2001.01.04 サイダー・ハウス・ルール ★★★★☆
- 孤児院もののヒューマンドラマと聞いて、ちょっとヒイテしまっていたのでした。しかしシャーリーズ・セロンに惹かれて、見てみて大正解・・・。
「ガープの世界」などで知られる米現代文学の巨匠ジョン・アーヴィングが、自身の同名ベストセラー小説を脚色し、それを「ギルバート・グレイプ」などのラッセ・ハルストレムが監督した作品です。第72回アカデミー賞で主要7部門にノミネートされ、脚色賞と助演男優賞(マイケル・ケイン)の2部門で見事オスカーを受賞しました。
「サイダー・ハウス・ルール」というのは、主人公(ドビー・マグワイア)が孤児院を出て働くリンゴ園の宿泊小屋に張ってある「ベッドで煙草を吸わないこと」といった類いの、余り意味のない規則のこと。見終えてみると、決まり切ったルールより物事の是非はケース・バイ・ケースで当事者が決めるべき、という暗喩であることが判ります(正しいかな?)。
堕胎の是非や近親相姦といった重いテーマを扱いながら、何となく物静かに淡々と展開する感じがするのは、ひとえにドビーの落ち着いた抑えた演技に因るものでしょう。「カラー・オブ・ハート」では余り印象的では無かったのですが、ここでの彼の清潔感溢れる表情は、素晴らしいの一言。ただまだあどけなさを残した顏や体つきは、シャーリーズ・セロンの恋愛相手としては、ややアンバランスな感じが無きにしもあらず・・・(有り体にいえば、セロンがもったいない・・・(^_^;))。
里親が現れるのを心待ちにしている孤児院の子供たちの演技も感動的です。特に喘息持ちのファジー少年にまつわるエピソードには泣けました。
見終えて、ああ良い映画を見たなぁと素直に感動し満足感に浸れる、そんな映画です。(^_^)
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2001.01.03 マグノリア ★★★
- 「ブギー・ナイツ」のポール・トーマス・アンダーソン監督、脚本による最新作。第72回アカデミー賞の脚本賞と助演男優賞(トム・クルーズ)にノミネートされましたが、オスカーは獲得出来ませんでした。
LA郊外のマグノリア・ストリート周辺に住む12人の24時間を描いた、典型的な群像劇です。悲喜交々の生き様を別々に進行させ、次第にその全てがリンクされて、ラストにとんでもないことが起こって終わりを迎えます。187分(!)の長尺であるにも係らず、各エピソードが興味深く展開されますので退屈することはありません。
ただこういった群像劇の宿命で、テーマが散漫になって何が言いたいのか良く判らないという面はありますね。しいていうなら「人生色々」かな?(^_^;) しかし、全てのエピソードをそれなりに最後に収束させているところは、さすがに巧い。
配役も、ウィリアム・H・メイシーを始めとした曲者揃い。中で一番印象的なのは、やはりトム演ずる性の教祖の強烈なキャラ。放送禁止四文字言葉を連発するあのハイテンションさは何だ!あの膨らみの大きさは何だ!(どうやら本物らしい・・・(^_^;))。彼の父親を思う心情を表現した演技には泣かされました。ジュリアン・ムーアも大熱演、でも余り綺麗には見えなかったぞ。
ラストの異変は旧約聖書に基づいているということですが、まあ竜巻の多いアメリカなら有り得ることなのでしょう。それにしても仰天モノで、相当気色悪し・・・。(@_@)
なおマグノリア=magnoliaとは、モクレン、コブシ科の花木の名前です。
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2001.01.01 ミッション・トゥ・マーズ ★★★☆
- 劇場公開時、ブライアン・デ・パルマ監督の作品としては不出来とかなり酷評された作品。火星探索で行方不明になった宇宙飛行士を救出に行く男女4人が遭遇する、トラブルと不思議な出来事を描いたSFファンタジーです。
確かに、シリアスな前半からオイオイな後半になって、ラストは眼が点になるという展開・・・。しかし、こういうSFものを楽しめるかどうかは、あるレベルを越えて自分の目線を置けるかどうかにかかっていると思います。SFが基本的に好きな私は、結構満足したのでした。
ただアイディアに斬新さは無く、明らかに「アポロ13号」、「未知との遭遇」、「アビス」、「2001年宇宙の旅」などのイイドコ取りをしてはいますが、それはそれで楽しめます。NASAが全面協力をしたというSFXも見応えがありますし、デジタル・シネマ用に撮影された映像も極めて高画質です。
ただどうしても納得がいかなかったシーンがあります。宇宙空間で宇宙服のヘルメットを脱いだら人間はどうなるか?絶対あんなにはならないはず・・・(NASAはしっかり監修したのかな?)。
ティム・ロビンスは、ややもったいない使い方。妻を亡くして屈折した役を演じたゲイリー・シニーズ、相変わらずイイですね。ただ、目の下のクマはわざと?
