2001.03.25 マルコビッチの穴 ★★★
- 売れない人形遣いの主人公(ジョン・キューザック)が食べるために就職をした会社には、何とジョン・マルコビッチの脳に入り込める穴があった・・・、という奇想天外、荒唐無稽、大仰天映画。
この作品をシュールな前衛不条理劇と見るか、ブラック・ユーモア満載のドタバタ・コメディと見るかは、各人の勝手でしょう。私はとにかく、飛んだ発想の数々をそれなりに楽しみました。そうか、世の中にはこういうことを思いつく人間がいるのだな、とか、製作者はスポンサーを一体どうやって口説いたのだろう?とか・・・。
15分間だけマルコビッチになれる、というアイディアもさることながら、7と1/2階に事務所があって、天井が低いので全員屈みながら歩いている、という非日常的なシチュエーションも素晴らしい。生きているようなマリオネット(ラストは多分人間のぬいぐるみですね)やトラウマを持つチンパンジーなどというのにもビックリ・・・。
しかし、マルコビッチもよくこの出演にOKしましたね。ある意味ではコケにされていると取られてもしようがないと思うのですが。でもさすがに相変わらずダイナミック・レンジの広い演技です(意味不明)。ビデオを見る前はマルコビッチ以外に誰が出演するか判らなかったので、主人公がジョン・キューザックで、その妻がキャメロン・ディアスであることは最初は気が付きませんでした。それだけ二人とも驚くほどの汚れ役なのです。
カメオ出演で、チャーリー・シーン(彼には笑えます)、ブラピ、ショーン・ペンなどが顔を出してビックリもさせられます。
で、何でジョン・マルコビッチか?・・・判りません。「シャロン・ストーンの穴」なんか、ないでしょうか?(^_^;)
(ビデオ)
2001.03.19 キャスト・アウェイ ★★★★
- 「本年度のアカデミー賞最有力」などというフレコミなんぞ全く当てにはならないと思いつつも、それに誘われての劇場鑑賞です。94年のアカデミー主要六部門を独占した「フォレスト・ガンプ/一期一会」のロバート・ゼメキス監督とトム・ハンクスのコンビですから、もしかしたら当たるかも・・・。「Cast
Away」とは、無人島などに漂着する、という意味です(まんまだ)。
宅配便会社・フェデックスで働く主人公(トム)は、1分1秒の時間に追われた生活を送っている猛烈社員(死語か、この言葉は?)。ところがあるとき思わぬ事故で、遠く離れた無人島に一人投げ出されるのでした・・・。
孤独な無人島でのシーンが中心で、台詞は殆どありません。しかも音楽もナレーションもなし。もちろん、海賊や毒グモ、毒蛇の類いは一切登場しません。かつて漂着した人間の白骨死体もなし・・・。これらの要素が、孤立無援の無人島でのサバイバルを、極めて現実的にみせる効果に大きく貢献しています。
こういったバックグラウンドを得て、トムはまさに芸術的な演技に終始します。25kgも減量して、終盤の生活に疲れた眼は光を失い別人のそれのよう・・・。
島での時間がいきなり4年も飛んだり、イカダから突然機上の人になったりと、プロットの飛躍があるのも監督の計算のうちなのでしょうか?最後まで届けようとする荷物の説明はもっと丁寧にして欲しかった・・・(何故彼はあれを開けようとしなかったのか?)。海上でウィルソン(ボールの人形ね)にあそこまでこだわる気持ちもイマイチ説得力が足りないと思うけど・・・。
かつての恋人(ヘレン・ハント)のその後の関係には、納得です。ああでなければいけません。だって、孤独から抜け出る予感をさせるあのラストシーンがあるではありませんか・・・。
作品賞はともかく、トムに主演男優賞はあげてもいいのでは・・・(そういえば授賞式は間もなくです)。(^_^)
(劇場)
2001.03.18 エクソシスト/ディレクターズカット版 ★★★
- 73年に公開され、その後のホラー映画の手本となった名作の再編集版。15分の未公開シーンが挿入されて、音声もデジタル処理されたニュープリント版です。日本公開直前に一部映像が不鮮明との理由で、監督のウィリアム・フリードキン自身によって延期されたことでも話題となりました。
悪魔が人間に憑依してしまうことや、悪魔払いがあのように行われること(事実に基づいているのだよ)を初めて知らしめた伝説的なオカルト映画と云っていいと思います。
私はこのオリジナルを初めて見たときは、余りにもショッキングな映像(首がグルリ、緑の汚物がドバッ、Fuck me!と叫ぶ少女、等々)に腰を抜かしそうになったものでした(現に米国では気分が悪くなって途中退場したものが続出したとのこと)。ところが今回の印象は、怖さという点ではそれほどでもありません。今日的な、より刺激的な映像を見慣れた眼には、首の回転がぎこちないと感じたり、メイクがイマイチ稚拙と映ったりするのです。さすがに、騒がれたスパイダーウォーク(予告編でお馴染みの、階段を逆四つん這いで降りるシーンね)は一見の価値はあると思いますが・・・。
ただ、神父が車を降りたって霧にシルエットが浮かび上がるシーンに代表される独特の雰囲気は、相変わらず素晴らしい。この映画で初めて採用されたというサブリミナル効果も、今回はより強調されているようです。
追加されたラスト・シーンは、余韻を残すという点では逆効果ではないかと思うのですが、いかが?
