはいられません。併せて、女の恐さも・・・。後味はハッキリ言って、悪いです。(^_^;)
 キャストは、上記のようなこれ以上無いような堅いメンバで、ケビン・ベーコンローラ・リニーを含め、全員がオスカーのノミネートもむべなるかなという熱演です。特に私はベーコンが久々に「良い男」を演じていて嬉しくなりました。ラストのペンに向かっての「バーン」は、「覚悟しておけよ」ですよね。
 隣の赤ちゃんは少しグズって、一回だけお母さんが退席されたくらいで、終始よい子でした。良かった・・・。(^_^;)
(劇場)

2004.01.25 ラスト サムライ ★★★★☆

 本当はこのような日米合作映画のようなもの(純粋なハリウッド映画ですが)は、敬遠しようと思っていました。ところが意外と好評とのことで、また渡辺謙オスカー候補などという噂に、遅まきながら休日早朝の映画館へ。おお、がら空きだ・・・。(^_^;)
 時は19世紀末。南北戦争の英雄、オールグレン(トム・クルーズ)が、近代化を目指す日本政府に軍隊の教官として招かれるところから物語は始まります。
 最初は史実に基づいた作品なのかな、などと思って見始めたのですが、途中まで見て、いくら日本史に疎い私でも西南戦争をモデルにしたフィクションだと判りました。勝元(渡辺)などという維新の反逆児はいませんでしたよね。
 構成は見事だと思います。近代化の波に消滅せざるを得ない武士道と、それを守ろうとする正に最後の侍の生き様。ラストでオールグレンが明治天皇(中村七之助)に言う、「(彼の死に様でなく)どう生きたかを話しましょう」というセリフは感動的。
 見せ場の戦闘シーンもCG臭くなく、それでいて大迫力。戦闘終結のシーンは如何にもな演出であるにも関わらず、泣かされました。
 本作の評判のもう一つに、ハリウッド映画ではお約束の「変な日本描写」が無いということ。渡辺や真田広之が、「そんなことは日本ではしませんでしたよ」などと、アドバイスをしたのだとか。にも関わらず、やはりありましたねぇ。序盤の横浜港から見える富士山、あんなに大きく見えるか!明治天皇は長〜い階段を上がっていったところにおられた、あれはどこだ?等々。加えて、英語の堪能な日本人が多過ぎたり、勝元があの状況で上京し、安易に捕まってしまったり、小雪が夫の仇を容易に受け入れたり、などというところも合点がいきません。
 トムの殺陣は中々お見事。相当訓練しましたね。渡辺、期待しすぎたせいか、重み、迫力という点で今一つか・・・。真田、あれでは勿体ないね。
(劇場)

2004.01.19 エニグマ ★★★☆

 あのミック・ジャガーの初のプロデュース作品なのだそうな。映像特典で自身もパーティ会場の客としてチョイ出していることが披露されていましたが、ナニ、言われなければ到底判りません。(^o^)
 タイトルは第二次世界大戦でドイツ軍が使用した「暗号システム」のこと。「U-571」でも取り上げられていました。
 原作はベストセラーらしいのですが、そういうものの映画化にありがちな総集編的作りになっています。特に後半は飛ばすこと、飛ばすこと。いつの間に主人公はそこまで解明したんだ?という感じです。
 しかし、ミステリアスな女性の失踪や、いわゆる「カチンの森」事件と絡めて、エニグマの解読メカニズムなどの内幕が披露されていく展開は極めてスリリング。最後まで引き込まれて退屈することはありません。ただ、後半はやはり説明不足だと思いますが・・・。
 本作品の大きなポイントは、あのケイト・ウィンスレットイモ姉ちゃんぶり。出産直後だったようですが、あの重心の低さはどうだ・・・。(^o^) キーとなる失踪女性を演ずるのは、「ディープ・ブルー」の時とは印象がかなり異なるサフロン・バロウズ。こんなに大柄でしたっけ?
 数学者で暗号解読チームのリーダである主人公を演ずるのは、ダグレー・スコット。う〜む、地味な人ですね。むしろ諜報部員役のジェレミー・ノーザムの方が目立っていました。
 しかしEnigmaと聞けばどちらかと言うと、ヒーリング・ミュージックの音楽グループを想起してしまう私なのでした。(「Sadness」は類い稀なる名曲だ!)
(DVD)

