映画、ビデオ短評

★★★★★:満点(五つ星) :半星

1998.11.7〜1999.1.11  1ページ目へ  トップへ


1999.01.11 バタフライ・キス ★★

 狂気を背負う女性と、彼女に同調する女性との殺人旅行を描いたロード・ムービー。
 専門家の間では比較的評判が良かったようですが、私には退屈でした。まず、二人の女性の行動の動機が理解できませんでしたし、何より二人の女性に魅力が感じられないので、感情移入が全くできないのです。色がくすんでザラついたいかにもイギリス的な映像はともかくとしても・・・。
 最後にその女性の動機の一端らしきものが説明されますが、それまでの行動が余りにも不可解であり、常軌を逸しているがためにもはや説得力はありません。早く決着を付けてくれ、と見るものに思わせてはいけないでしょう。
 しかし、キレタ主人公を演ずるアマンダ・プラマーの鬼気迫る演技は特筆ものです。狂人そのものの目つきで、乳首ピアスに入れ墨、身体にチェーンを巻き付ける、というイデタチでセックスをし、殺人を犯すのですから。(・・;)
 因みに「バタフライ・キス」とは、頬が触れるか触れないか位のキスをいうのだとか・・・。
(ビデオ)

1999.01.10 ライアーライアー ★★★

 ジム・キャリーの主演映画はあまり食指が動かないのですが、98年のレンタルビデオ・ベスト30の中で私が唯一未見のものということで、見ることにしました。因みにこれは22位、1位は「フィフス・エレメント」、2位は「スピード2」(!?)です。
 嘘を付きまくって勝訴を重ね出世街道まっしぐらの弁護士が、いつもほったらかしにされている息子の願掛けで24時間の間、嘘がつけなくなってしまうという、抱腹絶倒コメディ。顔面と全身でのオーバー・アクションのジム・キャリーの演技も、覚悟を決めて見ればそれなりに慣れてしまうというもの。後はただただ爆笑させられるだけ・・・。ストーリーも典型的なアメリカのハート・ウォーミング・ムービーで、お定まりのものなのですが、なに、これもそのつもり見ればどうってことはありません。
 終盤の飛行場シーンがそれまでの流れをぶち壊していて、B級ドタバタ映画風になっていたのがいかにも残念。
 嬉しかったのは、「バウンド」のジェニファー・ティリーが見れたこと。相変わらずの悩殺ボディと悩殺ボイスでした。(^_^;)
(ビデオ)

1999.01.06 ジョー・ブラックをよろしく ★★★★★

 「死神」(ジョー・ブラック=ブラッド・ピット)がこの映画の中心的存在ですが、それらしいオドロオドロしさは全く無く、むしろ心温まるファンタジーという感じです。
 監督・製作は、『ビバリーヒルズ・コップ』、『ミッドナイトラン』、『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』のマーティン・ブレスト。
 「死神」と大富豪の社長(アンソニー・ホプキンス)との取り引き、「死神」と社長の娘との恋、会社つぶしの陰謀などがからんで、3時間という長尺でありながら全く退屈させられることはありません。結末が途中で判ってしまうストーリーの甘さはありますが、これは見たものを幸せな気持ちにしてくれる素晴らしいおとぎ話なのです。
 ただひとつ気になった点があります。全く世間知らずのジョーが、会社つぶし阻止のあっと驚くような切り札を突然出すところ・・・、うーん、これは不自然。
 ホプキンスの相変わらずの重厚感溢れる演技もさることながら、ブラピが難しい役を本当に巧く演じています。ブラピ、カッコ良過ぎだぞ!
(劇場)

