映画、ビデオ短評

★★★★★:満点(五つ星) :半星

2006.3.5〜2007.8.27 1ページ目へ  トップへ


2007.08.27 デジャヴ ★★★★

 今をときめくジェリー・ブラッカイマーの製作で、デンゼル・ワシントン主演のサスペンス・アクションですが、変な風にSFがかっています。
 冒頭の爆破シーンにはとにかく驚かされます。人間や車が吹き飛んだりして、かなりリアル。猛暑で溶けそうになった脳天をガツンと直撃してくれました。(^o^)
 で、捜査に当たる主人公(デンゼル・ワシントン)はFBIではなくて、ATF捜査官という設定。ATFというのは、アルコール・タバコ・火器局などという、ややこしいアメリカの連邦法執行機関らしい。
 この主人公が捜査を進めるうちに、次第に非現実的な世界に入っていきます。予備知識ゼロで見始めたので、ああそういう映画なのかとビックリ。彼は政府が極秘に開発した「タイム・ウィンドウ」と呼ばれる映像装置を見せられます。それは何と、過去の特定のエリアを自由に見ることが出来る監視システムで、現在から4日と6時間前の映像をリアルタイム(?)で再生する装置なのです(^_^;)。「マイノリティ・レポート」からヒントを得ているに相違ありません。ジョグ・ダイヤルのようなもので、グリグリすると色々な角度から自由にズームして見れるという仰天システム。一応、軍事衛星からの映像を、仮想的に3次元化している、などという尤もらしい説明がなされています。この辺までは、まあ許容範囲。その次にまるで「フライ」の物質転送ポッドのようなタイムマシンが出てくるとは思いませんでした。ああ、そういう映画かと再度気を取り直して鑑賞を継続。
 このような脱力系展開に至っても、それなりに集中して見れるのは、ひとえにデンゼル・ワシントンのキャラによるものでしょう。「俺、真面目だけんね、ふざけてなんかいないけんね。」(この辺、東海林さだお風)というオーラに、ついついその気にさせられるという塩梅。
 しかも、ハル・ベリーの妹のような魅力的なポーラ・パットン扮するヒロインとの、淡い恋も絡ませます。ただし、太ったヴァル・キルマーは全く不要。(^o^) それとは対照的に、犯人役のジム・カヴィーゼル迫力と言ったら凄いです、凄すぎです。
 終盤、タイム・パラドックスの矛盾を露呈するような展開になるのがやや難ですが、総じてこの手のものは私は好きですね。舞台はハリケーン災害後のニュー・オリオンズ。懐かしいです。
 タイトルの意味は最後まで分かりませんでした。例のタイム・ウィンドウの映像のことを指しているとしたら、あれはデジャヴ(既視感)ではありませんよね。それとも観客が、この映画を「マイノリティ・レポート」などで以前見たことがあると感ずることを指しているのでしょうか?(^o^)
(DVD)

2007.08.12 トランスフォーマー ★★☆

 「アルマゲドン」、「パール・ハーバー」などの話題作を監督したマイケル・ベイが、スティーヴン・スピルバーグを制作総指揮に迎えて監督した最新話題作。1980年代に人気を博した日米合作のアニメを実写化したのだそうな。
 CMや予告編を見た限り凄い映像が見られそうだったので、アニメの実写化などということをつい忘れて、猛暑の中をチャリで近くの劇場へ。席はいつものように前後左右のど真ん中です。(^o^)
 予告編からの予測では、最初は火星の無人探査機が何者かに襲撃されるシーンから始まると思っていたのに、さにあらず。冒頭は、中東のカタールの軍事基地でのシーンで、そこで早速繰り広げられるトランスフォーム(変身)した物体との戦闘シーンは、映像的にも音響的にも迫力十分。これから始まるであろうシリアスな展開に向けて、大いに期待を持たされたものでした。
 ところがさにあらず。次第に変な路線に進みます。ポンコツ車が、どでかいロボットにトランスフォーム。むむ、前後で金属の総量がかなり違うではないの。更に悪者のエイリアンであるロボットと、人類に味方するエイリアンであるロボットが登場。おお、これは「ターミネーター」のパクりだったのか。しかもそれらのロボットが言葉を話し始めたところで、一気に脱力・・・。私の息子が小さい頃夢中になっていたサンバルカン(だったかな?)の世界が繰り広げられるとは思いませんでした。
 それもあり、中盤以降は目まぐるしいロボット同士の戦闘シーンについていけず。第一、どっちがどっちか良く分からないのです。サンバルカンの世界にはとても入り込めず、次第に睡魔が・・・。
 ILMが担当した映像は、確かに凄いと言えるのでしょう。トランスフォームの過程は、そのスムーズさに納得するというよりも、CG技術者の苦労に脱帽したくなります。
 主人公役のシャイア・ラブーフは、ケビン・スペイシーラッセル・クロウを足して2で割って若くした感じ。線の細さがやや気になります。国防長官役のジョン・ボイドはともかく、捜査員を演ずるジョン・タートゥーロは何でこんな役を引き受けたのか、良く分かりません。
 映画が始まる前、近くの席に座った数人の小学校低学年らしき子供たちを見て、おいおいと思ったのですが、逆に向こうから私を見て、おいおい、と思っていたことでしょうね。(^o^)
(劇場)