2004.01.18 山猫は眠らない2 狙撃手の掟 ★★★☆

 第一作目(93年)は未見ですが比較的評判は良かったようで、本作にも期待しての観賞です。
 引退した腕利きの元狙撃手(トム・ベレンジャー)に、民族浄化を進めている将軍を狙撃・暗殺する任務がCIAから与えられます。狙撃のための観測手に黒人の死刑囚の相棒(ボキーム・ウッドバイン)が付いて、ハリウッドお得意のバディー映画の出来上がりです。
 前半の狙撃シーンとその直後の逃亡シーンは、緊張感が一杯。その割には後半はダラダラ感が出てしまっているのは、残念。余りお金をかけていないせいか、極めて地味目に展開されます。ただ、車のクラッシュ・シーンでは不自然なほど、爆薬が使用されていますが・・・。(^_^;)
 終盤の敵側の狙撃手との攻防は「スターリングラード」に似ていますが、余りヒネリが無いせいか、あちらに歩があるようです。敵側狙撃手の人物像の説明が一切無いのも、感情移入を妨げます。
 現地での地下組織の協力者に紅一点のエリカ・マロジャーン。訳ありのようでいてそうではないし、余り活躍しないし、しかも何故か主人公が彼女を邪魔者扱い・・・。もう少し巧く彼女を活かせなかったものでしょうか。
 ニコリともしない主人公のベレンジャーは、貫録十分。目が霞むなどの老化現象が意味あり気で、そうでなし。最初はチンピラ風のウッドバインは、展開に連れて味を出してきて、好演です。
 それはそうと、第一作目の原題「Sniper」をこの邦題にしたセンスに脱帽。ただし、本作のサブタイトルは余計でした。
(DVD)

2004.01.12 ラスト・キャッスル ★★★

 旧作の映画のDVDが大量に新入荷で陳列されていたもののうちの一つ。主演がロバート・レッドフォードですから、まあそんなに外れることはなかろうと・・・。(^_^;)
 戦争アクションものかと思いましたがそうではなく、軍刑務所を舞台にした作品です。ここでいうキャッスルとは刑務所のこと。上部の司令を無視ししたために部下を死なせてしまった主人公(レッドフォード)の陸軍中将が収監されるところから、物語が始まります。
 刑務所所長(ジェームズ・ガンドルフィーニ)が悪役であるなど、前半の雰囲気は「ショーシャンクの空に」に似ていますが、中盤以降、かなりのワルノリ路線を突っ走ります。エンタメとしては良いのでしょうが、そこまでやるか!という感じで、少々引いてしまいました。
 一癖も二癖もある戦争犯罪人である収監者達が、等しく主人公に同調してしまったり、終盤で、その経過の説明が無く、いきなり手作りの戦闘武器が現れるなど、かなり御都合主義的な強引さも目立ちます。
 レッドフォードが如何にも好みそうなヒロイズム描写も、良くも悪くもここに極まれり、という感じ。レッドフォードの顏の皺は益々深くなりましたが、鍛え上げられた上半身はとても65歳には見えません。
 ガンドルフィーニはここでも良い味を出していて、レッドフォードを引き立てます。
 本作は2001年の公開作品ですが、かなり古めかしい米国愛国主義的匂いがプンプン。もっと昔に公開すべき作品でした。
(DVD)

2004.01.04 ドリームキャッチャー ★★☆

 スティーブン・キングのベストセラー小説の最新映画化作品。監督は「白いドレスの女」などのローレンス・カスダンです。 
 「ドリームキャッチャー(Dreamcatcher)」とはアメリカ原住民のお守りのことで、窓に吊るしておいたり、ベッドのわきに飾っておくと、良い夢は網を通り抜け、悪い夢は網に絡み取られて朝日が射したときに溶けてしまうと考えられている、ものなのだそうな。本作でたびたび登場するそれは五つの輪で出来ていて、主人公4人とキーとなる人物を象徴しているとのこと。
 山小屋に幼なじみの4人が集まり、少年時代に共有した不思議な体験を回想する、などと言う序盤は、「スタンド・バイ・ミー」にそっくり。キング特有の甘酸っぱい郷愁感溢れる展開で、これは中々良いのではないか、と思ったことでした。ところが次第に意外な方向に話が進んで行って、「遊星からの物体X」、「エイリアン」、「サイン」、「アウトブレイク」といったSFホラー映画のゴッチャ混ぜ状態に突入していきます。
 もう少しバランス良い構成にすることが出来なかったのでしょうか?特にラストのキーとなる人物の正体に、口アングリ・・・。原作でもそうなのでしょうか。そういう意味では、特典映像にあった「もう一つのエンディング」の方が格段に良いと思うのですが・・・。ILMのスタッフが結集して作り上げたというエイリアンも、かなりB級っぽくて、昔のウルトラQ(古い!)に出てくるような怪物を思い出してしまいました。 
 御大モーガン・フリーマントム・サイズモアが脇を固めるのですが、このフリーマンの描き方が何とも座りが悪くて、物語の焦点をぼかしています。
 4人の中ではヘンリー役のトーマス・ジェーンが印象的。ホンモノとエイリアンの表情の使い分けが巧みです。
 キングが「この15年で最高の映画化作品」と認めたと言う一方で、全く正反対に彼が本作品を見てかなり憤慨した、という噂もあったりします。私は、後者が正しいのではないかと思うのですが・・・。(^_^;)
(DVD)