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2000.12.31 オール・アバウト・マイ・マザー ★☆
- 本作は、アカデミー賞外国語映画賞やゴールデン・グローブ賞外国語映画賞など、全世界で32部門の映画賞を受賞し、絶賛されたスペイン映画です。ですから、名画であることは間違いないのでしょう。監督のペドロ・アルモドバルは、「この作品をすべての母親、母親になりたいと思う人々、女になりたいすべての男性に捧げたい」、と語ったそうな・・・。
しかし、私は最後まで感動もせず、共感もできませんでした。私の感受性がどうかしているのでしょう。それとも私が「女になりたい男性」ではないからなのでしょうか・・・。(-.-)
息子を事故で失った母親(セシリア・ロス)を中心に、彼女をとりまく女装の男娼、レズの舞台女優、妊娠したシスター、HIVに感染したドラッグ・クイーンなどの生き様を描いたものです。
女性(になりたい男性)や母親の強さ、たくましさが生き生きと描かれているというのは、そのとおりなのでしょうが、あの程度の非日常は物語的には珍しいことでもありますまい。だからどうしたの?という感覚以上のものは湧いてきませんでした。
ただ、女装の男娼を演じたアントニア・サン・フアンは名演。最初はゲテモノにしか見えなかった彼女(?)が、終盤では可愛く見えてきたから不思議です。(^o^)
TIME 誌は「この映画を観て何とも感じない人は、心臓専門医に診て貰うべき」と大絶賛したそうです。先日、私は人間ドックを受けたばかり。さて、どうしようか・・・。(-.-)
- (推薦してくださったMondayさん、mimiさん、ゴメン!m(_ _)m)
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2000.12.24 リプリー ★★★★
- 「太陽がいっぱい」で有名なパトリシア・ハイスミスの原作を、「イングリッシュ・ペイシェント」のアンソニー・ミンゲラ監督が再映画化したもの。
うだつの上がらない貧乏青年(マット・デイモン)が、富豪の息子(ジュード・ロウ)に成り済ますために犯罪を重ねていく、というクライム・サスペンスです。
劇場公開時は賛否両論ありましたが、否定的な一番の意見は、アラン・ドロンに比べてマットが冴えない、というもの。これは多分御門違いだと私は思います。スタイリッシュで言わばドロンのスター映画である前作とは無関係に、貧富の世界の格差を敢えて表現するために、今回のマットのようなキャラクタをミンゲラ監督が選んだ、というのが正解ではないでしょうか。
140分もの長尺であるにも係らず、テンポの良い展開に最後まで集中できました。ゲイの表現も不快になる一歩手前でとどめているし・・・。難点は、序盤で富豪の息子に成り済まそうとする主人公の心理や背景描写が全くないこと、従って計画的犯罪なのか行き当たりばったりなのかが、よく判らないこと。ミエミエの嘘や犯罪がなかなかバレない、というご都合主義も気になります。
尻切れトンボと云われてもしょうがない幕切れですが、主人公の虚無感を最大限に表現している名ラストシーンと見えなくもありません。
グウィネス・パルトロウ、ケイト・ブランシェットが花を添えますが、何と言っても話題の中心は、本作以降大ブレイクしたジュード・ロウ。彼の鋭い眼光が印象的でした。ザ・ビートルズの大ファンである彼の両親が、「ヘイ・ジュード」に因んで命名したとのことです。(^_^)
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2000.12.19 アフリクション ★★
- アフリクション=Afflictionとは、苦悩、災難、不幸などのこと。劇場公開時のタイトルは「白い刻印」でした。ラッセル・バンクスのベストセラー「狩猟期」を原作に、「タクシードライバー」や「救命士」の脚本を手がけたポール・シュレイダーが監督した作品です。
本作は、なかなか配給元が決まらなかったそうな。理由は、見ればすぐ判ります。
アメリカの田舎の見るからに寒そうな雪景色を背景に、淡々と描かれる一人の男の苦悩と不幸。彼は、離婚に伴う子供の親権確保に悩み、暴力的な父親への愛憎に悩み、恋人との生活に悩み、警官として事件に悩み、そして堪え難い歯痛に悩むのです。
