1999.05.13 サブウェイ・パニック ★★★
1974年に制作された同名映画の、これはかなり忠実なリメイク作品。
人質の身代金目当てで地下鉄を乗っ取った(サブウェイ・ジャックとでもいうのでしょうか・・・)武装グループと、警察側のネゴシェータとの攻防を描いたサスペンス作品です。
リメイクといっても、地下鉄を乗っ取るといういかにもローテクっぽいテーマと、SFXとは無縁な作りのために、何となく古めかしい感は否めません。でも犯人側が要求がのめない場合に人質を一人ひとり殺していくという件(くだり)は、「エアフォース・ワン」でもありましたが、この映画でも見せ場になっています・・・。わざと画像の粒子を荒くしてざらついた感じの映像も、サスペンスを高めるのに一役買っています。
終盤の詰めが甘く、あっけないのがやや不満。ラストのコメディ・タッチのオチも、それまでのムードとややそぐわない感じでいただけません。
犯人グループの主犯格役(俳優は不明)と、彼に造反するメンバ(俳優は不明)の演技が素晴らしい・・・。可哀想な女車掌さんはまるでマイケル・ジャクソンでした。
(ビデオ)
1999.05.09 ロザンナのために ★★★
- 主人公の愛する妻・ロザンナは、不治の病で余命幾ばくもない体。彼女は先に逝った娘の眠っている墓の隣に葬ってもらうことを、切に願っています。ところが村の墓地の空きはあと三つしかありません。彼女の願いを叶えてやりたい主人公は、交通整理したり、病人を見舞ったりして、自分の妻より先に他人が死なないよう奔走する・・・という夫婦愛を描いたコメディ映画です。
話自体は面白いし、お互いを思いやる夫婦愛にもホロリとさせられるし、ミステリー的な要素もあったりして、退屈はしません。でも、一貫して利己主義に走る主人公やロザンナの行動に、私は余り共感できませんでした。特にあの結末には、してやられた、という感じはあるものの、おいおい、自分たちさえ良ければそれでいいのかい、という思いが・・・。(-.-)
いかにもイタリア的ないいムードが漂う映画なのに、終始(イタリア訛りの)英語で話されているのも奇妙で残念。
コミカルなジャン・レノもいいのですが、ロザンナ役のマーセデス・ルールが余裕綽々(しゃくしゃく)の演技で、レノを圧倒。彼女は「フィッシャー・キング」でアカデミー助演女優賞に輝いています。
(ビデオ)
1999.05.07 プライベート・ソルジャー ★★★★
- 1944年11月、ベルギー・ドイツ国境で24,000人ものアメリカ軍死傷者を出した「ヒュルトゲンの森の戦い」を描いた戦記映画。ノルマンディー上陸後、ベルリン陥落のためドイツ領国へ侵攻を進めるアメリカ軍は、ドイツ軍との熾烈な攻防戦を続けていきます。そんな中、それまで運良く生き残ってきた一人の兵士が、軍上層部から過酷な侵略命令を受け、経験浅い新兵を引き連れて、前線で決死の覚悟で戦う姿を描いたものです。
「プライベート・ライアン」とまではいかなくとも(それを意識したタイトルではありますが)、十分戦闘の緊張感は味わえる作りになっています。特に前半、頼りない新兵が戦列から逸脱してドイツ軍と遭遇するくだりは、ハラハラもの。百にひとつも助かる見込みのない状況の中で、新兵が次々に戦意を喪失していく描写は極めて現実味があり、説得力があります。また、冒頭の象徴的なエピソードが、ラストの伏線となっているあたりもうまい作りです。
こういう戦争物を見ていると、いつ誰が死んでしまって、誰が生き延びるのか、ということが気になるわけですが、ここでも見事に期待を裏切ってくれます。(^_^;)
主演は、「セント・オブ・ウーマン」、「スリーパーズ」などのロン・エルダート。控えめで、感情を抑えた良い演技をしています。
90分程度の短い作品ではありますが、反戦のメッセージが痛いほど伝わってくる、優れた映画だと思います。
(ビデオ)
1999.05.03 スピーシーズ2 ★
- 前作の「スピーシーズ/種の起源」を見たのはだいぶ前で、ストーリーは余りよく覚えていませんでしたが、まあ、よく出来たSFホラー作品だったという記憶はありました。ところが続編のこれを見てビックリ。一作目の印象とは打って変わって、極めてお粗末なB級(C級?)SFホラー映画に成り下がっているのでした。
