映画、ビデオ短評

★★★★★:満点(五つ星) :半星

2002.9.14〜2002.12.23 1ページ目へ  トップへ


2002.12.23 ブレイド2 ★★☆

 大ヒットした第一作目「ブレイド」より更にパワー・アップして、より手強い敵が登場するというフレコミの本作品。監督は「ミミック」のギレルモ・デル・トロです。
 ヴァンパイアと人間の混血であるブレイド(ウェズリー・スナイプス)は、ヴァンパイアを退治することが彼の定め。ところがヴァンパイアの亜種である死神族(リーパーズ)が現れたために、今回はヴァンパイアらと手を組んで壮絶な闘いを繰り広げるのでした。
 おお、まるで街角で見かけるコンピュータ・ゲームを見ているみたいです。ワイヤ・アクションをこれでもかと駆使しての目まぐるしい動きには、オジサンとしてはついていけない・・・。ただしヴァンパイアの死に方は、前作の喘息が出そうになるようなホコリっぽいものでなく、まるで花火のように綺麗に燃え尽きてしまうのはポイント高し・・・。
 それにしても最強の種族の出現で、普通のヴァンパイアがちっとも恐くも何ともなくなるのはいかがなものでしょう。唯一存在感を示していたのが、ロン・パールマン。折角の特異な風貌が、サングラスで遮られていたのは残念でしたが・・・。逆にサングラスを外してはいけないのが、ウェズリー・スナイプス。外した途端、マンハッタンのぽん引きと化してしまいます。(^o^)
 死神族の口というか顎の造形は「プレデター」とソックリですが、このVFXはとても自然(?)で驚きです。この技術で「プレデター」を是非リメイクして貰いたい・・・。
 また本作のサウンド・エフェクトはかなりのものです。貧弱な私のAVシステムでもそのサラウンド感に圧倒されました。
(DVD)

2002.12.16 ロード・トゥ・パーディション ★★★

 機内映画で「K-19」かこちらか、迷った揚げ句の選択でした。前者はやはり大画面で見たかったからです。音声は残念ながら吹き替えでモノラルでした。
 1930年代の大恐慌時代のシカゴを背景に、マフィアの因果応報と父と子の愛情をテーマにした作品です。監督は「アメリカン・ビューティー」でアカデミー賞5部門のオスカーを受賞したサム・メンデス。タイトルのPerditionは地名ですが、「永遠の破滅」という意味にも掛けているのではないでしょうか?
 まるでセピア色かモノクロかと見間違う映像とシンクロして、ストーリーも淡々と進みます。ギャングの復讐劇としては平凡だと思いますし、親と子の心の交流も、それほど深堀りされているとは思えなかったのですが・・・。「ゴッド・ファーザー」シリーズのミニ版という感じがしなくもありません。
 映像は絵画を観ているようで、とても綺麗。随分考え尽くして構成されていることが窺われます。
 主人公を演ずるトム・ハンクスはこの作品ではミス・キャストではないでしょうか?良き父親には見えても到底ギャングには見えないのです。髭を蓄えたとしてもね。(^_^;)
 一方で際立っていたのが、殺し屋を演じたジュード・ロウ。カツラでなく髪の毛をホントに薄くしての熱演、いや怪演です。出ているだけで不気味。何でもやれる器用な人なのですね。
 主人公トムの育ての親で、実の息子との選択に迷うのがポール・ニューマン。この人の達観したような演技は流石です。そんな中で吹き替えのセリフのせいもあって、肝心の息子役の演技がぎこちなく思えたのが残念。
 オスカー監督と2年連続受賞のオスカー俳優など三大名優の共演とあって、随分早くからアカデミー賞確実などと喧伝されていますが、果たしてそれほどのものでしょうか?
(機内映画)

2002.12.15 マイノリティ・リポート ★★★★☆

 原作は「ブレードランナー」や「トータル・リコール」などで名高いフィリップ・K・ディックの短編小説。それをスティーブン・スピルバーグが監督し、トム・クルーズが主演したのですから、話題にならないほうがおかしいというもの。
 そんな本作品を飛行機内のシート括り付けの小さなディスプレイで見るのは、ラッキーかアンラッキーか・・・。一応、スーパー・インポーズでステレオ音声だったのは助かりました。
 時は2054年。プリコグと呼ばれる予知能力者が将来起こりうる殺人を予知し、それを犯罪予防局の刑事(トム・クルーズ)らが未然に防止しています。ところがある時、予知された殺人加害者はトム自身なのでした。で、トムが叫ぶのです。「誰でも逃げる!」、と。(^_^;)
 荒唐無稽と言ってしまえばそれまでですが、SF的状況設定が興味深く、併せて二転三転する展開に最後まで引き込まれてしまいました。透明なディスプレイ、垂直に降下する車、網膜スキャン、探査スパイダー、傘など、オモシロ要素も盛り沢山。
 ま、「木の玉でのお知らせ」や「目玉コロコロ」というのは興醒めではありますが・・・。色々矛盾点も多いような気もします。探査スパイダーにチェックされたトムの片目はどうなった?、トムの妻はアレでどうして網膜スキャンをクリア出来た?などなど。
 それにしても本作品は色々な映画を部分的にパクっていますね。冒頭2作品はしょうがないにしても、「マトリックス」(プリコグの置かれている状況)、「フィフス・エレメント」(ヒロイン)、「時計じかけのオレンジ」(目玉)などとソックリ・・・。それぞれへのオマージュということなのかも知れませんが・・・。
 それでも、中盤以降はいかにも映画的な展開で私は好きです。フィリップ・K・ディックらしいダークな退廃的近未来の雰囲気も良く出ていたと思いますし・・・。もう一回、劇場の大画面で見よう。
 あ、それから今後は報告書などは「レポート」と云わずに、「リポート」と云いましょうね。(^o^)
(機内映画)