2007.08.11 守護神 ★★★☆

 古くは「バックドラフト」、最近では「ワールドトレードセンター」に代表されるように、ハリウッド映画は消防士など人命救助に当たる人々にスポットを当てることがとても好きなようです。本作も同様な趣旨で、常に死と隣り合わせの危険な任務を遂行するアメリカの沿岸警備隊を扱ったもの。沿岸警備隊は200年の歴史を持つそうです。
 これまでに多くの人々を救ってきた伝説のレスキュー隊員(ケヴィン・コスナー)と、彼に憧れる訓練生(アシュトン・カッチャー)を巡る物語です。所謂スポ根もので、その分野のヒーローの栄光と挫折、過酷な訓練、新人のそれを乗り越えようとする葛藤、二人の次第に深まる絆、そして逆転など、順当にこの種の映画に必要な要素は盛り込まれています。
 したがって、つかみを初めとして色々見どころはあるのですが、ああ、あの映画のここ、この映画のそこなどと既視感が満載です。もちろん私は見ていませんが、邦画の「海猿」と設定などが極めて類似しているとのこと。
 ここでも仕事一筋の男とその妻との不仲エピソードが・・・。ああ、またか、という感じです。しかもそれが結局何にも活かされていない。過酷な訓練をうける中に、確か女性の訓練生が2人はいたと思いますが、少しもクローズ・アップされません。余り長い(139分!)のでカットされたかな?
 アシュトン・カッチャーは悪くはありませんが、個性的でありませんね。数いた訓練生の中で、おおあんたが準主人公か!と思いましたもの。しかし、彼はかのサイボーグ化したデミ・ムーア年下亭主とのこと。今後ブレークするでしょうか?
 ケヴィン・コスナーはさすがに枯れてきていて、抑えた演技に終始します。ふと、ブルース・ウィリスも適役だったろうな、などとも思いますが、それではまるで「アルマゲドン」になってしまいます。(^o^)
 タイトル(「THE GUARDIAN」)は、冒頭に暗示され、ラストでその意味が明かされます。本編はリアルなストレート描写が続くなかで、途端にファンタジーがかるのは、賛否が分かれるところでしょう。ま、ハリウッド的な「救い」ですね、これは。
(DVD)

2007.07.23 マリー・アントワネット ★★☆

 あのブ×なキルステン・ダンストが、マリー・アントワネットなんか演じられるのだろうか?という一点の興味での観賞です。(^o^) 監督は、私としては良い印象のない「ロスト・イン・トランスレーション」のソフィア・コッポラなのが不安ではありましたが・・・。
 14歳のオーストリア皇女アントワーヌ( キルステン・ダンスト)が、フランス王太子に嫁ぐところから物語は始まります。国境での引き継ぎのセレモニーや、朝の着替えの儀式など、前半はへえ〜というようなエピソードで引き込まれますし、きらびやかな衣装や豪華絢爛なベルサイユ宮殿シーンはそれなりに興味を引かれます。
 ただ、中盤以降ちっとも盛り上がりがなく、退屈・・・。肝心(?)のギロチン・シーンも無し。やはりソフィア・コッポラのポップなガーリー趣味には、政治的な背景や、まして「断頭台の露と消える」シーンなどは無粋で合わないと考えたのでしょう。音楽もロックやダンスミュージックを用いています。合っているといえば合っていますし、チグハグといえばチグハグだ・・・。女性なら女性ファッション雑誌を見るような感覚で、衣装、靴、お菓子などが次々に現れるこの映画を楽しむことが出来るのかも知れません。
 いずれにしても、一般的には悪女のイメージの強いアントワネットを、コッポラは必ずしもそうは描いていません。かの有名な「パンが食べられないならお菓子を食べればいいのに」というセリフも、劇中では直接言わせないだけでなく、そういう噂に対して「私はそんなこと言っていないよ」などとアントワネットに語らせているのです。
 それにしても全編、アントワネットが懐妊するかどうかを中心に、下ネタが満載です。特にルイ15世は登場するなり、孫である王子の嫁になるアントワネットの「胸はどうだ?」などと侍従に聞いたりするのです。「ロスト・イン・トランスレーション」には日本に対する悪意が私には感じられましたが、フランスでもひょっとして本作品を国辱だと思っているやも知れません。
 で、キルステン・ダンストは思ったほど美しくないことはありませんでした(^o^)が、やはりあの老け顔で十代の娘を演じるには、ちと無理があろうというものです。
(DVD)

2007.07.16 300 <スリーハンドレッド> ★★★★

 わずか300人のスパルタ軍が、100万のペルシア軍を迎え撃ったという史実「テルモピュライの戦い」をベースにした、グラフィック・ノベル(大人向けコミック?)の映画化なんだそうな。原作は「シン・シティ」のフランク・ミラーとのこと。なるほど、「シン・シティ」と大いに類似点がありました。
 まずは、殆どセピア色というかモノクロに近い着色映像。ただし、「シン・シティ」のようなパートカラーではありません。人物以外の背景は殆どCGによるものらしい。いや、人物の筋肉ボディにもCGが施されているとのこと。ストップ・モーションを多用したアクション・シーンはスタイリッシュというべきなのでしょう。首や手足が飛び、血飛沫が飛び交うような残酷シーンは、モノクロ・トーンがカモフラージュしています。それにしても、血がよく飛ぶなぁ。
 冒頭、ナレーションでスパルタの王、レオニダス(ジェラルド・バトラー)の幼少時から、所謂「スパルタ教育」を受けて成人するまでが描かれます。軍事訓練に向かない子供は崖から落として殺す、などというのは本当だったらしい・・・。土地と水を渡せと要求するペルシア軍の使者を拒絶して、壮絶な戦いの幕が切って落とされます・・・。勝機が殆ど無いことを知りながら、スパルタの精神を貫き、最後まで戦うという姿勢をこれでもかと、最後まで見せつけます。
 戦闘シーンは、LOTRを始め「ブレイブ・ハート」、「トロイ」などでの既視感がありますし、時折、余りにも漫画チックで脱力してしまうシーンもありますが、主人公を始めとした熱きスパルタ軍の迫力に最後まで圧倒され続けました。何せあの「オペラ座の怪人」で、ひ弱でロリコン・イメージの強かったジェラルド・バトラーが、「This Is SPARUTA!!」と口角泡を飛ばして叫ぶのです。(^o^)
 史実を基にしているということではありますが、登場する人物や動物などは色々(とんでもない)工夫がなされています。なにせ、ペルシア軍の大将は、体中ピアスだらけの3mもあろうかというような大男。しかもゲイっぽい・・・(^o^)。LOTRよろしく、象や犀の化け物が現れたり、オークのようなクリーチャーを登場させたり・・・。両手が刃物になっているフリークは、明らかにヤリ過ぎだ。
 イラン政府は、イランの祖先であるペルシアの本作での描き方が余りにも暴力的であり、イランの古代文化に対する意図的な侮辱と抗議しているとのこと。まあ、娯楽作品との割り切りも必要でしょう。でも、「父親たちの星条旗」、「硫黄島からの手紙」のように双方の国の視点から、しかも公平に描き切ったクリント・イーストウッドの見識を見習うべきなのかも・・・。
(劇場)