[追記] 「スター・ウォーズ エピソード1」の予告編をやっていました。何となく映像が陳腐に映ったのが気になりましたが・・・。

1999.01.03 CATS ★★★★★

 以前、私がニューヨークのブロードウェイで初めて「CATS」を観た時は、時差ボケとストーリーがイマイチ良く判らないために、有名な挿入歌「メモリー」が歌われる度に目が覚める(!)というテイタラクでした。(^_^;)
 今回のこのビデオは、ロンドンのオリジナル・スタッフによる舞台上映劇を、観客なしでビデオ映像専用に撮ったもので、スーパー・インポーズも挿入されています。おそらくこれは、外国のミュージカルを鑑賞するには最も適した映像形式といえるのではないかと思います。マニアの間では、これがDVDとして発売される、されないで、大いに盛り上がっているということです。
 飼い猫になることを拒否している「ジェリクル族」の猫達が年に一回集まって、「永遠の命を与えられる猫」を長老猫に選んでもらうことになっています。それに選ばれたい猫達は、それぞれ自分の境遇などを歌や躍りで披露していく、というのが大筋ですが、最低限、このストーリーを頭に入れてから観賞することをお薦めします。
 最高の技術に裏付けされた歌や踊りなどが、クローズアップも含めて縦横無尽のカメラワークで映し出される映像を観賞するのは、まさに快感。ミュージカル好きにはコタエられないでしょうね。
 グリザベラという老娼婦猫(!)が華やかだった昔を偲んで歌い上げる「メモリー」は、涙なくしては観られません、聴けません。(T_T)
(ビデオ)

1999.01.03 ピース・キーパー ★★★

 核ミサイル発射装置をテロリストに強奪された空軍少佐の活躍を描くサスペンス・アクション。「ピース・メーカー」とタイトルもテーマも似ていますが、こちらの方がややB級映画っぽい印象です。多分それは、無表情な主人公と粗削りなストーリー展開のせいでしょう。
 主人公はドルフ・ラングレンで、スティーブン・セガールなどと同様この人は演技をしない人ですから私は余り好きではありません。また、ストーリはそれなりに楽しめるのですが、あんな大男の主人公が覆面をしても敵にばれないわけがない、とか、ハチャメチャな屋上カー・チェースなど、余りにも理不尽で目茶苦茶なシーンが多いのが、気になってしまいます。
 それでも反核のメッセージはそれなりに伝わってきますので、そういう意味ではこの映画は成功しているといっていいでしょう。
 苦悩する米国大統領役はロイ・シャイダーで、大統領役が最も似合う人の一人。大統領が愛人と密会するなんていうのも現実的でよろしい。(^_^;)
(ビデオ)

1998.12.26 グランド・コントロール/乱気流 ★★★

 飛行機側が主体となる従来の航空パニックものとは異なり、色々な悪条件下での「航空管制官」の活躍を描いたもので、そういう意味では新鮮に見ることができました。
 驚くような特撮などは全く無く、全体的に地味な印象の映画で、テレビ・ドラマ仕立てという感じです。そういう映像的な面白さよりこれは「航空管制管」という職業や、彼らが用いているツールを含めた環境を知るということで価値がある映画だと言えます。
 実際ここで描かれているような、管制塔業務の中断や停止、時代遅れの故障がちなコンピュータ・システムの使用などが真実であるならば、誰でも今後飛行機に乗ることは止めようと思うに違いありません。公開にあたって「連邦航空局」がいい顔をしなかった事実があったそうで、ということは、あながち誇張ではないのでしょう。あな、恐ろしや・・・(・・;)
 主演は、キーファー・サザーランド。「気まぐれな狂気」でのキレまくった暴徒と、とても同じ人間とは思えません・・・。
 いいずれにしても、海外旅行などの直前にはこのビデオは見ないほうがいいでしょう。(^o^)
(ビデオ)

