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2014.07.25 エンド・オブ・ホワイトハウス★★★★

 ホワイトハウスの陥落ものと言えば、私としては何と言っても「24」シリーズが記憶に新しい。これはその映画版と言って良いかも知れません。
 つかみのエピソードがかなり衝撃的。折角久方ぶりにアシュレイ・ジャッドの顔が拝めたと思ったのに・・・。残念。
 その後の展開も衝撃的。兎に角容赦なく人がドンドン死んでいきます。この辺も「24」ライク。しかし、荒唐無稽である背景やご都合主義を気にしなければ、楽しめることは間違いありません。それにしても、あのグループにあんな多くのテロリストが紛れ 込むことが出来たり、息子が簡単に救助されたりとかには、かなり脱力してしまいます。あとはホワイトハウスの警護があんなに脆弱なのか、とか、支援部隊の到着がなんであんなに遅いのか、などと。
 ホワイトハウスの陥落などと言うのは、一昔前であればタブーだったのでしょうが、よくここまで描くことが出来たものです。
「24」がパンドラの箱を開けたか・・・。「24」以外にも、ホワイトハウス版ダイ・ハードと言った趣が強く、いっそ主人公をジェラルド・バトラーではなく、ブルース・ウィリスにしても良かったのではないでしょうか。ダイハード6として。
 大統領役はアーロン・エッカート。まあ、ありでしょうね。大統領代理の下院議長にモーガン・フリーマン。言うこと、ありません。それにしてもアシュレイ・ジャッドが早く消えたのが、かえすがえす惜しい・・・。
(BS-HV)

2014.07.19 マン・オブ・スティール ★★★★

 スーパーマン・ビギニングという趣。如何にして生まれ、如何にして育ち、如何にして新聞社勤めのクラーク・ケントになったかを、143分の間にこれでもかと見せてくれます。CGを使いまくり、ベテラン俳優を配した本作の製作費は莫大なものでしょうし、このような作品が現時点で制作されるということは、依然としてスーパーマンの懐古的な人気の高さを物語っていると言えそうです。
 おそらく原作(原案)は制作のクリストファー・ノーランが考えたのでしょうが、流石に今風な物語展開となっており退屈させません。それにしてもCGによる凄まじい破壊シーンが延々と続きます。次第に食傷気味になったりも・・・。ラストで眼鏡をかけたクラーク・ケントとして登場するのはあざとい気もしますが、まあこうせざるを得ないのでしょうね。
 スーパーマン役は「インモータルズ」でも主役だったヘンリー・カヴィルですが、クリストファー・リーブのイメージからすると神経質っぽくて適任かどうかは疑問です。ただ、役柄設定や物語展開が暗〜いので、それは止むを得ないのかも知れません。脇を固めるのは、ケヴィン・コスナーダイアン・レインラッセル・クロウローレンス・フィッシュバーンと言ったベテラン陣。彼らの存在が本作に重量感を与えています。ヒロイン役はエイミー・アダムスで、何度もアカデミー賞にノミネートされているとあって、中々の熱演と思います。
 それにしても、あの破壊シーンからは膨大な数の死傷者が出ているいるのは想像に難くありませんが、そんな中でヒロインだけを助けようとするヒーローって有りなのでしょうか・・・。
(BS-HV)

2014.07.05 オール・ユー・ニード・イズ・キル ★★★★☆

 日本人の原作の映画化作品なんぞ、余り見たいとは思いませんでしたが、評判が上々ということで劇場鑑賞することに。
 宇宙からの侵略者の攻撃を受ける地球を舞台に、戦死を繰り返すタイムループに見舞われた一戦士(トム・クルーズ)の激闘を描いたSF作品。タイムループものの映画は他にもあったと思いますが、本作は分かりやすく、しかも効率的に(観客を飽きさせない描写で)描かれています。
 実戦経験が皆無のヘナチョコ主人公が、ループを繰り返すうちに逞しい戦士として成長していく、というありがちな展開も許せます。序盤でトム演ずる兵士の情けなさなど、コミカルなシーンも幾つかあって作品全体の重苦しさを救っています。ただ、余りにもゲーム感覚で進むので好き嫌いが別れると思いますが、まあ日本のライトノベルですからそうなるのも止むを得ないところかも。観客に中高生らしき男子が多くいたのも頷けます。
 ここでの侵略者は猛スピードで動き回れて、相手の存在をすぐ感知出来るなど、圧倒的な破壊力を持ったもの。動きが速過ぎて動体視力の無い私としては、何が何だか分からないシーンもありました。
 トム・クルーズは御年52歳。いやあ、若いですねぇ。背の低さも目立ちませんでしたし・・・。
 あとは何といってもエミリー・ブラント演ずるヒロインの存在が圧倒的。主人公を強力にサポートし、頼れるビッチ(笑)になっています。
 原作とは異なるらしいラスト・シーンは感動的ですし、いかにもハリウッド的でよろしいのではないでしょうか。エミリー・ブラントのが逞しいこと。
(劇場)

2014.07.04 アフター・アース 

 ウィル・スミス親子の共演SF映画。そもそも親子とか夫婦とかが共演する映画は、何かしら見ている方が恥ずかしくなってしまうので余り好きではありません。本作もパスしようかと思ったのですが、何となく見てしまいました。
  タイトル(AFTER EARTH)どおり地球の遠い未来を背景にしています。それにしても陳腐なストーリーですし、VFXも昨今のレベルからするとかなり低い。出てくるクリーチャーは造形が雑で動きもぎこちなく、CG丸出し・・・。あの鳥の取った行動も全く解せません。
 まあ、息子であるジェイデン・スミスは父親よりは知的でハンサムですし、将来有望な俳優になる可能性があることは認めます。ただし、結局この2人の2人による2人のための映画であり、見ている方は退屈極まりない。最後で2人が抱きあうシーンは、相当こっぱ恥ずかしかったですぞい。演技上そうしているのではなく、父親が息子に「よくこの役を務めた。お前はエライ」と言っているようにしか見えないのですもの。
 後で知りましたが、監督は何とあのM・ナイト・シャマラン。やはりこの人は「シックス・センス」が最初で最後だったのですねぇ。
(BS-HV)