火星探索に成功した宇宙飛行士が帰還するが、彼はどうやらエイリアンのウィルスに侵されたらしい。帰ってくるなり猛然とセックスに励むが、ことが終わった後は女性は血みどろの遺体と化し、その傍らには幼い男の子が・・・。一方、前作で残されたエイリアンから様々な実験のために女性クローンが作られていたが、そのクローンと宇宙飛行士が求めあい、ついにエイリアン同士で絡み合うことに・・・、というストーリー。
とにかく構成が雑で、いい加減・・・。適当にプロットをカットして、展開の必然性も説明なし。SFXはそれなりにお金をかけている部分もあるようですが、全体的にチープ感が漂います。
したがって、見ものは前作でもヒロイン(エイリアンの)だったナターシャ・ヘンストリッジのナイス・バディのみ。彼女の美しい肢体に★一つを献上。
例によって最後は続編の制作が暗示されていましたが、私はもう見たくない・・・(ナターシャ・ヘンストリッジがまた出演するなら、見てもいいかな・・・(^_^;))。
(ビデオ)
1999.04.29 モンタナの風に吹かれて ★★★★
- 「モンタナの風に吹かれて」・・・。やや気恥ずかしさは残るものの、中々良い邦題を付けたものだと思います。原題は「The
Horse Whisperer」で、馬の耳元で囁くようにしてケアをする人、という意味なんだそうな。ロバート・レッドフォードの制作、監督、主演作品。
ある事故で心と体を大きく傷つけてしまった少女と馬を、モンタナに住むカウ・ボーイ(ロバート・レッドフォード)が献身的な努力で癒していく様を描いたもの。また、その少女の母親(クリスティン・スコット・トーマス)とカウ・ボーイの不倫の恋も絡ませます。
ニューヨークの雑踏と対比される、モンタナのケタ違いに広大な自然の風景描写に、まず圧倒されます。その映像の美しさを背景に、根気強く少女と馬を癒していく男の姿と、彼と母親との悲恋が描かれ、2時間50分の長尺物にもかかわらず、最後まで弛むことなく見せてくれます。少女が少しずつ心を開いていく過程もさることながら、私はむしろ地道なトレーニングで、荒れ狂っていた馬が次第に癒され、以前の状態に戻る姿の方に感動を覚えました。
あの不倫だけが余計だ、なんて評もあったようですが、私はあれはごく自然な展開だと思います。あの母親にとっては、彼が神様に見えたはずです。あの立場であれだけ信頼できる頼もしい男(馬にとっても、娘にとっても)がいれば、好きにならない方がおかしいというものでしょう。
私はあの結末を見ながら、「マディソン郡の橋」を思い起こしていました。いずれもヒロインは正しい選択をしたのでした。
万年青年のロバート・レッドフォードも、60歳を過ぎているとのこと。何でも監督の権限で、カメラをソフト・フォーカスにして余りアップを撮らせなかったんだそうな。それにしても何であんなにカッコイイんでしょう。母親役のトーマスは、「イングリッシュ・ペイシャント」のヒロインの時とだいぶイメージが変わっていましたが、中々魅力的ではありました。でも私ならあんなジコチュウで、気の強い女性はご免です。(誰もそんなこと、訊いていないか・・・(-.-))
(ビデオ)
1999.04.28 ロスト・イン・スペース ★★★★
- 1960年代の米国TV映画、「宇宙家族ロビンソン」のリメイク作品。この手のビデオは私のようなオッサンが借りるのに少々勇気が必要です。まあでもAVを借りるよりはマシだと思いますが・・・。(^_^;)
時は2058年。増えすぎた人口と環境汚染のため、人類は地球以外の惑星への移住を余儀なくされる。そこで先発隊をかってでたのがロビンソン博士一家。優秀なパイロットと忠実な(はずの)ロボットを伴って地球を出発するが、思わぬ破壊工作によって数々の危険に遭遇していく。そして宇宙で迷子に(LOST
IN SPACE)・・・、というSFアドベンチャー物語です。
子供だましかな?などと余り期待しないで見たのですが、これがさにあらず。まあ、バラバラな家族の絆を一つに合わせるというホームドラマ的な部分はともかくとして、中盤以降に「バック・ツー・ザ・フューチャー」的なタイム・パラドックスが折り込まれていて、とても興味深く見ることができます。この手のものに多いご都合主義的な部分を差し引いても、よく出来た構成だと私は思います。