1998.12.24 レインメーカー ★★★★

 法律学校を卒業したての新米弁護士(マット・デイモン)が、悪徳保険会社の保証金支払い拒否をめぐって戦う法廷ドラマ。「THE RAINMAKER」とは、雨が降りそそぐようにお金を儲ける者(弁護士)という意味だそうです。
 ジョン・グリシャムの原作で、フランシス・コッポラの監督作品とくれば、悪かろうはずはありません。またダニー・デビートミッキー・ロークジョン・ボイドダニー・グローバーロイ・シャイダーといったソウソウたるメンバが脇を固めていることもあって、重量感のある映画に仕上がっています。
 正義感の塊のような若手弁護士が、初めての法廷で戸惑いながらも、次第に相手の組織悪をあばいていくクダリは、お約束の展開でありながら引き込まれてしまいます。特に主人公を側面から助ける道化役のデビートや、相手側の弁護士を演ずるボイドの熱演は、喝采モノでしょう。
 併せて主人公と弁護を依頼された家族との関わりや、暴力夫を持つ女性との恋愛も描かれ、ヒューマン・ドラマ的な側面もあります。ただ、この主人公の恋愛の部分が、本筋の緊張感を阻害してしまっていたのは残念。そこでの主人公の態度も、納得がいきませんでしたし。(-.-)
 マット・デイモン、やはりちょっとジミー・大西、入っています・・・。(^.^)
(ビデオ)

1998.12.21 敵対水域 ★★

 トム・クランシーも絶賛した実話に基づくベスト・セラー小説の映画化です。
 米ソ冷戦体制が密かに終結に向かおうとしていた1986年の秋、ソ連の老朽原子力潜水艦がアメリカ大陸に近い海域(敵対水域)で原子炉の重大トラブルが発生。原子炉が爆発すればチェルノブイリ級の惨事は必至。果たして乗組員らはこの危機を回避できるか・・・。
 原作は未読ですが、うまく映像化されていたのでしょうか?劇場公開用ではなく、テレビドラマ用(多分)のせいもあって、なんとなくこじんまりと仕上がっています。何と言ってもトラブルの原因や対策が余りにもローテクっぽくて、いただけません。まあ事実なんだからしょうがないのでしょうが、これではソ連がアメリカにかなわないのも無理はありませんね。
 それにしても、全ての面で秘密主義のソ連が、こういう恐るべき事実を公開した(出来た)ことは驚異ではないでしょうか。(・・;)
(ビデオ)

1998.12.17 気まぐれな狂気 ★★★

 マフィアの麻薬をそれと知らずに奪ってしまった4人組グループが、警察とマフィアの両方から追われる逃亡劇を描いたバイオレンス・アクション映画。自身も出演もしているキーファー・サザーランドの初監督作品です。
 警察側はともかく、マフィアの殺し屋からじわじわと追い詰められていくあたりは、それなりにスリルがありますし、人質の一人にグループとの共存意識が芽生えてきたりするくだりも面白いのですが・・・。
 なんといってもこの映画の最大の欠点は、主人公の男女(ビンセント・ギャロキム・ディケンス)が魅力に乏しいということでしょう。もっと存在感のある俳優を使っていれば、だいぶ印象が違ったものになったと思います。(キーファーが自分よりメジャーな俳優の起用を避けた?)
 キーファーは監督ということもあって、思いっきりキレまくっており、相当この役柄を楽しんだのではないでしょうか。
 それにしても黒人の彼は、いったい何で最後まであんなにグズグズしていたんだ?(-.-)
(ビデオ)

1998.12.14 ザ・ワイルド ★★★★

 大富豪と側近のカメラマンが、あるトラブルからアラスカの山中に取り残され、人食い熊に襲われたり、餓えや寒さと戦ったりするアドベンチャー・サスペンス作品。ひねったストーリーは何も無いのですが、意外とこれは飽きさせずに全編を見せてくれます。
 憎らしいくらい冷静で知的な大富豪にアンソニー・ホプキンス大富豪の若い美人妻と怪しい関係にあるカメラマンにアレック・ボールドウィンが扮しており、それぞれ大熱演です。凶暴なヒグマも大好演で、なんとラスト・クレジットに熊とその調教師の名前が出たりします。(^o^)
 序盤に伏線が沢山あって、あとで効果的にそれらが使われています。熊の襲撃シーンも大迫力。
 ただ、納得のいかない場面が多すぎるのがやや気になりました。熊を攻撃するロープはどこから手に入れた?、人が永年住まない山小屋に銃と弾がおいてあるか?カヌーがあるとしたら前の住人はどうやって川を下った?、あの程度の殺し方では熊はあんなに簡単に息が絶えないでしょう、など。
(ビデオ) 