つまり終始、主人公の救いの無い苦悩につき合わされてしまうのだ・・・。確かによくありそうな不幸やトラブルばかりで、主人公の心情は痛いほどヒシヒシと伝わってくるのですが、何しろ救いが無さ過ぎます。キーとして描かれる事件も、謎解きとしては中途半端だし・・・。
ニック・ノルティ、ジェームズ・コバーン(本役でオスカーを受賞)、ウィレム・デフォーの豪華キャストと彼らの迫真の演技にも係らず、これでは配給元が興業成績を気にしたのはやむを得ませんねぇ・・・。(-.-)
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2000.12.17 スパニッシュ・プリズナー ★★★
- 「プレミア」誌がお薦めの大どんでん返し映画。監督はL.A.コンフィデンシャルの脚本を担当したディヴィッド・マメットです。
「スパニッシュ・プリズナー」とは、4世紀以上の伝統を持つ古典的な詐欺の手口のこと。ある男が徹底的に詐欺師に翻弄されていくというサスペンスですが、この手の映画はやはりそういった予備知識無しに見るのが一番だということを再認識させられた一本でした。
余りお金をかけていない上に終始平坦な演出なので、まるでアメリカのテレビ映画を見ているよう。特に前半は殆ど展開に変化がなく、ダラケ気味。しかしことが起こり始めるとそこそこ退屈することはありません。何故なら、その手の映画だということが判っているので、ミス・リードされないようどうしても構えて見てしまうからなのです。
- 詐欺師ものの割には、けっこうあっさりと先の展開が読めてしまったりします。どう見てもうさん臭そうな人物(スティーブ・マーティン)に、子供のように騙されてしまう主人公(キャンベル・スコット)が間抜けに見えてしまう始末。美人秘書の誘惑になかなか乗らないのも、じれったいし・・・。(^_^;)
この映画には日本人がいくつかのシーンに出てきて、その扱いがけっこう見ていて不快なのです(変な日本語を使ったりするし・・・)が、実は重要な伏線になっているというのがなかなか面白かった・・・。
主人公、詐欺師、秘書にもっとメジャーな俳優を使っていれば、もう少し大作っぽくなったかも・・・。
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2000.12.04 エリン・ブロコビッチ ★★★
- 元ミス・コン女王、バツ2、子供3人、低学歴、しかしナイス・バディとド根性を持った実在の女性のサクセス・ストーリーです。何と彼女は、公害訴訟でアメリカ史上最高の和解金、350億円を勝ち取ったのでした。
実話に基づくということでやむを得ないのでしょうが、話自体はヒネリもなく単調に進みます。しかも結末も大ハピー・エンドとなるのは百も承知。しかしそれを補って最後まで退屈させないのが、ジュリア・ロパーツ演ずるエリン・ブロコビッチのキャラクター。何せ平気で、「Fuck」だの「Bitch」だの「Blow
Job」だのと言いまくる、元気一杯の女性なのです。彼女が心から正義感に燃えて奔走したのかどうかは良く判りません(当時の預金残高は16ドルだった)が、いずれにしても彼女の地道で根気強い調査や住民説得が結実したのは、間違いないところ。
実際に関係者を出演させたり、ロケ地も実際の場所を使うなど、かなり忠実に再現されたとのこと。しかしエリンは、「あんなにブラのヒモをいつも肩からはみ出させてはいなかった」と云ったらしいですが・・・。(^o^) エリン自身も序盤で、ウェイトレス役で出演しています。
いずれにしてもジュリアのスター映画であることは間違いなく、ファンは大喜びでしょう。しかし今回は、彼女の大きな口よりも、どうしても深い胸の谷間に眼がいってしまうのでした・・・(ホントにあんなに大きかったかな?)。(^_^;)
- [12/05追記:あるお方から教えていただきました。案の定あれは作り物なんだそうな。それにしても良く出来ている・・・(^_^;)]
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2000.12.03 ある日どこかで ★★★★
- 最近始めた「ベスト映画ランキング」で投票された中で、私が未見だった映画。原題は「SOMEWHERE
IN TIME」で80年の作品です。レンタル・ビデオ屋では「「タイタニック」の原点となった映画」などと紹介されていました。タイムトラベルを扱ったSFファンタジーで、かつ切なく悲しいラブ・ストーリーです。
