映画、ビデオ短評

★★★★★:満点(五つ星) :半星

2001.8.19〜2001.11.19 1ページ目へ  トップへ


2001.11.19 デンジャラス・ビューティ ★★☆

 色気や化粧っ気の全く無い女性捜査官(サンドラ・ブロック)が、事件の捜査のためにミス・コンに出場する羽目になる、というサスペンス・コメディ。サンドラ自身がプロデュースにも加わったということもあり、彼女のワンマン(いやワンウーマン)映画という感じです。
 ブスが大変身して美女になる、というベタな展開ではありますが、サンドラの変身後の登場シーンにはさすがに目を見張らされます。本作での一番の見せ場がこのシーンでしょう。
 ところが肝心のミス・コンでの捜査や犯人探しの謎解きが、全く工夫が無くいただけません。しかも犯人の動機が説明不足(私が理解できていないだけかもしれませんが)でよく判らないのです。
 ミス・コン審査で最後まで残る各州の代表が、一様に美女では無いのがお笑い。ま、サンドラを引き立たせるためなのでしょうが、何ともね・・・。
 サンドラは汚れ役をよく頑張っているのは理解できますが、オーバー・アクションでややわざとらしさが残ります。「どう、私のような美女でもこんな不格好な女が演じられるのよ」という感じがどうしてもしてしまうのです。作り物のような風貌は相変わらずですし・・・。
 相棒の捜査官を演じているベンジャミン・ブラッドは、ジュリア・ロバーツのかつての恋人。可も無し、不可も無し。美容コンサルタント役に御大マイケル・ケイン。ゲイっぷりが気色悪くも好演。
 驚いたのは、ミス・コンの主催者役を演じたキャンデス・バーゲンの出演。あたしゃ、ラスト・クレジットまで彼女と気が付かなかったぜよ。とても懐かしかったのですが、年をとる(46年生まれだから55才)というのはとても残酷なことですね・・・。(;_;)
(DVD)

2001.11.15 ザ・ダイバー ★★

 アメリカ海軍史上黒人として初めてダイバー(しかも「マスター・ダイバー」)となった実在の人物、カール・ブラシアをモデルにした映画です。「マスター・ダイバー」とはダイバーの中でも特に優秀で、知識にも優れた者に与えられる称号とのこと。
 主人公(キューバ・グッティングJr.)の、人種差別と過酷な訓練に耐えて、かつ片足切断という逆境にも打ち勝ってマスター・ダイバーとして成功する半生を描いたもので、それ自体は素晴らしく感動的ではあります(スポ根もの、と言う感じがしなくもありませんが)。
 問題は、鬼のような訓練教官を演ずるロバート・デ・ニーロの存在。実話と言いながら前半と後半で彼の態度がガラリと変わるところにうさん臭さを感じたのですが、果たして架空の人物とのこと。となると、エピソードのどこまでが真実なのか?と、観客が疑心暗鬼に陥ってしまったりすることに・・・。デ・ニーロの自己陶酔型演技も鼻につくギリギリのところ。
 終盤のクライマックスがわざとらしいのは、グッティングJr.の力み過ぎの演技のせい?本来巧い俳優のはずなのですがね。
 鬼教官の妻にシャーリーズ・セロンが扮しているのですが、彼女の存在がまた極めて不可解。鬼教官の私生活の背景を描こうとしたのかもしれませんが、あれでは中途半端です。
 いずれにしてもこういう映画を見て、元気が出ないようではダメなんだろうな・・・(-.-)。
(ビデオ)