1998.12.13 真夜中のサバナ ★★

 クリント・イーストウッド監督で、ケビン・スペイシー出演ということで期待し過ぎてしまいました。映画はやはり予備知識なしで、期待しないで見るのが一番です。
 ジョージア州の歴史都市サバナで、実際に起こった殺人事件をめぐるミステリーで、ニューヨークのルポ・ライター(ジョン・キューザック)の眼をとおして物語が展開されます。
 前半はストーリーが殆ど進まず退屈してしまいましたが、後半の法廷シーンあたりからまあまあ見れるようになりました。でもミステリーとしてはヒネリもなく、このストーリーで2時間半は辛い。
 この映画のみものは何と言っても黒人のオカマのレディ・シャブリ。実在の人物で、なんと本人自身が演じている(!)のだとのこと。何となく気持ち悪いのですが、一見の価値ありですぞ。
 それと架空の犬を散歩させたり、虻を糸で身体に付けている人など、奇妙なサバナの住人達。これにゲイ問題やブードー教が絡んだりして盛り沢山なのですが、かえってそれが散漫な印象を与えてしまっています。
 名優必ずしも、名監督にあらず・・・。(-.-)
(ビデオ)

1998.12.09 ナッシング・トゥ・ルーズ ★★★

 自分の女房と上司の浮気を知り、やけになった(ナッシング・トゥ・ルーズ=失うものは何もない)エリート・サラリーマンと、その彼を狙ったカー・ジャッカーのなんとも奇妙な珍道中。いかにもアメリカ的なコメディ仕立ての、典型的なロード・ムービーです。
 気軽に見れて気楽に笑えて、見終わった後もさわやか。結末が少々生ぬるくてもいいではありませんか。
 大柄なティム・ロビンスと小柄で黒人のマーティン・ローレンスのコンビは、各々の特徴を活かしてそれぞれに好演しています。ティム・ロビンスの道化は、ややわざとらしさが残りますが・・・。
 なおこの映画は、お茶の間で家族と一緒に観るのに向いています。おっと、冒頭のシーンがダメか・・・。(^_^;)
(ビデオ)

1998.12.07 ストレンジャー ★★★★★

 「デスぺラード」の私の酷評をご覧になったMさんが、同じアントニオ・バンデラスが出演しているこの作品を薦めて下さいました。(Thanks>Mさん)
 有能な女性犯罪精神分析家と、彼女に近づく謎の男をめぐるミステリー・サスペンス。ネタバレになるのでこれ以上ストーリーは書けません。(^.^)
 これは、スゴイ作品です。いわゆる正統的な謎解きの真犯人探しなのですが、見終わって、ああやられた!という感じ。多分脚本、演出がしっかりしているのでしょう、見ごたえは十分。
 ヒロインは「ゆりかごを揺らす手」で悪女役を演じて注目されたレベッカ・デモーネイ。セクシーな謎の男はバンデラスで、二人のカラミのシーンも評判になったようで、これは大サービス。でも、お茶の間で家族と一緒には見ないほうがいいかも。(^_^;)
 バンデラス、誰かに似ていると思ったら、若い時の米倉斉加年・・・。
(ビデオ)

1998.12.03 絶体×絶命 

 刑事である主人公(アンディ・ガルシア)の公私混同があまりにも甚だしくて、劇中だけでなく映画ファンからもヒンシュクを買った作品。
 自分の息子が白血病で、唯一のドナーになり得るのが獄中の凶悪犯。刑事はその凶悪犯に骨髄の提供を依頼するのですが・・・。
 ストーリーが単純で話の展開も読めてしまうので、集中力が長続きしません。何よりも、観客に「あんた、それはないんじゃないの!」と、思わせてしまう行動をとる主人公の設定が失敗でしょう。あれでは全く彼には感情移入が出来ないのです。凶悪犯が麻酔を回避しようとする策もアイディアは面白いのですが、少々うまく行き過ぎ、という感じ。ラストも陳腐。
 凶悪犯役のマイケル・キートンの熱演に、を献上です。
(ビデオ)