しかもCGによるSFXがスゴイ!なんでもジュラシック・パークの2倍のCGを用いたのだとか・・・。後半登場するCGによる蜘蛛男(!)は、見ものですぞ。アニメ・キャラ風の宇宙愛玩動物には、やや興ざめですが・・・。
話題の主は、小心な悪役を演ずるゲーリー・オールドマン。少し先を見ているような視線の演技はここでも健在。あと目立ったのは小悪魔的なキャラクターを持つ次女役のレイシー・ジャベール。今後いったいどんな女優に成長するのでしょうか・・・。
(ビデオ)
1999.04.26 ナイト・ウォッチ ★★★
- 屍体置き場の夜警(「Nightwatch」)をバイトに選んだ主人公(ユアン・マクレガー)に降りかかる、数々の恐怖と策略を描いたスリラー。「モルグ」(屍体安置所)という作品のリメイクなんだそうな。
立ち木を覆う黒いビニール、電灯のカバーの中でバタつく蛾、一人での巡回、暗い廊下の遅れ気味に点灯していく蛍光灯、屍体を覆う白い布、ホルマリン漬けの標本など、不気味な小道具がしっかり揃っています。それに加えて猟奇連続殺人事件、屍体愛好も絡んで、「恐怖の館」のお膳立ては十分。
十分でないのは、ストーリー。中盤までけっこう興味深い展開だったのに、犯人があっさり明かされて、ガックリ。しかもその犯人があれでは、ルール違反というものでしょう。だいたい、**を不正で首になった人が、##なんかにそう簡単になれないのではないでしょうか。犯人が判ってから結末までの展開も、お定まり(電動ノコギリと手錠です・・・)で工夫もなく平凡。(-.-)
せっかくマクレガー、ニック・ノルティ、パトリシア・アークエットなどのいい役者を使っているのに、もったいない・・・。製作者は、舞台背景の設定の成功を確信して安心し、その後手を抜いたのでは、と思われても仕方がありませんな、これは・・・。
ワケアリで辞める前任の夜警、これ以上ないほど不気味に役にハマっていました。
(ビデオ)
1999.04.25 エネミー・オブ・アメリカ ★★★
- 「インデペンデンス・デイ」や「メン・イン・ブラック」で大ブレイクした、今や絶好調のウィル・スミス主演の話題作。
弁護士である主人公がふとしたことで政府要人暗殺の証拠を握ったことから、NSA(国家安全保障局)から国家の敵(=「エノミー・オブ・アメリカ」)として命を狙われます。主人公は、陰で使っていた情報屋(ジーン・ハックマン)と協力しながら悪の組織に挑んでいきます。
見ものはNSAの所有する盗聴、盗撮、監視、追跡などのハイテク・システムということですが、すべて現実のものと同じではないでしょう。物理的に?の部分もありましたし、電話の盗聴の場面では、ワイアを電流のようなものが疾走する(?)ような場面があって、やや興ざめ・・・。
アクション・シーンも大仕掛けなものは殆どなく、サスペンスとしても平凡な出来です。主人公が余り活躍しないのも不満ですし、第一、下着姿でハイウェイを走るなんていうシーンは殆どコメディのノリでしょう。
感心したのは、冒頭の主人公とイタリア・マフィア絡みのトラブルが、結末への重要な伏線となっていること。これはうまいオチでした。
最近のハリウッド映画にはよくこのNSAが出てきていますが、この組織は米政府を盗聴などから守るとともに、逆に外国の通信などを盗聴したりするんだそうな。また、NSAが解読できない暗号は禁止されているのだとか・・・。
そのNSAの黒幕を演ずるのは、ジョン・ボイド。「真夜中のカウボーイ」のヒーローも、最近ではすっかり悪役づいてしまいました。
(劇場)
1999.04.24 隣人は静かに笑う ★★★★★
- 「隣人は静かに笑う」・・・。うーん、いい邦題ですね。このタイトルがこの映画のすべてを物語っています(ネタバレかな?)。
善良そうに見えていた隣人が実は恐ろしい人間だった、というのは映画としては山ほどあるテーマ。でもこの映画は、ラストがかなり衝撃的という話を聞いて、ビデオを待たずに劇場に出かけることにしました。
大学教授の主人公(ジェフ・ブリッジス)が事故で負傷した少年を救ったことから、向かいに越してきた家族と親しくなります。ところが最初はごく普通に見えていたその家族と付き合っているうちに、その家の主人が偽名を使うなど、不審な点に気づき始めます。やがて主人公が知った、隣人の恐ろしい正体とは・・・?