2001.11.12 ザ・メキシカン ★★☆

 「ふたりの大スターの競演、夢のプロジェクト」などという形容が付いたブラッド・ピット(以下、ブラピ)とジュリア・ロバーツ(以下、ジュリロバ(^_^;))の出演作品。
 「ザ・メキシカン」という名前の「恋人達の仲を永遠に引き裂く、呪われた拳銃」を巡るコメディタッチのサスペンス・ムービーです。
 拳銃にまつわる伝説がやけにオールド・ファッションであったり、その銃を欲しがる黒幕(ジーン・ハックマン)の動機がお涙頂戴であったり、ジュリロバに絡むゲイの殺し屋(ジェームズ・ガンドルフィーニ )の話がいやに説得力があったり、エピソードは多彩なのですが、それらのことはぜぇ〜んぶ、ブラピの存在の前には良くも悪くも霞んでしまっています。逆に言うと、別の(超メジャーではない)俳優を据えたほうが、このストーリーはもっと活かされたのではなかったか?ということなのですが・・・。
 ジュリロバもそれなりに頑張っているのですが、この役とて何も彼女でなくてはならなかった、ということでもないようですし・・・。第一、ブラピとジュリロバでは二人がそれぞれ大物過ぎて(?)どう見ても恋人同士には見えないのです(ただし、二人は撮影中良い仲になったという噂も・・・)。
 それに殺し屋のガンドルフィーニ にあれだけ感情移入させる背景を作っておきながら、あの結末では可哀相でしょう。
 近年本作のようにメキシコを舞台にする映画が多くなっていると思いますが、一様に黄色がかった配色を用い、メキシコ人をあんなふうに悪く描くのは、いかがなものかと・・・。(-.-)
(ビデオ)

2001.11.11 ギター弾きの恋 ★★★

 御大ウディ・アレンが監督した架空の天才ギタリストの物語。アレン自身やジャズ評論家のナット・ヘントフなどが、このギタリストのことをあれこれコメントするシーンがところどころに挿入されるという仕掛けになっています。でも、こういう疑似インタビューが効果的かどうか。架空話なんですから、真顔で主人公がどうした、こうしたなんて言われてもね・・・。
 1930年代を背景に、ジャンゴ・ラインハルトに次いでジャズ・ギターが巧いという設定の主人公を、ショーン・ペンが演じます。彼の相変わらずの巧い演技には文句の付けようがないのですが、こういう映画の宿命であるアテレコ(?)演奏シーンにはやはり白けてしまいます。ま、彼はこの映画までギターを弾いたことがなかったというのだそうですから、仕方ありませんが・・・。
 ギターは滅法巧いのですが、見えっ張りで自堕落で、その割には気が弱くて女性に優しい一面もある、そんな主人公のキャラクターの魅力で、最後まで引っ張ってくれます。そして彼が最後に気付く「人生での大事なこと」に共鳴できれば、この映画を見た甲斐があったというものしょう。
 言葉が喋れない彼の恋人役をサマンサ・モートンが演じていますが、彼女の眼と口だけの演技(しょっちゅう何かを食べている)は可愛らしくて好感度高し。どこかで見たような顏だと思ったのですが、新人とのこと。
 ストーリー的には、主人公がユマ・サーマンと結婚してからが淡泊でつまらない。もう少しモートンとの絡みを濃くしてくれたほうが良かったと思うのですが・・・。
 ホントはアレンがこの主人公役を務めたかった(彼はクラリネットのプロ・ミュージシャンでもあります)のでしょうが、それには少々お年を召してしまったようです・・・。
(ビデオ)