1998.11.29 アルマゲドン ★★★★

 NASAの全面協力を得て、現在のハリウッドの持ちうる最高のSFX技術を駆使して作成された、話題の大エンターテインメント。先々行(封切りの2週前という意味らしい)オールナイト興行などというものを初めて見てみました。
 テキサス州大の小惑星が地球との衝突軌道上にあり、そのままであれば確実に地球の終焉(アルマゲドン)を迎えることになります。それを回避するために宇宙へ派遣されたのは、なんと油田掘り(!)のプロ達。果たして彼らは地球を、そして人類を救えるか!?(^_^;)
 うーん、「ディープ・インパクト」にかなり似ていますね。でもあちらと違うのは、もったいを付けずにすぐコトが始まるということ。なにせタイトル・バックでそれが始まるのです。また、主人公に大スターのブルース・ウィリス(今回は一段といい男に仕上がっている!)を配し、脇もベン・アフレック(殆どチンピラ)、スティーブ・ブシェミ(やっぱり気持ち悪い)、リブ・タイラー(スゴイ美形)が固めるなど、キャストの豪華さでも差別化を図っているようです。
 序盤はテンポよく始まるのですが、宇宙へ派遣するメンバを訓練するあたりで少々中だるみしてしまいます。でも、終盤にかけてのクライマックスはやはりさすが。先が読める脚本ですが、分かっていてもジーンときてしまいます。
 物理法則を無視していたり、絶望的なトラブルから、あることをきっかけにいとも簡単にそれが解決されてしまうという展開(この手のものによくありがち)がここでも使われていますが、まあ、しょうがないですね。マンハッタンやパリの街に隕石が落下して大爆発をする、ド迫力シーンに免じて許しましょう。
 序盤、松田聖子がチラと出ますが、なぜか恥ずかしいような・・・。(-.-)
(劇場)

1998.11.29 追跡者 ★★★★

 「逃亡者」で無実の罪のリチャード・キンブルを執拗に負ったジェラード警部。今度は彼が主人公になって容疑者を同じく執拗に追い掛けます。
 謎解きの面白さに加えて、SFXを使った「コン・エアー」と同じくらい迫力のあるシーンや、アクション・シーンがふんだんに盛り込まれていて、最後までしっかり見せてくれます。見終わって、「逃亡者」を追う側から見ただけの感じかな、とも思いましたが、こちらの方がはるかによく出来ていると思います。
 ジェラード警部は、「逃亡者」と同じくトミー・リー・ジョーンズで、追い掛けられるのがウェズリー・スナイプス。この二人の存在感は圧倒的です。ジェラードの相棒となるのがロバート・ダウニー・Jr.ですが、彼は麻薬関連で逮捕中で、この映画を摂るために一時出所した(!)のだとか・・・。スナイプスの恋人役には、イレーヌ・ジャコブ。うーん、このような端役にはもったいないほどの美形でした・・・。(^_^;)
(ビデオ)

1998.11.28 デスぺラード 

 ハハハ・・・。大外れでした。「マスク・オブ・ゾロ」で好評だったアントニオ・バンデラスの代表作だということで期待したのですが・・・。
 恋人を敵のボスに殺された主人公の復讐劇ですが、なに、ストーリーなんぞ無きが如し。ただひたすら主人公グループと敵グループが撃ち合うというもの。やたらハッタリ的な、これ見よがしのもったいぶったシーンが多く、薄っぺらな感じ。主人公が最後に敵のボスの正体(?)に気がつく、なんてのも極めて不自然。
 は、冒頭のバンデラスのギターと歌(アテレコ?)のかっこよさと、いつものごとくクエンティン・タランティーノの笑える小話に、献上。
 スティーブ・ブシェミ、なんか不気味・・・。
(ビデオ)