2002.12.08 ハリー・ポッターと秘密の部屋(再見)

 下記をご覧下さい。

2002.12.02 メン・イン・ブラック2 ★★

 第一作目のヒットに気を良くして作られた本作品。例によって宣伝費にも莫大なお金をかけていたようですね。内容はどうなのでしょう?
 ハリウッド映画では常套パターンである「白人(トミー・リー・ジョーンズ)と黒人(ウィル・スミス)のチグハグ・コンビ」という第一作目の構図が崩れてしまっています。これは失敗なのではないでしょうか?「リーサル・ウェポン」などの例を出すまでもなく、シリーズものはある意味観客が安心できるマンネリやワン・パターンが必要なのだと思いますが・・・。
 一方で、第一作目のアピール・ポイントであった「周りはみんなエイリアン状態」とか「記憶消去装置ネタ」などが、もはや本作品では余りインパクトが無くなってしまっています。
 上映時間は88分という短さ。そこにオモチャ箱をひっくり返したようなゴチャゴチャした展開が、かなりスピーディに繰り広げられます。「ザルタの光」って結局、何だったのでしょう?どうもついていけない・・・(最近大丈夫かな?>私)。いずれにしても、少なくとも一作目を観ていることを前提とした作品です。
 興味を引いたのは、ララ・フリン・ボイル(名前からして何となくセクシー(^_^;))が演ずる超セクシー・エイリアンと、イヌ型宇宙人のフランク・ザ・パグ。ララはホントに人間離れした顏に見えます。バグ犬には助演男優賞を差し上げましょう。口元はCGでしょうが、それにしてもウマイ。
 本作でもあっと驚く大物タレントがチラと顏を見せてくれます。でも、ホントにこれは本人だったのでしょうか?私にはまるで表情の無いセルロイドのお面を被っているようにしか見えませんでしたが・・・。(^o^)
(DVD)

2002.12.01 ハリー・ポッターと秘密の部屋 ★★★

 劇場に入って指定された席に座った途端、しまったと思ったことでした。周りは殆ど小学生で、おまけに私の席の後ろには幼稚園児らしき幼子が・・・(吹き替え版を見たらいかが?)。かくして、私語、食べ物・飲み物の音、携帯電話の蛍のような明りなどの、劣悪の環境下での観賞と相成ったのでした・・・。(;_;)
 前作より1年が経って、ダニエル・ラドクリフら3人はだいぶ大人っぽくなった、というのが第一印象。前半は快調だったのですが、第一作目と同様、ストーリーが進むに連れて私にとっては前後の脈絡がよく判らなくなってきました。何だか頭が回転しない・・・。日記の中の男とか、それに絡むロンの妹とかの関係が理解出来ず・・・。周りの小学生は判っているのでしょうか?(ついていけないのは私だけ?)
 しかもいけません、またもや魔法にかかってしまってところどころ睡魔が・・・。何せ2時間41分なのです。
 映像的に面白いのは「屋敷しもべ妖精」のドビーでしょうね。フルCGで作成されたこの奇怪なキャラクターは、何となくヨーダを想起させます。ただしこれとて序盤と終盤での彼の登場のいきさつが、私にはイマイチよく理解できないのですが・・・。
 もう一人の新キャラクターはケネス・ブラナー扮する新任教師。これが物語の核心に絡むかと思い気や、全くの道化的役柄。何なんでしょう?
 「秘密の部屋」に住むという大怪獣は、随分期待させていてアレですか・・・。余り新鮮味はありませんでしたね。頭というか口や顎は**ではなく、***でしょう。
 と云うわけで、私にとって一番気になったのは、これが遺作となった校長先生役のリチャード・ハリス。そういう目で見るせいか、セリフの声も弱々しく、痛々しい感じがして随分気になってしまいました。
 ある人がこの映画を指して、「原作ファン向けの豪華な動く挿し絵」と述べています。挿し絵だけ見てもストーリーが判るはずが無いなぁ。今更、原作を読む気も起きないし・・・。(-.-)
(劇場)
 
【追記02.12.8】
 何となく納得できなかったこともあって、再度劇場に足を運びました。
 う〜む、やはり前回は半分眠っていたらしい・・・。今回はその展開がよ〜く判りました。日記の男の正体も、ロンの妹が何故ああなっていたかも。
 しかしところどころ眠くなるのは前回と同様。やはり、魔法にかかるようです。(^o^)
 前回はエンド・ロールの途中で席を立ってしまったのですが、今回は延々と続くそれを最後まで見たお陰で、思い掛けなくオマケ映像を見ることが出来ました。最近このパターンが多いですね。エンド・ロールと弓取り式はキチンと最後まで見ることにしましょう。(^o^)
(劇場)