(ビデオ)
2001.03.12 宗家の三姉妹 ★★★
- 女性監督メイベル・チャンによる香港・日本合作映画です。当初単館上映された岩波ホールでは、観客動員記録を塗り替えるほどヒットしたとのこと。特に女性客が多かったらしい。
長女・靄齢(ミシェール・ヨー)が大財閥の実業家に、次女・慶齢(マギー・チャン)が革命家・孫文に、三女・美齢(ヴィヴィアン・ウー)が軍人・蒋介石にと、それぞれ近代中国を代表する人物に嫁いだ宗家三姉妹の、波乱に満ちた生涯を描いた作品です。
いやあ、近代中国史を勉強させてもらいました。なるほど、孫文と蒋介石の係りはあんなふうで、蒋介石はああして台湾に逃れたのか・・・等々。でもこの映画のテーマは多分史実をなぞることにあるのではなく、いかに三姉妹が自分の信念に従い、強く生きたかを描くところにあったようです。女性監督らしい視点で三姉妹それぞれの見せ場が、キチンと盛り込まれています。
「一人は金を愛し、一人は権力を愛し、一人は国を愛した」というのがコピーですが、「金を愛した」と云われる長女は、ちょっと可哀相ですね。確かに金に飽かせてドエライことで三女夫婦を救ったりするのですが、何も金の亡者だったわけではないでしょう。孫文とともに情熱のすべてを革命に捧げ、中華人民共和国成立とともに国家副主席となった次女の生き様は、確かにスゴイ。これに比べて三女も力強さはあるのですが相手が蒋介石だけあって、結構ドライな生き方に見えます。彼女はまだご存命とか。
私としては、やや出番が少なかったミシェール・ヨーに注目。癒し系というのは、こんな人をいうのかな?
(ビデオ)
2001.03.11 ホワイトアウト ★★
- 新作洋画ビデオで目ぼしい物が無いときは、たまには邦画の話題作を見てみましょう。大ベストセラーを続けている真保裕一の同名小説の映画化で、劇場公開時は大ヒットしたらしい。タイトルの「ホワイトアウト」とは、吹雪などで「白い闇」になり、方角や距離が分からなくなる現象とのこと。
大規模貯水ダムの運転職員の主人公(織田裕二)が、ダムを乗っ取り、職員とダム下流の住民20万世帯を人質にして50億円を要求するテロリスト集団に単独で果敢に立ち向かうという、いわば「日本版ダイ・ハード」とのフレコミです。
う〜ん、国籍不明映画だ・・・。テロリストはともかく一般人の織田や松嶋菜々子が、非現実的な機関銃を持った瞬間に、まるで嘘っぽく、安っぽくなってしまうのです。プロットも飛ばし過ぎで、なおかつご都合主義がありあり。厳寒の地で水に浸かったら、すぐ死にますって・・・。あんな雪崩が起きたら助からないでしょう。
松嶋が何故織田を憎んでいるのか良く分からないし、テロリスト集団にある意図を持って潜入している男の背景も説明不足。後半の展開にヒネリを加えている肝心の仕掛けも、イマイチ位置関係など状況が良くわからない。まさか原作を読んでいることを前提とした映画ではないでしょうね?