2001.11.07 メメント ★★★☆

 斬新な構成で各方面から注目を浴びたクリストファー・ノーラン監督の話題作。本国では最初は10館程度で封切られましたが、リピータが続出して10週目にして530館まで拡大上映され、大ヒット作となりました。この映画で「リワインド・ムービー」などという言葉が生まれています。タイトル(「Memento」)は、「記憶」の意。
 なにせ、事故がもとで10分しか記憶が保てないという前向性健忘症になった主人公(ガイ・ピアース)に併せて、その時間単位で最初から終わりまで時間が逆行して描かれていくのです。主人公が頼るのは、ポラロイド写真とメモと彼の体一面の刺青(刺青でメモるのはやり過ぎだと思うけど)のみ。しかも回りの人間は主人公の記憶がすぐ無くなることをいいことに、嘘を言ったり欺こうとしたりしている様子なのです。
 ですから観客も主人公と一緒になって、真実は何かを見逃さないよう終始目を凝らしていなければならないという按配。ふー、疲れる・・・。
 で、最後はすべての事実が明かされ見事に辻褄が合って、メデタシ、メデタシかと思いきや、これがドッコイそうではないのです。中途半端に終わってエンドロールが出始めた瞬間、私を含めた観客の頭上に「?」が一斉に飛び交ったのでした(ホントにそう見えました(^_^;))。いやー、あれではまだヒント不足でしょう、説明不足でしょう。
 この映画も「PLANET OF THE APES/猿の惑星」のエンディングのように様々な解釈をせよ、ということなのでしょうか?それにしても主人公の事故以前の記憶は正常のはずなのに、その前提を覆すのはルール違反だと思うけど。
 ま、劇場鑑賞して、レンタルビデオかDVDを何回も巻き戻して見て、あれこれ楽しめということなのでしょう。なるほど、確かにリワインド・ムービーだ。ノーラン監督の意図にまんまと嵌まった感じ・・・。
 ガイ・ピアースがクールな演技に終始して、いい感じです。謎の女を演ずるキャリー=アン・モス姉御はやや老け顔になっていましたが、相変わらず魅力的。主人公に終始絡んで重要な役柄と思われる謎の男は、「バウンド」や「マトリックス」で悪役を演じたジョー・パントリアーノ。この人は巧い俳優だと思います。
 首都圏では澁谷での単館(「シネクイント」)上映ですが、さあ日本でもリピータ続出で拡大ロード・ショーになりますかどうですか・・・。
(劇場)

2001.10.22 スターリングラード ★★★★☆

 第二次世界大戦のスターリングラードの地で、ドイツ軍の侵攻からロシアを救った実在のスナイパー(狙撃手)ヴァシリ・ザイツェフの物語。彼はこの戦いで400人を狙撃で殺したのだそうな。監督はフランス人で、「セブンイヤーズ・イン・チベット」などのジャン=ジャック・アノーです。
 「プライベート・ライアン」のパクリだとか、甘い恋や三角関係が邪魔だとか、結末が安易だとか、色々批判はあるようですが、私はこの手の直球勝負をするハリウッド的技法を好みます。冒頭に親切な背景の説明シーンもあり、とても判りやすい展開なのです(頭を使わなくてよくて、楽)。
 リアルな序盤のシーンには戦慄(おのの)きましたし、二人のスナイパーのかけ引きや対決には手に汗を握りましたし、防空壕でのセックス・シーンでは思わず唾を飲みましたし・・・。(^_^;) 緩急をつけた巧い構成に、最後までしっかり引き込まれてしまいました。私としては大いに満足です。
 「石のように動かない者が勝つ」ということを、クライマックスでもっと強調してくれると更に良かったと思うのですが・・・。
 主人公を演ずるのが、今を時めくジュード・ロウ。なかなかイイですね。あの瞳に女性が参るのは仕方がありません。
 女性兵士で主人公と恋に落ちるのがレイチェル・ワイズ。「ハムナプトラ」などとは違ってスッピンで勝負です。チラリと見せたあの白さが素敵。(^_^;)
 この二人と三角関係となる将校を演ずるのが、ジョセフ・ファインズ。相変わらず寄り目ながら、良い演技をしています。
 ドイツ軍将校のスナイパー役はシブシブのエド・ハリス。ホント、この人はドイツ人に見えますね。この映画は彼の存在感でバランスが取れていると思います。最後の残虐さは、いただけないけど。
 仰天風貌の持ち主、ロン・パールマンもチョイ役ですが、光ります。
 なお、この映画ではロシア人であろうとドイツ人であろうと、兵士であろうと庶民であろうと、ぜぇ〜んぶ英語を話します。覚悟して見ることにしましょうね。(^o^)
 また、予告編などで用いられていたスラヴァの歌うカッチーニのアヴェマリアは、やはり挿入されていませんでした。
(ビデオ)