2002.11.25 ニューヨークの恋人 ★★★

 メグ・ライアンのラブコメもとうとうネタに尽きたのか、今度は100年以上の時空を越えた過去の侯爵(ヒュー・ジャックマン)がお相手です。
 必ずしも見なくとも良いとも思ったのですが、マックや私の好物の枝豆が出てくると聞いての観賞なのでした(何だかなぁ)。
 予告編などから大体のストーリーは検討がつきますし、序盤でヒューがメグにいうセリフでオチが判ってしまいますが、SF的要素を絡めてそこそこ退屈はさせずに見せてくれます。古き良き騎士道の世界と現代社会とのカルチャー・ギャップなどはベタなネタではありますが、けっこう笑わせてくれます。特にヒューの女性の扱い方は、女性側から見ればまさに理想的なのでしょうね。
 ただ、私としてはここでのタイム・パラドックスは腑に落ちないところがありますし、ラストの展開ももう少しタメを作って丁寧に描いて欲しかったと思います。
 ここでのヒューは、随分良い男に仕上がっていますね。初めてこの配役を耳にしたときは、メグの相手としてはやや物足りないかななどと思ったりしましたが、どうしてどうして決して見劣りなんかしません。メグも評判ほど悪くなく、ラブコメ路線はまだ大丈夫でしょう。ただ、単なるワガママ女というあの役柄は、もう少し何とか成りませんでしたかね。
 それにしてもマック好きの人が製作スタッフにいるのですね。PBが使われていて、「マック・ワールド」などという言葉が出てくるのはまだしも、メグに「パワーマックG5」(!)とか「OS9.6」(!)などと云わせたりしているのです。(^o^)
 また、ボスがメグに枝豆を薦めるシーンがあるのですが、これが「Edamame」なんですね。枝豆が世界的に有名になっているとは知りませんでした。(^_^)
(ビデオ)

2002.11.19 たそがれ清兵衛 ★★★★

 ごめんなさいでがんす。また邦画を見てしまったでがんす(って、誰に謝っている?)。
 藤沢周平の三つの短編を山田洋次が脚本化し、監督したもの。藤沢作品の映画化はこれが最初であり、山田が時代劇を手がけるのも初めてなのだそうな。
 タイトルは、庄内地方の下級武士である主人公、井口清兵衛(真田広之)のあだ名。仕事が終わると同僚のお酒の誘いなどを一切断って、たそがれ時には必ず帰宅することからそう呼ばれている。そんなうだつの上がらない主人公には実は秀でた剣の才能があって、終盤それがために藩命を受けて剣の達人と闘わなければいけない窮地に陥る、というのが大体のストーリー。そこに幼なじみの女性(宮沢りえ)との淡く切ないロマンスが絡みます。
 とにかく前半は、現代のサラリーマンそのものの仕事振りや上下関係の描写に笑ってしまいました。身につまされる御仁も多いはず(私を含めて)。幕末の間もなく崩壊する武士社会が、リストラなどで明日をも知れぬ現代のサラリーマンの身の上にダブったり・・・。しかし、清兵衛さんよ、身だしなみを上司に咎められても相変わらず月代を剃らず、無精髭を生やしているのは、サラリーマンとしては失格ですよ。(^o^)
 中盤の布石のエピソードを経て、クライマックスは一対一の壮絶な殺陣。しかしそこに至るまでに両者の話し合いが入ってしまったお陰で、それまでのテンポが失われ緊張の糸が切れてしまったのが何とも残念。それに何故一対一で対決させたのでしょうね。鉄砲で一斉射撃でもすれば良いものを・・・。(^o^)
 討ち入りに出掛ける前に、宮沢が真田の髪を整えるだけでなく、月代を剃るシーンを入れて欲しかった。フェノミナン」のような名場面になったかも知れません。
 真田がハンサム過ぎ、二人の幼い娘役が可愛過ぎ、小林稔侍が可笑しすぎ、岸恵子のモノローグがしつこ過ぎ・・・。
 しかし、こういうしっとりした丁寧に作られた邦画であれば、また見てもいいかなと思うでがんす。(^_^;)
(劇場)