そしてかのラスト・・・。なるほど、そう来るのですか。やられました・・・。
- ティム・ロビンス扮する隣人が怪しいというのは最初から判っているわけですが、最後にあのようなヒネリがあるとは・・・。中盤以降の、家族の正体がじわじわと解き明かされていく過程もスリル満点。更にアメリカなら実際にあり得るであろう結末には、背筋が凍る思いがします。
やや気になったところは、冒頭のシーンがショッキングな割には、それが後で活かされていなかったこと。
ジェフ・ブリッジス(「恋のゆくえ」、「ブローン・アウェイ」など)が素晴らしい演技をしています。特に終盤、形相がそれまでと全く変わってしまうところがスゴイ!また、抑えた演技のティムもいいのですが、その妻役で、笑顔の裏に隠された恐ろしい女を演じたジョーン・キューザックも素晴らしい。
- 刺激が不足していると思われている方に、是非お薦めします。(^_^)
(劇場)
*スタンリー・キューブリック監督の遺作、「EYES WIDE SHUT」の予告編が放映されていました。実の夫婦であるニコール・キッドマンとトム・クルーズが、鏡の前で全裸で絡み合う(!)シーンなのだ・・・。(^_^;)
1999.04.22 ゼロ・エフェクト ★★★
- 代理人を常に立てて、自分ではクライアントに決して接触しない私立探偵のゼロ。その彼がある恐喝事件を探っていくうちに、依頼人の異常な過去が解き明かされていきます。一風変わった探偵謎解き映画。
この私立探偵のキャラクタの設定がとってもユニーク。どうやら探偵としては相当の凄腕のようなのですが、異常なまでにセキュリティを高めた一室で、クスリをやりながらギターを伴奏に下手なロックを歌っているというのが最初の登場シーンなんです・・・。(-.-)
ミステリーとしての出来はいい方だと思います。ただヒットマンが、自分が殺した相手の子供を育てる、というのはやや無理な設定かも・・・。また、ストーリーとしては細部がやや不明な部分があったりしますし(私だけか?)、最後のモノローグの、「彼女はゼロの仕事(エフェクト)をしてくれた」という背景もイマイチよくわかりませんでした。(^_^;)
ユニークな探偵、ゼロを演ずるのは、ビル・パルマン。「インデペンデンス・デイ」での大統領役は余り似合わなかったけれど、ここでのこの人のアブナサは一見の価値ありです。クライアント役は、ライアン・オニール。「ある愛の詩」のヒーロー(!)も老けました・・・。謎の女性レスキュー隊員は、「マーキュリー・ライジング」でもコケティッシュな魅力をふりまいていたキム・ディケンズ。この人は中々いい味を出していましたよ。
- (ビデオ)
1999.04.18 ザ・グリード ★★★
- 海洋モンスター、パニック映画。原題は「DEEP RISING」なんていうカッコいいタイトルなのに、わざわざ「ザ・グリード」(「THE
GREED」=貪欲なやつ?)などと分けの判らない邦題を付けるセンスがよく判りません。
この映画のストーリー紹介は、どう書いてもネタバレになりそうなので割愛します。しいて言うなら、「タイタニック」と「エイリアン2」と「エイリアン4」と「スピード2」と「アナコンダ」と「GODZILLA」を足して8(!)で割った感じ、といえばお分かりでしょう。(^o^) けっこうお金もかけているようです。また、かなりグロテスクな描写があったりして、気の弱い方は敬遠されたほうが良いと思います。特にハンバーガーなどを食べながら見るのは、お薦めできません。(^o^)
しかし、さすがにCGは「トータル・リコール」、「アビス」でアカデミー賞を受賞したデザイナー・グループや、例のILMが手がけていることもあって、けっこう見応えのある出来になっています。場面によってはややCGくささが目に付くところもありましたが・・・。「GODZILLA」が走るタクシーにいっこうに追いつけなかったように、疾駆(?)するモンスターが走る人間に中々追いつけないのは、ご愛嬌・・・。
出演は、トリート・ウィリアムズ、「007/ゴールデン・アイ」のボンド・ガールのファムケ・ヤンセンなど。
あのラスト・シーンは単なるギャグ?それとも続編の暗示?