2014.06.20 ワールド・ウォー Z ★★★

 要はゾンビ映画。盛んにTVなどで流れていたCMは、ゾンビのゾの字も出ていなかったので、騙されたと思った観客もいたのではないかな。まあブラピが制作、主演を務めているのですから、期待度は大きい。ただ、一番の見どころはCMでほぼ見られたような・・・。最近の映画にありがちですね。
 世界的規模で広まるウィルスでゾンビ化していく人間達から、いかにして地球を救い、自分の家族を守るか、という美味しい役どころをブラピが演じています。逆にブラピ以外はメジャーな俳優は一人として出演していませんから、ブラピの高額ギャラと仰天VFXの嵩むであろう製作費から、トータルでコストを抑えたかったのかも知れません。
 ゾンビは普通はゆっくりしか動かないものですが、ここでの彼らは違います。物凄い速さで動き、塀であろうとビルであろうとワラワラとよじ登っていきます。しかもまともな人間が噛まれると、速効でゾンビ化するのです。ウィルスなら感染にもっと時間がかかるはずですが・・・。
 アリの大群のようなゾンビ集団の動きは当然CGによるものなのでしょうが、個々の動きが不規則でバラバラなのは流石にスゴイと思います。一つ一つ描いている訳ではないでしょうから、何か高度なソフトウェアを使っているのでしょう。
 終盤のオチはご都合主義と言われてもしかたないと思いますが、あれを収束するにはあんな方策しかないのかも。それにしても驚いたのは「希望の星」のあっけない顛末。ギャグですか?あれは。
(BS-HV)

2014.06.14 X-MEN:フューチャー&パスト ★★★★☆

 公開日から2週間以上たって、ようやく本作を観る機会を得ました。評判も上々のようです。
 シリーズ5作目なので、相当ゴチャゴチャな展開になるかと思っていましたが、そうではありませんでした。多分、シリーズを全く見ていなくてもかなり楽しめる出来になっていると思います。
 正統的な3作の過去と、前作のビギニングの続編の現代とを行ったり来たりするタイムスリップ的要素がメインですが、比較的分かりやすい構成になっています。まあ、「マトリックス」と「ターミネーター」シリーズに近い、と言えるかも知れません。
 しかもこれまでの主要キャラが殆ど出演するので、オールスター作品としても大いに楽しめます。ストームのハル・ベリーやジーンのファムケ・ヤンセンはちょい出ですが、嬉しいところです。主役級はウルヴァリンのヒュー・ジャックマンとミスティークのジェニファー・ローレンス。私としてはミスティークが大きくクローズアップされているのも大変嬉しい。
 一番印象的だったのは、超高速移動が出来るクイックシルバーの活躍場面。昨今のちょっとやそっとのVFXでは驚かなくなった眼も、これには大いに楽しめました。
 タイム・パラドックスの矛盾を指摘する声をあるようですが、何、パラレル・ワールドだと思えば得心がいきます。
 エンドロールの最後に少しまた映像があって、続編もあるでよ、というのはお約束。
(劇場)

2014.06.10 トランセンデンス ★★

  珍しく試写会のチケットが当たりました。しかも、飲み物とポップコーン付き。6月28日から全国公開される「トランセンデンス」で、主演はジョニー・デップです。
 少しは予備知識を得てから行こうとネットで調べたのが失敗でした。何と本国では評論家がこぞって酷評しているとのこと。それでも私が好きなSFであるということと、ポップコーンに惹かれて新宿ピカデリーまで出かけて行きました。
 9階にあるシアターでしたが、何とエレベーターがなく(実は小さなものが1基あるらしい)、エスカレーターでポップコーン片手に延々と上っていくのでした。ここは初めて訪れましたが、勾配が急でかなり見易いシアターだと思いました。
 で、本作品です。死ぬ寸前の優秀な科学者の脳の内容をAI(人工知能)にアップロードすると、そのAIが暴走してとんでもないことを仕出かしていく、というありそうなストーリー。タイトルの「Transcendence」は超越という意味で、人類を超越する、つまりとなる、というようなことを表しているようです。
 まあ、いずれAIはあのように進化するのかも知れませんが、取り巻くエピソードや最終解決策を含めて余りにも科学的考証がいい加減過ぎ。ウィルスをあんな風に使うなんてねぇ〜。
 加えて、ジョニデ様が汚らしく、全く魅力的に映らない。主人公に魅力がなければ映画はダメです。妻役のレベッカ・ホールも悪くはありませんが、華が余りない。脇役はモーガン・フリーマンポール・ベタニーという良い布陣なのですがね。
 キャラメルコーンは、美味しかった〜。
(劇場・試写会)

2014.06.07 ポンペイ ★★★★☆

 その昔、イタリア旅行をした際に訪れたポンペイ遺跡は、とても印象深いものでした。ベスビオ火山の噴火により、一昼夜にして消滅したという事実とともに、犠牲者の人型や整備された歩道、パン工房、娼館などが見事に発掘されていたことに驚きました。
 本作はその歴史的悲劇を背景に、身分の異なる男女の恋愛を描いたもの。というと、そう、「タイタニック」にシチュエーションが酷似しています。
 いつも行くシネコンは公開初日にも関わらず、ガラガラ・・・。ホント、潰れないで欲しい。
 地震、噴火、津波、火砕流などの見応えあるVFXは言うことはありませんが、嫌でも3.11を思い出してしまうので、微妙と言えば微妙。ストーリーは、親を殺された主人公の復讐、貴族の娘との恋など、捻りもなく王道を行っていますが、これはこれでありでしょう。迫力ある剣闘士の闘いシーンと相俟って、私は大いに楽しめました。
 主人公役のキット・ハリントンは中々良かったですね。少し小柄かな。剣闘士役のアドウェール・アキノエ=アグバエの存在感は半端ではありません。「LOST」を始め、色々な映画に出ていますね、彼は。ミスキャストだと思ったのは、ヒロイン役のエミリー・ブラウニング。お姫様の顔ではないな。「エンジェル・ウォーズ」では役にハマっていましたが。キャリー=アン・モスが老けていて、悲し過ぎ。あと、キーファー・サザーランド悪役に使うのはやめて欲しい。「24」のイメージもあり、彼は善人顔なのです。
(劇場)