織田は頑張っているのは、わかります。テロリストのリーダ役の佐藤浩市(ロン毛は似合わないかも)は、日本アカデミーで助演男優賞を受賞。地元警察署長役の中村嘉葎雄が新潟弁を駆使して(ネイティブ新潟県人の私としてはだいぶ不満だけど)熱演、さすがに貫録を示します。
架空の「奥遠和ダム」が舞台となりますが、これは奥只見ダムがモデルらしい。でもこんなHPがあったら、実在のダムと間違える人はたくさんいるのでしょうね。(^o^)
ま、結局「ダイ・ハードには遠く及ばないけど、邦画としては頑張っているほうじゃない?」という感じか・・・。
(ビデオ)
2001.03.05 コード ★★★★
- 「ハンニバルより怖い女」がこの映画のキャッチ・コピー。その怖い女を演ずるのが、かのお方もハマっているジェニファー・ティリーです。低予算でB級然としていますが豪華配役陣もあって、これでもれっきとした全国劇場公開映画なのです。
妊娠した主人公(ダリル・ハンナ)が何ものかに誘拐されます。彼女を待ち受けていたのは、せっせと彼女に栄養価の高い食事を与えようとする恐ろしい夫婦(ヴィンセント・ギャロ、ジェニファー・ティリー)なのでした・・・。
原題は「Hide and Seek」で、この映画のテーマを巧く言い表しています。で、邦題の「コード」とは何のことかと思ったら、どうやらへその緒(=umbilical cord)のことらしいのです(判るか、そんなもん!)。
この映画は何と云ってもジェニファーの独壇場。今回は、富士真奈美と間違わんばかりの髪型と肥満体型で、クレージーなサイコ女を怪演しています。とにかくここでの彼女のキレ方には、その余りの凄まじさに思わず笑ってしまうほど(彼女にオスカーをあげて!)。
ホラー作品としては余り斬新さはなく定番の展開なのですが、ひたすらテンションの高い彼女の演技と相まって最後まで引き込まれます。米国では本作の公開後に酷似した事件が起こったらしく、ビデオパッケージに新聞記事が表示されていたりするのだ(そんなことを売りにするな!)。
ヴィンセント・ギャロ、きもい。ダリル・ハンナ、大柄で好きくない。
しかし、ジェニファーよ、頼む!あの「バウンド」のときのイイ女に戻ってくれ!
(ビデオ)
2001.03.04 エンド・オブ・ザ・ワールド ★★★☆
- このタイトルでスキーター・デイビスを思い出したお方は、いませんか?懐かしのヒット・ポップスとは違います。(^o^)
これはネビル・シュートのベスト・セラー小説「渚にて(ON THE
BEACH)」を原作として、グレゴリー・ペック主演で1959年に製作された同名映画の、リメイク版なのです。
オリジナルは、米ソ戦争が元で1963年に核戦争が引き起こされる想定であったのに対して、こちらは中国と台湾の争いがこじれ、2006年に第三次世界大戦が勃発する設定になっています。その他、オリジナルでは潜水艦で傍受される不審電波が、こちらでは電子メールに変わるなど、現代的にもアレンジされています。
ビデオやDVDパッケージで想像されるような、大パニック・スペクタクル映画かと期待すると、肩透かしを喰らいます。残酷で悲惨なストーリーであるにもかかわらず、そういった映像は殆ど現れません。むしろ原題にあるように、オーストラリアの美しい海岸の風景などが淡々と描かれます。それがいっそうこの映画のテーマの悲惨さを浮き彫りにし、反核のメッセージがドシンと重く伝わってきます(この小説や59年の映画のお陰で、米ソでの核戦争が起きなかった、などという人も居たりするのだ(^_^;))。
主人公の潜水艦艦長(アーマンド・アサンテ)とメルボルンで知りあった女性(レイチェル・ウォード)との恋愛がサイド・ストーリーとして描かれますが、このレイチェルがとびきり素敵・・・(まさに小股の切れ上がった姉御、という感じ)。
中盤以降、車や人影が全くない街や道路などが延々と映し出されるシーンが出てきますが、一体どうやって撮影したのでしょう?CGでそれらを消し込んだ・・・?