2007.07.09 ダイ・ハード4.0 ★★★★☆

 19年前、新宿の混雑した劇場でダイ・ハードを見たときの衝撃は今でも忘れられません。映画の醍醐味を再認識させられた作品でした。本作は、そのダイ・ハード・シリーズの第4作目。第3作目から、何と12年が経過しています。
 4.0としたところが、如何にも今日的というところでしょうか(ウェブ2.0、3.0のように)。しかも今回のテーマはサイバーテロ。アナログ人間を代表するようなジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)をそれにどう絡ませるかというと、バリバリのハッカー(ジャスティン・ロング)とのバディ・ムービーに仕立てるという巧い設定です。
 皆が注目する4作目ともなると、このようにしなければいけないのでしょうね。ハチャメチャな見せ場が満載です。大方は予告CMで披露されていますが、飛んでくる車やヘリコプターの消火栓や車での撃墜シーン、特に戦闘機との攻防場面などは思わず笑ってしまいました。そこまでやるのですね。「トゥルー・ライズ」を思い出してしまいました。
 そういったトンデモ・シーンにお金を掛けすぎて、肝心の脚本に手を抜いたようで、ストーリー展開には余りヒネリはありません。色々なシーンで既視感があったりします。
 本作でのマクレーンは第1作から3作までの功労があるにも関わらず、相変わらず恵まれない地位に甘んじている設定。敵の美形テロリスト(マギー・Q)を容赦なく粉砕してしまうのに対しても、あれ、マクレーンはフェミニストではなかったのか、などとも。加齢とともに何となく諦観が色濃く出てきているような感じです。これまでの作品のように、ユーモアや愚痴も控えめですし・・・。
 しかも、これまでのように単独でマクレーンが絡まなければいけないという必然性が乏しいのが気になります。あれなら、FBIの支援をもっと受けられるでしょうに。
 相棒のジャスティン・ロングの露出時間はほぼブルース・ウィリスと同じ。それだけ彼の役割が重要で、その分も主人公が一人で頑張るというこれまでの作品の印象と大きく異なっています。ところで、このジャスティン・ロングはApple社のWinとの比較CMでマックを演じている人物(日本のCMではラーメンズの一人)。その割には、マックは画面に全く現れませんでしたが・・・。(^o^)
 第1作目には及びませんが、劇場の大画面で鑑賞するには打って付けのエンタメ作品に仕上がっています。
(劇場)

2007.07.03 ナイト・ウォッチ/NOCHNOI DOZOR ★★★

 珍しくもロシア映画で、ロシア国内で歴代興行記録を塗り替える大ヒットとなった作品とのこと。ユアン・マクレガーが主演した「ナイトウォッチ」(真ん中に点がない)とは違います。(^o^) DVDパッケージ・デザインはB級、C級映画そのもので、予備知識がなければレンタル・ショップでは、まず手が延びるようなものではないでしょう。
 ほう、画質は綺麗、VFXはお金をかけている、映像感覚はスタイリッシュ、ということで、まあロシア版マトリックスと言ってよいのではないでしょうか。言葉が聞き慣れないロシア語であることを除けば、メジャー俳優が出演していないハリウッド映画と言う感じです。光のサイドの人種と闇のサイドの人種の攻防という状況設定は、バンパイアと狼男、良いミュータントと悪のミュータントといった対比と同様です。
 映像感覚、視覚感覚やVFXは確かに眼を見張らせるものがあるかも知れません。ただ、ストーリー展開がイマイチ面白みに欠けます。説得力ある、納得できる展開になっていないのです。ここが本家マトリックスとは大いに異なるところでしょう。 
 スタイリッシュ的という反面、室内はジメジメ、ゴキブリがワサワサ、ハエがブンブン、フクロウお姉さんの体は羽毛だらけ、などというようにけっこう気持ち悪いシーンが多いのはマイナス・ポイントかも。結局見終えて残るのは、冒頭の魔女のおばはんと闇の番人たちとのスリリングな攻防シーンだけ・・・。フクロウお姉さんは入浴シーンだけが見もの(?)で、ちっとも活躍しないのは何故? 主人公(コンスタンチン・ハベンスキー)が12年後にしっかりその分、年を取った男になっていたことに妙に感動しました。
 第3部作の第1部とのことですが、2部、3部と見続けるには相当忍耐が必要かも知れません。文芸作品に代表されると思っていたロシア映画も、変わって来ているのですねぇ・・・。(-.-)
(DVD)

2007.06.25 ドリームガールズ ★★★☆

 はあ、ミュージカルだったのですね、この映画。ブロードウェイの初演は1981年で、6部門のトニー賞を受賞したヒット作品とのこと。それを映画化し、第79回アカデミー賞では2部門(助演女優賞、録音賞)で最優秀賞を獲得しました。期待された菊池凛子を押さえて、助演女優賞のオスカーを手にしたジェニファー・ハドソンの大喜びの笑顔は記憶に新しいところ。
 田舎から出てきた女性コーラスグループの栄光と挫折、白人世界での黒人差別、お金を最優先するマネージャの駆け引きなど 、ストーリーは所謂よくありそうなアメリカビジネス界の裏舞台を扱ったもの。展開に特に斬新さはなく、従ってビジュアルとサウンドを楽しむ映画と言っても良いでしょう。
 冒頭から懐かしいモータウン・サウンドが全開です。ただし、序盤でのワクワク感が持続せず、中盤以降はやや退屈。 ジェニファー・ハドソンの歌は巧いけど、恨み節はややくどく、しつこ過ぎ。加えて、太り過ぎ・・・。(^o^) それに引き換え、 ビヨンセ・ノウルズの歌唱は安心して聴くことができます。均整の取れたスタイル(特に下半身)も素晴らしい。3人グループは当然シュープリームスをモデルにしているので、彼女はダイアナ・ロスにそっくり仕立て。ただし、どこまでが実話でどこまでがフィクションかは分かりませんが。
 ミュージカルであることを百も承知ですが、いきなり歌い出すのが大分不自然に感じられます。元々音楽舞台を扱っているのですから、ミュージカル仕立てでなくとも良かったかも知れません。
 エディ・マーフィー演ずるモデルはジェームス・ブラウンとのことですが、イマイチですね。いつジョークを言うのかと待ち遠しかった・・・。(^o^) ジェイミー・フォックスはここではチンピラ然とした印象が強くて、冴えません。昔の上司を思い出してしまいました。
 こんなにカラフルで美しいエンド・ロールでは、席を立つ人は居なかったことでしょう。(^_^)
(DVD)