(ビデオ)
1999.04.12 ブギー・ナイツ ★★
- 98年アカデミー賞で、最優秀脚本賞など三部門にノミネートされた作品。70年代の伝説のポルノ男優、ジョン・ホームズをモデルにした映画です。彼は延べ14,000人(!)の女優を相手にし、88年にエイズで亡くなってしまいました。(-.-)
ある一ヶ所(あそこが××い!)を除いて何の取り柄もない高校中退の少年の、ポルノスターとして昇りつめていく栄光と、そこからの転落と挫折を描いたもの。ポルノ映画界を描いてはいますが、この映画自体はポルノではありません。念のため。
前半のスターの道を一気に昇りつめていく過程まではいい感じなのですが、お約束の天狗になって、ドラッグに溺れて凋落していく後半では、だいぶ弛んでしまいます。周りの人間の、本題とは直接関係のないエピソードを多く詰め込みすぎています。またそれらが随分丁寧に描写されているのです。いずれにしてもこのテーマで155分は、いくら何でも長すぎでしょう。
髪型、ファッション、音楽などからは、70年代から80年代のこの時代の雰囲気が十分伝わってきます。同世代の者にとっては(私とはいいませんが)、これは懐かしくてたまらないでしょうね。
監督役のバート・レイノルズが渋く好演。主人公役はマーク・ウォルバーグですが、この役はディカプリオという案もあった(!)そうです。彼だったら、あのボカシの入ったラストシーン、どうしたでしょうね・・・。(^_^;)
(ビデオ)
1999.04.11 シティ・オブ・エンジェル ★★★
- この作品は、カンヌ映画祭監督賞を受賞した「ベルリン・天使の詩」のリメイク。私がかつてこのオリジナル作品をビデオで見た時には、余りにも難解で高尚な内容に辟易したものでした(途中で居眠りしたかも・・・(^_^;))。でも今回はロサンゼルスに舞台を移したハリウッド版のリメイクですから、そんなことはありません。
ある天使(ニコラス・ケイジ)が人間の女性(メグ・ライアン )に恋をして、そのために天使としての永遠の命を捨てて人間として生きていく、というのが大筋のストーリー。
結末があれではひどい、という評もあるのでしょうが、単なる甘いラブ・ストーリーに終わらせないためにはああいう展開もやむなしでしょう。見終わった時には「人生讃歌」がテーマであるということに気づかされます。
羽のはえた可愛い女の子だけではなく、むさくるしいオッサンの天使もいるということをオリジナル作品で知らされましたが、ここでも同様で、黒いロング・コートに身を包んだ大人の天使が多数登場します。彼らは高層ビルの屋上にたたずんだり、ハイウェイの信号機に腰掛けて地上を見下ろしたりしていて、この辺はオリジナル作品を彷彿させる印象的な美しいシーンです。
愛くるしいメグは健在ですし、アクションものとは一味も二味も違う側面を見せるニコラスも好演。彼はストーカー的な恋の悩みを「眉毛」で演技をしていました・・・。情けない顔・・・。(-.-)
(ビデオ)
1999.04.07 キャラクター ★★★
- 98年アカデミー外国語映画賞、同年パリ映画祭グランプリにそれぞれ輝いた、これは珍しくもオランダ映画です。冒頭の展開はミステリー・サスペンス仕立てですが、母親と子、父親と子の愛憎を描いた重いテーマのヒューマン・ドラマです。
1920年代、オランダの暗雲垂れこめるロッテルダム。非情で冷酷な税務執行官とメイドの間に私生児として生まれた主人公(フェジャ・ファン・フェット)が、貧しい中で自学しながら自らの道を切り開いていこうとします。ところが何故か常に父親の冷たい仕打ちが主人公の行く手をさえぎり、ついに司法試験に合格した夜、事件が起こります・・・。
私は最後まであの父親の態度が理解できませんでした。自分の子供を目の敵のごとく扱うことが、愛情の裏返しだとは到底信じられません。最後の手紙の「父より」だけでは帳消しにはならないでしょう。
それは殆ど何もしゃべらない、滑稽なまでに寡黙な母親についても同様です。子供への愛情が薄いわけではないのに、愛情表現が全く出来なければ、子供の心が離れていくのも無理はないというもの。