2002.11.18 エンド・オブ・オール・ウォーズ ★★★★☆

 実話に基づいた戦争大作で、配役も悪くないのに何故か本作品は日本で公開されませんでした。米国でも例のテロ事件のために公開が延期され、未だに日の目を見ていないとのこと。
 第二次世界大戦中、日本軍がタイ・ミャンマー(ビルマ)間の泰緬(たいめん)鉄道建設のために連合軍の捕虜を強制労働させた史実に基づいており、それに従事したアーネスト・ゴードン大尉の手記「クワイ河収容所」が原作になっています。
 中盤まで観賞していて、日本で公開されなかった理由が判るような気がしました。ジュネーブ協定に違反し、過酷な強制労働を強いる日本軍の連合軍捕虜に対する残酷な仕打ちが容赦なく描かれています。陰で捕虜が日本兵を「あの化け物」とか「黄色い猿め」などと罵るセリフも堂々と・・・(全然遠慮していないなぁ)。
 一切のエンタメ的要素を排して事実を忠実に(多分)、しかも捕虜達の苦悩を面々と綴っていく展開は、ズシンと体に応えます。見ていて、思わず手やお腹に力が入ってしまうのが自分でも判りました。これは重い・・・。
 唯一脚色がかった場面があります。暴動を企てたロバート・カーライル扮するキャンベル大佐の危機をある人物が救うシーン。彼は一体日本人軍曹に何を囁いたのでしょうか?このシーンだけがやけに叙情的。
 この収容所で通訳をしていた永瀬隆軍曹は今も健在(84歳)であり、映画のラストで実際のアーネスト・ゴードン氏(02年1月逝去)と再開し握手を交わす感動的なシーンがあります。永瀬氏によれば、本作品は「良く出来ていて安心している」とのこと。ただし実際はもっと酷いこともあったらしい・・・。
 「パール・ハーバー」などのように日本や日本人を誤解した滑稽な描写も無く、安心して見れます。ただ、何かにつけ「武士道」にまつわる描写が出てくるのは事実だとしても、今の眼からはいかにも辛い・・・。
 ゴードンを演ずるシアラン・マクメナミン(私は初めて知った)、カーライルそしてキーファー・サザーランドらも大熱演。特にカーライルの成りきり演技はスゴイ。
 ま、多分大きなレンタル・ショップでも1本程度しか置いていないでしょうが、お見逃しなく。(^o^)
(DVD)

2002.11.17 キューティ・ブロンド ★★★

 既に二作目の製作が決まったとのこと。それほどあちらではヒットしたのだそうな。
 ブロンドの女はセクシーだけれどオツムが弱い、という偏見をネタにしたサクセス・ストーリーのコメディです。イマイチ私には状況が良くわからないのですが、とにかく女子学生の何とかクラブの女王であるという主人公(リーズ・ウィザースプーン)がフラレタ男を追ってハーバード・ロースクールに入学します。そして周りの偏見を持ち前の元気印で乗り越えて行こうとするのですが・・・。
 ご都合主義の積み重ねのストーリー展開ではありますが、落ち込んでいるような時には元気をつけてくれる映画かもしれません。特に若い女性は共感するのでしょうね。法廷シーンは如何にも上手く出来過ぎですが、彼女の得意とした美容の分野の知識(常識?)を駆使するところがポイントでしょう。
 授業中に周りが黒のノートPCを使っているのを見て、タンジェリンのiBookで対抗するのも可笑しく、嬉しい。
 リーズの様々に変わるブロンドのヘア・スタイルやポップな映像がとても綺麗です。私はリーズの顎のしゃくれた顏は余り好みではありません(脇役の方が美人だ)が、それなりにキュート。とても一児の母親の体型には見えません。
 「タイタニック」の設計者役が印象に残る、教授を演ずるヴィクター・ガーバーが、唐突にセクハラ・オヤジになってしまうのが悲しくも可笑しい。ビックリしたのは未だに美しいラクエル・ウェルチ(殺された富豪の元妻)の出演。とても60歳過ぎには見えません。特異なキャラの男子同級生を演じたオズ・パーキンスは何と「サイコ」のアンソニー・パーキンスの実子だとのこと。そういえばあの目元が・・・。
 ま、それなりに痛快ではありますが、若い女性向け漫画をこっそり読んでしまったような気恥ずかしさを感じてしまった私なのでした・・・。(^_^;)
(DVD)

2002.11.11 マジェスティック ★★★★

 50年代のハリウッド映画界の赤狩りについては、それまではお話として見聞していましたが、1999年のアカデミー賞授賞式でのある光景は、それを私に実感させてくれました。エリア・カザンに特別賞が贈られた際、観客席にいたニック・ノルティを始めとした人々は拍手をするどころか、憮然とした表情で腕組みをしていただけ・・・。かつてエリア・カザンは共産主義の仲間を密告していたのです。
 本作品はそんなハリウッド映画界の赤狩りの一面を切り取ったファンタジー・ヒューマン・ドラマです。「ショーシャンクの空に」、「グリーンマイル」に続くフランク・ダラボンの監督作品。
 ハリウッドの新進脚本家である主人公(ジム・キャリー)は、共産主義者の疑いをかけられた晩、交通事故を起こして記憶を失い、ある町に辿り着きます。そこの住民は、戦死したと思っていた青年が帰ってきたとして、大喜びするのですが・・・。
 中盤までがやや冗長と思えなくもありませんが、大団円へのまとめ方が如何にも映画的で私は好きですね。50年代の古き良き時代の雰囲気もタップリ・・・。ラストの聴聞会での結末が甘すぎるという批判もあるようですが、まあファンタジーと見れば許せる範囲でしょう。第一、実の父親やかつての恋人が別人だと気づかない、などというのはファンタジーならではのこと。
 タイトル(「The Majestic」)は、主人公が辿り着いた町の今は閉鎖された映画館の名前。主人公の帰還とともにこの映画館が、美しくまさに荘厳に甦っていく様はワクワクもの。「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出させます。
 ジムはシリアスな表情に終始していて、さぞかしフラストレーションがたまったことでしょう。顏の筋肉がウズウズしていたのではないかな?(^o^) 泣かせられたのは、父親役のマーティン・ランドー。9年ぶりに帰ってきて眠る息子に毛布を掛けてやるシーン、それまで掲げてあった息子が殉死したというカードを嬉しさを噛みしめながら外すシーンなどで、実に素晴らしい表情を見せてくれます。ヒロインのローリー・ホールデン、ううむイマイチだなぁ・・・。
 ダラボン監督作品だからといって「ショーシャンク・・・」や「グリーンマイル」ほど期待しなければ、大いに感動できるお薦め作品です。
(DVD)