1998.11.26 ワグ・ザ・ドッグ ウワサの真相 ★★

 米大統領が、ホワイトハウスに見学に来た女子生徒を執務室に連れ込んで、イタズラ!そのスキャンダルを糊塗しようと、架空の戦争や架空の美談をでっち上げるという、奇想天外な、イヤもとい、今となっては大いにありそうな、お話です。どうしてもクリントンさんの「不適切な関係」事件と「イラン危機」との関係が想起されてしまう、まあ、タイムリーな映画であると言えます。
 出演は、ロバート・デ・ニーロダスティン・ホフマンアン・ヘッシュという豪華キャスト。97年度のアカデミー賞にもノミネートされました。
 ハイテクを駆使して悲惨な戦争の現場のシーンをスタジオで作り上げてしまうなど、エピソードの一つ一つは結構面白いのですが、イマイチ全体的に盛り上がりに欠けていました。特に終盤のプロデューサに降り掛かる災難は合点がいきません。あんなに全てに精通した男が、あのような愚かな行動にでるものだろうか、と・・・。
 いずれにしても、一歩間違えば侮辱罪か何かで訴えられそうなこのような映画の制作を許すアメリカという国のおおらかさに、脱帽!
 因みに原題の「Wag the dog」とは、犬が尻尾を振るのではなくて、尻尾が犬を振る(!)、すなわち主客転倒を意味しています。
(ビデオ)

1998.11.22 時雨の記 ★★★

 洋画以外は見ない主義なのですが、ある事情があって久しぶりに邦画を見ることになりました。作者の実体験を綴ったといわれる中里恒子の原作で、鎌倉、京都、奈良の美しい風景をバックに、大人の内面の恋が切々と語られます。
 中年の男女の、今はやりの不適切な関係を描いたものですが、「失楽園」などと違って濡れ場は全くありません。何せ吉永小百合渡哲也ですもの。(^_^;)
 映画では年代、男の役職などが原作と違う設定になっており、原作の持つ古き時代のしっとりとした情感が薄れているような気がしましたし、特に男が恋する女のために、会社のデスクに専用の電話をひく、と言うような象徴的な出来事が省かれていたのは残念でした。
 また、原作では全くのプラトニック・ラブなのですが、映画ではさすがにそれでは不自然だとの配慮からか(私は全く不自然と思っています)、どちらともとれる描写になっています。
 吉永小百合は53才ということでさすがに老けてしまいましたが、恋する瞳は娘のそれのように輝いていました。一方の渡哲也は?うーん、ダイコンでしたねぇ。(-.-)
 客層がいつもと違って、オジ(イ)サン、オバ(ア)サンばかりで驚きました(まあ、当たり前ですね)。もちろん、私もその一人でしたが・・・。
(劇場)

1998.11.20 シーズ・ソー・ラブリー ★★

 恋人をめぐる事件をきっかけに精神に異常を来たし、10年間精神病院に入っていた男と、その間に別の男と結婚した女とその夫をめぐる、なんとも切ないラブ・ストーリー。私生活でも夫婦のショーン・ペンロビン・ライト・ペンが共演しています。ショーン・ペンはこの作品で、昨年のカンヌ映画祭で主演男優賞を獲得しました。
 ショーン・ペン演ずる男は最初はまともに見えていて、突然気がふれてしまうのですが、その辺の過程がやや唐突で不自然。でも一度狂ってしまうとまさにショーン・ペンの独壇場です。
 ヒロインと結婚した夫役にはジョン・トラボルタ。彼が画面に出るとなぜかホーム・ドラマ風になってしまうのですが、涙の出るほど気の毒な役どころをうまく演じています。
 まあ、本当の夫婦が演じているのですからああいう結末でしょうがないのかも知れませんが(関係ないか)、あれでは娘が余りにも可哀想です。
(ビデオ)