タイムトラベルの方法はトホホですし、SFXも殆ど用いられず、サウンドもモノラルであることなどから、古めかしさやチープ感はぬぐえません。ここでのタイムスリップ・パラドックスも、私には納得がいきませんでした。
しかしそういうものを全て帳消しにして、お釣りを出しているのが、ヒロインのジェーン・シーモアの美しさ。彼女は「007・死ぬのは奴らだ」のボンド・ガールだそうで(全く記憶に無し)、映画よりもどちらかというとテレビ出演が多いとのことですが、もったいないですね。
物語のキーとなるのが、一枚の彼女の肖像写真。この写真の彼女の目線の先に誰がいたかが判って、もう一度それを見ると・・・、ホントに泣けてしまいます。美しい音楽(ラフマニノフのラプソディ)やモネの絵画のような映像も、心に残ります。
主人公は「スーパーマン」のクリストファー・リーブ 。ここでもマネキン人形のようなマスクが印象的。彼は落馬事故で脊椎を損傷し、首から下が完全に麻痺してしまっていますが、最近ヒッチコックのリメイクものに主演しました。
一目惚れを信じる人には、お薦めです。(^_^)
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2000.11.27 パーフェクト・ストーム ★★★
- 「U・ボート」、「エアフォース・ワン」などのウォルフガング・ペーターゼン監督の最新作。
91年10月、米マサチューセッツ州沖を襲った史上最大の嵐に遭遇した6人のカジキ漁師の壮絶な戦いを、実話に基づいて描いたものです。
迫力ある大嵐や大波のCG映像を作り出したのは、かの有名なILM社(インダストリアル・ライト&マジック社)。劇場公開時、見ていてマジで船酔いしてしまう、などと評判がたったほどでした。
実話と云えども、船上での彼らの行動はまったくの推定になるわけですが(ネタバレ、ゴメン)、前半の時間をかけた漁師達を取り巻く人間模様がじっくり描かれることで、さもありなんと思ってしまいます。「自然をナメきったバカな男達の自業自得物語」などという酷評もありますが、あの状況で彼らの取った行動は、あれで仕方がないと云わざるを得ないでしょう(彼らはお化けストームが来ることをある段階まで知らなかった、という設定になっている)。
ただ、途中で挿入されるヨットの遭難と沿岸警備隊によるその救出劇は、本題と関係ないとはいいませんが、何となくチグハグ。ハリウッド映画によくある特殊職業の紹介のつもりかも知れませんが。それに天気レポーターの気象解説が何となく、マヌケ・・・。
無表情なジョージ・クルーニーに比べて、ここでのマーク・ウォールバーグは光っています。彼は撮影時に両耳が中耳炎にかかり、スタジオのセットにも係らず、本当に船酔いしたらしい・・・。(^o^)
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2000.11.20 レインディア・ゲーム ★★★
- 「レインディア=Reindeer」とはトナカイのこと。「RONIN」などの巨匠ジョン・フランケンハイマー監督の最新作で、サスペンスフルなクライム・ストーリーです。雰囲気的に未公開映画だと思ったのですが、何とサンタクロース・ネタにも係らず日本では今年真夏に公開された映画だそうで、そういう意味では今の時期のビデオ・リリースは正解でしょう。
刑務所で同室だった男になりすまして文通相手の女性(シャーリーズ・セロン)に会った主人公(ベン・アフレック)が、その女性の兄(ゲイリー・シニーズ)の罠にはまってカジノ強盗を余儀なくさせられてしまうという展開。
最近のハリウッド映画でジャンルが確立しつつある「ワイルド・シングス」と同趣の、大どんでん返し映画。御多分に洩れず脚本にわざとらしさがありますし、ご都合主義満載ではあるのですが、ハイ・スピードな展開に退屈することはなく、けっこう私は楽しめました。冒頭で結末の一部を案じさせるシーンを見せるのも、良くある手法だとは思いますが、なかなか効果的。ただ、後味は必ずしも良くはありません。
ベンはともかく、ゲイリーの悪者ぶりが恐ろしいほど決まっていますし、何よりもシャーリーズの変わり身(どう変わるかは見てのお楽しみ)が見事。この人は随分器用な女優ですね。
脚本が破綻していても、私はシャーリーズの胸に免じて許します・・・。(^_^;)
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2000.11.13 スティグマータ/聖痕 ★★