2004.01.02 グレン・グールド エクスタシス ★★☆

 カナダが生んだ天才ピアニスト、グレン・グールドのドキュメンタリー映像集です。フランス製作なので、終始フランス語であるのが何となくややこしい・・・。
 「バッハのピアノ演奏において彼は神となった」などと言われる一方で、彼の奇行は有名。コンサートで聴衆を前にして、ピアノ椅子の高さの調節に小一時間費やす、父親の作ったピアノ椅子にしか座らない、人に会わない、夏でも厚着で手袋をはめている、インクが体に悪いので新聞は持たない、一生涯独身、凄まじい偏食などなど・・・。おまけにある時から「聴衆は悪」と、コンサート活動を止めて、スタジオ演奏活動に没頭したりするのです。
 ただし、こういった奇行の数々は、この映像集では殆ど紹介されません。生前関連した人々が次々に登場して、口々にグールドの天才ぶりを披露します。その間を縫って、グールドのピアノ演奏映像が若干挿入されるという按配。
 比較的落ち着いた表情と、まさに**と紙一重的な表情を交互に見せるグールド。ピアノ演奏をしながら空いた手で指揮を取ったり、シェーンベルグのような難曲でも楽譜を一切見ずに全て暗譜しているなど記憶力抜群の様が明らかにされます。しかし、彼が天才であるというのは判りきっているのですから、それを多くの人に言葉で語らせるというのではなく、映像でもっと表現して欲しかったですね。もっと言えば、上記の奇行の様子も見たかったなぁ。(^_^;) 
 ピアノ演奏も細切れのそれではなく、せめて数曲はしっかりしたパフォーマンスを見せてくれても良かったと思うのですが・・・。やや欲求不満となりました。(-.-)
(DVD)

2003.12.22 白いドレスの女 ★★★☆

 前々から気になっていた作品。ただこの手は冒頭を見て、ああこれは見ていた映画だった、ということが往々にしてあるのですが、そうでないことが判って一安心。「レイダース/失われたアーク」や「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」の脚本を手がけたローレンス・カスダンの1981年の初監督作品です。
 余り腕利きの弁護士とは言えない男(ウィリアム・ハート)が、偶然出会った人妻(キャスリン・ターナー)に翻弄されていく様を描きます。
 う〜む、それにしても全体の雰囲気の古めかしさは否めません。良く言えば、フィルム・ノワール(40〜50年代の米国の犯罪映画)的ムードが横溢、悪く言えば、まさしく「火曜サスペンス劇場」的。前半は弁護士が人妻を口説くシーンが丁寧に、丁寧に描かれます。弁護士が「暑さ以外の話ならしてもいいよ」などと声をかけると、「私は人妻よ」とそっけなく答える女。それでも彼が構わず誘い続けると、「亭主が居るって言ってるでしょ」などと髪を掻き上げる女。な〜んだ、誘いに乗っているじゃないか・・・。(^o^) エロチックなシーンも過激そうでいて節度良く(物足りなく、とも言う)、描かれています。
 後半は、前半とは対称的に話が急展開。前半のムードでマッタリ見ていると、置いてきぼりを喰らいます。(^_^;) ヒネリもそこそこあって、最後まで退屈はしません。ただシーンのつなぎの拙さも目立ちます。終盤、人妻がボート小屋に向かっていく当たりのシーンなど、変にぎこちない・・・。
 ラスト・シーンもありがちですが、まずまずではないでしょうか。男の顔が見えないのが、むしろにくい演出です。
 今なら原題(「Body Heat」)をカタカナ表記するのでしょうが、この邦題の方が正解。
 ミッキー・ロークがチョイ出しますが、チンピラ役がピッタリ。キャスリン・ターナーは、実は美人ではない、ということが判りました。(^_^;)
(DVD)