2007.06.17 ディパーテッド ★★★★☆

 評判が高かったという香港映画「インファナル・アフェア」をマーティン・スコセッシ監督がリメイクし、79回アカデミーで監督賞、作品賞など4部門のオスカーを獲得した話題作。タイトル(「The Departed」)は「死者」を現しているようです。
 警察とマフィアにそれぞれスパイとして送り込まれた二人の男と、それを取り巻く双方の攻防を描いたもの。とにかくこの分りやすい設定と、全編漲るジリジリとした緊張感に大いに引き込まれました。巧く出来た脚本だと思います。特に終盤のこれでもかというたたみかけを見よ。152分の長尺ですが、全く弛れません。
 ぎょっとするようなバイオレンス・シーンも スコセッシ監督ならのものでしょう。情けも容赦もありません。R-15指定も頷けます。
 終盤、「第三の男」に酷似したシーンが出てきます。明らかにパクっていますね、これは。(^o^)
 マット・ディモンは次第にジミー大西に似なくなってきましたね。その代わり、マーク・ウォルバーグに似てきて、若干見分けがつかないシーンがあったりして・・・。 レオナルド・ディカプリオは流石に巧い演技に終始し、喝采ものです。危険な立場に追い込まれていく苦悩を見事に演じきっていました。あの童顔さがもう少しなくなればなぁ・・・。
 健闘していた二人を、現れた瞬間その存在感を吹き飛ばすのが、マフィアのボス役を演じているジャック・ニコルソン。笑ってしまうようなオーバーアクトの怪演なのですが、この人なら許せるでしょう。 かなり下品でもありましたが・・・。
 アレック・ボールドウィンやマーク・ウォルバーグの使い方がやや勿体ないかも・・・。ヴェラ・ファーミガ演ずる精神科医の扱いも中途半端だ。
 大方の評によれば、主人公二人の情念の描き方など「インファナル・アフェア」の方に軍配が上がるようです。それでも頑なにアジア映画を見る気にならない私なのでした・・・。(^_^;)
(DVD)

2007.06.07 ブラック・ダリア ★★

 「世界で一番有名な死体」などというキャッチ・コピーは十分魅力的で、大いにそそられたにも関わらず、結局劇場には行くことが出来ませんでした。
 監督はブライアン・デ・パルマ、配役はジョシュ・ハートネットアーロン・エッカートスカーレット・ヨハンソンヒラリー・スワンクという豪華な布陣です。
 にも関わらず、極めて難解な展開に終始します。しかもラストは、え〜あの人が!!という正に驚愕の結末。でも、この事件は迷宮入りなのですよね。つまり、全くの想像、脚色の世界です。
 興味を引く題材は十分すぎるほど揃っています。口が耳元まで裂かれ、腰で切断された若い女性の死体。彼女が出演したポルノ・フィルム。殺された女と瓜二つの大富豪の娘の出現。彼女の一族に纏るどす黒い秘密。追う二人の刑事とその妻との三角関係、等々・・・。
 終盤は「驚きのなぞ解きが・・・」、といった風。でも、何が何だかさっぱり分からず・・・。ついて来れない観客が悪い、などと思っていればまだ良くて、結局デ・パルマは観客のことなど露とも考えず、自分がやりたいように演出しただけ、ではないでしょうか?
 それでも、彼ならではの特徴的な映像イメージはここでも健在。言葉には中々現せませんが、それらしい雰囲気は醸し出しています。
 ジョシュ・ハートネットの何も見えてないような眼が嫌い、成熟した女に成りきれないスカーレット・ヨハンソンが物足りない、性同一性障害のイメージが消えないヒラリー・スワンクに色気が感じられない、「ファム・ファタール」のセクシーさにもほど遠い・・・。
 ああ、今どきの映画は益々難解を極め、我が頭脳は益々ボンクラと化していく・・・。(-.-)
(DVD)

2007.05.27 パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド ★★★

 朝起きてテレビを見ていたら、日本公開に先立って行われたアジア・プレミアの模様が放映されていて、そうか、では見に行こうということに。(^o^) 私が行くシネコンは、公開2日目で休日であるにも関わらず空いていて、いつものように良い席が取れました。7割位の入りでしょうか。
 三部作の完結編で、本作で全ての謎が解き明かされる、などと宣伝されています。会場入口で「ご観賞後にお読み下さい。」などと書かれたパンフを貰い、嫌な予感がします。そうか、解説を読まないとストーリーが分からないほどまた複雑な展開なのだな、などと・・・。
 2時間40分の上映時間だけあって、とにかく盛り沢山の内容です。製作者があれも入れよう、こういう設定にしようと際限なく欲張ったに違いありません。案の定、ストーリーや人物の相関は複雑極まりなく、恐らく1作目、2作目を復習してきていても、十分理解するのは難しいような気がします。あれこれ人間同士の駆け引きがあるのですが、その思惑が理解できないまま、置いてきぼりを喰ってしまうのです(前に座っていた小学生、大丈夫だったかなぁ・・・(-.-))。
 伝説の9人の海賊の登場というからには、もっと各々特徴を出して欲しいと思いましたし、やたらと大きくなっただけの女黒魔術師には期待を裏切られました。
 ただ、ジョニー・デップジェフリー・ラッシュビル・ナイ(眼だけですが)などの芸達者な演技を見ているだけでも、それなりに充実感が湧いてくるのが不思議です。終盤のバトル・シーンは全員が入り乱れて、何が何だか分からない始末ですが、大砲で人間がリアルに吹っ飛ぶなど、大画面での迫力は満点です。
 新しくチョウ・ユンファなどという大物も加わるのですが、大事な扱いをされていません。更には(後で知ったのですが)ローリング・ストーンズのキース・リチャーズを出演させて、ギターも弾かせるサービスぶりです。
 例によって長〜いエンド・ロール後におまけ映像が出ますが、これはおまけとして扱うようなショットではありませんね。それにしても10年も経っているというのに、二人とも年をとらないものです・・・。(^o^)
(劇場)