2001.10.21 誘拐犯 ★★☆

  「ユージュアル・サスペクツ」の脚本でオスカーに輝いたクリストファー・マックァリーの初監督作品。だからといって、この映画にはあっと驚くような謎解きやドンデン返しを期待してはいけません。
 富豪の身重の代理母(ジュリエット・ルイス)を身代金目当てに誘拐しようとする二人の男(ベニチオ・デル・トロライアン・フィリップ)と、富豪側の繰り出すガードマンや始末屋との攻防を描いた作品。原題(「The way of the gun」)にもあるようにこの映画は、銃撃が大きな要素を占めています。
 終盤までは何となく思わせ振りな展開で、何か来るかなと思わせていながら、ラストの大迫力の銃撃戦を経て意外にもストレートなエンディングを迎えます。思わせ振りというより、単に人物や背景の説明不足という感じも無きにしもあらず・・・。
 1500万ドル(!)の身代金に目がくらんだとしても、二人の動機がイマイチしっくり来ないし、貧乏なはずなのに何であんな重装備が出来るかも良く判らないし・・・。他にも、富豪の払おうとするヤバイという金の素性、富豪の妻の怪しげな言動(特にラスト)、など、もっとハッキリさせてもらわないとスッキリしないのだよ。
 序盤の誘拐場面での双方の駆け引きは新鮮で面白かった。ああいうような感じで最後まで引っ張ってもらったら良かったのに・・・。ただ、一般市民を巻き添えにしてしまう描写は不要でしょう。不快感が残るだけです。
 デル・トロはさすがに存在感ありです。それにしてもあの目の下のクマはスゴイですね。
 ジュリエット・ルイスも大熱演。さすがに巧いです。ただし、あの大き過ぎるお腹は相当作りものっぽかったけど。(^o^)
(ビデオ)

2001.10.14 トゥーム・レイダー ★★★☆

 全世界で2,400万本も売れたという(どれくらい凄いことなのか私には判りませんが)アクション・ゲームを基にしたサイモン・ウェスト(「コン・エアー」など)による監督作品。何でも米国では、「チャーリーズ・エンジェル」を抜いて女性主演映画のオープニング成績歴代No.1になったのだそうな。
 ヒロインを演じるのは、今を時めくオスカー女優のアンジェリーナ・ジョリー。初めて父親のジョン・ボイトとの共演を果たしています。ゲームのキャラとそっくりな(多分)短パン姿がカッコイイ・・・。
 5000年に1度の惑星の十字配列の瞬間に、ある力が宿るという物体を巡る攻防がお話の中心。ですから、「インディ・ジョーンズ」や「ハムナプトラ」などと設定が類似しています。惑星の十字配列と云えば、「ピッチブラック」などや、少し前に時間を戻すなどというのは「ギャラクシー・クエスト」から、など、あちこちからアイディアをいただいて出来ているようです。
 さすがにゲームが基になっているだけに、何やらゴチャゴチャした感じは否めません。特に冒頭のロボットとの戦闘シーンでは、何がどうなっているかよく判らないのです。まあ、CGの出来が良くないせいもあると思いますが・・・。頭のVRAM(ビデオ・メモリ)を増設して見ないと付いていけない、というのはあながち冗談ではないような・・・。(^_^;)
 アクション・シーン満載でセットも大掛かりですし、CGもふんだんに使って色々見せ場を作っているのですが、どうも全体的にツッコミが足りず、新鮮味に欠けて凡庸に見えてしまうのが残念。
 アンジェリーナは本役のためにだいぶトレーニングを積んだということで、いかにも頑張っているな、ということが画面からも伝わってきます。やや表情が硬いのと、異様に唇と胸が大きいのが気になりましたが・・・。(^_^;)
(劇場)

2001.10.09 隣のヒットマン ★★

 ブルース・ウィリスの実弟であるデイビッド・ウィリスの製作作品。
 主人公(マシュー・ペリー)以外の登場人物は全て誰かに命を狙われているという、サスペンス・コメディです。
 実は「スピーシーズ」のナターシャ・ヘンストリッジが見たくてレンタルしたのでした。もちろん、ブルース・ウィリス、マイケル・クラーク・ダンカンロザンナ・アークエットなど、結構豪華な出演陣ではあるのですが。
 アルコールが入って眠気マナコで観賞したせいもあるのでしょうか、これがちっとも面白くないのです。ペリーのドタバタ演技は鼻につくし、ウィリスは嫌に白けているように見えてしまう始末。ダンカンはやっぱりダイコンだし、アークエットは気持ち悪いし・・・。しかもお目当てのヘンストリッジは全く脱がないし・・・。(^_^;)
 ストーリー的には先が読めない展開で、結構ヒネリもあるのですが、何故か乗れないのです。う〜む、やはり映画は集中できる環境で見なければいけません。
 と、云うわけで今回の評点は、殆ど当てにはなりませんのであしからず・・・。m(_ _)m
(ビデオ)