2003.12.15 ライフ・オブ・デビッド・ゲイル ★★★★☆

 映画評論家諸氏には余り評判が良くなく、配給側も力を入れなかったようで、少ない上映館でしか公開されなかった作品でした。私の近所のレンタル・ショップでも数が少なめ。しかし、これは極めて良く出来たサスペンス溢れるエンターテインメントだと私は思います。
 死刑執行まであと3日のレイプ殺人犯・デビッド・ゲイル(ケビン・スペイシー)をインタビューすることになった女性ジャーナリスト(ケイト・ウィンスレット)は、彼が冤罪である証拠を突き止め、彼の命を救うために奔走するのですが・・・、というストーリーです。死刑廃止の是非がテーマとなっており、それを背景に良く練られた完成度の高いサスペンス・ドラマが展開されます。私は好きですね、こういう緊張感。かてて加えて、曲者俳優のケビンが登場するのですから・・・。
 段階を追う謎解き、巧妙にちりばめられた伏線、そしてラストの大どんでん返しはお見事。最後の最後でタイトルの意味が判るとともに、ゲイルの心情が思いやられ、泣かされました。
 溌剌とした大学教授、離婚した妻の元の子供を思いやる父親、酒に溺れる堕落した姿などを演じきるケビンは、改めてスゴイ。ただし、見る者にどうも裏がありそうだと思わせてしまうのは、「ユージュアル・サスペクツ」の彼なら致し方ないところ・・・。ゲイルに殺される設定の元同僚の女性役はローラ・リニー(「トゥルーマン・ショー」で妻を演じた人)。痛々しい全裸も披露しての熱演です。一方「タイタニック」でのローズのイメージが未だに強いケイトですが、ここでは光るものがなく、存在感の薄さが否めません。ミス・キャストかも・・・。
 それにしても本作や「ダンサー・イン・ザ・ダーク」、「デッドマン・ウォーキング」などの死刑ものは、見終えた後も重さが残ります。深夜に一人で観賞した家人は、翌朝「夢見が悪かった」などと嘆いていました。(^_^;)
(DVD)

2003.12.11 ソラリス ★★★

 J.S.バッハの素晴らしいオルガン曲「主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる」がテーマ曲に使われていると知って、以前から気になっていたのが「惑星ソラリス」。しかし、未だにこのロシアの名作を見る機会がありません。
 「ソラリス」は、そのリメイク作品。ジェームズ・キャメロンが製作し、スティーヴン・ソダーバーグが監督するという豪華スタッフです。
 うう、シュールな感覚の作品ですな・・・。自分の意識が実態となって現れるという設定に限って言えば、古典的と言おうか、ありふれていると言おうか・・・。既視感はあるのですが、具体的作品は思い出せません。SF作品というよりも、哲学的なラブ・ストーリーという感じ。
 主人公(ジョージ・クルーニー)とその妻(ナターシャ・マイケルホーン)の出会い、蜜月、悲劇的な別れなどが丹念に描かれ、本題を支えます。宇宙空間は二人の恋愛を語るための背景に過ぎず、必ずしもSFでなくても良かったのかも知れません。
 肝心のソラリスの造形は、何だか誤魔化されているよう。折角のキャメロンなのですから、もう少しVFXに工夫が出来なかったものですかね。
 しかし、クルーニーは自らこの役を望んだというだけあって、さすがにリキの入りようが違います。こういう繊細な演技も出来るのですね。マイケルホーンは眼の大きさだけが印象に残るなぁ・・・。
 退屈しそうで、そんなに退屈はしない不可思議な映画。でも、アメリカでヒットしなかったのは判るような気がします。(^_^;)
(DVD)

2003.12.01 ハルク ★★☆

 これまた、アメコミ・ヒーローものの話題作で、「グリーン・デスティニー」などのアン・リー監督作品です。
 アメコミ・ヒーローものはダークで悲劇性の強い作品が多いのですが、これとて例外ではありません。相当な暗さ・・・。また「ザ・フライ」や「キング・コング」なども想起させられました。
 前半、なかなか巨大ハルクが登場しないというもどかしさはあるものの、丁寧な背景及び人物描写があって、これはまずまずでは、と思ったことでした。ところがお待ちかねの巨大緑色怪物が登場したとたん、雰囲気がガラリ。「ロジャー・ラビット」という実写とアニメの合成映画がありましたが、まさにそれと同じように、アニメが合成されたかのような軽いノリになってしまうのです。
 ILMの作り出す造形は、どうみても陳腐。あの顏、もっと醜くなく出来ないものですかね。ゴムまりのようにポン、ポン弾むのも、いかにも漫画的。巨大化するとスニーカーや衣類は千切れてしまうのに、何故かパンツだけが体の大きさに合わせて都合よく伸びる、というのも合点が行かない。(^_^;) しかも怪獣映画などでよくあるように、その大きさのバランスが場面によって統一されていない感じもします。
 かてて加えて、結局それぞれが何を言いたいのか良く判らないストーリー展開。特に主人公(エリック・バナ)の父親(ニック・ノルティ)の行動が全くもって意味不明です。軍側もハルクを抹殺したいのであれば、何で巨大化したハルクしか攻撃しないのでしょう。(^o^)
 折角のジェニファー・コネリーの情感溢れる演技も、分裂気味な構成の前に台無しです。それにしてもジェニファー(33才)の、あの初々しさはどうだ・・・。
 終始コミック本的なカット割りが多用されていましたが、エンド・ロールまでが吹き出し調なのには笑ってしまいました。(^o^)
(DVD)