2014.05.19 ヒッチコック ★★★

 ご存知、アルフレッド・ヒッチコック監督の名作「サイコ」誕生の秘話を描いたもの。あの映画がこんなに紆余曲折があった末に出来たものとは驚きです。
 当時の映倫や配給会社の力は大きかったのですね。やれ、裸はダメだ、血はダメだ、トイレが映ってはダメだ、などと・・・。そんな逆境をものともせず、自分の信念を貫いて大ヒット作を産み出したヒッチコックはやはりエライ!めげそうになる夫を鼓舞し、支えた妻アルマもエライ!
 ヒッチコックを演ずるのは、あのサー・ホプキンス。体形はともかく、顔は全然似ていませんが・・・。目をかけた女優に必ずご執心となるヒッチコック。どこかで聞いたようなお話だと思ったら、最近亡くなった医者兼作家がそうでした。
 アルマ役にヘレン・ミレン。このオスカー俳優2人によるやり取りが素晴らしい。というか、それがこの映画の一番の見どころかも知れません。
 アンソニー・パーキンスを演じた俳優は、よく似た雰囲気を出していました。ジャネット・リースカーレット・ヨハンソンが演じていますが、ここでも彼女の体形、いや演技は素晴らしい。
 ラストで、ヒッチコックの肩にカラスがとまるシーンはご愛嬌。言うまでもありませんが、本作の鑑賞は「サイコ」(1960年のもの)を見ていることが大前提です。
(BS-HV)

2014.05.09 プリズナーズ ★★★★☆

 一言で言えば誘拐もの。誘拐された娘を救おうと奮起する父親と言えば、最近ではリーアム・ニーソンの「96時間」シリーズがありますが、こちらは一味も二味も違って、あんなスーパーマンは登場しません。
 暴走する父親ヒュー・ジャックマン)と冷静沈着な刑事ジェイク・ギレンホール)とが対比するように描かれ、2時間半にわたるシリアスでサスペンスフルな展開を、息つく暇もなく見せてくれます。見終えてどっと疲れが出ますが、久し振りに良い映画を見たという満足感に浸れました。
 ミス・リードや伏線がちりばめられていますが、全て見事に回収されます。『「セブン」を超える衝撃』などとも評されていますが、ダークさは似ているとしても本作はあれほど後味は悪くはありません
 私としては珍しく、登場した途端にその人物が真犯人と分かりました。あの如何にもなメイクはいけないでしょう(マイナス☆)。
 ヒュー・ジャックマンの熱演もさることながら、幾つか失策もしながら、じわじわと攻めていく様を演じたジェイク・ギレンホールが素晴らしい。あとは何といっても容疑者2人のキャラ作りと演技。特に2人目の彼は、どうしたらあんなに怪しく気持ち悪い表情ができるのでしょう。
 監督のドゥニ・ヴィルヌーヴはカナダ人で、「灼熱の魂」で高評価を得ており、これがハリウッド・デビュー作とのこと。「灼熱の魂」も機会があったら見てみたいと思います。
 前の人から注意されても構わず喋くる老夫婦や、終盤の一番肝心な場面でトイレに立つ老人などがいました・・・。(-.-)
(劇場)

2014.05.04 LOOPER/ルーパー ★★★★

 タイムパラドックスを扱ったSFアクション。B級の匂いがプンプンとするタイトルですが、SF大好き人間の私としては中々面白く見ることが出来ました。ルーパーというのは、30年後の未来から依頼された殺人を現代で行う処刑人のこと。ある時未来から送り込まれた処刑対象者は、30年後の自分だった、という捻った脚本です。
 意識してかどうか、タイムトラベルものに必ずつきまとう矛盾点を、敢えて露呈させた展開になっています。まあ、この手の映画に正確な辻褄合わせを求めるのは野暮というもの。ラストシーンへの伏線があちこちに散りばめられていますので、見逃さないようにしないと・・・。
 終盤は、SFというよりもホラー色を帯びてきて驚かされますが、少年の熱演と相俟って中々見せてくれます。余り後味がよくありませんが、まあ、あれしかないだろうなという結末を迎えます。
 現代の主役は、ジョセフ・ゴードン=レヴィットが、未来ではブルース・ウィリスが演じています。レヴィットは変なメイクや喋り方をしていると思ったら、どうやらウィリスに似せようとしているのですね。ちっとも似ていませんが・・・。母親役のエミリー・ブラントが良い演技をしていると思います。パイパー・ペラーボなどと言う懐かしい人がちょい役で出ていました。この名前、中々忘れられません。
(BS-HV)

2014.04.23 キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー ★★★

 スパイダーマン、X-メン、アイアンマン、マイティ・ソーなど、昨今の映画界を賑わせているマーベル・コミックスの一つ、キャプテン・アメリカの第2作目。ややこしいことに、これらのヒーロー達が集結したアベンジャーズなどという作品もあったりして、どうやら本作はそのアベンジャーズの後を引き継いでいるようです。
 第一作目を見たのは2年前の、しかも機内映画ですから内容は例によって余り覚えていません。それでも昨今のシリーズ物は単独でもどうにかなるだろうということで、いそいそと劇場へ。平日の夕刻でも小学生らが多くいたのは、「アナと・・・」を見るためでしょうか。
 珍しく「本作はエンド・クレジットの後にも映像がありますので、お見逃し無く」などというテロップが冒頭流れます。ストーリー的にはまあ、こんなものでしょう。人物以外は全てCGと言うような映像はまあお見事ですが、もう余り驚きませんね。過激なドンパチには少々食傷気味でもありましたし・・・。
 不満の一つは、お目当てでもあったスカーレット・ヨハンソンが本作では顏、スタイルともに余り奇麗に映っていなかったこと(妊娠の影響?)。あのロバート・レッドフォードが何と悪役で登場します。あんな老け顔をさらすことはないのにね。主人公のクリス・エヴァンスはともかく、ファルコンを演じたアンソニー・マッキーが中々良かったですね。レギュラー・メンバーになるかな。
 ラストの映像は何とエンド・クレジットの途中とラストに二つ。ですから一つ目を見て、席をたった人がいました。まあ、所詮次回もあるよ、という宣伝でしたが・・・。
(劇場)