主人公の努力による自立と成功への過程が興味深く展開されているだけに、もう少し見る者に共感を覚えさせるような状況設定があれば良かったのに、と思ったのは私だけでしょうか。
執行官役のヤン・デクレールが、パッケージ・カバーどおりの怪物を演じます。
- それにしても暗い映画だ・・・。
(ビデオ)
1999.04.04 アイス・ストーム ★★
- 台湾出身のアン・リー監督による、97年カンヌ国際映画祭で脚本賞に輝いた作品。
70年代のアメリカ東部、ある二つの裕福で一見幸せそうに見える家族の、それぞれの孤独、不信、絆を描いたヒューマン・ドラマです。隣家の主婦と不倫する夫、ストレスのために万引きをする妻、隣家の少年と性的遊技に耽る娘、気が弱くていつも女性を横取りされてしまう息子など、それぞれの置かれている状況をクールに描いていきます。そして、アイス・ストーム(氷の嵐)が襲う夜、悲劇が訪れます・・・。
うーん、製作者の意図がイマイチ私には伝わってきませんでした。悲劇の後、バラバラだった家族に絆が戻る、という設定のようですが、終盤まで、これでもかこれでもかと崩壊した家庭が寒々と描かれると、あのようなまとめ方では現実味がありません。登場人物に感情移入できるような余地がなかった描き方も問題があるかも・・・。
まるで70年代に制作された映画を見ているような、髪型、服装、化粧、小道具(金具を倒して氷を出す製氷皿とかね)などはお見事。画質はかなりハイレベルで、むしろもっと落としたほうが雰囲気が出たかも。
ケビン・クラインとシガニー・ウィーバーが好演。本作でゴールデングローブ賞・助演女優賞にノミネートされたシガニーは、エイリアン・シリーズなどと余りにもイメージがガラリと変わっていて、ちょっと驚き。「アダムス・ファミリー」のクリスティーナ・リッチがあんなに太っちょになって・・・。(^_^;)
(ビデオ)
1999.04.01 N.Y.殺人捜査線 ★★★★
- これはNY市警を退職するまでの16年間で1,400名もの犯人を検挙した実在の警官、ボウ・ディートルの実録に基づく物語です。NY市警の警官の平均の検挙数は180名ということですから、彼がいかに凄腕かわかりますね。いかにもB級然とした邦題ですが中身は全然違っていて、やや地味目ではあるものの中々見応えのある重厚な作品に仕上がっていると思います。
幼なじみのマフィアのボスとの友情と、その愛人との恋の板挟みになり、ギャンブルで破滅していく相棒に胸を痛ませながらも、果敢に事件の最前線で働くボウ。マフィア絡みの汚職をFBIから疑われ、重大事件の捜査から外されても独自の情報ルートで真犯人を挙げるボウ・・・。原題(One
Tough Cop)どおり、常に死と隣り合わせのタフで実直な一人の警官像が生き生きと描かれています。
ボウを演じるスティーブン・ボールドウィンは、落ち着いた演技に終始していて好感が持てます(やや無表情と言えなくもありませんが)。また彼はこの役作りのために10kgも体重を増やしたのだそうな。おなかの出た太っちょのむさくるしい姿のヒーローはなかなか現実感がありましたよ。この人はアレックス・ボールドウィンの弟。ギャンブル好きな同僚警官役のクリス・ペンも好演。この人はショーン・ペンの弟です。マフィアのボスの愛人でボウと恋に落ちる女性に、ジーナ・ガーション。この人はいつ見ても魅力的だなぁ、口元が特徴的だし・・・。(^_^;)
ボウ本人もゲスト出演していたとのことですが、誰が彼なのか分かりませんでした。どなたか教えて・・・。
(ビデオ)
1999.03.29 マーキュリー・ライジング ★★★★
- 劇場公開時は余り評判は良くなかったようでしたが、期待しないで見たせいか私はけっこう楽しめました。何事も過剰な期待は禁物です。
自閉症の9歳の少年が解いたパズルはなんとNSA(国家安全保障局)の最重要機密コード。そのためにその少年は命を狙われてしまい、ニューヨーク市警のはみ出し警官(ブルース・ウィリス)が彼を守ることに。そしてNSAの送りだした暗殺者チームが彼らに容赦なく襲いかかっていく・・・、というサスペンス作品。