2002.11.10 サウンド・オブ・サイレンス ★★★☆

 全米探偵作家協会のエドガー賞受賞の原作だけあって、そこそこ見応えあるサスペンスに仕上がっています。ただし、どう考えても損をするであろうこういう邦題を付けるセンスが理解できませんが・・・。(原題は「Don't Say a Word」)
 ツカミともいうべき序盤のシーンがあって、それとは全く無関係に見える主人公(マイケル・ダグラス)絡みのお話や、更には全く別の事件が展開していき、中盤以降それらの関係がピッタリと重なるという巧い構成。ま、最近良くある手法ではありますが・・・。
 予告編などからは、精神病の少女(ブリタニー・マーフィー)がサイコっぽく絡むように思われますが、そうではなくあくまでも古典的といってもよいサスペンス・スリラーです。思わせ振りのブリタニーが、終盤では主人公に唐突に協力的になってしまうのが、やや変かも。
 やけに美形の女性刑事が、最後まで主人公と絡まないというのは物足りない。ラストも正統的にまとめてしまっていて、もう少しヒネリが欲しいところ。
 それでも115分を少しも飽きさせないで見せてくれるのは、やはり原作が良くできているからなのでしょう。
 マイケル、またかというようなキャラに徹していますが、何だか若返っていませんか?足を骨折して寝ていた妻(ファムケ・ヤンセン)は、とてもあのように動けないと思いますが・・・(私の経験上)。ま、PowerBook使っていたから許します。(^o^) 悪役専門という感じのショーン・ビーンは、ここでも大いに存在感あり。鋭い眼光を放っています。ブリタニーの成りきり演技には要注目です。「エクソシスト」のリーガンも真っ青という感じ・・・。
(ビデオ)

2002.10.28 スパイダー ★★★

 確か、ややこしいことに「スパイダーマン」と興行期間が重なっていましたね、この映画は。(^_^)
 「コレクター」に次いで、「犯罪心理捜査官・アレックス・クロス・シリーズ」を映画化したもの。ですから副題は「コレクター2」などとなっています。この原作シリーズはアメリカで大ベストセラーを記録しているのだそうな。
 要人の子供を誘拐した犯人と、彼をプロファイリングによって追い詰めるアレックス・クロス(モーガン・フリーマン)との攻防を描いたサスペンスです。
 冒頭、マザーグースから引用された童話が紹介され、それが本作のタイトル(「ALONG CAME A SPIDER」)となっているようですが、ストーリーと余り関係はありません。ツカミが義務的に提示されますが、これとて本題に必要な訳ではなく、取って付けたかの如し。おまけにCGもチープです。
 例によってモーガンの存在感は圧倒的なのに、何故か全体的に薄っぺらな印象がぬぐえません。前半はともかく、後半の展開が火曜サスペンス劇場風。特に誘拐犯がノコノコ捜査官の自宅に現れたりするのは、興醒めです。
 犯人らの動機や背景をもっと説明してしかるべきでした。人物に深みがないのです。相棒役の女性捜査官であるモニカ・ポッターも無表情ですし。
 それでも先の見えない展開や、意表をつくオチはそれなりに楽しめます。前作「コレクター」よりは出来は良いかも。
 いずれにしても知的で冷静で温和なモーガンのキャラで見せてくれる作品です。第三作目も計画されているとのことですが、もっとメジャーな俳優で脇を固めてもらわないと・・・。
(DVD)

2002.10.27 光の旅人 K-PAX ★★★★

 (ご注意、ネタバレ含みます)
 昨年10月、最も「救い」を求めていたアメリカで大ヒットを記録した映画とのこと。K-PAXという星から来たと名乗る男(ケビン・スペイシー)と、彼が収容された精神病院の医師(ジェフ・ブリッジス)との心の絆を中心に描いたファンタジー・ドラマです。ミステリアスな要素も巧みに取り入れた癒し系のSF映画とも言えます。
 ケビン扮する男は本当に異星人なのかどうか、がこの映画の最大のポイント。それを解きほぐして行く過程で、ある悲劇が浮き彫りにされます。ここでこの映画はSF映画では無かった、ということになるのですが・・・。そして終盤の展開で「あること」に気付かない限り、そのままで終わってしまいます。終盤近くでケビンがジェフに「・・・を見つけたんだね。彼をよろしく。」というセリフに注目しましょう。結局バリバリのSF映画であったことが判ります。患者が一人居なくなってしまうことも辻褄が合いますし・・・。
 一方で、ケビンが精神病院の患者達を少しづつ直して行く過程やラストにジェフが息子と会うシーンは、この手の癒し系映画の真骨頂。私は「グリーンマイル」を思い出してしまいました。
 VFXを全く使わない低予算SF映画ながら、色々な要素を盛り込み、見終えて静かな感動に浸れます。ただし繰り返しますが、「あること」に気付かなければいけません。
 最近、エンド・ロールの後に短い映像が挿入されるケースが少なくないのですが、本作にもそれがあります。しかも「あること」を補足した重要なシーンなのです(多分・・・)。
 ケビンはメリハリをつけた、オーバー・アクトにならない演技で相変わらず好感度、高し。頭髪も珍しく素(す)で頑張っていますし・・・。
 ケビンのファンである私としては、上記★数はやや甘くなっているかも・・・。(^_^;)
(ビデオ)