2007.05.13 スパイダーマン3 ★★★★

 日本が世界最早の公開であるとか、日米での興業収入が断トツなどと賑々しく報じられ、それらに釣られての劇場鑑賞なのでした。(^_^;) 確かに前宣伝は、配給元がメジャーなだけに凄まじいものがあります。
 前作から3年。今回も監督はサム・ライミです。
 予告編等にあるように、本作ではある理由でダーク・サイドに落ちるヒーローと、彼を巡る「許し」がテーマになっています。しかも、敵の数が3人(途中で2人に)という豪華版(?)で、それもあって139分の長尺となっています。
 サム・ライミ自身が脚本を担当していますが、基本的な背景はハリウッドが好きな「自己喪失と再生」と言ってよいでしょう。彼が色々欲張って、相当あれこれ考えて構成したという感じが伝わってきます。今流行の同時撮影したものを二つの作品に仕上げようとしたけど、結局無理矢理一本にまとめたという感じです。適役を一人に絞った方がまとまり感があったに違いありません。まあ、この場合は当然CGでかなりお金を掛けたに相違ないサンドマン(トーマス・ヘイデン・チャーチ)が生き残るのでしょうが・・・。
 悪役退治とは別に、何とスパイダーマン(トビー・マグワイア)の浮気のエピソードも絡ませます。第1作目から、キルステン・ダンスト扮するヒロインに違和感を感じていた者としては、やや溜飲を下げたという感じがしなくもありません(なんじゃい、それ)。
 アクション・シーンは例によってCGのカモフラージュのためか夜間シーンが多く、特にニュー・ゴブリン(ジェームズ・フランコ)との対決などは、スピードが速くて何が何だか分かりません。スパイダーマンがビルの谷間を浮揚するシーンなども、3作目ともなると新鮮味が失われています。ただ、サンドマンのCGだけは凄かった。ただし、終盤巨大化すればするほど漫画チックになってしまったのが、残念。
 宇宙からやってきた黒いものの正体が明かされないとか、終盤サンドマンが何故か突然しおらしくなって、決着を付けないで終わってしまうというのが不満です。彼の娘の問題も未解決ですし・・・。ひょっとして、次回作にも使おうとしている?
 キルステン・ダンストは見慣れたせいか、本作ではさほど××には見えません。(^o^) でも、ひょっとして彼女はド近眼では・・・?
 相変わらずエヘラエへラしているトビーは、ダーク・サイドに陥って髪を前に垂らし、目に隈を作ってスゴんでも、ちぃーっとも迫力がありませんぞい。(^o^)
(劇場)

2007.05.03 ブラッド・ダイヤモンド ★★★★

 タイトルは、アフリカの地域紛争で武器等の資金源となる、不法取引されたダイヤモンドを指します。つまり、血塗られたダイヤモンドですね。そういうダイヤモンドがあるとは、私は知りませんでした。
 本作品は、それらのダイヤモンドで結びついたダイヤ密売人(レオナルド・ディカプリオ)、ジャーナリスト(ジェニファー・コネリー)、現地人(ジャイモン・フンスー)の男女3人を主軸にしたスリル溢れる展開を描いた社会派ドラマです。アカデミー賞の5部門にノミネートされましたが、オスカーは一つも手に入りませんでした。レオ様の熱演を見ると、彼に主演男優賞をあげても良かったような気がします。
 誇張ではないかなどと思わせる部分や御都合主義的部分も無いではありませんが、総じてテンポよくスリルとサスペンスに富んだシーンがラストまで展開され、飽きさせません。ベースは社会派ドラマなのでしょうが、エンタメ要素がふんだんに盛り込まれていると言って良いと思います。
 一方で、反政府軍が子供をさらって来て兵士として育てていき、洗脳された幼い兵士が情け容赦ない殺戮を行っていく過程は衝撃的でした。誇張であることを望んだ部分です。
 ラストで「誰がために鐘は鳴る」を想起した人は私だけではありますまい。ていうか、レオ様も一緒に最後まで逃げれば良かったのにね。それにしてもレオ様は相変わらずの童顔ながら、渋くて存在感のある演技をしていました。
 ジェニファー・コネリーはいつまでも奇麗ですね。何故かレオ様とのラブ・シーンはありませんでした。アフリカ出身のジャイモン・フンスーも流石に雰囲気が良く出ていて、熱演でした。助演男優賞は貰いそこねましたが・・・。
 本作品に対して、現時点は殆どブラッド・ダイヤモンドは無くなっていると米国務省が抗議したのだとか。こんなサイトもありますが、一方でそれらは未だ無くなってはいない、という指摘もあるようです。
 今度ダイヤモンドを買うときは、その出自をよく確認することにしようっと。(^o^)
(劇場)