2001.10.08 スナッチ ★★★☆

 マドンナの夫としての方が有名(だと思う)なガイ・リッチーの監督作品。86カラットのダイヤモンドの争奪を描いたクライム・アクション・コメディです。タイトル(「Snatch」)は、「強奪する」というような意味だそうな。
 ふ〜む、こういうのを新感覚の群像劇とでも云うのでしょうか。そう複雑な話ではないはずなのですが、とにかく登場人物とサブ・ストーリーが多く、しかもスピーディに場面展開がなされるので、置いていかれないようにするのが精一杯です。しかし個々の場面には遊び心が一杯であり、最後まで退屈はしません。
 主人公が誰なのかよく判らない(ブラピではないのだよ)ということが、バラバラな印象を与えているのは否めません。従って誰にも感情移入できないままに、あっという間に1時間43分が過ぎてしまいます。しかしラストはベタではありますが、極めて痛快。
 残酷シーンは多いのですが、画面視野から外すなどうまくカモフラージュされますので不快感はありません。豚のエピソードはひょっとして、「ハンニバル」のパクりかな?
 早く消えてしまうベネチオ・デル・トロがもったいないぞ。
 ブラピは短い出番ながら「12モンキーズ」を彷彿とさせる個性的な役柄を怪演。ホントにこの人はこういう演技が巧いですね。八百長ボクシングのファイトで吹っ飛ぶシーンも美しいし・・・。
 なお、うさん臭く汚らしい男は山ほど出演しますが、美女は一人として登場しませんのでそのつもりで・・・(誰に云っている?)。
(ビデオ)

2001.10.07 大河の一滴 

 邦画は基本的に見ない主義なのですが、招待券をいただいたとあってはそうは云っておられません。(^_^;) しかし、行ったのは公開劇場が縮小された初日。何と全座席数44の小さな、小さな映画館。新宿にもこういう小劇場があったのですねぇ。
 五木寛之の大ベストセラーのエッセイ集をベースに本人が原案を描き、新藤兼人が脚本を担当、神山征二郎が監督した作品です。ロシア人でトランペット奏者を志す青年(セルゲイ・ナカリャコフ)と幼なじみ(渡部篤郎)との間で、揺れるヒロイン(安田成美)の恋心を中心に、同僚(南野陽子)や父親(三國連太郎)の死を絡ませ、人間の生き方を描いたもの、とでも云えばよいのでしょうか・・・。
 タイトルなどから格調高い文芸作品かと思ったら、さにあらず。原作では「一滴」とは人間個々を指しているとのことですが、この映画からはそのテーマがさっぱり見えてきません。エピソードは深堀されず、構成は平坦。淡々と日常ありそうなことが描かれ、心が揺さぶられるような展開は全くありません。一番悪いのは脚本のまずさでしょう。セリフ回しもいかにもやぼったくていただけません。「大河の一滴」製作委員会などという仰々しい名前の製作側は、この映画で一体何を訴えたかったのでしょう?
 安田は思ったよりダイコン。三國と渡部の演技で、少し救われはします。ナカリャコフはNHKの朝連ドラ「天うらら」のテーマ曲で有名になったホンマモンのロシア人・トランペッター。流石に楽器コントロールは抜群だと思います。
 加古隆のテーマ曲は、やや甘美に流れ過ぎ。そういえば以前ライブ・コンサートで、作曲したばかりのこのテーマ曲を彼自身のピアノで聴いたことを思い出しました。
 それにしても昨今の邦画の実力はこんなものなのでしょうか。料金を払っての観賞なら確実に、金返せ、もんです。(-.-)
(劇場)