2003.11.30 めぐりあう時間たち ★★

 第75回アカデミー賞で9部門にノミネートされ、ニコール・キッドマン主演女優賞のオスカーを受賞した話題作。監督は「リトル・ダンサー」などのスティーヴン・ダルドリーです。
 ヴァージニア・ウルフ(キッドマン)、主婦ローラ(ジュリアン・ムーア)、編集者クラリッサ(メリル・ストリープ)の3人の女性の生き様を並行して描いていく、という構成。キーとなるのはウルフの代表作である小説「ダロウェイ夫人」です。
 ふ〜む、予備知識ががないと序盤はかなり面食らいますね。なかなか3人の関係が飲み込めずにイラつきますが、終盤まで我慢、我慢。最後にそれらが邦題どおり、時を超えて結びつきます。
 同性愛、自殺、精神病などの重いテーマを扱っているのですが、余り説明が多くなく、その分、見る者の判断に負うところが多い映画と言えます。つまり、解りにくいということなのですね、これは。その証拠に、劇場公開時には、半券を持参すると二度目の観賞は1,000円で見られるというリピータ観賞割引などというものがあったのだ。
 私は3人の誰にも感情移入が余りできず、ハッキリ言って退屈でした・・・(途中で寝たかも(^_^;))。
 演技という面では、ムーア及びキーとなる人物を演じたエド・ハリスが断然光ります。特にムーアの老女での顏の表情が素晴らしい。老女メイクも自信があるのか、ずっとクローズ・アップのままでしたし・・・。
 キッドマンは「つけ鼻」をしているのですね。どう見ても不自然で違和感を覚えます。ここを見る限り、つけ鼻をしたキッドマンより、素のメリル・ストリープの方が適役と思うのですが・・・。(^o^)
(DVD)

2003.11.24 ザ・コア ★★★

 地球の(ザ・コア)は回転していて、それにより地球上の電磁場はバランスが取れているのです(知っていました?あるいはホント?)。ところがそのコアの回転が何らかの理由で止まってしまい、人類滅亡の危機にさらされます。人類に残された道は、地底内部で核爆発を起こし、その衝撃で再びコアを回転させること。こうして、前人未到の地底への潜行任務が、6人の専門家に託されたのでした。
 ハハハ・・・、「地底版アルマゲドン」ですね、これは。よくありそうな地球終末パニック映画を、既視感たっぷりに見せてくれます。
 予備知識無しに見れば、何が起きるのかとワクワクさせてくれるツカミは秀逸。ところが解決策が見いだされて、6人が地下に出発した途端、B級SF映画と化してしまいます。
 最後まで誰が残るか、確実に途中で判ってしまったり、潜航艇が進む方法などがどう考えても物理的にいい加減で、オイオイだったり。全体的にSFXも雑で、例えば折角のスリル溢れるスペース・シャトルの不時着シーンを台無しにしてしまっています。
 御都合主義たっぷりで相当雑な演出なのですが、まあこの手の映画で余りそれを言うのは酷でしょう。コアが停止した理由などはヒネリもあり、全体的にはそこそこ楽しめる映画だと思います。
 ヒラリー・スワンク以外はマイナーなキャストで、それがまた地味な印象になっています。ただ、ハッカー役の鼻はスゴイですね。ピノキオの実写版が撮れてしまいます。(^o^)
(DVD)