2014.04.17 マッチポイント ★★★★

 ウディ・アレンの監督作品は余り好きではありません。自ら主人公役のモテる男を演じたりとかするし・・・。本作はアレンは出演していませんし、何よりもスカーレット・ヨハンソンが出ているということで、旧作ながらも珍しくBSのオンラインで鑑賞しました。
 安っぽいタイトルが気になりますが、原題(MATCH POINT)ですから仕方がありません。アレンの脚本でもあるので、コメディ・タッチのラブ・ロマンスかと思いきや、そうではありませんでした。中盤以降、ヒッチコックのような布石が一杯の、サスペンス作品に仕上がっています。しかもBGMはジャズではなくて、伝説のテノール歌手、カルーソオペラ曲を選んでいます。舞台は、ロンドンなのですがね・・・。
 やや現実離れをしていて、そこまでやるか?的な展開なのですが、私は面白く見れました。ただ、あの結末は賛否が分かれることでしょう。
 本作はスカーレット・ヨハンソンの*ロい魅力が全開しており、ウディ・アレンがゾッコンだったということもむべなるかな、です。ヨハンソンは妊娠して8月に出産予定ということですが、スピンオフの「ブラック・ウィドウ」は一体どうなるのでしょうか?
(BS-HV)

2014.03.20 それでも夜は明ける ★★★★

 今年度アカデミー賞で、作品賞、助演女優賞、脚本賞の三冠に輝いた作品。実話に基づいていて、自由黒人であるソロモン・ノーサップが誘拐されて奴隷として売られるも、12年後に辛うじて救われるというお話(原題は「12 YEARS A SLAVE」ですから、ネタバレではありませんよね)。自由黒人とは、主人から解放されたり、自らのお金で奴隷の身でなくなった数少ない黒人を指すとのこと。
  見ながら真っ先に浮かんだのは「芸は身を助く」という言葉。彼が如何にして自由黒人になったかは知らされませんが、聡明でバイオリンも弾けるので、奴隷と なってもその分ワン・チャンスで取り立てて貰え、最後に生還を果たすことに繋がったのだと思います。それにつけても当時の奴隷が如何に悲惨極まりない状態に置かれていたか、その容赦ない描写に恐れおののいてしまいますが、誇張などは無いに違いありません。
 ただし、実話に基づくというだけあってドラマティックな盛り上がりは期待できません。気になったのは、彼は救われたが他の奴隷は何ら変わらずそのままであるということ。奴隷解放はまだずっと先なのです。
 本作のプロデューサでもあるブラピが終盤唐突に現れ、とても美味しい役どころを演じます。何か取って付けた感じがしますが、如何なものでしょう。ソロモンの最初の買主をベネディクト・カンバーバッチが演じていますが、彼も寛大な男として描かれています。イケメンは得ですね。ソロモンはこれまで脇役の多かったキウェテル・イジョフォーですが、中々の熱演だと思います。助演女優賞のルピタ・ニョンゴはそれ程良かったのでしょうか?貧*だし、黒くて表情がよく分かりませんでした(差別だぞ!)。
 黒人差別の非情さを徹底的に訴えた本作がオスカーを獲得したことで、差別した側の人間の罪が少しは許されるかと言うと、そんなことはありませんね。アメリカを始め(日本も含めて)、まだまだ人種差別は歴然とあるのですから。
 それにしても作品賞を「アメリカン・ハッスル」が取れなかったのは、まあ本作があれば当然かな・・・。
(劇場)

2014.03.17 遊星からの物体 ファーストコンタクト ★★★

 ジョン・カーペンター監督の名作(と思う)「遊星からの物体X」の前日譚。とは言え、リメイクと言ってもよいストーリー展開です。原題も同じ「The Thing」ですし。
 前作では当時(1982年)としては仰天VFXが駆使され、登場人物がお互いに疑心暗鬼に陥っていく様が、異常なまでの緊迫感で描かれていました。画面に眼が釘付けになったことを今でも記憶しています。
 本作は前作のストーリーをほぼ踏襲していると言ってもよいと思いますが、流石にVFXは進化していますし、それに伴って気持ち悪さもこれ以上ないという描写になっています(私には正視に耐えられない場面が幾つかあった)。食事前に見るべきではありません。
 「エイリアン(1)」あるいは「プロメテウス」のような宇宙船が出てきますが、よりスマートで、あのような物体が操縦するのは全く似付かわしくありません。前日譚だけあってラストが前作にうまくつながる展開になっていますが、やや取ってつけた感が無きにしもあらず。
 メジャーな俳優を誰一人配していないので、どう見てもB級風になるのが惜しいところ。どんどんリーダーシップを取っていくヒロイン役(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)は悪くはないのですがね。
(BS-HV)

