1999.12.25 ニュートン・ボーイズ ★★★
- 1919年からの5年間で80もの銀行強盗と、当時としては破格の300万ドルの列車強盗を行った実在の4人兄弟(+1人)の物語。彼らのフレコミは、人を決して殺さないという主義を貫いたことと、こういう犯罪人には珍しく4人とも長寿(〜80才、90才)を全うした、ということ。
「犯罪人は短命である」という理屈もよく判りませんが、「人を殺さなかった」というのも、映画を見るかぎり「たまたま」だった、という気がしないでもありません・・・(あれだけ銃撃戦をやったのだから・・・)。
当時の銀行の保安というのは、あのようにいい加減だったのでしょうか。金庫が大音響とともに爆破されても殆ど誰も駆けつけないのですから・・・。余りにもあっさり成功してしまって、ドラマとしての迫力が欠けてしまっています。その点、列車強盗敢行以降の展開は、思わぬアクシデントがあったりして結構楽しめます。
ただ、アウトローの彼らを余りにも美化しすぎでは、という感じが最後まで付きまといますし、ラスト・クレジットと並行して、実際の長男が出演して云う、「銀行は泥棒だ。貧乏人のことなど知らん顔だ。俺たちは泥棒から盗んだのだ。」というセリフは、殆ど開き直りにしか聞こえませんでした。
主犯格の次男を快演していたのは、マシュー・マコノヒー。酒と女好きな三男をイーサン・ホークが演じていますが、ヒゲの似合わないこと!
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1999.12.20 ハムナプトラ/失われた砂漠の都 ★★★★
- 「インディ・ジョーンズ」シリーズを楽しめた人なら、この映画にも大満足でしょう。原題の「The
Mummy」(ミイラ)から判るように、これは古代エジプトのミイラ復活を絡めた大冒険活劇です。しかも例のILMによる仰天SFXが全編で駆使されているのです。まさに観客を楽しませるツボを心得た、大エンターテインメントと云えるでしょう。
冒頭のピラミッドとスフィンクスを俯瞰する映像には、「タイタニック」などの例からCGであることが判っていても、なお目を見張ってしまいます。巨大な彫像の塗料がはげ落ち、朽ちていく表現で、3000年の時間の経過を表す映像にも脱帽。実写とCGを合成したアクションシーンなども、殆ど違和感がありません。無数の食肉甲虫(?)のウジャウジャ映像などは、CG担当者は殆ど気が狂ったのではないでしょうか。特に印象に残ったのは、復活が不完全なミイラの穴の開いている頬からその甲虫が口に入り込み、それをミイラが噛み砕くシーン(おお、気持ちワル・・・)。
・・・と言うように、これはストーリーよりも映像を楽しむ映画です。かなわぬ恋の成就のために異形のものが復活する、などという展開は、コッポラの「ドラキュラ」を思い出させますが、あちらのような悲劇性が十分には描き切れていません。
目玉が特徴的な主人公のブレンダン・フレイザーは、大柄であるにも係わらず身のこなしがとても軽快。でも30才なんだそうな・・・。眉毛が特徴的なヒロインのレイチェル・ワイズも、なかなかキュート。しかし何と言っても一番存在感があったのは、ミイラ役のアーノルド・ボスルー。役にこれ以上なくハマっていました。
それにしても古代エジプトの女性というのは、いつもあんな格好をしていたのだろうか・・・。(^_^;)
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1999.12.17 レッサー・エヴィル ★★
- 22年前の少年時代の悪事を糊塗するために腐心する、四人の駆け引きを描いたサスペンス。比較的評判は良かったようですが、私は余り楽しめませんでした。