2003.11.17 リベリオン 反逆者 ★★★☆

 今、レンタル・ビデオ・ショップに行くと、有名大作のタイトルやパッケージを明らかにパクったB級、C級映画が目白押し。まさか、大作と間違えて借りることを狙っている訳ではないのでしょうが、製作者の意図がミエミエで余り良い気分ではありません。本作品はそのパッケージ・デザインに限って言えば、「マトリックス」にソックリ。騙されたつもりでの観賞です。
 確かに主人公(クリスチャン・ベール)らの衣装デザインやスタイリッシュなアクション・シーンは、「マトリックス」を意識しなかったということはないでしょうが、またそれとは違ったオモシロ要素のある、中々見応えのある作品なのでした。
 「マトリックス」に多用されているワイア・アクションは皆無ですし、バーチャルな世界も扱っていませんし、何よりストーリが判りやすいのがよろしい。一番の特徴は「ガン=カタ」と呼ばれるユニークな武術を取り入れていることでしょう。銃撃であるのに、まるで剣術のように接近して相手の行動を予測して闘うというもの。最後の決めポーズには笑ってしまいます。
 「サマランダー」では余り存在感の無かったクリスチャン・ベールが、ここでは何と云っても素晴らしい。もっと注目されて良い俳優ですね。再認識しました。チョイ出のショーン・ビーンも良い味を出していて、印象深し。このような作品にはミス・キャストと思われたのが、エミリー・ワトソン。演技は流石ですが、やはり違和感がぬぐえません。もっと綺麗系の採用を・・・。
 昨今の日本ブームは、この作品にもアリアリ。日本刀で、顏がスルリと・・・。(・・;)
(DVD)

2003.11.16 死霊伝説 ★★

 スティーブン・キング原作の「呪われた町(Salem's Lot)」の1979年のテレビ映画化作品。183分の本作品が余りにも完成度が高いため、2時間程度に編集されて劇場公開もされたのだそうな。
 一口に言うと、古典的吸血鬼の物語。メイン州の田舎町に現れた吸血鬼と、故郷に戻ってきた文筆家の主人公(デイヴィッド・ソウル)が対決をするというお話です。
 とにかく映像と言い、音楽と言い、古臭い・・・。3時間の長尺ということもあって、お話のテンポはのろく、ダレてしまいます。長い割には、ヒロイン(ボニー・ベデリア)のその後の顛末など、説明不足と思われる部分があったりするのだ。
 本題に余り関係ないような尻軽主婦の浮気エピソードが挿入されますが、ベッド・インのシーンでもしっかり衣服を着ているのは、テレビ用とは言え、苦笑してしまいます。
 吸血鬼の造形は、いわゆるクリストファー・リーなどのドラキュラ的ではなく、丸坊主のノスフェラトゥに近いもの。結構ホラーとしては、ドキっとする場面はあるのですが、トリック撮影(SFXという言葉は当てはまらない)も稚拙で、全体としてB級ムードです。「完成度が高い」というのは、どこを指しているのでしょう。
 しかし、原作はキングの初期の作品ながら名作の誉れ高く、ベストセラーとなったそうですから、やはり脚本と映像が巧くないのでしょう。監督はトビー・フーパーで、同監督作品の「ポルターガイスト」や私の好きな「スペース・バンパイア」に比べ、手抜きしたとしか思えません。予算が無かったせいかな・・・。(^_^;)
(DVD)

2003.11.15 ジュリア (★★★)

 モニカ・ベルッチ主演のしっとりとしたラブ・サスペンスものかな、などと間違えて見てしまいました。「ヘア無修正版」などという副題に誘われた訳では決してありません(大うそ)。(^_^;)
 イタリアのどうしようもないドタバタ喜劇。後半は早送りしてしまいました。モニカのヘア・ヌードも必然性、全くなし。必然性、なくてもいいか・・・。(^_^;)
 時間と金、返せ・・・(それでもモニカには星三つ)。
(DVD)