冒頭、主人公の置かれている状況を説明するための1エピソードがあって、これはお定まり。それを含めて中盤までテンポよく見せてくれます。しかし後半以降はやや中だるみ的な感じがしてしまいますが、多分これは派手なアクションやあっと驚くような仕掛けがそれ以降ないせいかも知れません。
また、少年の暗号の解読によってある電話番号がわかってしまうところはいいにしても、メッセージをすらすらと読む段ではやや嘘っぽくなってしまいます。更に、主人公はなぜもっと早くFBI側に保護を頼まないか、とか、NSAは少年を抹殺するより暗号コードをより高度なものに変えるほうが先決なのでは、などの疑問が残ります。
少年役のマイコ・ヒューズの、自己の世界に埋没する名演技は随分評判となりました(あの目線はややギコチなかったのですが)。彼がラストで主人公にそっと抱きつくシーンでは思わずウルウル。(T_T)
それにしてもブルース・ウィリスの頭は寂しくなりました・・・。(..)
(ビデオ)
1999.03.28 CUBE ★★★
- これは何とも奇妙な映画です。新感覚SFホラー・サスペンスとでもいうのかな・・・。
6人の男女が何故か四角の部屋(CUBE=立方体)に突然閉じこめられてしまいます。その部屋の隣にはまた同じような四角の部屋があるのですが、部屋によっては人を殺してしまうような恐ろしい罠が仕掛けられているのです。果たしてこの6人はそこから無事脱出することが出来るか・・・?
昔、15ゲームといってランダムに並んだ15のコマを一つの空間を利用して順番に並べるゲームがありましたし、またルービック・キューブという分割された立方体の色を合わせるゲームが流行りましたが、これはいわばそういうようなゲーム感覚の映画なのです。ただ、移動する部屋を間違えると人が死ぬことになるので、登場人物にとってはまさに死に物狂い。しかし本当の罠は部屋にあったのではなくて、窮地に追い込まれたときの人間の本性だった、というのがこの映画のもう一つのテーマ。それに気がつくと案外「よくある話」と言えなくもありません。
その四角の部屋は何のためにあって、どうしてその6人が閉じこめられたかは一切説明がありませんし、またそれをこの映画に求めてはいけないのでしょう。したがって観客の興味は、安全な部屋であることをどうやって確認するか、出口をどうやって見いだすか、ということになります。ひとりの人間がそれを解明していくのですが、ややその過程が分かりにくかった(少なくとも私には)のが残念。キーとなる部分だけにもう少し親切な説明をして欲しかったと思います。
ホラー・サスペンスとしては取り敢えず成功していると思いますが、この手の映画は好き嫌いが別れるでしょうね・・・。
(ビデオ)
1999.03.24 アベンジャーズ ★★
- 60年代に全世界的にオン・エアされたイギリスの人気テレビ・シリーズの映画版だそうな。日本でも放映されたのでしょうが、私にはとんと記憶がありませぬ。
天候をコントロールして世界制覇を狙う悪者(ショーン・コネリー)とそれに対抗する秘密諜報員(レイフ・ファインズ)と女性気候学者(ウマ・サーマン)。007や0011などと同趣の、いわゆるスパイ(コメディ)ものです。
英国風の古典的でスタイリッシュな設定と、SFXを駆使した映像はそれなりに目を見張らせてくれますが、ストーリー自体は極めて単純で退屈してしまいます。なんと熊のぬいぐるみで会議をするシーンもあったりして、ズッコケてしまいました。
主人公を演ずるレイフ・ファインズも「イングリッシュ・ペイシェント」の時とは打って変わって無機質な演技に終始します。ショーン・コネリーも多分不本意な出演だったんじゃないでしょうか。唯一の見ものは黒のキャット・スーツに身をくるんだ超人的スタイルのウマ・サーマン(あの腰はなんなんだ???)。
予告編を見ての期待感がこれほど裏切られる映画も珍しいかも・・・。(-.-)