原題の「The lesser evil」というのは、「些細な悪事」という意味。でもこれが「あのこと」を指しているとしたら「些細な」などというものではなくて、「とてつも無く、どでかい悪事」なのではないでしょうか。冒頭、4人のうちの一人である神父が、「殺人を犯してしまった」と述懐することから、残りの3人のうち誰が殺されるのかという謎解きが興味の的となりますし、4人の自己保身の駆け引きや心理描写が見どころとなります。
しかし、あちこちで詰めの甘さやアラが目立ちますし、肝心の最後のオチは途中で難なく判ってしまいます。交互に繰り返される過去と現在の描写もイマイチしっくりこないのですが、少年時代と現代とで全然似ていない俳優を起用したのもその一因かも・・・。
少年時代の「とてつも無くどでかい悪事」もさることながら、救いの無い結末が後味の悪さを倍加しています。(-.-)
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1999.12.12 Y2K ★★
- 今これを見ずして、いつ見るか。その名もズバリ「Y2K」、そう「コンピュータ2000年問題」なのです。
2000年元旦、米国所有でコロンビアにある核ミサイルがコンピュータの誤動作で発射モードに。目標はなんとモスクワで時間制限は24時間。発射を阻止するために、基地局の設計者の元軍人(ルイス・ゴセット・Jr)と、腕利きのコンピュータ・ハッカーのカリアゲ君(ジェームズ・ウールヴェット)らが派遣されますが、そこは難攻不落の基地であるうえに数々の奸計が待ち受けているのでした・・・。
B級ムード、プンプンの低予算映画。テレビ・シリーズという感じです。「Y2K」は全くの添え物で、よくあるタイムリミット・アクション・ムービーですし。第一、2000年問題でミサイルが発射されるなんていうのは、いかにも安易(でもないかな?)。基地への侵入過程も殆ど「インディ・ジョーンズ」のノリで、しかもチープ。「ピース・キーパー」にヒントを得た、という感じも。
とはいえ、中盤以降の陰謀絡みの展開など、そこそこ楽しめないこともありませんが・・・。
ルイスは、「愛と青春の旅立ち」でオスカーを受賞した黒人俳優。ややくたびれていました。
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1999.12.09 マイティ・ジョー ★★★
- 1949年制作の「猿人ジョー・ヤング」のリメイク。
体長5mもの巨大ゴリラと人間との交流を描いたもの。まあ、「キング・コング」とストーリー展開は殆ど同じですね。ただし、こちらはエンパイア・ステート・ビルディングではなく、遊園地の観覧車に登るのですが・・・。
この映画の見ものは二つです。一つは、アニマトロニクスとCGで作られたジョーの造形と動き。特にCGのジョーがジープと草原を疾駆するシーンなどは、極めてスムーズな動きで驚かされます。って、余りアニマトロニクスとの区別がつかないのですが・・・。(^_^;)
もう一つは、ヒロインのシャーリーズ・セロンの美しさ。第二のメグ・ライアンなどと云われているようですが、彼女ほど個性的ではないとしても、あの美しいブロンド・ヘアとプロポーションには、ジョーでなくても参ってしまいます。「ディアボロス」でのキアヌの妻役ということですが、私は余り印象に残っていません。役柄で随分変わるものなのですね。
結末が典型的なご都合主義でしたが、まあお子様向けのディズニー映画ということで、やむを得ません。
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1999.12.05 エバー・アフター ★★
- EVER AFTERとは、ONCE UPON A TIME(「昔々あるところに・・・」)と対をなす言葉で、「それからいつまでも(幸せに暮らしましたとさ・・・)」と云う意味。そう、この映画はおとぎ話の灰かぶり姫、シンデレラの物語なのです。しかも真説のシンデレラ物語とのこと。