2003.11.09 マトリックス レボリューションズ ★★★★

 ウォシャウスキー兄弟監督による三部作シリーズの完結編。全世界同時公開というのは、海賊版を作らせないためなんですってね。公開後三日目の土曜日というのに、劇場はさほど混んではいませんでした。う〜む・・・。
 二作目であれだけストーリーを発散させたので、最後をどうまとめるかが最大の興味の的。某全国新聞で凡作などと酷評されていたので、まさか「夢オチ」なんかではなかろうな、などと勘ぐっての観賞なのでした。(^_^;)
 二作目と同時に製作したというだけあって、本作はまさに続編という感じ。イントロや「つかみ」もなく、いきなりドラマが始まります。相変わらずの解りにくさは残るものの、前作よりはストレートな展開で結構、結構。ラストは、ほう、そう来たか、と言う感じで、まずまず納得です。
 終盤のザイオンでの戦闘シーンが最大の見せ場でしょう。大画面に眼が釘付けになりました。例の電気イカがウジャウジャ。「エイリアン2」からヒントを貰った(多分)大型ロボットが銃弾をバンバン。CG製作者のうち、少なくとも3人は発狂していますね。間違い、ないっ!!(^o^)
 見終えて必ずしも後味が良くないのは、終盤の悲壮感漂う現実世界での展開のせいでしょう。ま、あの方が余韻を残すことは間違いありませんが・・・。(-.-)
 しかし、本シリーズはマトリックス内でのスタイリッシュなアクション・シーンが最大のウリのはず。第一作目のような「今まで見たこともないような映像」は本作品では見られませんでした。ラストのネオ(キアヌ・リーブス)とスミス(ヒューゴ・ウィーヴィング)の一騎打ちも、お金をかけた(14億円!)という割には、それほど斬新さはなく、むしろ冗長にさえ感じられました。
 モーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)、トリニティ(キャリー=アン・モス)が余り目立たなかった代わりに、ナイオビ(ジャダ・ビンケット・スミス)が堂々の貫録で大活躍です。ミフネ(ナサニエル・リーズ)って、三船敏郎に似ているから?
 それにしても、モニカ・ベルッチのチョイ出は、アレを見せるためだけだったのでしょうか・・・。(^_^;)
(劇場)

2003.11.02 アンダー・サスピション ★★★★

 古いフランス映画からのリメイク的作品と、特典映像でジーン・ハックマンや監督のスティーヴン・ホプキンスが説明しています。
 プエルトリコの町を舞台に、警察署長(モーガン・フリーマン)と連続少女レイプ殺人容疑者の弁護士(ジーン・ハックマン)が攻防を繰り広げ、事件の核心に迫るうちに、弁護士と彼の若く美しい妻(モニカ・ベルッチ)との冷めた関係が明らかになっていく・・・、というサスペンス映画です。
 とにかく登場人物は、上記の他に刑事役のトーマス・ジェーンを含め、4人だけ。しかも舞台は、警察の取調室が殆どというシンプルさ。ところが、両御大のなり切り演技のおかげと構成の巧さ、遊び心を取り入れた映像(回想シーンに現実の姿を挿入するなど)で、全く飽きさせず、緊張感が最後まで持続します。
 もちろん、モニカのこの世の者とも思えぬ美しさも特筆もの。セリフは殆どありません。いいのだ、あんたは黙っていても・・・。(^_^;)
 弁護士の秘密の欲望や私生活が暴れていく過程は、男なら等しく共鳴することでしょう。50代より20代が良い、とか・・・。任意取り調べであそこまでゲロしてしまう弁護士はちょっと変だし、可哀相・・・。
 ラストは、そうきたか、という驚きとともに、少々あざとい感じがしなくもありません。彼の最後の妻に対する行動が、これからの夫婦の行く末を象徴していて、いかにも悲しい・・・。結局、女が一番悪いのね・・・。
 「アレックス」でストレスが溜まったモニカ・ファンに、大いにお薦めします。(^_^;)
(DVD)

2003.10.20 デアデビル ★☆

 どちらかというと苦手なアメコミヒーローものですが、一応話題作と言うことでチェック。「X-MEN2」と併せて購入すると洩れなく好きなDVDが2枚貰えるというのも興味を引きました。
 「クロウ」、「シャドー」、「スポーン」や「ダークマン」など、アメコミヒーローものはダークな雰囲気を持ったものが多いのですが、これも御他聞に漏れず、相当な暗さです。あそこまで主人公(ベン・アフレック)を追い詰めなくても良いと思うのですが・・・。折角の可愛いヒロイン(ジェニファー・ガーナー )なのですから、もっと華を持たせたらどうでしょう。
 加えて、画面も相当暗い。モコモコと何やら動いているのですが、何せ暗すぎて良く判りません。CGのカモフラージュということもあるのでしょうが、あんなに見えなくては元も子もないでしょう。
 多分一番の欠点は、主人公が弱すぎることだと思います。ヒロインを助けられないヒーローって、あり?この手の映画で全くカタルシスが感じられないというのは致命的です。
 唯一の救いは、悪役のコリン・ファレルの存在感。「サラマンダー」↓のマシュー・マコノヒーの向こうを張るイメチェン振りです。スピン・アウトの噂もむべなるかな、です。
 DVD、当然買いません。(^_^;)
(DVD)