- スティグマータ=聖痕とは、人間の体に現れる十字架上のキリストの5つの傷跡(手、足、額、背中、横腹)のこと。本編が始まる前に、世界各国で現実に起きている「聖痕現象」がデマやトリックでないことを説明する映像が5分程度流れます。当然劇場公開時ではこのような前段は無かったわけですが、本作が単なるB級オカルト・ホラー作品ではないことを示すためには、極めてこれは重要な説明になっています。
伝統的な福音書しか認めようとしないバチカン(カトリック上層部)と、聖痕を通じてそれを否定しようとする(!)者の攻防がテーマです。ただ私のようにキリスト教の信者でもなく、また基本知識も無い者にとっては、ややピンと来ないところが無きにしもあらず・・・。作品の傾向としては「エクソシスト」や「エンド・オブ・デイズ」に似ていますが、悪魔は出てきませんし、あのようなオドロオドロシサもありません。
聖痕が現れるのが主人公(パトリシア・アークェット)の手の甲ではなく手首なのですが、その説明が、釘を打つのが手の甲だと体重を支えきれないから、というのは妙に説得力がありました。(-_-;)
パトリシアは白目を剥いての大熱演。でも23才という設定は、相当無理があるぞ・・・。「エンド・オブ・・・」でエロ・サタンを演じたガブリエル・バーンが、ここでは敬虔なカトリック神父。しかし、これはこれでピッタリ似合うから不思議だ・・・。
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2000.11.12 理想の結婚 ★★★
- オスカー・ワイルドの4大喜劇のうちの一作、「理想の夫」の映画化。18世紀末の華やかなロンドン社交界を舞台に繰り広げられる、ラブ・コメディです。
元が舞台劇とあって、結構場面は多彩なのですが、どうしても動きの少ない印象は免れません。華麗な衣装や美術には目を見張らされたとしても、全体としてこじんまりとまとまった小品といった趣です。
中盤以降展開される恋と陰謀が絡んだ「かけ引き」に、ついていけるような注意力が必要です(私は2回、テープを巻き戻したのだ(^_^;))。また、しゃれたセリフ回しを理解できる英語力があればなおいいのでしょうが・・・。でも字幕でも、「求婚をやめさせる良い方法があるわ」「どんな?」「求婚を受けるの」とか、「結婚することに決めたわ」「誰と?」「それはまだ決めてないの」など、ウィットに富んだ台詞が楽しめます。
「エリザベス」のケイト・ブランシェット、「ことの終わり」のジュリアン・ムーア、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のミニー・ドライバー、「恋に落ちたシェイクスピア」のルパート・エベレットなど、出演陣は豪華です。しかしいつも思うのですが、ミニー・ドライバーって、どこがいいのでしょう・・・。(-.-)
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2000.11.06 マン・オン・ザ・ムーン ★★
- オーバー・アクションで百面相俳優と云われているジム・キャリーが、「トゥルーマン・ショー」に続いて2年連続のゴールデングローブ最優秀主演男優賞を獲得した作品。
監督は「カッコーの巣の上で」(な、懐かしい)、「アマデウス」などのミロシュ・ファアマンです。
35歳という若さで他界した実在の天才コメディアン、アンディ・カフマンの半生を描いた作品。私は彼を全く知らなかったのですが、この映画を見て彼の奇人ぶりに唖然・・・。
なにせ彼の芸は、いわゆる観客巻き込み型というやつで、どこまでが演技でどこまでが現実なのか、本人以外には全く判らないのです。したがって、観衆の大ブーイングに合っても、彼は構うことなく全て計算ずくの「やらせ」
を実行して、裏で一人で嬉々としているというアンバイ・・・。
個人的には、彼の芸はそれほど凄いとは思わない(むろん、ジムがアンディを完璧にコピーしているという前提ですが)し、むしろしつこくて辟易する場面もあって、ふ〜ん、こんな変わったコメディアンがいたんだ・・・、という感想以上のものはありません。
解らなかったのは、トニー・クリフトンという人物。アンディともう一人が成り済ましていたのは間違いないのですが、一方で彼は実在の人物で、この映画でも実際に登場して彼自身を演じているとクレジットされているのです。(ようわからん???)