ここでは魔法使いのお婆さんやカボチャの馬車は出てきません。シンデレラも継母にいじめられてくじけたりしない、知的で勝気で明るいお転婆娘なのです。しかも剣の腕もたちますし、力も強い。何せ盗賊から、頼りない王子様をかついで(!)助け出したりするのですから・・・。
シンデレラを演じているのは、「ET」の子役を演じて有名なドリュー・バリモア。彼女のあの福々しい顏は、これまでの内気で弱々しいシンデレラのイメージを変えるのに大きく貢献しています。ただ、私はあの特徴的な顎のラインや、重心が低そうな体形に、どうもオバサンを感じてしまうのでした。むしろ継母役のアンジェリカ・ヒューストン(例のアダムス・ファミリーの怖いお母さん)が、格の違いを感じさせる演技で脱帽。この上なく役にハマっています。
評判の悪い王子様(ダグレイ・スコット)はミスキャストという前に、シンデレラの素性を知って激怒するなど、人物像そのものが魅力的でなかった・・・。
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1999.11.30 ペイ・バック ★★★
- メル・ギブソン主演の最新話題作。
元運転手でチンピラの主人公は、チャイニーズ・マフィアから14万ドルを強奪しますが、相棒と妻に裏切られ、分け前の7万ドルを失うばかりか、瀕死の重傷を負わせられます。癒えた彼は7万ドルを取り戻す(ペイ・バック)ために復讐の鬼と化し、裏切った相棒はおろか、彼の背後の組織にまで立ち向かっていくのです・・・。
何故か全編にわたって青みがかった、モノクロのようなざらついた映像で貫かれています。ダークでハードボイルドな雰囲気を出したつもりなんでしょうけど・・・。
この映画を楽しめるかどうかは、中盤以降の主人公の無茶苦茶な行動に共鳴できるか否かにかかっていると、私は思います。裏切った相棒を追い詰めるのは、当然リーズナブル。しかし、その背後に控える組織にとっては、彼の牙は言い掛かり以外の何ものでもないのです。まあ、そういう非情で狂犬のようなアンチ・ヒーローを描きたかったということなんでしょうがね。
そうは云っても展開自体は、最後の大仕掛けを含めて見せ場も多く、退屈することはありません。
でも、ジェームス・コバーンをあんなチョイ役で使うのはもったいないし、女性陣にももっと華のある人を使うべきと思いますが・・・。(-.-)
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1999.11.27 メッセージ・イン・ア・ボトル ★★★
- 米国で170万部売れたという大ベストセラー小説の、同名の映画化。「マジソン郡の橋」を越えたとか・・・。
シングルマザーのヒロイン(ロビン・ライト・ペン)は、ある時浜辺で手紙の入ったボトルを拾います(ボトルメールではなく、本物を(^o^))。その手紙はある男が亡き妻に宛てたものらしく、彼女への想いが面々と書き綴られているのです。その手紙の主に興味を持ったヒロインは、彼(ケビン・コスナー)を探り当てて会いに行くのですが、彼は二年前の妻の死を未だに受け入れられずにいるのでした・・・。
冒頭、ロマンティックな音楽をバックに美しい海面が映し出されると、何となくストーリーが全部判ったような気がしてしまいました。そして思ったとおりの(ような)展開があって、ラストに用意されている泣かせる仕掛けも、お約束・・・。
そんなベタな物語であることを百も承知でも、愛を夢見る人にとってはこの映画は感動的な一編であることは間違いありません。ムードを煽る音楽も効果的です。
ただ、彼と妻の実家とが大喧嘩するほど、妻が残した絵に双方が執着する背景が、説明不足。後半の展開には大事なエピソードでしたのに・・・。
ケビンの父親役に、ポール・ニューマン。ああいうふうに年をとりたいものです。
で、「マジソン郡・・・」を越えているか・・・?