1998.11.16 ポストマン ★★★

 アカデミー賞とは正反対に、最悪な映画に贈られる97年度のゴールデン・ラズベリー賞に見事輝いた作品。なんと作品賞だけでなく、ケビン・コスナーに対して監督賞と主演男優賞もがご丁寧に贈られています。(因みに、主演女優賞は「GIジェーン」のデミ・ムーアです)(-.-)
 第3次世界大戦後の荒廃したアメリカで、ふとしたことから失意の人々に郵便をとどけるはめになった男(ポストマン)の活躍を描く、近未来作品です。
 余り期待しないで見たのですが、基本的なストーリー自体は結構楽しめました。ただその2時間56分の長さを継続して集中させてくれるほどの密度はなく、中だるみしてしまいます。結末もややあっけないし・・・。コスナーの演出は、「ダンス・ウィズ・ウルブス」でもそうだったように、叙情的に流れる場面がとにかく多すぎるのです。一歩引いてみると、「いったいそれがなんなんだ!」というような・・・。
 テーマの一つは、すさんだ気持ちの人々には、郵便のようなコミュニケーションがいかに救いになるか、ということだとと思いますが、2013年の近未来の設定としては、ちょっと違うのでは?という気がしてなりませんでした。
 民衆に今の大統領は?と訊ねられて、ポストマンが口から出任せに、「リチャード・スターキーだ!」と答える場面には、笑いました。リンゴ・スターの本名なのです。
(ビデオ)

1998.11.15 Uターン ★★★★

 「U-TURN OK」(よそ者は引き返せ!)の標識を無視して、砂漠のとある街に入り込んだ一人の男を待ち構えている数々の災難。先の展開が中々読めず、最後まで飽きさせません。オリバー・ストーンの監督作品。
 徹底的にツイテいない、可哀想な主人公にショーン・ペンが扮します。この男の不運さは、見ていて思わず笑ってしまうほど。これでもか、これでもか、と主人公は痛めつけられ、究極の落ちが最後に待っています。
 主人公以外は(あるいは主人公も)全員が殆ど狂っているのですが、中でも自動車修理工を演じるビリー・ボブ・ソーントンの狂気ぶりは特筆もので、見ていて辟易。また、ニック・ノルティジョン・ボイド(クレジットを見るまでこの人と気がつかなかった!)などのベテランが脇を固めています。
 ヒロインを演ずるジェニファー・ロペスの心変わりには、背筋が寒くなりました。女はつくづく怖い!(-_-;)

1998.11.11 ドーベルマン ★★

 始まって初めてフランス映画だと判りました。でも内容や雰囲気は極めてアメリカ映画的(でもないかな?)。
 ドーベルマンと呼ばれる男(ヴァンサン・カッセル=(松田優作+金城武)/2)をリーダとする銀行強盗団の一味と、殆ど悪玉グループのような警察側との攻防を描いた作品。
 まず冒頭、CGから始まって驚かされます。また、独特のカメラワークと色彩がとてもユニーク。ストーリ展開もスピーディで、バイオレンス・アクションの連続。
 でも、私はこのような映画は苦手なのです。殆ど狂気としか思えないような登場人物ばかりで、殺戮に次ぐ殺戮・・・。まるでコミック漫画を見ているよう。とてもついていけません。
 ドーベルマンの恋人役で聾唖の殺人マシーンを演ずるモニカ・ベルッチのキャラクタは、一見の価値があるかも・・・。セクシーですぞ。
(ビデオ)

1998.11.07 アミスタッド ★★★

 1839年、アフリカからキューバに向かった奴隷運搬船、「アミスタッド号」で起きた黒人の反乱事件と、それらの黒人を裁判で救おうとする人々を描いたヒューマン・ドラマ。監督は、またまたスティーヴン・スピルバーグです。
 非人道的な奴隷制度を容認する一方で、42人の反乱黒人を救うために形式張った法廷裁判を行なうことに矛盾を感じて、観ていて何となく空しさを感じました。暗黒の歴史の事実の中で、一点の光だけに焦点を当ててもなかなか説得力を持ちません。これではスピルバーグが、シンドラーのリストに続いて受けを狙ったと陰口をたたかれてもやむを得ないでしょう。
 ただし、黒人達が祖国アフリカで拉致され、奴隷運搬船で運ばれる地獄のような過程を描いた部分はさすがに迫力があり、観るものを震撼とさせます。この辺も「シンドラーのリスト」のユダヤ人の扱いの場面を彷彿とさせていました。
 出演は、アンソニー・ホプキンスマシュー・マコノヒーモーガン・フリーマンなど。毎度ながらホプキンスのその人物になりきってしまう演技力には、唸らされます。
(ビデオ)