ビデオは編集されていて130分ですが、DVDは「完全版」と称して3時間半にも及びます(さすがに疲れる・・・(-.-))。
(DVD)
2001.02.26 パトリオット ★★★★
- 「パトリオット(Patriot)」とは愛国者の意。監督は「インデペンデンス・デイ」、「ゴジラ GODZILLA」などのローランド・エメリッヒで、主演はまだまだ頑張っているメル・ギブソン。アメリカの独立戦争を題材にした(ハリウッド映画では珍しい、とのこと)フィクションです。
典型的な「アメリカ万歳」映画。くじけそうになる主人公が亡き息子が残した星条旗を見て奮い立ったり、クライマックスの戦闘シーンで、主人公が星条旗を振って兵士を鼓舞したり・・・。米国ナショナリズムがプンプン・・・。当然悪役はイギリス軍で、大佐を演ずるジェイソン・アイザックスは、救いのないほどの憎まれ役。でも彼がいるからこの映画が成り立っているのですが・・・。
3時間近い長尺ですが、ストーリーが明確で、次々に見せ場があるので退屈することはありません。ただ、戦争の是非、復讐劇、家族愛、ロマンス、大迫力戦闘シーンなど、色々な要素を詰め込み過ぎの感が無きにしもあらず。もう少しポイントを絞ったほうがスッキリしたのでは・・・。
エメリッヒ監督が力を入れたという戦闘シーンは、リアルで大迫力。血しぶきや生首が飛び交います。それにしても当時の、両軍が相対峙して号令のもとに鉄砲を撃ちあうという戦法は、何とかならなかったのでしょうか(身を低くして回り込みながら撃つ、というような工夫はないのかね(-.-))。
メル・ギブソンが民族の独立のために捨て身で戦う、というと、彼が監督・主演してオスカーに輝いた「ブレイブハート」(スコットランドの独立戦争)を想起しますが、あちらと比べて本作品の方がより娯楽性が高いと思います。
息子役で騒がれたヒース・レジャー、そんなにいいかな?主人公の亡くなった妻の妹役は、「チャタレイ夫人の恋人」などのジョエリー・リチャードソン。存在感はありませんでしたが、やはりこの人は美形です・・・。(^_^;)
(DVD)
2001.02.18 スリング・ブレイド ★★★★
- 個性派俳優、ビリー・ボブ・ソーントンが監督、脚本、主演の三役をこなし、97年のアカデミー脚本賞でオスカーを獲得した作品。スリング・ブレイド=Silng
Bladeとは、鉈(ナタ)を長くしたような刃物のことです。
幼い頃殺人を犯した主人公(ビリー)は、25年ぶりに精神病院から生まれ故郷に戻ります。彼はそこで心優しい少年(ルーカス・ブラック)とその母親に出会うのですが、彼らはその母親の粗暴なボーイ・フレンドに悩まされているのでした・・・。
この映画は、中盤でその結末がほぼ読めてしまいます。それにも係らず、最後はかなり衝撃的。胸に重くズシンとこたえます。しかしすべきことを成し遂げたというラストの主人公の清々しい横顔に、後味悪く思うことなくエンド・ロールを迎えることが出来るのです。
ここでのソーントンの演技は驚異的ですが、あの声色はややわざとらしい・・・。それに知的障害者の割には、相当高度な思考を巡らしているように見えるシーンが時々あったのが気になりました。
私はこの映画を見て、ソーントンを「恐怖のカメレオン男優」と名付けることにしました。(^o^) この映画での受けグチで猫背の彼と、「アルマゲドン」でのキビキビした司令官と、「Uターン」での奇怪な修理工と、「シンプル・プラン」での頼りない兄貴とを、同一人物が演じているとは到底思えないのです。本当の素顔は一体どれなんだ?(そういえばジェニファー・ロペスは「恐怖のカメレオン女優」。「アナコンダ」、「Uターン」、「アウト・オブ・サイト」など、彼女も出る作品によって著しく顏が変わって見えるのだ・・・)
(ビデオ)
2001.02.13 ボーイズ・ドント・クライ ★★
- 最近日本でも話題となった「性同一性障害」をテーマにした作品。1993年に米国の田舎町で実際に起きた殺人事件に基づいて映画化されました。体は完全に女性でも、男に成りきって(胸にサラシ、股間に詰め物)、自分の気持ちに忠実に生きようと努力した実在のティーナ・ブランドン(ヒラリー・スワンク)の、短い生涯を描いたもの。