私は「ピュアなボトル」より、いっそ「不倫橋」をとります。(^_^;)
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1999.11.25 ラウンダーズ ★★★★
- ラウンダー(ズ)(Rounder(s))とは、テーブルを囲む遊び人というような意味で、ここではポーカーの賭博師を指しています。
法科の学生である主人公(マット・デイモン)は、ポーカーの天才的才能の持ち主。ある時、ロシアン・マフィアのボス(ジョン・マルコヴィッチ)との大勝負に破れ、大金を失ってしまいます。二度とギャンブルをやらないと誓ったのも束の間、かつての悪友(エドワード・ノートン)の出所をきっかけにまたジワジワと手を出す羽目に・・・。
数々の挫折を乗り越え希望の道が少しずつ開けていく、というベタな展開なのですが、これは後味爽やかな青春物語に仕上がっています。マットのモノローグもいかにも効果的。ポーカーを知らない私でも十分スリルを味わえましたが、知っていたらもっと息詰まる緊迫感を楽しめたことでしょう。
グウタラな悪友役のエドワード・ノートンが好演。マルコヴィッチの怪しげなロシア語訛り(?)の英語も様になっていましたが、何となく心底からの悪人には見えませんでした。恋人役のグレチェン・モルは新人だそうですが、かなりの有望株と見ました。ギャンブルから足が洗えない主人公を、ニコニコの笑顔でなじる演技がとてもユニーク。
マットはすがすがしい好青年をサラリと演じていますが、やっぱジミー・大西、入っていました。(^o^)
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1999.11.22 交渉人 ★★★
- 劇場公開時、大方に好評だったサスペンス作品。
ダニー(サミュエル・L・ジャクソン)は、すご腕の犯人説得係である「交渉人」。ところがある時、彼は公金横領汚職と相棒殺人の嫌疑をかけられてしまい、全く不利な状況に。激怒した彼は無謀にも人質をとって立て篭もり、交渉人に異なる区域のクリス(ケビン・スペイシー)を指名するのでした・・・。
この映画の見どころは、犯人に絶対「ノー」と言ってはいけない、などという交渉のマニュアルが披露されること、ノウハウを知り尽くしている交渉のプロが逆の立場で警察側を翻弄すること、腕利きの交渉人同士がお互いハッタリなどでかけ引きをしあうこと、狙撃を急ぐ真犯人がいるはずの警察側の描写のスリル、などでしょうか。2時間19分の長尺でありながら、最後までそれなりの緊張感を持たせて見せてはくれます。
ただ私はどうもイマイチ乗れなかったのは、ダニーの余りにも無謀な行動に共鳴できなかったからなのですが、この作品はプロの交渉人がもし犯人側にまわったら、というアイディアが命なのですから、それもいたしかたありません。また、ところどころに思わせぶりで強引な展開があったりするのも気になりました。ラストもイマイチ、カタルシスに乏しいし・・・。
サミュエルは大熱演ですが、ちと騒々しい。知的で冷静で正義感に燃える、得な役柄のケビンは大好演。ここでの彼はいやに若々しいと思ったのですが、その理由は・・・カツラ(間違いありません(^_^;))。
悪役の脇役専門といった感じのJ・T・ウォルシュは、この作品の撮影終了後急逝したとのこと。合掌。
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1999.11.20 レッド・バイオリン ★★★
- 東京国際映画祭での最優秀芸術貢献賞や、カナダ・ジェニー賞などで数々の賞に輝いた芸術大作風(?)でミステリアスな作品です。
現代のカナダ、モントリオールで、伝説の名器「レッド・バイオリン」がオークションにかけられようとしています。そのバイオリンは17世紀、イタリアの名匠によって彼の妻子の数奇な運命とともに作られたのでした。以後、そのバイオリンはイタリアからオーストリア、英国、中国、カナダへと4世紀の時空を越えて引き継がれ、それを巡る人間ドラマが展開されます。そして最後に行き着いたカナダで、それをオークションで競り落とした人物は・・・。
現代と、過去の4つのエピソードが交互にオムニバス風に展開されるという一風変わった構成になっています。しかも現代のオークションの場面は、同じ時間帯を異なる登場人物の角度から何回も繰り返すという手法が面白く、ちょっと「バック・ツー・ザ・フューチャー」シリーズを想起させます。