彼が病魔に冒されて、傾倒していたヨガの心霊施術を受けるシーンが皮肉たっぷりで、私には一番笑えました。
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2000.11.05 オネーギンの恋文 ★★★
- ロシアの文豪、プーシキンの自伝的原作の映画化。東京国際映画祭で最優秀監督賞に輝いた作品です。
製作・総指揮と主演は、「イングリッシュ・ペイシャント」、「ことの終わり」などのレイフ・ファインズで、監督は彼の実妹であるマーサ・ファインズです。音楽も彼らの実弟のマグナス・ファインズが担当していて、つまりファインズ一家で作った映画だということ。
舞台は1820年代のロシア、ペテルブルグ。没落貴族である主人公、オネーギン(レイフ)と隣家の娘、タチヤーナ(リヴ・タイラー)との悲恋を描いたものです。
う〜む、突き放すとくっついてくる、追いかけると逃げていく、という恋愛の基本原則の典型ですな・・・。それにしても主人公の身勝手と不甲斐なさはどうだ。こういう男には感情移入など出来るはずはありません。一度失恋して、結婚後主人公に言い寄られても(彼を愛しているにも係らず)軍人の妻として操を守ると言い切ったタチヤーナのけなげさには、泣かされます。
でも、この手の映画なのに濡れ場はおろか、キス・シーンさえも無いのは、何故?ラストが尻切れトンボになっているのは、何故?
映像と音楽は如何にも美しく、文芸作品風の雰囲気は満点・・・。リヴ・タイラー、綺麗だけど首が太いぞ・・・。(^_^;)
ここでも云わせてもらいます。ロシアが舞台なのに、み〜んなが英語を喋っているのはおかしくないか?
DVDの特別映像で、監督・マーサのインタビュー・シーンがありました。そのまま映画に出れるほどの美形だった・・・。
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2000.11.04 ボーン・コレクター ★★
- 「今そこにある危機」、「セイント」などのフィリップ・ノイス監督の最新作。原作はかなり評判の高かったベストセラー小説とのこと。
タイトルから容易に想像できるように、「羊達の沈黙」や「セブン」などと同様の猟奇連続殺人ミステリーです。しかし「羊達・・」以降、同趣のものが山ほど(?)制作されていますが、それらと同様、結局本作も前記の作品を越えることは出来ませんでした。
脊椎を損傷して四肢麻痺の元刑事(デンゼル・ワシントン)が、彼の手足となる女性警官(アンジェリーナ・ジョリー)とともに殺人犯を追う、という構成(こういう手法は特に珍しくはない)です。見ている分には最後まで退屈することはありませんが、プロットには新鮮味は全く感じられません。特に犯人の殺人の動機に説得力がないのが致命的。そこまであんなに手の込んだことをやるかね!という感じなのです。また伏線の全く無い犯人の意外な設定も、ルール違反といわれても仕方がありません。ラストのハッピーなシーンも、何で急にそうなるの、という感がぬぐえませんし、いかにも取って付けたかのようです。
首から下が完全に麻痺した人物を演ずるデンゼルは、膨大な臨床例のリサーチに基づいたというだけあって、迫真の演技に終始します。ただ彼は、やや見飽きたナ・・・(-.-)。
アンジェリーナ(ジョン・ボイドの娘ね)は、「狂っちゃいないぜ!」での悩殺娘とは別人のようにクールです。でも、もう少し彼女の鼻が高かったらイイのにな、と思うのは私だけでしょうか・・・。(^_^)
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2000.10.28 X−メン ★★★
- 1963年に誕生して以来、本国で爆発的な人気を維持しているというアメコミの映画化。監督は「ユージュアル・サスペクツ」、「ゴールデン・ボーイ」などのブライアン・シンガーです。