2002.10.21 耳に残るは君の歌声 ★★★☆

 ビデオやDVDパッケージに、幼い少女や少年が大きく映っていると何となく敬遠したくなります(子供を使ってのお涙頂戴映画はとても苦手)。本作品もそれに該当していたのですが、見たい新作が他に無かったことと、まあ悪くは無いという評判に押されての観賞でした。
 内容は一言でいうと、女性版「母(父)を訪ねて三千里」。ロシアのユダヤ系の少女が、アメリカに渡った父を探すためにロンドン、パリ、ニューヨーク、ハリウッドと渡り歩きます。
 この映画の得点ポイントは、ズバリそのテーマ音楽でしょう。冒頭に流れたテノールによるその曲を聞いた途端、ウルウル・モードに突入。最初は曲名が出てこなかったのですが、中盤になってようやく思い出しました。大昔、アルフレッド・ハウゼで大ヒットした「真珠取りのタンゴ」なのです。見終えてネットで調べると、ビゼーによるオペラ「真珠取り」の中のアリアである「耳に残るは君の歌声」とのこと。「真珠取りのタンゴ」はそれを編曲したものなのでした。
 全体の雰囲気としては、長時間大河ドラマの総集編という感じ。何せ、97分しかないのです。しかもかなりの低予算で作られていますね。お金の掛かりそうな戦争シーンや船の沈没シーンなどは一切省略。終盤のアメリカでの父親との再開シーンもやけにあっさりと描かれています。ここをもっと引っ張ってくれたら、大泣き間違いなし。ま、これが女性監督のサリー・ポッター(う〜む、似ている・・・)の持ち味なのかも知れません。ただ、それにしても中盤の展開が平坦過ぎます。
 幼い主人公を演ずるクローディア・ランダー=デュークが可愛すぎ。一人でとぼとぼとイギリス行きの船に乗るシーンなどは涙無くして見れません。それに引き替え、成長してのクリスティーナ・リッチはどうだ。以前と比べてスリムになったとはいえ、おでことバストが大きすぎて相変わらずアンバランスな体型です。
 ケイト・ブランシェット(真っ赤なルージュがお似合いで)、ジョニー・デップ(ジプシー役も板に付きました)、ジョン・タトゥーロ(クチパク、バレバレ)などのアッと驚く豪華布陣はお見事。
 「耳に残るは君の歌声」のオリジナル曲のCD、早速探さなければ・・・。(^_^;)
(DVD)

2002.10.14 愛しのローズマリー ★★☆

 ラブ・コメの体裁をとっているようで実は、人間は外見ではなく内面の美しさが大事であるということを教えてくれる(教えようとしている)教訓映画。ただしそれらを訴えるために同時に、不美人、肥満、短身、とく頭、老い、外的身体障害などの題材を扱っていますので、逆に不愉快に感じる人もいるかも知れません。
 父親の遺言がトラウマとなって、外見だけでしか女性を判断することが出来ない主人公(ジャック・ブラック)は、あることがきっかけで心の美しい人は全て外見も美しく見えてしまうようになります。体重136kgの女性グウィネス・パルトロウ)でさえも・・・。
 最近、予告編でネタバラシし過ぎという批判がありますが、本作もそうですね。プールでのジャンプなどのオモシロ・ネタは全てCMで見せられてしまっているのが残念。それらもあって大方のストーリーは予想がつきますし、ラストも予定調和でメデタシ、メデタシ。
 ただ、終盤の主人公の心情変化にイマイチ説得力がありません。外見ではなく内面の美しさを愛するようになれたのは、何故か。小児病棟のあの少女のエピソードだけでそう簡単に改心しますかね。
 実際に先天的に脊椎破裂という障害を負っていて、手をついて歩行するレネ・カービーの登場はある意味衝撃的。しかも彼自身もセクハラ発言をしまくったりするのだ。
 本作品でのグウィネスは不思議に可愛い。ファット・スーツを着ての巨漢体躯への変身も見どころです。それにも増して二つのサービス・ショットが何より・・・。(^_^;)
 「ハイ・フィディリティ」で中古レコード屋の変なオタク店員役を演じていたジャック・ブラックが、ここでは大好演です。巧い俳優ですね。
 お気楽に見ようとして、見終えて結構色々な意味で考えさせられてしまう映画かも知れません。
(DVD)