2007.05.02 プラダを着た悪魔 ★★★

 ハリウッドが好むシンデレラ物語の一種と言ってよいでしょう。原作はベスト・セラー小説とのこと。ヴォーグ誌の女性編集長のアシスタントをつとめた経験を持つ原作者が、自身の実体験を元に書き上げたようです。
 タイトル(THE DEVIL WEARS PRADA)は、ニューヨークの一流ファッション誌のカリスマ編集長を指していて、メリル・ストリープが演じています。その鬼のような編集長の秘書に採用された、およそファッション界とは無縁のようなイモ姉ちゃんである主人公(アン・ハサウェイ)が、逆行を乗り越えアシスタントとして成長し、自立していく様を描いています。どうです、これだけでおおよそのストーリーは想像できますよね?(^O^)
 その編集長の悪魔ぶりはどんなものか、いかに主人公がその悪魔の無理難題のオーダーに応えていくか、がこの映画の見どころでしょう。まあもちろん女性なら、彼女らのお金に糸目をつけないファッションにも当然目が行くのでしょう。高級ブランド品は、サイズ2、4の以外にはありえないなど、とか・・・。
 展開はラストを含めて想定内と言って良く、余り捻りはないのですが、まあ退屈することはありません。余りにも簡単に主人公が大変身を遂げるのがやや腑に落ちませんが・・・。
 アシスタントの先輩格役であるエミリー・ブラントと主人公の掛け合いは楽しめました。また、同じ会社のスタッフ役である、スタンリー・トゥッチがここでも好演。巧い人ですね、この人は・・・。
 メリル・ストリープは
終始声のトーンを落とした演技で、いつもように「どうです、私巧いでしょ?」を主張します。う〜む、あのドスコイ体形には、少々きつい役柄と言わざるを得ないかも知れません。
(DVD)

2007.04.30 バベル ★★☆

 アカデミー賞7部門にノミネートされたこの話題作が、「アモーレス・ぺロス」や「21グラム」のイニャリトゥ監督の作品とは気がつきませんでした。果たして前2作と同様な趣向が用いられ、時間軸を微妙に変えた群像劇となっています。
 モロッコ、メキシコそして日本を舞台にした3つのエピソードから成り立っていて、それらを結ぶのは一丁のライフル銃。併せて、タイトルが暗示しているように、人種を超えた、或いは同じ人種間でのコミュニケーションの困難さをテーマにしているように思われます。
 最初は全く関係のないようなエピソードを並行に描き、途中、或いは終盤でそれらを全て結んでしまうという、群像劇の常套手段がここでも使われています。
 それにしても、日本でのお話の結びつきは如何にも取って付けたかのよう。しかも、日本が何となく日本に見えず、東南アジアのどこかの国のように見えてしまう違和感、非現実感があるのです。更に、ああまで惨めったらしい性描写はいかがなものかと思います。心では思ったとしてもあのように具体的な行動を起こす高校生の描き方は、相当違和感があります。菊地凛子は熱演かも知れませんが、そもそも高校生を演ずるには年齢的にちと無理ではないでしょうか?
 コミュニケーションの困難を象徴しているのは、やはりメキシコ編でしょう。こんなチョイ役でガエル・ガルシア・ベルナルを使うのかななどと最初は思っていたのですが、キーとなる重要な役柄を演じています。ベビー・シッター役のアドリアナ・バラッザの苦悩が滲み出て、いかにも辛い。女の子がダコタ・ファニングに似ていると思ったら、彼女の実妹でした。
 モロッコ編は、コミュニケーション不全というより、父親としての監督義務の放棄が問題です。あんな幼い兄弟に眼の届かぬところで銃を持たせてはいけませんよ。ブラッド・ピットケイト・ブランシェット演ずる、やや冷めかけた夫婦に突然降りかかる災難が描かれます。ブラピの老け顔にビックリ。目の下のあの皴はどうだ。
 イニャリトゥ監督作品としては、前2作の方が断然良いと私は思います。
【蛇足】
・「バベルの塔」と「バブルの塔」は違います・・・(誰に言っている?)
・菊地凛子が刑事に渡したメモの内容・・・「どうでもいいですよ〜♪」(^o^)
(劇場)

2007.04.22 ハンニバル・ライジング ★★★

 本作は、トマス・ハリス原作の「羊たちの沈黙」、「ハンニバル」、「レッド・ドラゴン 」に続く第四作目のレクター・シリーズということになります。タイトルどおり、ハンニバル・レクター博士の幼少から青年期までを描いたもので、彼がいかにして人喰いの殺人鬼になったかが描かれます。トマス・ハリス自身が脚本を担当。
 レクター博士と言えば何と言ってもアンソニー・ホプキンス。サー・ホプキンスが他の映画に出ていても、レクター博士を演じているように錯覚するほど、両者の結びつきは強いものがあります。前3作は全てレクターをサー・ホプキンスが演じていますが、本作は流石に彼には演じられません。
 若きレクターを演ずるのは、フランス人のギャスパー・ウリエル。彼がいかにしてサー・ホプキンスが創りあげたレクター像のイメージを壊すことなく演じられるかが、この映画の見どころと言ってよいでしょう。もちろん、あのような怪物がいかなる事情で誕生したかも興味の的ですが・・・。
 結果的にはギャスパー・ウリエルは悪くはないと思います。余りにもハンサムで、サー・ホプキンスに似ているとは言えませんが、良い雰囲気を出していると思います。一方で、ストーリーとしては前半はまだしも、後半は単なる復讐譚としか見えてこないのがやや物足りない。先が読めてしまい、前3作のような意外性に乏しいのです。グロさは、まあ許容範囲かな・・・。
 最も問題なのは、相変わらずの日本文化のおかしな描き方。能面などを簾のようにぶら下げた部屋に、何と甲冑を神体のごとく祭っているのです(オイ!)。いつも思うのですが、どうして日本人にしっかり監修させないのか、不思議でたまりません。しかも出てくる日本女性の名前が「ムラサキ」なのです(醤油か!佃煮か!)。その女性を演じているのがコン・リー。わたしゃ、そもそもこの人の平坦な顔が好きではありません。
 ということで、つくづく「羊たちの沈黙」が名作であることを再認識させられるのでした。次回はまたジョディ・フォスターとサー・ホプキンスが共演してくれないものでしょうか・・・。
(劇場)