「レッド」に隠された秘密があり、占いの予言どおりに事が運んでいくのですが、そのバイオリンが呪われていて手にした人々に災いをもたらす、ということでは必ずしもないようです。この辺がちょっと中途半端かも・・・。
バイオリン演奏は全て名バイオリニスト、ジョシュア・ベルが担当していて、しかも英国でのエピソードでは俳優の後ろから手を出して彼自身が演奏していた(いわゆる「手タレ」ですね)のだそうです。私としてはむしろ、オーストリアの少年のメトロノームに合わせて猛烈な速さで弾く、「運指」にぶっ飛びました。(あれはひょっとしてトリック撮影かな・・・)
出演するたびにガラリとイメージが変わるサミュエル・L・ジャクソンが、ここではバイオリン鑑定人なんぞを演じています(似合わない、という声も)が、彼の最後のとった行動がどうも不可解です。おいおい、そんなんでいいんかい、という感じ・・・。(-.-)
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1999.11.18 ソルジャー ★★★
- SFの名作「ブレード・ランナー」のスタッフによる、近未来SFバトル・アクション。私は意外と楽しめました。
主人公(カート・ラッセル)らは生まれた時から17歳まで、非情な人間殺戮兵器として徹底的に訓練を受けた「ソルジャー」。実戦を積み重ねて中年となった今、遺伝子操作でより強力となった「新ソルジャー」が誕生します。彼らと演習で戦って破れた主人公は、廃棄物運搬船で宇宙の彼方に捨てられることに。ところがその星には移民が住み着いていて彼を迎え入れてくれるのですが、そこへは「新ソルジャー」が軍事訓練を兼ねて攻撃をしかけてくるのでした・・・。
派手なSFXはありませんが、埃っぽくローテクの機材しかない廃棄専用星(宇宙の夢の島といったところでしょうか)の雰囲気をうまく醸し出しています。この辺は「ウォーター・ワールド」などを連想させます。カートは終始無表情で殆どセリフを喋らないのですが、内に秘めた闘志、復讐心をうまく表現しています。
ストーリー的には特筆すべきものはあまり無いように思います。途中から殆ど「ランボー」と化してしまいますし・・・。でも天敵となる「新ソルジャー」の一人のジェイソン・スコット・リーが、得も言われぬ凄い迫力。ヒロインのコニー・ニールセンも中々魅力的。「ディアボロス」でのキアヌの可哀相な妻役?
ラストで移民の幼い少年が、主人公に抱っこして欲しいと手を差し出してくるシーンにはウルウル。(T_T)
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1999.11.16 RONIN ★★★★
- ジョン・フランケンハイマーの監督で、ロバート・デ・ニーロとジャン・レノが共演した大迫力サスペンス・アクション。
冒頭、赤穂浪士を例に引いた「RONIN」の説明テロップが流れたり、劇中でも「切腹」を説明する会話があったりするのですが、これらはこの映画の本質と余り関係ないように私は思えましたが・・・。
かつてCIAやKGBなどの組織に属していた(らしい)5人の男(彼らがRONINなんですね)が、ある女性(ナターシャ・マケルホーン)のもとに集められ、多額な報酬の見返りに、ある者からスーツケースを強奪することを持ちかけられます。綿密な計画を練って臨んだ彼らですが、そこには大きな罠が待ちかまえていたのです・・・。ということで、これは2時間たっぷり楽しめます。とにかく序盤を除いて展開のテンポが速く、えーっと今のは・・・などと考えさせる暇なく畳みかけるように進行していくので、頑張らないと置いていかれます。(^o^)
仲間の裏切りあり、攻守の逆転あり、ド派手な銃撃戦ありで息つく暇が無いのですが、極め付けは凄まじいカー・チェイス。トリックなしで撮影したという長時間(と感じましたが)のカー・スタントは、この映画の最大の見せ場でしょう。何とダイアナ妃が事故死した例のトンネルまで舞台になっているのです(いいのかなあ)。
ただ、関係ない一般市民が撥ね飛ばされたり、銃撃戦のとばっちりを受けて撃たれたりする描写は、私には疑問。あれでは不快感が残ってしまいます。
デ・ニーロ扮する主人公が、観光客を装って相手グループを盗み撮りするシーンでは、そのテクニックと演技の両方の巧妙さに脱帽。デ・ニーロが一緒では、ジャン・レノも霞んでしまいます。
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1999.11.10 悦楽晩餐会 ★★★