2002.10.13 アモーレス・ぺロス ★★★★

 タイトルは「愛は犬のように」、または「犬のような愛」というような意味とのこと。そのとおり、犬の存在が重要な位置を占める、3つの物語から成るオムニバス映画です。といっても、各々の登場人物が関係なさそうでいて微妙に絡んでいますので、群像劇と云っても良いのかも知れません。
 イニャリトゥ監督によるメキシコ映画で、東京国際映画祭、カンヌ国際映画祭を始めとして数々の映画賞を受賞した作品です。
 3つの物語に共通するテーマは「犬への愛情」の他は、「許されぬ愛」でしょう。一つ目は兄嫁への愛、二つ目はいわゆる不倫、三つ目は捨てた娘への父親の愛・・・。
 ダーティーな匂いがプンプンとするメキシコシティを背景に、ストーリーが展開されます。スピード感溢れる冒頭のカー・チェイス・シーンから、グイグイと引き込まれてしまいました。それに続く壮絶な交通事故にもビックリ。このカー・クラッシュが実は前半2つのお話のキーとなります。しかも3つめの話でこのシーンが出てくる場面では、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」のような時の一致の面白さも。一つ目のお話は目を覆いたくなるような暴力描写はあるものの、不思議な疾走感に圧倒され、ガエル・ガルシア・ベルナル演ずる若者の一途な愛に感動してしまいます。このお話だけでも十分一つの映画足りえると思うけど。
 二つ目のお話は如何にも皮肉な運命を扱ったお話ですが、犬を飼ったことの無い私としてはあれほど犬に執着する気持ちがやや理解できません。三つ目の主役を演じているエミリオ・エチェバリアはメキシコでは超有名な俳優とのことで、流石に貫録十分。汚れた顏から鋭い眼光を放ちます。やや行動が不可解で、イマイチ共鳴できなかったところがあるのですが・・・。
 153分もの長尺ながら、飽きさせず見応えは十分。ただし、重い・・・。
 劇場公開のあるバージョンでは冒頭に、「この映画では一切動物を傷つけていない」というメッセージが表示されたそうな。ふ〜、一安心。
(DVD)

2002.10.07 裸のマハ ★★☆

 スペインの宮廷画家フランシスコ・ゴヤが描いた余りにも有名な絵画、「裸のマハ」にまつわる史劇サスペンス。テーマは二つあって、「裸のマハ」のモデルはアルバ公爵夫人と云われているがそれは事実か、また誰がアルバ公爵夫人を殺したか、です。「マハ」というのは女性の名前ではなく、いなせな女、ちょっと小粋な女と云うような意味らしい。
 驚いたことに、この映画の始めと終わりは「裸のマハ」のアンダー・ヘアのクローズ・アップ。(^_^;) 何せこの絵は史上初めてのヘア・ヌード絵画であって、後年ゴヤはそのために告発されたのだそうな。もう一つの対となる「着衣のマハ」はカモフラージュ用で、これらのどちらかが入れ替わりで展示されるようになっていたらしい。
 事実上の実権を握っていた王妃マリア・ルイーサとその愛人である宰相マヌエル・ゴドイ、その愛人であるアルバ公爵夫人及びぺピータ・トゥドー、更にアルバ公爵夫人と愛人関係にあったゴヤの入り組んだ関係に混乱しないようにしましょう(無理だって)。フラッシュ・バックも多用されていますので、時間軸にも気をつけないといけません。
 絵のモデルは誰かというのは、途中であっさりと種明かしがされます。何でもアルバ公爵夫人は当時フランスで流行っていたというシェービングをしていた(^_^;)ということですし、ペネロペ・クルス扮するぺピータが似た恰好でモデルになって(ただし裸は上半身のみです、念のため)ゴヤに絵を描かせているシーンが挿入されます。
 誰がアルバ公爵夫人を殺害したかについては、明解な答えが提示されません。まあ、この命題自体が少しもスリリングでは無く、あのように退廃的で愛憎が入り乱れる上流階級の生活の中では、さもありなんと思ってしまうだけ・・・。
 この映画の最大の見どころは、荒野で貴族の一団とマリア像を崇める巡礼の一行がすれ違うシーンかも知れません。何故かハッとするほど敬虔な気持ちにさせられてしまうのです。
(ビデオ)

2002.10.06 ピアニスト 

 2001年カンヌ国際映画祭でグランプリ、主演男優賞、主演女優賞の三冠を獲得し、「プレミア」誌が公開時及びビデオ発売時共に満点(四つ星)をつけた作品。だから、DVDレンタルされる前にビデオで見たのですがね・・・。
 名門音楽学校のピアノ科の中年の女性教授(イザベル・ユペール)と、彼女に惹かれる才能ある美青年(ブノワ・マジメル)の甘く切ないラブ・ストーリー・・・、などでは断じてありません。この映画のコピーは「僕はあなたがどんなに悲しい秘密を持っていても愛しています。」ですが、これは嘘ですね。「僕はあなたがそんな秘密を持っているのなら、愛することは出来ません」が正解。
 私としては未婚の中年女性の悲しい欲望に同情する前に、狂気を感じてしまい感情移入が全く出来ませんでした。ポルノショップに通うのが日課なのに、素直に男性を受け入れられないのは、何故?バスタブで陰部を傷つけるのは、何故?嫉妬して教え子のコートのポケットにガラスを入れるのは、何故?
 ピアノと音楽一筋に生きてきた女性の性の抑圧と解放を訴えているとのことですが、異常は異常、狂気は狂気です。ですから、その秘密を知って離れた青年の行動は極めて自然。それで良いのだよ、君。
 厳格なピアノ教師の顔と、異常な性癖を秘める女の二面性を演ずるイザベルは確かにスゴイ。スッピンでニコリともしない・・・。鬼気迫る演技というのは正にこのことを指すのでしょう。
 イザベルもブノワもピアノ演奏は吹き替えには見えなかったのですが、どうしたのでしょう?
 いずれにしても、本作品は気分が落ち込んでいないときに観賞することをお薦めします。(-.-)
(ビデオ)