2014.03.04 ホビット 竜に奪われた王国 ★★★★

 「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンが、再びトールキンの原作を取り上げた新3部作「LOTR」の前日譚)の第2作目。余り期待しないで見た第1作目が意外と面白かったことに加え、この手のシリーズの映像は大画面で見るべきと思い、劇場にて鑑賞。
  シリーズものは前作から時間が経っていると、人物やその相関、展開がすぐには思い出せず苦労しますが、今回も例外ではありませんでした。見ているうちに、 ああそうだった、などと次第に思い出して来ます。背景が分かってしまえばお話自体は単純ですから、頭を使う必要はなく、大画面のこれでもかと言うVFXを 駆使したビジュアルを楽しめます。
 ただし、さあ、これからと言う場面でいきなり終わってしまいます。試写会ではこの終わり方に大きくざわめいたのだとか。まあ、3作目がありますからこのエンディングは止むを得ぬことでしょう。
 主人公は前作同様マーティン・フリーマンで、前作ではこの手の主人公としては老け顔で少々違和感がありましたが、本作では何故かそれは余り感じませんでした。
 話題としては今を時めくベネディクト・カンバーバッチが、喋るドラゴンをモーション・キャプチャーで演じ、その声も担当していると言うことでしょうか。しかし、ゴラムなら分かりますが、あんな巨大な動物の暗くてよく分からない動きを演ずると言ってもねぇ・・・。喋る竜と言えば、「ドラゴンハート」のショーン・コネリー。うん、当然ながらコネリーの勝ち。
 エルフの騎士を演じている女性、どこかで見た顏と思いましたが終わるまで分からず、あとで「LOST」のエヴァンジェリン・リリーと知りました。より若々しくて、中々結構。第3作目を見る楽しみが増えました。
(劇場)

2014.02.25 マリーゴールド・ホテルで会いましょう ★★★★

 ジュディ・デンチビル・ナイマギー・スミストム・ウィルキンソンなど、英国のベテラン俳優の共演というだけでも、十分見る気にさせてくれます。
 イギリスからインドに移住した熟年男女7人のカルチャー・ギャップと、そこから派生するそれぞれの人生を描いた作品。まあ、お年寄り応援映画で すな。年をとっても生きがいを見つけることが如何に大事か、ということを教えてくれます。男女の関係も含めて・・・。コメディ仕立てではありますが、ト ム・ウィルキンソン演ずるゲイの男がインド人のかつての相方を探し求め、再会を果たす(泣ける場面です)などというシリアスな展開もあります。
 名優たちの演技もさることながら、それぞれの人生のユニークな生き方が心を打ちます。彼らが事前に聞いていたホテルとは全く異なる廃墟同然のホテル(マリーゴールド・ホテル)を、必死に再建しようとするインド人支配人(デヴ・パテル)の熱意と奮闘がそれらに絡み、飽きさせません。
 徹底した人種差別をするマギー・スミス演ずる車椅子おばあちゃんの変貌ぶりはやや強引ですが、終盤に向かっての重要なファクターになっています。
 繰り返して出てくる言葉、「何事も最後は大団円」は良い言葉であると納得する一方で、そうでないこともあるんだよなぁ、とつい思ってしまう私なのでした。
(BS-HV)

2014.02.21 エージェント:ライアン ★★★

 「レッド・オクトーバーを追え!」、「パトリオット・ゲーム」、「今そこにある危機」、「トータル・フィアーズ」の原作者であるトム・クランシーによる「ジャック・ライアン」シリーズの最新作。如何にしてジャック・ライアンがエージェント(諜報員)になったか、と言ういわゆる「ジャック・ライアン・ビギニング」ですな。
 これまでのジャック・ライアンでは何と言ってもハリソン・フォードのイメージが強いのですが、この新作では今をときめく(でもないか)クリス・パインが抜擢されています。監督は自らも悪役で出演しているケネス・ブラナー
 舞台は現代の設定ですが、米ソ冷戦時代の 様相をかなり呈していて、どうも古臭い。従って、007シリーズを見ているような既視感が漂います。それ以外にも「ボーン」、「MI」、「24」の各シ リーズに似た感じで、新鮮さには乏しいと言わざるを得ません。ストーリー自体はまあ面白いし、見どころのシーンもあるのですがね。ただ、ごく普通の男が特 に訓練もせずに精鋭のエージェントに成長していく過程は、やや強引な感じがしないでもありません。
 クリス・パインは当然ながらハリソン・フォードとは格違いですが、これはまあ仕方がありません。ケネス・ブラナーは哀れな役で、むしろこちらに同情してしまいます。彼は監督としての手腕は分かりませんが、良い俳優ですね。元来顔だけ美人キーラ・ナイトレイが、ここでは顔でさえも美形に見えなかったのは何故? ケヴィン・コスナーをこのような役で使うのはいかがなものでしょうか?勿体無いと思います。
(劇場)

2014.02.03 アメリカン・ハッスル ★★★

 今年度アカデミー賞最多の10部門ノミネート作品で、前評判も上々ということで、わざわざ渋谷まで出かけて見てきました。いつも行く最寄りのシネコンでは配給会社の関係でしょうか、上映されていないのです。
 実際に米国であったオトリ詐欺事件を元にしたものだとか。「世界にひとつのプレイブック」と同じデヴィッド・O・ラッセル監督で、出演者も何人かダブっています。「世界にひとつのプレイブック」も昨年度8部門にノミネートされていましたが、作品内容としてはイマイチの出来でした。
 本作はどうかというと、これもハッキリ言って残念な仕上がりだと思います。ストーリー展開に面白みが無いのです。オトリや詐欺を扱っていながら、スリリングなことは一切無し。加えて、そう複雑な話では無いにも関わらず、どうも分かりずらい。一番の見せ場であろう最後のどんでん返しも、ああそういうこと、と言った程度。「スティング」のようなアッという驚きはありませんでした。
 ただし、主要キャスト4人が全てオスカーにノミネートされただけあって、各人の演技は見応え充分。特にクリスチャン・ベイルの体を改造してまでの成り切り演技はここでも凄まじい。何でもドーナッツを食べまくり、体重を20kgも増やしたのだとか。しかも髪の毛を剃るか抜くかして、バーコードを作り出しています(勿体無い)。ジェニファー・ローレンスしゃべくりエロおばさん演技にもビックリ。まだ23歳なのに・・・。この2人のオスカーは決まりではないかな。ちょい役ながら、ロバート・デ・ニーロの存在感=怖さもスゴイ。あと、「デライラ」などの70年代の音楽が良かったですね。
 作品賞、監督賞、脚本賞のオスカーはどうでしょう。こういうのが米国人には受けるのでしょうか?
(劇場)