- 本国ドイツで345万人を動員し、「フィフス・エレメント」や「フル・モンティ」の興行成績を抜いて大ヒットした作品、ということですが・・・。
サブタイトルの「または誰と寝るかという重要な問題」や、ビデオ・パッケージの「エロチック大作」の文字や絵柄に惹かれてその気になって見ると(もちろん私は違いますが)、多分がっかりすることでしょう。
ミュンヘンの街にある高級イタリアン・レストラン「ロッシーニ」(=原題)。この店には夜毎集まる常連客の思惑と欲望が、ドロドロと渦巻いています。大ベストセラー小説「ローレライ」を映画化したいプロデューサー、それを嫌がる原作者、一人の魅力的な中年女性を張り合う二人の男、妻の豊胸手術を整形医師に依頼する男、スクープを虎視眈々と狙う女性記者、などなど・・・。そこに自ら白雪姫と名乗る女優志願の金髪美女が現れて、その混乱に拍車をかけます・・・。
複数の人間模様を同時並行的に、時には絡ませ、時には無関係に描いていく、いわゆるこれは群像劇というのでしょうか。一本筋の通ったストーリー展開があるわけではありませんので、この手のものは好き嫌いが別れるところでしょう。
金髪美女(ヴェロニカ・ファレス)が、一見客お断りの店に入り込むために店主(マリオ・アドルフ)を騙し、店主が鼻の下を伸ばしてその気になるというくだりや、結局金髪美女にふられた店主がその直後に彼女の友達を口説き始めるというような場面が、アドルフの巧い演技もあって私には一番面白く見れた部分でした。
「重要な問題」かどうかは別にして、求愛には理性は要らないという人間の本質をサラリと描いていた点では、大いに納得です。
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1999.11.08 U・ボート ディレクターズ・カット ★★★
- 第二次世界大戦における、ナチスドイツの「U・ボート」と呼ばれる潜水艦の乗り組み員の活躍と運命を描いたドイツ映画。1981年に公開されて世界的に大ヒットしましたが、これはそのディレクターズ・カット版です。
監督は、「ザ・シークレット・サービス」、「アウトブレイク」、「エアフォース・ワン」など、アメリカに渡ってヒット作を手掛けたドイツ人のウォルフガング・ペーターゼン。だからといって「エアフォース・ワン」のような大活劇をこの映画に期待するのは早計です。艦長(ユルゲン・プロホノフ)以下43人の乗組員の狭い艦内における勇気、不安、葛藤などの心理描写をじっくり正統的に見せてくれています。ストーリー展開も、想像以上の範囲を超えることはありません。これは戦争映画というよりも、密室パニック映画の様相を呈していると言えましょう。
U・ボートが浮上したり潜水したりする度、重さのバランスのために乗り組み員が前方や後方に走っていくのですが、それを追うカメラワークがとてもダイナミック。約3時間半(!)の長尺もので、そのほとんどが狭い艦内でのそのような撮影に終始していますので、見終わった後はこちらもグッタリ疲れること請け合いです。(^o^)
ディレクターズ・カットに際して、画像のデジタル処理や音響のサラウンド化を行っていますので、最新のハリウッド映画と遜色のない画質、音質になっていると思います(オリジナル版は未見ですが)。ただ、どうしても水中爆発シーンなどのトリック撮影がチープ感を免れないのは、18年前の作品ということを考えるとやむを得ないことなのでしょう。
ラストが極めて皮肉で、そう言う意味でも当然これは反戦映画としては正解だと思います。
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1999.11.03 シックス・センス ★★★★★
- アメリカ本国で連続5週第一位をキープした最新話題作。監督は29歳(!)のインド系アメリカ人のM.ナイト・ジャマラン。冒頭、ブルース・ウィリスの「この映画の秘密を他言しないで欲しい」という趣旨のメッセージが出るなど、かなりもったいを付けて映画が始まります。
優秀な児童心理学者でカウンセラーの主人公(ブルース・ウィリス)は、ある時かつてカウンセリングしていた青年に銃で撃たれてしまいます。回復した彼は、妻との間もうまくいかなくなり、以前のような気力も薄れてしまっているのですが、ある時一人の少年(ハーレイ・ジョエル・オスメント)のカウンセリングを行うことになります。その少年は精神状態が不安定で、強度の幻覚に悩まされているように見えたのですが・・・。