2007.04.09 ウルトラヴァイオレット ★☆

 てっきりアメコミの実写版かと思ったら、ガン=カタというユニークな格闘技を披露した「リベリオン」のカート・ウィマー監督のオリジナル書き下ろし作品とのこと。主演はミラ・ジョヴォヴィッチです。
 冒頭、マーヴェル作品のようなアメコミ風オープニング・クレジットに続く実写画像は、果たして殆どアニメそのものでした。近未来、ウィルスに感染した人類グループとそれ以外の人類の攻防を扱ったSF作品ということで、設定としてはX-MENシリーズの殆どパクリ。キーとなる抗体を持つのが少年というのもそっくりです(というか、何と演じているのも同一俳優でした(^o^))。
 一番問題なのはストーリーに全く説得力がないこと。ヒロインは何のためにその少年を救おうとしているのか、自分の立場をどう認識しているのか・・・。監督もそれを認めているとみえて、ミラに冒頭とラストに2回も「ここはあなたの理解を超えた世界」などと独白させているのです。(^o^) 途中でついウトウトし、また巻き戻し・・・。
 本作品のアクション・シーンも、良い意味でも悪い意味でも「マトリックス」の影響を強く受けています。相手を倒した後のキメがスゴ過ぎ。サングラスを直したり。それにしても、悪役があのような鼻詰めのスタイルの間抜け面というのが、いかにも辛い。
 ということで、この映画の見どころはミラのセクシーな出で立ちと、ややぎくしゃくはしていますがスタイリッシュなアクションだけということになります。あの意味なく色が変わる髪と服装、それに体脂肪が限りなくゼロに近いようなポンポを見よ!(^_^;)
(DVD)

2007.03.26 トゥモロー・ワールド ★★★

 子供が産まれなくなった近未来を描いたSF映画、という程度の予備知識しかありませんでした。見てみて、びっくり。SF映画というよりは、独特の世界観をもった戦争映画と言った方がよいかも知れません。
 登場人物の背景説明や状況説明が一切ないまま、主人公(クライヴ・オーウェン)とともにシリアスな展開にどんどんのめり込んで行かされます。何故子供が産まれなくなったのか、そのような状況で何故戦争が起きているのか、子供を孕んだ女性は何故それが出来たのか、主人公は何故それほどまでにその女性を助けなければいけなくて、どこへ連れて行こうとしたのか・・・等々。観客の困惑を無視し、あんたらどうにでも解釈してと、確信犯的に最後まで強引に引っ張っていくという演出です。
 人が殺される場面がいかにも痛々しく、まるでナチを描いた映画かと錯覚しそうになります。戦闘場面もかなりリアルで、さぞかし劇場の大画面で鑑賞したら心拍数が上がったことでしょう。(^_^;) これ以上無いような荒廃しきった風景の全編鉛色の映像が、長回しのカメラワークと相まって、重く心にのし掛かります。うう、暗い・・・。
 終盤の戦闘シーンでは、カメラのレンズに血糊(に似せた赤いもの)が付着しますが、構わず撮り続けられます。これって、映画の状況的には明らかに変ですよね。ドキュメンタリー映像を想定している訳ではないのですから・・・。
 更に驚かされるのが、主人公の元妻役で登場するジュリアン・ムーアの扱い。オスカー候補の大女優を、あんな酷い使い方でいいのでしょうか?御大マイケル・ケインの演ずるキャラにも驚かされます(風貌はジョン・レノンそっくり)が、同じく最後の扱いが如何にも見ていて辛い・・・。
 とにもかくにも好き嫌いがはっきり別れる映画でしょう。タイトルから「デイ・アフター・トゥモロー」ライクを期待したお方は、明らかに金返せ状態になります。(^_^)
(DVD)

2007.03.19 ワールド・トレード・センター ★★★

 9.11同時多発テロで、ワールド・トレード・センター倒壊に巻き込まれた警察官2人が救出されるまでの展開を、実話を基に映画化したもの。「ユナイテッド93」と異なり、こちらは生存者とその家族の証言を基に描かれていますので、よりドキュメンタリー的であると言えます。しかも監督は、いつもなら政治的メッセージ色の強い演出をするオリバー・ストーンですが、本作ではそれは全くなく、淡々と事実に沿ってあのとてつもない出来事の一部を切り出しています。
 作り話であれば、救出に向かった警官隊は多くの人々の救助活動を行った後に倒壊に遭ってしまうというストーリーなのでしょうが、描かれている警官らはこれから救出に向かう時点で早くも、倒壊した瓦礫に埋もれてしまいます。以後、暗闇でのシーンが延々と・・・。見ていて喘息が出そうになります。
 並行して、安否を気づかう家族の様子や、警官らのかつての家族との交流シーンが挿入されます。まあ、この辺は計算ずくの演出かと・・・。
 唯一物語風な部分は、二次災害を避けて救助活動を中止している夜間でも、救出に向かう一人の海兵隊員を巡るエピソード。訳あり風でありながら、人物背景が殆ど無いので何故彼が単独でも危険な救助活動を行おうとしているのかがよく分かりません。彼が救出に向かう初期段階のシーンで、ああ彼が二人を救うのだな、などと明らかに予測がついてしまいます。ここら辺はやや腑に落ちない演出です。
 奇跡の生還を遂げる二人の警官役は、ニコラス・ケイジマイケル・ペーニャ。マイケル・ペーニャは「クラッシュ」での出演が記憶に新しいところですが、ここでも中々良い演技をしていると思います。ニコラス・ケイジの役は、まあ彼でなくとも良かったかも・・・。(^_^)
 この二人の家族以外に、夫や息子などの生還を待ちわびたけれどかなわなかった家族が少なくとも2,749家族、助かった二人もその後それぞれ8回、27回の手術を受けたというラストのテロップに息を飲んだことでした。
(DVD)