【2014.03.03追記】

 ははは。10部門にノミネートされていたにも関わらず、無冠でした。

2014.02.01 声をかくす人 ★★★☆

 何やら叙情的な邦題ですが、原題は「THE CONSPIRATOR」(=共謀者)という、身も蓋もないもの。リンカーン大統領の暗殺に関わったとして、米国史上で女性として初めて死刑に処せられたメアリー・サラットの史実を基にした映画です。あのロバート・レッドフォードが制作、監督を務めていることも、要注目でしょうか。
 何でも実際の裁判の資料を極めて忠実に再現したとのことですが、その割にはかなりスリリングな展開の法廷劇としても見ることが出来ます。それとは別に、観劇中のリンカーン暗殺に合わせて、複数の犯人グループが同時多発的に副大統領と国務長官をも襲った(こちらはいずれも未遂)などという史実も初めて知ることが出来ました。
 嫌々、サラットを弁護する羽目になったフレデリック・エイキンが、 彼女と接見を繰り返すうちに何とか有罪とならないよう、東奔西走する姿がいかにもいじらしい。それにしてもこの邦題からすれば、サラットが何か重大な秘密 を隠していて敢えてそれを言わずに黙りこくっている、という状況を想像しがちですが、そうではありません。サラットの変わらぬ心情を理解するには、この邦 題ではいけません。それに処刑シーンが嫌に生々しく、これは無くても良かったかな・・・。
 弁護士エイキンにジェームズ・マカヴォイ。ナルニア国のタムナスさんも随分貫禄が付いたものです。背が低いのが惜しまれます。サラットを演ずるロビン・ライトの物静かな表情の演技が素晴らしい。それにしても、彼女の老けぶりが悲し過ぎます。
(BS-HV)

2014.01.18 大脱出 ★★★☆

 シルヴェスター・スタローンアーノルド・シュワルツェネッガーは、最近の「エクスペンダブル」シリーズで顔合わせ的共演はしていましたが、本作ではその2人が初めてガップリ四つに組みます。間抜けな邦題が気になりますが、60歳半ばを過ぎた2人の大物アクション・スターの共演を観てみたいという気にはさせてくれます。
 ある理由から脱獄不可能と言われる刑務所に入ったスタローンが、収監されていたシュワルツェネッガーとともに脱獄を図るというもの。こういうビジネスがあるというのは、一つのアイディアですね。
 単純な脱獄劇でなく適度に捻りもあって、比較的よく練られている脚本とは思いますが、設定の穴が至る所にあるのが余りにも残念。怪し いなら早く2人を離したら、とか、ボルトが工具もなく抜けたり、とか、あれだけの厳重な設備があるならボディ・チェックくらいしたら、とか、それでも少しは揺れるでしょう、とか・・・。雨あられと浴びせられる銃弾が2人をかすりもしない、というのはお約束としても。
 それにしても年を感じさせない2人のアクションは見ものです。特にシュワちゃんは、若い頃と違って知的に見えて素敵です(あの髭、真似しようかな)。ラストでマシンガンを撃ちまくるファン向けサービス(しかもスロー・モーションで)もあったり。憎まれ役刑務所長に、久しぶりのジム・カヴィーゼル。「パッション」でのキリスト役が印象的な彼には、もっと映画に出演して貰いたいと思います。
(劇場)

2014.01.07 ゲットバック ★★☆

 言うまでもありませんが、ザ・ビートルズとは何の関係もありません。ニコラス・ケイジ主演の「コン・エアー」は、悪役のジョン・マルコヴィッチの強烈な存在感と相俟って、極めて印象的なアクション映画でした。それを監督していたのが本作と同じサイモン・ウェストで、ケイジとの再びのタッグ作品となるようです。
 主人公を含むグループが銀行強盗を成功させるも逃走中に捕まり・・・という、クライム・アクション。「96時間」シリーズと同様、危機にさらされる娘を父親が何としてでも守り抜く、という構図です。
 銀行襲撃が序盤と後半に描かれますが、兎に突っ込みどころは満載。あんなに簡単にお金や金塊が手に入るというのは、いかにも設定が安易で手抜きと言われてもしようがありません。とは言え、ストーリー展開はそれなりに考えてあるので、まあ退屈はしません。それにしてもラストのミス・リードは余りにもあからさま。まあ、ハリウッド映画ですからしようがありませんけどね。
 悪役のジョシュ・ルーカスが熱演していますが、フツーに二枚目が張れる役者なのに、この役どころではちと可哀想かな。主人公をサポートするマリン・アッカーマンが、やや中途半端な感じです。もっと華のある女優を当てるべき・・・、と思います。
(BS-HV)

2013.12.26 エージェント・マロリー ★★

 監督がスティーヴン・ソダーバーグで、キャストがマイケル・ダグラスユアン・マクレガーアントニオ・バンデラスマイケル・ファスベンダービル・パクストンという超豪華な顔ぶれにも関わらず、主演がジーナ・カラーノという映画初出演の女性。何でも米国では有名な総合格闘家らしい。
 確かに体は頑丈そう(腿が太い!)で、しかも十分主演をはれる美貌の持ち主ではあります。そんな彼女がスパイ・アクションをこなすのですから、もう見るからに無敵です。何しろ序盤で、淹れたてのコーヒーを顔にぶっかけられても火傷一つしないのですから・・・。
 キレの良いアクションは見ていて気持ちが良いのですが、問題はストーリー展開です。主人公が嵌められているのは分かるのですが、誰がどうしているかが中々分からない。終盤でようやく、ああそういう事かと分かりますが、要するに主人公は仕返しをしているだけなんですね・・・。原題が「HAYWIRE」(=混乱)というのも皮肉に思えます。
 ということで、本作はひたすらジーナ・カラーノの美貌とアクションのみを楽しむ映画のようです。それにしてもカラーノのサービス・ショットが全く無い、というのもねぇ・・・。
(BS-HV)