2001.10.01 ハイ・フィディリティ ★★★☆

 「ハイ・フィディリティ(=ハイ・ファイ)」などという日本では死語同然のタイトルでも、単館公開時はかなりヒットした映画のようです。原作に惚れ込んだジョン・キューザック自らが製作に関わり、主演した作品。
 シカゴで中古レコード店を開いている30代独身男(ジョン・キューザック)の恋愛談義が話の中心。この主人公がカメラ目線で観客に話しかけながら物語を進めていく、というのがユニークといえばユニーク(でもないかな?)。
 ま、スタイリッシュなラブ・コメディという感じで、音楽(ロック)好きな人ならより楽しめることでしょう。「かつての恋人・トップ5」など、何でもヒット・チャートになぞらえてしまったりするのも、軽薄っぽいけど楽しい趣向です。どこにでもいそうな情けない男の主人公に自分を当てはめて、自己嫌悪に落ちるには恰好の映画かも知れません。往時のヒット曲やレア・アイテムのレコードが登場しているようですが、世代が違う私にはイマイチしっくりこないのが残念です。
 ティム・ロビンスキャサリン・ゼタ=ジョーンズなどのビッグ・ネームが端役で出演するのは驚き。ここでもティムの存在感は圧倒的です。
 一番印象深かったのは、レコード店の店員のオタクな二人を名演したジャック・ブラックトッド・ルイーゾ。このおかしな二人と主人公の絡みが、またたまらなく良いのです。
 とっちゃん坊やのジョンは、子供の精神状態のまま成長したような我が侭な役柄にピッタリはまっていましたし、彼と実姉ジョーン・キューザックの掛け合いも楽しく可笑しく見れました(さすがに彼女とは恋に落ちなかったけど)。
(ビデオ)

2001.09.25 バガー・ヴァンスの伝説 ★★★

 さすがにロバート・レッドフォードは、この映画では出演せずに監督に専念して正解だったと思います。あの若い主役を演ずるには、ソフト・フォーカスだけでは耐えきれないでしょう。
 1920年代、米国南部ジョージア州のサヴァンナで天才ゴルファーと云われた男の戦争による挫折と、チャンピオン大会で再び自分を取り戻すところまでを描いたファンタジー(?)です。
 タイトル(The Legend of BAGGER VANCE)にあるのは、大会で主人公のゴルファー(マット・デイモン、以下ジミー)のキャディを買って出る男(ウィル・スミス)の名前。でも伝説というほどのものかどうかは、かなり怪しい。確かに主人公は、試合の最中で彼のいくつかの助言で窮地を脱するのですが、云っていることはかなり抽象的で、スミスのような軽いキャラではなかなか説得力を持ちません。おまけにラスト・ホールの直前で仕事を降りてしまうところなども、よく判らないし(だから伝説なのか?)。例えばこの役をモーガン・フリーマンなどが演じたら、これ以上なくハマルと思うのですが・・・。
 田舎の風景を中心とした映像やバックの音楽が極めて美しく、バリバリの予定調和で終わるストーリーもいかにもレッドフォード的ではありますが、それなりに納得はさせられます。
 ジミー君はこの映画のために初めてゴルフ・クラブを振ったらしい。従ってスイングは素人目で見ても相当ヘタッピ。実在のプロ・ゴルファーを演ずるジョエル・グレッチの華麗なスイングと対照的でした。
 主人公の恋人役で絡む大富豪の娘が、シャーリーズ・セロン。大恐慌時代にも関わらず次から次へと着替える衣装と相まって、ここでも美しさを際立たせています。しかし、「モンタナの風に吹かれて」といい、レッドフォードはジコチュウの女性がお気に入りらしい。
 冒頭とラストで出演するジャック・レモンはこれが遺作となりました。合掌。
(DVD)