X−メンとは、突然変異によって特殊能力を持ったミュータントのこと。この映画はそんなミュータントの、人類との平和共存を望むグループと、人間を支配しようとする悪のグループの攻防を描いたものです。人間から忌み嫌われるミュータントを描くことで、人種差別への強烈な批判のメッセージを盛り込んでいる、などとも云われているようですが、この手のものにそういう深読みをするかどうかは観客次第。私は余りそんなことを考えずに、純粋に楽しめればそれでいいと思うのですが・・・。
ストーリーとしては、善悪がハッキリした単純極まりないものなのですが、肝心の各ミュータントの持つ特殊能力やその背景などがやや説明不足のように思われます。コミックを読んでいる人にとっては百も承知のことなのでしょうが、予備知識が皆無の私の様なものにとっては、ついていくのがチト辛い・・・。
それでも、最後がご都合主義で腰砕けになっている点を除けば、全体的にはまあまあ楽しめるのではないかと思います。ただしSFXは思ったほどではありません。
触った相手が生命を脅かされてしまうというローグは、「ピアノ・レッスン」でこましゃくれた少女を演じたアンナ・パキン。大きくなったものです。何にでも変幻自在の青い体を持つミスティーク(レベッカ・ローミン=ステイモス)が、あっけなく姿を消してしまったのが残念。もっと長く、しかも明るいところで見たかった・・・。(^_^;)
(劇場)
2000.10.28 アサシン ★★★
- リュック・ベッソン監督のフランス映画、「ニキータ」のハリウッド版リメイク。「アサシン=assassin」とは暗殺者の意。ただし原題は「Point Of No Return」です。
私が「ニキータ」を見たのは大昔(多分、8、9年前)。でもこれを見ているうちにストーリーやシーンが甦って、まるで以前見たことのある映画のように錯覚したことでした。ですから、恐らく殆ど完全にコピーされているのではないでしょうか。
麻薬中毒で、殺人を犯しても何とも思わないような不良少女(ブリジット・フォンダ)が、特殊工作員として訓練を受け、非情な任務を遂行していくうちに自我に目覚めていく・・・といったサスペンス・アクション映画です。
かすかな記憶によれば、「ニキータ」に比べてややおとなしくまとまっているような気がしなくもない。オリジナルはもっと荒々しく、強烈だったイメージがあります。あちらのヒロイン、アンヌ・パリローもブリジット・フォンダより、もっと尖っていた(ここでのブリジットは、相当かわゆい・・・)。逆にあちらの掃除人、ジャン・レノより、こちらのハーベイ・カイテルの存在感は圧倒的。おお、コワ!という感じです。それと、何と言っても英語のセリフは聞いていて安心できます(もち、聞き取れるということではありませんが)。
丸ごとコピーのリメイクは意味がない、などと硬いこと云わずに、「サイコ」と同じように新旧比較して楽しむのもまた一興ではありませんか・・・。(^_^)
(DVD)
2000.10.23 ことの終わり ★★★★
- 単館上映劇場での鑑賞は、「ガタカ」以来で久しぶり。さすがにいつもと違って、観客の平均年齢は高めです(もち、私がそれに加担していることは言うまでもありません(^_^;))。
「第三の男」の原作者として知られるグレアム・グリーンの半自伝的小説が原作で、「クライング・ゲーム」でアカデミー賞脚本賞を受賞したニール・ジョーダンの監督作品。英アカデミー賞の受賞を始め、米アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞など、数々の賞にノミネートされました。
小説家の主人公(レイフ・ファインズ)は、高級官僚の美しい妻サラ(ジュリアン・ムーア)と激しい恋に落ち逢瀬を重ねますが、あるときサラは突然別れると告げ、彼の元を去ります。彼は、彼女に新たな男の存在を嗅ぎつけます・・・。
この映画は、容易に想像されるような単なる愛欲もの、不倫ものではなく、男女で捕らえ方の異なる純愛や信仰のあり方などを絡ませ、更にミステリアスな味付けを加えたもの。しっとりとした映像や美しい音楽なども、重厚な文芸的ムードを高めるのに役立っています。