(ビデオ)
1999.03.21 スライディング・ドア ★★★★
- 地下鉄の車両に乗ろうとして、目の前でドアが閉まって乗れなかった主人公と、間一髪のところで間に合った主人公との二つの物語が同時進行していくという、奇抜なアイディアの構成によるラブ・ストーリー。タイトルの「SLIDING
DOORS」は、目の前でのドアの閉まり方でその後の人生が大きく変わってしまうことを象徴しています。
この映画での私の興味は、登場人物が同じ二つの物語を同時進行させるのに、いかに観客に混乱させないで見せれるかということと、二つ物語の結末をどうまとめるのか、ということにありました。前者は極めて明快でした。主人公に「ある目印」をつけて明確に区別してしまったのです。後者はやや苦しい。あれも一つの方法でしょうが、それまでの流れをがらりと変えてしまった感じがしてしまいます。最後は二人の主人公が、それまでの展開から無理がないような方法で融合してくれれば良かったのに、と思ってしまいます。
ラブ・ストーリーとしてはありきたりかもしれませんが、随所に出てくるユーモアたっぷりのセリフや、色々皮肉な展開など、構成の妙でかなり楽しめました。なかなかうまく演出してあると思います。
今を時めく売れっ子、グウィネス・パルトロウの名声をこれで不動のものとしたのでしょうが、相変わらず私は彼女のエラと薄いお胸が気掛かりなのでした。(^_^;)
(ビデオ)
1999.03.20 モル・フランダース ★★★★
- 「ロビンソン・クルーソー」で有名なダニエル・デフォーの古典小説の映画化で、全編いかにも文芸大作的な雰囲気が漂う、上質な作品です。
孤児である女主人公、モル・フランダース(ロビン・ライト)が辿る波乱万丈に満ちた半生を、幼くして別れた彼女の娘に、日記という形で彼女が語りかける構成になっています。語りが多すぎる、という評もあるようですが、常套手段だとはいえそれが文学作品的な色付けに大いに貢献しており、私はむしろ効果的だったと思います。
123分という長さの中でそれぞれのエピソードを過不足なく描いていて、退屈するようなことは全くありません。後半、結末が読めてしまう甘さはありますが、最後はやはりああでなくてはね・・・。
気丈な中にも優しさを湛えた主人公を、ロビンが実にうまく演じています。この人はショーン・ペンの奥さん、だからロビン・ライト・ペン(まるで筆記用具だ(^^))とも表記されます。御大、モーガン・フリーマンの参加が、例によって作品に格調と重厚感を加えています。この人は若いときの役を、身のこなしの軽さで表現していました。脱帽。
娼婦の館の女主人を演じていたのは、ストッカード・チャニング。リズ・テーラーを小ぶりにした感じ。ロビンより美人だなあ・・・。
(ビデオ)
1999.03.17 トワイライト ★★★★
- 昔、テレビや映画で洋物を見始めたころ、なんで外国では主人公があんなに年寄りなんだろうとつくづく思ったものでした。しかもそういう年寄りが若い娘と堂々と恋に落ちたりしているのだ・・・。
さすがにそういう感覚は見慣れるにつれて、自分が年をとるにつれて、当然薄れてきています。ところがこの映画では、何と73歳(!)のポール・ニューマンが主人公で、スーザン・サランドンとベッド・イン(!)までしているのだから、改めて驚かされてしまいました。
元警官、元私立探偵の主人公が、居候先の元映画俳優(ジーン・ハックマン)からある人物に届けものを依頼され、それがきっかけで彼の過去の犯罪を暴いていくことに・・・。
派手なドンパチやアクションなど全くなく、ミステリーを主軸に、不倫とそれにまつわる犯罪、人生のたそがれの悲哀、年寄りの恋などで包んだ上質な大人のための映画、という感じ。人によっては平坦なストーリーに物足りなさを感じるかも知れません。
ニューマンとハックマンのシブシブの演技もさることながら、すっかりオバサンになったスーザン・サランドンが、時折見せるハッとするような美しさ。やはり彼女は名女優です。
(ビデオ)
|