2001.09.11 ゲット・ア・チャンス! ★★★☆

  老人ボケを装って養護施設に入所してきた元・銀行強盗(ポール・ニューマン)と、そこの看護婦(リンダ・フィオレンティーノ)が退屈な人生に刺激を与えるために企んだものは・・・、というサスペンス・コメディです。
 製作及び総製作指揮がリドリー・スコットトニー・スコットという仰々しさの割には、しゃれた小品という感じ。気楽に観賞できます。
 序盤での、リンダがポールのボケ演技をあの手この手であばこうとするシーンが秀逸。でも車イスごと、湖にドボンは明らかにやり過ぎだけど(ホントに死んじゃうって!)。中盤以降も、彼らが用いる手口などは特に斬新さはないのですが、小気味よいテンポの演出で飽きさせません。ただリンダの行動が不自然にエスカレートしていくのがやや気になるところですが、まあギリギリ許容範囲でしょう。
 ポール・ニューマンは御年75歳。しかし、ホント粋でカッコイイ。冒頭の姿を見ると本当にボケてしまったのではないかと心配させられますが、本性を現したときの若々しさに驚きます。ラスト近く、警察に追い詰められて彼の云うセリフが最高。噂ではこれが最後の出演作になるのではないかということですが、そうだとしたらとても残念です。
 恥ずかしながら、この映画で「プロム(prom)」という言葉を初めて知りました(リンダとその夫はプロム・クイーンとプロム・キング同士で結婚としたという設定)。米国での学校の公式ダンス・パーティのことなんだそうですね。
(ビデオ)

2001.09.10 クリムゾン・リバー ★★☆

 フランス国内で大ベストセラーとなった小説の映画化だそうな。 「アサシンズ」などのマシュー・カソヴィッツの監督作品。フランスで最初のデジタル映写方式による作品だそうで、そのせいか画質、サウンド効果ともにハリウッド的で極めてハイレベル。今後全てこのようになるなら、私としてはもっとフランス映画やヨーロッパ映画に食指が動くようになると思います。
 どなたかも云われていたように、雰囲気的には横溝正史映画のフランス版。「セブン」+「バーティカル・リミット」と云っても良いかも知れません。
 冒頭と序盤に、大の男でも正視に耐えられないようなシーンが出てきますが、DVDの特典映像によれば最も監督が力を入れた部分(物体)とのことなので、我慢して見ることにしましょう。
 前半のジャン・レノヴァンサン・カッセルが合流するシーンあたりまでは、おっ、これは正統的謎解きサスペンスだな、と大いに期待を抱かせます。ところが中盤からラストまでの展開が、恐ろしく説明不足。伏線の無い真犯人もあれではルール違反でしょう(実は、隣村のたばこ屋の女主人が恨みを持っていた、という類いです)。
 あの部分(物体)に力を入れたのなら、何故あそこまで残酷なのか、高山や氷河に運ぶ必然性は何か、そもそも何故殺されなければいけなかったのか、くらいはもっと解説すべきです。他にもジャン・レノは何故撃たれなかったのか、など疑問点は一杯。
 カッセルの陳腐な格闘シーンもとってつけたようで、いただけません(カンフー・シーンを挿入すればヒットすると思っているのかな?)。
 で、私の結論。頭に「?」が100個位湧いた観客が、真相を確かめようと原作本を購入、更なるベストセラーとなることを原作者が企んだ。・・・違うか。(^o^)
(DVD)

2001.09.09 ペイ・フォワード 可能の王国 ★★★

 「アカデミー賞受賞確実!」とか「ラストは絶対他人にあかさないで下さい」などという宣伝文句は、今となっては作品を安っぽくするだけで、逆効果なのでは・・・?
 ま、ともかく私のお気に入りの「ピース・メーカー」などのミミ・レダー監督作品です。
 タイトル(「Pay It Foward」)は、他人から善行を施されたら、別の次の3人に善行を施しましょう、そうしたら世界はもっと良くなるよ、という幸福の手紙の実践版のようなことを指しています(ねずみ講とも云えるか)。
 本作品は、児童虐待、夫婦不和、アル中、麻薬中毒、貧困、いじめ等の、もはやアメリカだけとは云えない荒んだ社会事情の中で、このテーマを実行しようとする主人公(ハーレイ・ジョエル・オズメント)のけなげな努力を中心に描かれます。アル中に悩む彼の母親(ヘレン・ハント)と、体に障害を持つ彼の教師(ケビン・スペイシー)との恋愛がそれに絡みます。
 このテーマが成功したかどうかの答えは必ずしも明確に提示されておらず、それがかろうじてこの映画が説教めいたお伽話に成り下がることから回避させています。問題はやはりあの結末でしょう。観客を無理やり泣かすことには成功しても、後味の良さを犠牲にしてしまった監督の意図がよく解りません。ヘレンとケビンのラブ・ストーリーがよく出来ていただけに、残念な構成です。ラストもそれなりに感動的ではありますが、余りにも「フィールド・オブ・ドリームス」のマンマ過ぎるし・・・。 
 3人のレベルの高い演技の中で、特に光っていたのはヘレン。最初に登場したシーンではまさか彼女とは思いませんでした。ジョン・ボン・ジョヴィは、今回もすぐ消えるチョイ役。
 しかしそろそろハーレイ少年の眉毛を、八の字から解放してやれる映画が見たいものです。
(DVD)