主人公を演じたヒラリー・スワンクは、第72回アカデミー賞・最優秀主演女優賞、ゴールデン・グローブ賞・最優秀主演女優賞など、数々の賞に輝いています。
とにかく重い・・・。そして悲惨・・・。必死に男として、男に成りきって恋人(クロエ・セヴィニー)を愛そうとし、自分の人生を切り開いていこうと努力する主人公が、けなげで痛々しい・・・。何でもありのはずのアメリカは都会だけであって、一歩田舎に入ると恐ろしいまでに偏見に満ちた保守的な世界となるようです。主人公が女性だと判って、彼女に危害を加える二人の男(辟易するくらい憎たらしい)。あのような野卑で凶暴なチンピラはごまんと居るのでしょうが、あそこまでの行動は私の理解を超えています(何でもう一人も?)。悲劇に至るまでにはもっと別の側面があったように思えてならないのですが、キンバリー・ピアース(女性)監督によれば、綿密な調査を行った上でかなり忠実に事実に基づいて脚本化されているとのこと。う〜ん、判らない・・・。(-.-)
評判どおり、ヒラリー・スワンクの演技は素晴らしい。アカデミー授賞式の際のあの美しい女性が、全く男性にしか見えない(体はさすがに華奢だけど)演技に終始しているのが驚きです。彼女は撮影終了後もしばらくは「男のくせ」が直らなかったとか・・・。(^_^)
(ビデオ)
2001.02.12 オータム・イン・ニューヨーク ★★
- ギア様の最新作。監督は何と「ラスト・エンペラー」でジョン・ローと共演した女優のジョアン・チェンで、これが第二作目の監督作品とのこと。
ニューヨークでレストランを経営している名うてのプレイ・ボーイ(リチャード・ギア)と、父娘ほど年の離れた難病の女性(ウィノナ・ライダー)との悲恋物語です。
米国では「見ている間に3枚ものハンカチが要るくらい泣ける映画」と云われたとのことですが、私は少しも泣けませんでした。ウンザリするほどカッコ良くて、大金持ちで、女たらしのギア様に感情移入できるかどうか、がこの映画のポイント。気持ちの赴くままに女性を渡り歩いている男が、26歳下の娘を純粋に愛しているんです、と云ってもねぇ・・・。プロットも「出会い、ちょっとした破綻、よりを戻す、別れ」といった標準パターンどおりで、うたい文句の「ラブ・ストーリーの歴史を変える」というのは明らかに言い過ぎ・・・。
ただ、セントラル・パークやロックフェラー・センターなどに代表されるニューヨークの名所や街並みがとても美しく撮られています。特にオープニングのダイアナ・クラールの歌う「Let's
Fall In Love」をバックにした俯瞰映像は、とても素晴らしい。
ウィノナちゃんは瀕死にも係らず、キレイ過ぎ。「ダブル・ジョパディー」のアシュレイのようにスッピンで出たらどうだ?ここでの彼女も何とウソお胸で、しかもオリジナル版にあったヌード・シーンが削られたらしい・・・。(-.-)
それにしても、ギア様が孫を抱いていても、ちっとも似合わないぞ・・・。
(ギア様イノチの皆々様方、ご免なさいm(_ _)m)
(ビデオ)
2001.02.04 U-571 ★★★★
- 「ブレーキ・ダウン」(これも必見)で「スピルバーグの再来」と云われたジョナサン・モストウの最新監督作品。「U-571」とはUボートのことで、ドイツ語のUntersee boot(=潜水艦)を略したもの、とのこと。例のロシア潜水艦の痛ましい事故の直後に公開されたことでも話題を呼びました。
第二次世界大戦下、ドイツ軍が誇る暗号機である「エニグマ」を奪うことを命じられた、米国海軍の物語です。詳述はしませんが、まずこの設定されたストーリーが単純明快で、かつとても面白い。いつもどおりの潜水艦ものネタのオンパレード(爆雷の恐怖、耐圧深度ギリギリまでの潜航、きしむ不気味な音、凄まじい浸水など)でも、飽きさせずに最後まで見せてくれます。
この手のものにつきもののヒューマン・ドラマとして、副艦長(マシュー・マコノヒー)のリーダーとしての成長が描かれているのですが、これがやや弱いのが惜しい。序盤で、昇格はまだ早いと艦長(ビル・パクストン)に諭されるのですが、物語の進行でどうしたから成長した、という点の描写がうまく伝わってこないのです。マコノヒーの抑揚の余り無い表情がそうさせているのかも・・・。