2003.10.14 サラマンダー ★★★☆

 劇場公開時、よくもまあこんな古めかしいB級怪獣映画を作ったものだ、などと思ったものでした。ところが意外と評判が良いようで、それならばとのDVD観賞です。
 古代生物の火を吹く竜(サラマンダー)が現代に復活して、地球が絶滅の危機にさらされます。生き残ったわずかの人類はこの竜に打ち勝てるのか・・・、というわかりやす〜いベタなストーリー。安心して見れます。
 突っ込みどころは沢山。地下鉄工事を行うような地表の浅いところで数千万年も眠っているか?わずかな食料にも事欠いているのに、燃料や弾薬はどうやって調達している?核でも倒せないのにあんな簡単な武器でやられるか?一匹のオスが死ねば絶滅するか?等々。
 しかしそういったところを強引に無視すれば、そこそこ楽しめるサバイバル・アクション映画に仕上がっていると思います。
 冒頭の登場シーンはややショボイものの、初めて空から姿を表して大型火炎放射器のような炎を浴びせかける場面は迫力満点。張りぼてライクの死骸やCG臭い地を這う竜はともかく、空飛ぶ姿の造形やCGは悪くはありません。三角測量で攻撃する場面もスピード感に溢れていてスリル満点。ラストの攻撃シーンも、ありがちなご都合主義に目をつぶれば、あれはあれで納得です。
 主役のクリスチャン・ベイルより、何と云っても存在感のあったのがマシュー・マコノヒー。これがあのヤサ男のマコノヒーか!と思うほどの変貌ぶりです。紅一点のイザベラ・スコルプコ。ちょいと正体不明な感じがなくもありませんが、役にはハマっています。
(DVD)

2003.10.06 ストーカー ★★☆

 ロビン・ウィリアムズと言えば、ハートウォーミング・ドラマなどでの「善良な人」が定番。ところが「インソムニア」で殺人犯を演じて、我々をアッと驚かせたのでした。本作品はそれに続く、悪役(?)第二作目です。
 今回は、独り身のDPEショップの職人気質の店員役。常連客などが持ち込む家族のスナップ写真を見ては、自分も家族の一員になったような気分でいたのでした。ある時、一見幸せそうな家族の裏側を知った主人公は、危険な行動を取り始めるのですが・・・、と、まあ、予告編を見れば容易に想像がつくストーリー展開で話が進みます。
 孤独が故に自分の幸せを夢想し、良かれと思う行動が裏目裏目と出てしまう主人公が、如何にも哀れで悲しい。演技巧者のロビンが演ずると、一層同情を誘います。しかし業務上横領をしてはいけませんね。
 意識的なのでしょう、白を基調とした背景が独特の雰囲気を醸し出します。同じ基調の白い髪(!)と制服を着たロビンが、画面に溶け込むよう。
 終盤の修羅場での写真は、撮れていたのか、そうでなかったのか・・・。唯一不可解な場面です。
 冒頭で主人公の扱いが判っているだけに、出来ればラストにもう少しヒネリが欲しかったですね。やや中途半端な終わり方だと思います。それにしてもラストの(多分、想像上の)写真は悲しい・・・。
(DVD)

2003.10.05 アレックス 

 あのモニカ・ベルッチ壮絶なレイプ・シーンがある、という程度しか予備知識はありませんでした。監督は「カルネ」などのギャスパー・ノエです。
 最初にR-18指定の表示が出て、期待は嫌でも高まります。(^_^;) しかし期待とは裏腹に、かなり生理的に受け付けがたい、殆どモノクロのハンディ・カムによる酔いそうなシーンが連続。おまけに、R-18はこれだったのか、というような正視に耐えない殺人シーンが・・・。う、気持ちワル・・・。
 時間軸を逆行するシーケンスも、「メメント」を見た後ではさほど新鮮さはありません。ただし、通常のシーンを正確に反対になぞっているので、そう混乱もせず・・・。
 問題のレイプ・シーンは、それまでと一転して固定カメラでじっくり撮るという手法。リアルさに欠ける割には、十数分という長さ。余り必然性はなく強引な展開に、やや白け気味です。別のシーンの中国人に対する人種差別表現もひどい・・・。
 時間軸が遡って、つまり映画の後半になって、モニカ演ずるアレックスとヴァンサン・カッセル演ずる恋人とのいかにも幸福そうなシーンが描かれます。つまり、「時は全てを破壊する」というコピーどおり。それにしてもそのテーマを、全て吐き気を催すような描き方しか出来ないノエ監督は、かなり自己満足的であるとしか言い様がありません。あれらの映像処理も挑戦的で斬新というよりも、単に悪趣味にしか私には思えませんでした。
 だいたい、あのモニカの端正な顏をしっかり正面から撮らないというのは、何事でしょう。ヴァンサンの一物など見せてくれなくて、よかったし・・・。(-.-)
(DVD)