2001.08.20 ギャラクシー・クエスト ★★★★☆

 「ギャラクシー・クエスト」というのは、実際に存在したTVシリーズかと私は誤解をしていました。「スター・トレック」をパロディ化した架空のTV番組を背景にした、SFコメディなのです。
 TV番組の「ギャラクシー・クエスト」を歴史ドキュメンタリーだと勘違いしたエイリアンが、その出演者らに彼らの抗争解決のために救いを求めてくる、というハチャメチャな設定。ところが単なるオバカ映画で終わらせているのではないのがこの作品の凄いところです。
 過去の栄光にすがって生きている自分に嫌悪しまくっている主人公らが、エイリアンの勘違いに大いに戸惑い、挫折しつつも次第に勝機を掴み、大難関を乗り切るというベタな展開。しかし伏線をちりばめた巧い構成、レトロな感覚との対比が素晴らしい精巧なSFX、エイリアンの魅力的なキャラなどで、グイグイ引き込まれていきます。ラストではそのカタルシスに思わず拍手喝さいを送りたくなったりする始末。
 艦長役のティム・アレンはともかく、トカゲ・ヘッドのアラン・リックマン(「ダイ・ハード」の悪役ね)の演技が素晴らしい。シガニー・ウィーバーが妙に若作り(御年52歳!)で、この映画はリバイバル上映だったのかと間違いそうになります。それにしてもあのバストは今流行りのニセモノだと思うけど・・・。(^_^;)
 いつも笑顔で人なつこく、奇妙なしぐさのエイリアンのキャラが、何と云っても秀逸。この映画の魅力は彼らに負うところが大です。
 単館上映しかされなかったのが、もったいない。艦長役にメジャーな人気俳優を配していたら、全国ロード・ショーで大ヒット間違いなかったのではないでしょうか。(^_^)
(ビデオ)

2001.08.19 ジュラシック・パーク3 ★★★☆

 スティーブン・スピルバーグが製作・総指揮にまわり、「ジュマンジ」などのジョー・ジョンストンが監督をしたシリーズ3作目(云わなくても解るって)です。比較的評判が良いようなので、劇場に足を運びました。休日でも初回だったので、指定席が解放されていてベスト・ポジションで観賞できたのは、ラッキー。(^_^)
 恐竜が棲息するかの島で、遭難した息子を助け出そうとする両親を含む救助隊が次々に恐竜に襲われていく、という単純明快なストーリー。注目すべきは、新種の恐竜と更に精巧なCGによるそれらの造形ということですが、画面が暗いせいもあって(劇場の問題か?)空を飛ぶ翼竜以外は、あまりその違いははっきりと解らなかったのが残念でした。
 伏線(音声器官の笛)がバレバレだったり、ご都合主義が気になる(助かるべき人は助かる、あの状態で2ヶ月も生き延びられる)ものの、総じて楽しめることは間違いありません。特に翼竜の登場は新しい視点が出来て新鮮でした。
 第一作オリジナル・キャストのサム・ニールローラ・ダーンの登場は嬉しいのですが、それ以外の魅力的な配役に乏しいのが、やや残念。ティア・レオーニ(母親役)では物足りないし、ウィリアム・H・メイシー (父親役)は良い俳優なのでしょうが、私は余りこの人を好きではないし・・・。
 近ごろの大作には珍しく、1時間33分という短さ。もう少し恐竜達の動きを見せてくれても良かったと思うのですが・・・。(-.-)
(劇場)