もう一つ気になった点。序盤、米国側に「エニグマ」がない時点で、どうしてあのことが解読できたのか?もっとも、これが出来ていないと物語が始まらないのですがね・・・。(^_^;)
なお、史実は「エニグマ」を奪取したのは米国ではなく英国だったんだそうで、ブレア首相を始めとした英国議員団が、英国を侮辱している映画だとして、激怒したとか・・・。ま、気持ちは解りますが、所詮エンターテインメントなんだから・・・。(-.-)
ハーベイ・カイテル、さすがにイイです。それに引き替え、ジョン・ボン・ジョビ、影が薄かったなぁ。いつ居なくなったか判らなかったぞ・・・。
(ビデオ)
2001.01.29 英雄の条件 ★★☆
- 最近、ディレクターズ・カット版が公開され話題を呼んだ「エクソシスト」のウィリアム・フリードキンの監督作品。原題の「Rules
of Engagement」とは、どういう場合に殺人を伴う武力行使が許されるかを定めた「交戦規則」とのこと。実際にあるものらしい。
中東イエメンのアメリカ大使館を取り巻くデモ隊に発砲した海兵大佐(サミュエル・L・ジャクソン)が、軍法会議にかけられます。かつてベトナム戦争で彼に命を助けられた大佐(トミー・リー・ジョーンズ)がその弁護を引き受けますが、彼の弁護士としての腕は必ずしも一流でない。向かうは米国一のらつ腕検事(ガイ・ピアース)。で、被告人は「殺人者か、英雄か」(この映画のキャッチ・コピー)・・・。
ラスト・クレジットでその後の顛末を紹介するなど、ノン・フィクションの体裁をとってはいますが、実話ではないようです。イエメンがコテコテの反米暴徒の集団として描かれたために、アラブ系米国人が上映停止を求めて抗議行動を起こしたとのこと。それは怒りますわなぁ・・・。
序盤のベトナム戦争シーンはツカミとしてはいいですね。こういうシチュエーションはホント緊張します。で、イエメンでの戦闘シーンも迫力あり。やや中だるみがあった後、法廷シーンが延々と続きます。しかしこの肝心の法廷シーンからラストまでが、どうも盛り上がらない・・・。フィクションならもっとヒネッてもいいと思うのですが。事実を最後まで伏せたり、片足の少女の正体があんなだったりするのも、いただけない。
結局、二人の御大の演技が頼りの映画のようですが、私としてはカミソリのような検事を演じて存在感を示したガイ・ピアース(L.A.コンフィデンシャル)に大拍手です。
(ビデオ)
2001.01.21 インサイダー ★★★★
- 「ヒート」などのマイケル ・マン監督の最新作で、かなりシリアスな社会派映画。アカデミー賞で7部門にノミネートされましたが、オスカーは獲得できませんでした。
実話に基づいているのみならず、人物名、企業名などが全て実名で出てくるところが、スゴイ!!さすがアメリカです。ただし、悪役企業ととして描かれた、大手タバコ会社のブラウン・アンド・ウィリアムソン社(ラッキー・ストライクの会社ね)は、封切り前に配給元のディズニーに相当圧力をかけたとか・・・。
会社の内部情報を公開すべきかどうか悩む元タバコ会社の重役、ジェフリー・ワイガントを演じているのは、「グラディエーター」などのラッセル・クロウ。やけに太って見えると思ったら、この役のために20Kgも体重を増やしたのだそうな・・・。かつてのデ・ニーロみたいだ。
ワイガントの告白証言を報道しようと奔走するCBSのプロデューサ、ローウェル・バーグマンを演ずるのが、アル・パチーノ。いつもどおりのオーバー・アクションが、全く不自然に見えないほどの大熱演です。同じ実話ものの「エリン・ブロコビッチ」の動機がやや不純っぽく見えたのに対して、ここでのバーグマンは自分の信念を貫き通す、まさに男の中の男に見えてしまうところがスゴイ。
実話であるが故に意表をつく展開は望めませんが、最後まで大企業と報道側とのかけ引きなどが興味深く見られます(ちょっと中だるみ気味ではありますが)。ただ、ワイガントが告白の決断をする部分の心理描写が足りないのがやや不満。
ジーナ・ガーションがチョイ役で出るのも楽しい・・・。
嫌煙家の私としては、是非愛煙家に見て反省してもらいたい映画です。タバコってあんな害があるんだぞー!!(^_^;)
(ビデオ)
2001.01.15 バベットの晩餐会 ★★★★