現在と過去のカットバックが交互に繰り返されるので、混乱しないよう注意が必要ですし、二つの重要な伏線は結果がミエミエですが、極めて巧い構成と演出で最後まで引き込まれてしまいます。恋愛ものにこういう今的な味付けをしているのは、観客に心地よい余韻を残す意味では大成功。
利己的な小説家を演ずるレイフは「イングリッシュ・ペイシャント」を始め、こういう文芸調作品には、ピッタリはまり役。ジュリアンも抑えた演技で、しっとりとしたイイ女を演じています。
単館上映ではもったいない映画だと思うけど・・・。
それにつけても、ホントにジュリアンは「ハンニバル」のクラリス役が務まるのだろうか?(-.-)
(劇場)
2000.10.22 スリー・キングス ★★★
- 湾岸戦争終結直後のイラクを舞台に、4人のアメリカ兵が繰り広げる戦争アクション映画。
新進気鋭のデイビッド・O・ラッセルの監督作品で、チョット見は娯楽アクションもののようですが、この映画にはかなりの毒がちりばめられています。米国軍人の150人の死者に対して、イラク側では一般人を含む10万人が死亡した湾岸戦争への批判。フセインに対抗するよう反体制側をたき付けておきながら、終戦後何の救済措置もとらなかった米国への批判。特に米国の人種差別への皮肉は、凄まじい。何せ、イラク人に「マイケル・ジャクソンが、何であんなにツギハギだらけで、白くなったか判るか?お前らアメリカ人が黒人を差別するからだ!」などと云わせているのです(いいのかね、そんな実名を出して!)。
それらの政治色に加えて、金塊強奪、銃撃戦、爆破シーンなどの娯楽的要素と、残酷シーンが混在していて、全体としてややまとまりが無い印象は免れません。それでもジョージ・クルーニー、マーク・ウォールバーグなどの熱演もあり、決して退屈はしないのですが・・・。放たれた銃弾をワン・ショットで追ったり、撃たれた体の内蔵シーン(相当ウソっぽい)があったり、映像もユニーク。
イラクとクウェートの関係の予備知識があると、この映画は更に楽しめると思います。
「スリー・キングス」といっているのに、どう数えても4人が活躍しているのが良く判らない・・・。(-.-)
(DVD)
2000.10.16 インビジブル ★★★
- 「氷の微笑」、「トータル・リコール」、「スターシップ・トゥルーパーズ」などのポール・バーホーベン監督の最新SFホラー作品。エロ、グロ、バイオレンスなど、刺激的な作風が身上の彼ですが、今回はエロさに関してはやや控え目かも・・・。(^_^;)
国防省から委託されて、生物体を透明化する研究を行っているチームのリーダー格の主人公(ケビン・ベーコン)は、同僚の元恋人(エリザベス・シュー)の反対を押しきって、自ら実験台になります。しかしその結果は恐ろしい事態に進展していくのです・・・、という、いわば現代版「透明人間」。
米国で大ヒットしたのは、ストーリーより映像を見に行く観客が多かったからとのこと。なるほどゴリラや主人公が透明化したり、復元されるときのSFX映像は仰天もので、グロさも相当なもの。でも久しぶりに生物学を勉強してしまいました。(^o^)
後半は「ザ・フライ」と同様なモンスター映画になってしまうのですが、あちらと違ってこちらはヒューマニズムのカケラもないのが、後味の悪さにつながっています。意味もなく人が殺され過ぎだし、ご都合主義も満載だし・・・。
ケビンの手記によれば、相当な苦労を伴って撮影が進められたようで、映像的にはそれが報われたのかもしれませんが、内容としては努力した彼がチト可哀相な出来かも・・・。
で、エリザベス・シューの方はというと、ヴェガスで飲んだくれのニコラスと絡んでいた彼女からすると、今回は随分イイ女に仕上がっていたと思うけど・・・。(^_^;)
(劇場)
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