ある程度覚悟して見始めたのですが、これは結構怖がらせてくれます。背筋が凍るという表現は、決して大袈裟ではないかも知れません。後半、その少年に次第に救いの兆しが見え始めて少々安堵するのも束の間、最後に驚くべきその「秘密」が明かされて、「ハイ、参りました」状態・・・。(>_<)
前半のテンポが少しじれったかったり、少女の死のくだりや、少年の母親と祖母とのエピソード(ここは泣けるのですが)がややわざとらしいところもあります。ラストももう少し引っ張って、もっと余韻を残したほうが良かったかも知れません。
しかし見終わった後は殆どの人はそんなことを全て忘れて、ハーレイ少年(11歳!)の驚くべき演技力に舌を巻き、ストーリー展開を再度最初から追いかけている自分に気づくことでしょう。
それにしても主人公はあれでいいとして、あの少年の今後の人生を考えたとき、心から同情せずにはいられません。(あんなことが一生続くのか・・・(・・;))
(劇場)
1999.10.31 カラー・オブ・ハート ★★
- 第71回アカデミー賞で3部門(美術賞・音楽賞・衣装デザイン賞)にノミネートされた、奇抜な発想によるファンタジー映画。
高校生の主人公(トビー・マグァイア)は、50年代のアメリカの典型的なTVホームドラマ「プレザントヴィル(Pleasantville=原題)」のリバイバル放送が大好きで、登場人物からエピソードまで全てを知り尽くしているほど。ある時ある事がきっかけで、妹(リース・ウィザースプーン)とともに何とその白黒のテレビドラマの世界に入り込んでしまいます・・・。そこは白黒であるだけでなく、雨や火事などはなく、バスケのシュートは必ずゴールし、恋人達はプラトニック・ラブだけで、人々の間に憎しみや悲しみなどは無い平和な、平和な街なのです。ところが妹がその街の青年とセックスをしたために、それまでの秩序が乱れ、白黒の世界が次第に色づいていきます・・・。
モノクロ映画で部分的にカラーとなるというのは極めて効果的で、古くは「天国と地獄」(古すぎ!)の煙突の煙、最近では「シンドラーのリスト」の赤い洋服の女の子などがありました。ここでも花びらや車などが部分的に次第にカラーとなっていくのは、それなりに感動的ではあります。しかも部分カラーのデジタル技術というのは意外と難しいのだそうで、デジタル画像のカット数としては「タイタニック」や「インデペンデンス・デイ」などより遥かに多いのだそうな・・・。
そういった映像的な面白さはありますが、ストーリー的には、変化を好まない保守的な人間を革新的な新しい世界に導く、というやや説教くさいところが気になってしまいます。また、何がきっかけで物や人物に色が付き始めるのかが必ずしも明確ではありませんし、本来内気で利己的な主人公が、何故白黒の世界ではああまでカラー化に情熱を燃やすのか、その動機もイマイチ不明です。
ま、一番の不満は妹役のリースが小憎らしくて可愛くなかったということなのですが・・・。(-.-)
(ビデオ)
1999.10.25 心の旅 ★★★★
- 主人公(ハリソン・フォード)は黒を白と言いくるめてしまうほどのやり手の弁護士。美しい妻(アネット・ベニング)と娘に恵まれ、一見幸せそうなリッチな家庭。ところがある時事件に巻き込まれ・・・、とこれ以上はネタバレになってしまいます。
タイトルからは、不幸から立ち直る家族愛のドラマということが容易に想像され、事実私もそんなもんだろうと高を括って見始めたのでした。もちろん予想どおりの夫婦愛、親子愛、男同士の友情などが描かれていくのですが、中盤以降にあることがしかけられていて、思わぬ展開に引き込まれてしまいました。そして最後は、やはり感動的な家族愛が・・・。
原題の「REGARDING HENRY」(HENRYは主人公の名前)を「心の旅」としたのは、正解でしょう。ある時点を境に、主人公が純粋な素直な心を取り戻していく過程が、多くの伏線をもって描かれています。終盤、主人公がドアを開けた妻に言うセリフで、泣かされてしまいました。
しかし冒頭あんな事になったのに、あの程度で済んで、比較的早くああなる(ウウ、苦しい)というのは、やはり映画の世界か、というような冷めた気持ちがないわけでもありませんでしたが・・・。
(NHK-BS>ビデオ)
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