- 1987年度のアカデミー賞で外国語映画賞を受賞した、名作の誉れ高い作品。新作で見るものが無いときは、こういう過去の見逃していた名作を見ることにしましょう。(^_^)
デンマークの小さな漁村で、信仰篤い老姉妹の家の召使いになったバベット(ステファーヌ・オードラン)。あるとき彼女は、手に入れたお金で村人に豪華なフランス料理を振る舞います。荒んだ村人達の心に、超弩級の美味な料理が、ほのぼのとした幸せをもたらします・・・。
前半は、フラッシュ・バックによる美人姉妹の過去の男性との係りと、彼女らの固い宗教心が描かれます。転じて後半はバベットが腕を振るう、海ガメのスープ、ロシア産キャビアのドミドフ風、うずらのフォアグラ詰めパイ焼きなどの、見ていて涎も垂らさんばかりの晩餐会。普段、彼らが摂っている粗末な食事(具の殆ど無いようなスープ一皿だけ!)との対比が、鮮やかです。日本ではこの映画のヒットとともに、全く同じ料理を食べる催しが随分盛んに行われたとか・・・。
北欧の空を象徴するかのような暗い画面に終始していて、それぞれの描写が常に控え目。見ていてもう少しオーバーな表現でもいいのに、と思ってしまう場面がしばしばです。併せて、ルター派の禁欲的な戒律(美味しいと思っても口に出してはいけない、とか)に唖然としてしまうこと、しきり。
しかし、最後にバベットのつぶやく「貧しい芸術家なんていませんわ」などという言葉が、ちっともキザに聞こえないほどの暖かい感動に包まれてしまう、そんなほのぼの映画なのです。(^_^)
(ビデオ)
2001.01.09 MONA
彼女が殺された理由 ★★★☆
- ダニー・デビートの製作、出演によるミステリー(+コメディ)作品。けっこう豪華キャストで、出来もそう悪くないのに日本では劇場未公開でした。
- MONA(ベッド・ミドラー)は誰からも、家族からも嫌われるほどの性悪女。そんな彼女が事故死しますが、死因に不審な点が・・・。容疑者は山ほど居て、さあ、誰が犯人か・・・?
- 登場する人物が全て何処か変、というのは最近のハリウッド映画にはよくあるパターンですが、ここでの出演者も皆かなり変で、大笑い。「薮の中」(芥川ね)風謎解きやドンデン返しの面白さもそこそこですし・・・。
- ただ、ラストは強引にまとめてしまった、という感じが無きにしもあらず(あんなことをした彼は不問だったのか?)。
- ベッド・ミドラー、あの顏と体躯で憎々しさ100%発揮。ネーヴ・キャンベル、相変わらずの猿顏。ジェイミー・リー・カーティス、相変わらずの細顏でナイス・プロポーション。
- 見たい新作ビデオが無いな、と思ったら本作品をどうぞ。(^_^)
- (ビデオ)
2001.01.08 未来は今 ★★☆
- 「ベスト映画ランキング」にノミネートされた、「ビッグ・リボウスキ」などのコーエン兄弟による製作、監督作品。
原題が「THE HUDSUCKER PROXY=ハッドサッカー社の代理」とあるように、わざと株価が暴落するようにと大企業の傀儡(かいらい)社長に仕立てられた男(ティム・ロビンス)の物語です。終始コメディ仕立てなのですが、最後にトンでもないことが起こって、レンタル・ビデオ屋で「SF/ファンタジー」のコーナーに置かれていたことが納得できました。
この最後のトンでもないことを素直に受け入れられるかどうかが、この映画の評価の分かれ目。私には折角快調にとばしていたそれまでの展開を損なっているように思えました。ファンタジーとしては、やや中途半端。
でもレトロがかった映像がとても美しい。序盤で新聞がティム足に絡みつくシーンには唸らされましたが、落下シーンの特撮はかなり稚拙。世界的に有名なオモチャのヒット商品が二つ登場しますが、実話ではありますまい・・・。
大柄な体に子供のような顏が付いたティムが、ピッタリ役にはまっています。ポール・ニューマンの悪役ぶりも見事。この頃(1994年)はまだ若々しかった・・・。新聞記者役のジェニファー・ジェイソン・リーのテンションの高い怪演もスゴイ。
コーエン兄弟作品御用達のスティーブ・ブシェーミもお約束で出演していますが、チョイ役なのが残念でした。
(ビデオ)
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