2007.03.18 氷の微笑2 ★★

 何かと話題となった前作から14年。この間、続編を作るだの作らないだの、シャロン・ストーンは主役を降りるだの降りないだの、監督や相手役が決まらないだの、色々なゴタゴタがあったとのこと。挙げ句の果てが、この程度の出来ですか・・・。(-.-)
 ゴールデン・ラズベリー賞(最悪映画賞)の最多7部門にノミネートされ、ワースト作品賞、ワースト主演女優賞(シャロン・ストーン)、ワースト続編賞、ワースト脚本賞の4部門を受賞したのも、頷けます。
 前作と主人公は同一人物の設定(当たり前か・・・)。連続殺人事件の犯人は主人公なのか、はたまたその相手役なのかというような展開は全く同様です。しかし、前作のようなサスペンス性からはほど遠く、後半では次第に誰が犯人でもいいや、という気にさせられてしまいます。併せて、前作のような足組み替えシーン(明らかに見えています)を始めとした強烈なエロチシズムも、本作ではさほどではありません。プレイヤーのスチル再生やスロー再生機能を駆使するといった楽しみは、本作では残念ながら無いようです。(^_^;)
 主人公は前作でも悪女ではあったのですが、どこか同情したくなるような可憐さがありました。本作の彼女は、ただの憎たらしい性悪女としか映らないのです。
 笑ったのは相手役(デヴィッド・モリッシー)の役名。前作の相手役のマイケル・ダグラスならぬ、マイケル・グラスなのです。ま、その程度のおふざけで制作されたのか、などと・・・。それにしてもこのデヴィッド・モリッシーが冴えませんね。あの間抜けな印象は、髪形が大きく影響していると思うのですが・・・。
 シャロン・ストーンは撮影時、48歳とのこと。顔のシワをデジタル処理で消したとのことですので、ひょっとしてあの体(上半身)もすげ替えているのでしょうか?一番不可解だったのは、シャーロット・ランプリングがあの程度の役柄で出演していたこと。お金にでも困っていたのでしょうか?
 不安心を煽るような特徴的なテーマ音楽だけは、健在でした。
(DVD)

2007.03.11 16ブロック ★★★☆

 警察官役で登場したブルース・ウィリスを見て、かなり驚かされました。初老というより、殆どジジイ。酔っ払いでヨレヨレで、目の下にクマがあり、お腹もボテっと出ています(髪の毛は何故かありましたが)。ところが拳銃の腕前や危機に陥ったときの機転の効かせ方を見て、まさにこれがダイハード4かと思ったほどでした。(^o^)
 ベテラン刑事ですがうだつのあがらない主人公(ブルース・ウィリス)は、証人である囚人の護送の任務を言い渡されます。そして留置所から裁判所までのわずか16ブロック(区画)の間に、裏のある深刻なトラブルに巻き込まれてしまうというストーリー。監督は「リーサル・ウェポン」シリーズのリチャード・ドナーです。
 刑事と囚人の2人の典型的(白人と黒人ですし)なバディ・ムービーと言って良いでしょう。あるグループから狙われる囚人役は、モス・デフ。典型的な黒人のくぐもった声でベラベラしゃべりまくる彼に、最初は鬱陶しさを感じていましたが、ひた向きに自分の将来を築こうとする態度に主人公ならずとも次第に共感を覚えていくのでした。
 所々に御都合主義が顔を出したり、同じようなミス・リード手法を2回も使ったりと、気になるところはけっこう多い。また「M:I:3」よろしく冒頭に終盤のシーンを挟んで観客の不安心をあおったり、「羊たちの沈黙」でも使われているトリックを用いたりと、演出は新鮮味にやや欠けます。しかしながら、証人が出したクイズに主人公が終盤で答えるシーンや、何よりも素晴らしいラスト・シーンが待っていてそれらを帳消しにしてくれます。
 好演のモス・デフは元々はヒップホップ・ミュージシャンなのですね。脇を固めるのは、こういう役をやらせたら最高にはまるデビッド・モース。とても渋く、存在感があります。
 特典映像に「もう一つのエンディング」がありましたが、全くの正反対の結末で、後味が悪すぎてこれはいただけません。(-.-)
(DVD)

2007.03.05 ナルニア国物語 第1章:ライオンと魔女 ★★★

 子供向けファンタジーでイマイチだ、との評判なので、これまで余り食指は動かなかったのですが、いつもレンタルショップで極めて大量に陳列されているのを見ると、一度は鑑賞しなければいけないという義務感にかられる私でした。(^o^)
 原作はLOTRと双璧と言われている英国生まれのファンタジー。これまで映像化は無理と言われていたとのことですが、なに、昨今のVFX技術では出来ないことはないのでしょう。
 第二次世界大戦下のロンドン、4人兄弟が疎開した家の古い衣装ダンスは、別の世界への入り口だった・・・、というお話。本作は3部作で構成されている最初のパート。でも、LOTRと違って一応話は完結したようには見えます。
 それなりに心得ている長兄とジコチュウな次男、分別ある長女と愛くるしい末娘など、各々キャラは特徴付けられていますし、非力な彼らが偉大なライオンらの助けを得て国王、女王として君臨していくというストーリーなど、まあ退屈はしません。ギリシャ神話に出てくる半人半獣のフォーン、ケンタウロス、言葉を話すビーバー、それにリーアム・ニーソンが声を担当しているライオンなど、VFXもそこそこです。ただ、どうしても何故かスケールの小ささを感じてしまいます。殆どメジャーな俳優が居ないというのが理由の一つかも知れません。
 コワ〜イ魔女の女優はどこかで見た顔だと思ったら、「コンスタンティン」で中性的な大天使を演じていたティルダ・スウィントンでした。前半ではスゴイ魔術を駆使するのに、後半の戦闘ではそれを使わず凄腕の剣使いになるのが解せませんでしたし、やや大根だったのですが、ファッショナブルだったので許します(^o^)。個人的には、疎開先の召使い(?)の女性が気になります。兄弟4人を迎えに来る際のあの存在感は、ただ事ではありません。
 ディズニー制作の子供向けであることを差し引いても、戦闘シーンなどはLOTRと比べると迫力はなく、大味になっています。ラストのまとめ方も予想通り。
 ま、取り敢えず鑑賞の義務は果たしましたぞい。(^o^)
(DVD)