2013.12.17 ゼロ・グラビティ ★★★★☆

 劇場で予告編を何度も見せられました。どうやら宇宙での遭難のお話で、映像が凄いらしい。
 試写を見た人は一様に「この映画は3Dで鑑賞すべき」と言っていたので、久し振りに3Dにて。私は画面が暗くなるので、これまでなるべく3Dを避けてきたのですがね・・・。確かに過去に見た作品よりも、より自然に立体的に見えます。でもメガネを外すと明るく見えるので、3Dを2D並に明るく映すということは、まだ克服されていないようです。
 サンドラ・ブロックジョージ・クルーニー演ずる宇宙飛行士が、地上600kmの上空で宇宙の無重力空 間に投げ出されてしまうのですが、彼らは果たして無事に地球に帰還することができるか?というストーリー。と言うと、いとも簡単ですが、本作のスリリング な展開とそれらの映像は流石に凄いです。見ていて自分でも体に力が入っているのが分かります(マジで心臓に良くないな・・・)。どうやって撮影しているの だろう、と終始思わずにはいられません。
 そうは言っては昨今のジェットコースター的映画と違って、静けさが強調されているシーンも多く、その対比が効果的です。終盤のあるエピソードがご都合主義的と言えなくもありませんが、これはこれでありでしょう。
 久し振りにサンドラ・ブロックを見ましたが、良い演技していますね。御年49歳の割には体形も美しい・・・。エンド・ロールでエド・ハリスの名前が出ますが、さてどこのシーンかと。なるほど、洒脱なヒューストンの管制官でした(つまり声だけの出演)。
 あのラスト・シーンであれば、邦題も「無重力」でなく原題どおりの「グラビティ」にすべきと言う意見に、私も一票。
(劇場)

2013.12.16 コロンビアーナ ★★

 リュック・ベッソンが、監督ではなく製作、脚本を担当した作品。注目は「アバター」のモーション・キャプチャ役を務めたゾーイ・サルダナが主演しているというところでしょうか。
 お話としては極めて単純明快。幼くして両親を殺害された主人公が凄腕の殺し屋として成長し、復習を遂げるというもの。
 それにしても両親を殺した人物をおびき寄せる手口が手が込んでいるというか、周りくどいというか・・・。そんなことをせずに一直線に行ってしまえば良いと思うのですが。見せ場を色々作らなければいけない、という気持ちは分かります。この 辺がどうも本作を安っぽく見せてしまっている原因ではないかな、と。あのような大掛かりな銃器をいつ用意したのか、出来たのか、なども釈然としません。しかも、あんなことを仕出かせば結局FBI側からも逃れられないでしょうし。
 ということで、全体的に脚本がよく練られていないという印象です。ただ、ゾーイ・サルダナのスリム過ぎる(貧*!)スタイルで繰り出されるアクションは、見ものかも。少女時代を演じたアマンドラ・ステンバーグも、いずれブレイクする予感があります。あの逃げ足の速さは凄い・・・。
(BS-HV)

2013.12.04 REDリターンズ ★★★☆

 REDと言うのは、Retired Extremely Dangerous(リタイアした超危険人物)のこと。第1作目は痛快極まりない出来でした。
 ブルース・ウィリスジョン・マルコヴィッチヘレン・ミレンメアリー=ルイーズ・パーカーは引き続き出演し、モーガン・フリーマンが姿を消して(というか死んだので)、代わりにアンソニー・ホプキンスキャサリン・ゼタ=ジョーンズが登場します。イ・ビョンホンとか言う有名らしき韓国人俳優も出演しています(興味なし)。
 第1作目が単純明快な展開だったのに対し、本作は色々捻ってあってテンポも速く、すぐ敵味方が逆転したりするので、ボーっとしていると置いていかれます(私はかろうじてついていけた、と思う・・・)。本作も前作以上のご都合主義が満載。あんなに雨あられの如く銃弾を浴びせられても、絶対当たらない・・・。
 でも、そんなことは許せます。気になったのは、やはりラストの出来事。これだけは助かって良かった、なんて思っていてはダメでしょう。「ダイ・ハード/ラスト・デイ」と同じく、ハリウッドの科学考証はゼロで、いくらこんな能天気映画でも納得がいかないというものです。
 ヘレン・ミレンの相変わらずのド派手な活躍は痛快、痛快。マルコヴィッチが余り弾けていないのは、不満。サー・ ホプキンスはレクター博士を元気にした感じで、嬉しい限り。ゼタ=ジョーンズはどうでもよい役。ルイーズ・パーカーの役柄は、無くても良いと思います。何かいらつく・・・。
 もはやオヤジ映画と言うよりも、元気なジジイ映画の域に入った本作。ただし、全体的には前作の衝撃(笑撃)には及ばないなぁ。
(劇場)

2013.11.29 キャプテン・フィリップス ★★★☆

 平日の昼間でも嫌に中高年が多く目立ついつものシネコン。そうか、殆どが「清須会議」を観に来ているようです。私はというと本日封切りの本作。観客は十数人でしょうか。まあここはいつもその程度です。
 で、本作。トム・ハンクス主演の実録サスペンスという触れ込み。2009年、ソマリア沖で海賊に襲われ、辛くも救出された実在の船長リチャード・フィリップスの体験話です。
 人物の余計な背景描写は殆ど無く、ほぼ134分緊迫の連続。お話としては単純(と言ったら不遜か)なのですが、とにかく海賊を演ずるソマリア出身の俳優が、リアル過ぎて恐ろしいこと、恐ろしいこと。アカデミー賞助演男優賞をあげたいくらいです。
 トム演ずる船長と言えば、ある程度は機転の効いた勇気ある行動を取るものの、武装した海賊の前では全くの無力(当たり前ですが)。いきなり、相手の銃をもぎ取って撃ち合いが始まるのではないか、などとかすかに思ったりもしましたが、ブルース・ウィリスではありませんからね。
 海賊が足を負傷させられたり、首を傷つけられたりしても、船長を無傷のままにしているのがやや不自然かな。救援しようとするアメリカ海軍特殊部隊「SEALs」の行動が嫌にもたついていていらつきますが、まあ実録ですからね・・・。
 ラストはもっと余韻を持たせたり、後日談があっても良さそうなのに意外とあっさりとしています。「最大の危機に遭遇したけれどもたまたま運が良かった人」の、事実に即したドキュメンタリーという色彩が強く、物語性のある映画としては期待してはいけないようです。
(劇場)

2013.11.25 リンカーン弁護士 ★★★

 このところ、リンカーンと名のついた映画が多くリリースされているような気がします。少し以前では「ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記」、最近では「リンカーン/秘密の書」、アカデミー賞受賞の「リンカーン」など。本作はこの米国大統領のことではなく、あの高級車のことを指しています。車のリンカーンに乗り、そこを事務所代わりに使う弁護士という訳で、タイトルそのまんまです。
  清濁併せもった弁護士が、かつての自分が扱った裁判と絡む新しい依頼人の弁護を行うが・・・、というストーリー。中盤以降、色々捻ってあるのでそれなりに 見応えはありますが、やや盛り上がりに乏しいという印象です。弁護士である主人公の私邸に2人の人物がいとも簡単に侵入できてしまうのは、納得がいきませ ん。死ななくてもよいような人物が殺されたり・・・。肝心の法廷シーンも他の作品と比べてそう特筆するような展開は無いような・・・。
 主役のマシュー・マコノヒーはまあまあ好演ですね。マリサ・トメイは何故かここでは脱ぎっぷり悪し。マイケル・ペーニャウィリアム・H・メイシージョン・レグイザモなど曲者揃いの脇役ですが、メイシーのこの扱いは勿体ないと思います。終始無表情ライアン・フィリップ、これは演技なのか、素なのか・・・。
(BS-HV)

2013.11.18 ネイビーシールズ ★★

 1990年のものはチャーリー・シーンが主役の「ネイビーシールズ」、こちらは2012年の「ネイビーシールズ」です。どちらもテロリストと対決する米海軍特殊部隊、SEALS(Sea、Air、Land)の活躍を描いたアクション映画ではありますが、前者はエンタメ性を追求した娯楽作であるのに対し、こちらはやや、いや大いに趣を異としています。
 実際のネイビーシールズの協力により、本物のハイテク兵器や戦闘機、潜水艦を登場させただけでなく、キャストも現役のネイビーシールズ隊員を起用したらしい。驚くべきことは、銃撃戦に使用した弾丸も本物を使ったのだそうな(ほんまかいな)。ともかく製作者は、徹底した本物指向で描きたかったとのことです。
  ストーリーこそフィクションとのことですが、戦争銃器愛好者にはたまらない映画になったのでしょう。私はというと、主役級の2人は素人の割にはまあまあ巧 いと思いますが、何か全体的にどうも面白くない・・・。アクションのテンポを端折り過ぎていて、つなぎが悪かったり、説明不足だったり・・・。大きな山場 がなかったり・・・。
 救いは反戦のメッセージは切々と感じられること。あのような父無し子はいったい何人いるのでしょうか・・・。
(BS-HV)

2013.11.05 スティーブ・ジョブズ ★★★☆

 米国での評判は余り宜しくないようですが、これは観ないわけにはいきません。いつも行く最寄りのシネコンは上映しないので(怒)、渋谷まで出かけての鑑賞。ここではシニア料金のチケットにも関わらず、免許証等の提示は求められませんでした(もはや当たり前か・・・)。
 ジョブズの学生時代から、初代iMacの大成功寸前までの紆余曲折を描いています。まずは、アシュトン・カッチャーソックリぶりに大拍手。ただし、ポスターの晩年の顔は余り似ていません。それにあの歩き方は誇張でしょう。その他のメンバもエンド・ロールでの本人との比較映像で、似ている俳優を選んでいることが分かります。
 ジョブズの未来の技術を追求する情熱と、それがための冷酷無比な面が描かれますが、何と言っても後者の比重が多すぎてバランスを欠いていると思います。特に恋人との間に出来た娘を、当初は冷たくも認めなかった彼が晩年は一緒に同居するという有名なエピソードも、前者の印象が強く、単に非情な人物としか映りません。一方でITの世界で大革命を起こすには、他人に毛嫌いされるほど偏屈で自我を通すような人間でなければ成し得ない、ということにも気付かされます。
 iPodの紹介映像は冒頭シーンで出てくる(早くもここでジーンと来た)ものの、その後のiPhoneやiPadの開発エピソードもあれば良かったと思うのですが・・・。いずれにしてもアップル好き、マック好きな者ならば楽しめるかどうかは別として、必見の映画でしょう。
(劇場)

2013.10.29 崖っぷちの男 ★★★

 いかにもB級的なこの邦題、何とかならなかったのでしょうか?原題は「MAN ON A LEDGE」ですから、まあ直訳といえば直訳ですが。
 一人の男がニューヨークの高層ビルの21階の外壁に立ち、今にも飛び降りそうな気配。交渉人が説得するも中々応ぜず、何か裏があるようにも思われる・・・。
  高所恐怖症ではない私も、この映像には流石に足の裏がムズムズします。ただ一発アイディア的脚本で、序盤は大いに引き込まれますが、中盤以降次第に真相が 明らかになるに連れて、テンポや繋がりが悪くなります。特に重要なはずの主人公の弟とその恋人とのシーンがもたつき気味・・・。随所のご都合主義も気にな りますが、まあエンタメとしては及第でしょう。
 それにしてもあれだけのことを仕出かした男が簡単に釈放され、ハッピーエンドで大団円を迎えるというのがいかにもハリウッド的。いえ、決して悪いと言っている訳ではありません。
 主人公は久々に髪の長いサム・ワーシントン。可も無し、不可も無し。女性交渉人にエリザベス・バンクス。こちらも可も無し、不可も無し。主人公の弟の恋人にジェネシス・ロドリゲス。1シーンのみ素晴らしい。憎まれ役に御大エド・ハリス。余りにも痩せていたので、最初は彼だとは気がつきませんでした。
 見終えてこの邦題は2つの意味があることが分かります。そう思えばこれでも悪くないのかも・・・。
(BS-HV)