2002.09.23 サイン ★★☆

 世の観客を「シックス・センス」でアッと驚かせ、「アンブレイカブル」でガッカリさせてくれたM.ナイト・シャマラン監督の最新話題作。結末が口外されないように監督から試写会禁止令が出たりして、例によって思わせぶりは十分です。
 予告編などでは、トウモロコシ畑に現れたミステリー・サークルにまつわる謎解き映画のように見えてしまいますが、そうではありません。それに期待すると拍子抜けを喰らうどころか、失笑さえさせられてしまいます。あんな間抜けなエイリアンがいてたまるか・・・。
 メイン・テーマは、世の出来事は全て偶然だと思うか、全て意味のある必然であると信ずるか・・・、ということでしょう。コップの水、壁にかけてあるバット、喘息、妻の今わの際の言葉など、この映画に出てくる現象(「サイン」)の全てが伏線であって、それらの各々がラストで重要な意味をなす、という結末の付け方は確かに巧いと思います。でも一方で、すべてそれらはご都合主義の賜物であるとも解釈できるのが苦しいところ。だって、アレが通らないくらいなら呼吸も出来なくて、死んじゃうって・・・。
 いずれにしてもこの崇高な(?)メイン・テーマを展開させるにために引っ張り出した、ミステリー・サークルやエイリアンが余りにも中途半端でオソマツでした。部屋に閉じこめられてオロオロしたり、バットで殴られて悶絶したりするトホホなエイリアンを描きだすセンスが理解できません。だいたいアレが目的なら、人が少ない過疎地になんか現れるなよ・・・。
 主人公はメル・ギブソン。落ち着いた渋い演技です。弟役のホアキン・フェニックスは地味な役どころで少々損をしているかも・・・。息子や幼い娘役は共に天才的な演技力で驚かされます。それにしてもあの女性警察官には、もう少し花のある女優を使えなかったのでしょうか?
 M.ナイト・シャマラン監督は自身も重要な役割で出演していますが、この作品の興行が失敗したら俳優に転向しても良いかも知れません。(^o^)
 本作品の脚本料は史上最高の1,000万ドルだとか。ふ〜ん、これでね・・・。(-.-)
(劇場)

2002.09.17 ビューティフル・マインド ★★★★☆

 第74回アカデミー賞で、作品賞、監督賞(ロン・ハワード)、助演女優賞(ジェニファー・コネリー)、脚色賞の4部門でオスカーに輝いた超話題作。ラッセル・クロウは残念ながら2年連続(前年は「グラディエーター」)の主演男優賞は逃しています。
 それまでの経済理論を覆す「非協力ゲーム理論」(何のコッチャ)を発表し、1994年のノーベル経済学賞を受賞した実在の天才数学者ジョン・ナッシュの半生を描いたドラマ。ただし、彼の数学者としての功績は深追いされることなく、彼が苦しめられた統合失調症(従来の「精神分裂症」ね)との闘いと、彼に献身的な愛を注ぐ妻との関係を中心に描かれています。
 見る前は、退屈するのではなかろうか、とか、感動の押し売りにあうのではないかな、などと思っていたのですが、そんな心配は全く無用でした。主人公の若い頃の変人ぶりには笑わされますし、中盤以降はサスペンス風な展開に及んだかと思いきや、その後オイオイな事実が明かされて、ビックリ。統合失調症の悲惨な症状と悲痛なまでの闘病生活に、同情することしきり。最後のノーベル賞授賞式のスピーチには、泣かされます。
 終始ツボを得た演出にグイグイ引き込まれ、静かな感動とともに終わりを迎えたのでした。映像や音楽も美しく、つくづく良い映画を見たとの満足感に浸れます。
 ジョン・ナッシュの大学院生(やや無理がある)から70歳近くまで(老人メイクは完璧)を演じたラッセル・クロウの演技力に脱帽。そこまで耐えるか、という妻を熱演したジェニファー・コネリーにも拍手。
 諜報員を演じたエド・ハリスも文句ないし、ルーム・メイト役のポール・ペタニーも、その幼い姪役の女の子も巧い。
 ただしこの映画は事実をかなり脚色しているとのことで、実際のトム・ナッシュはこの作品の彼より遥かに奇人・変人で、妻とも一度離婚してまた復縁しているとのこと。そうであっても、この映画の価値は少しも損なわれないと思いますし、あのような状況では離婚するのは止むを得ず、かえってそれが自然とも言えます。
 「A Beautiful Mind」とは、この映画を見終えた人の心を指しているのです、きっと・・・。
(DVD)

2002.09.16 マルホランド・ドライブ ★★☆

 「わたしのあたまはどうかしている。」と言うのが本作品のコピー。恐らく主人公(ナオミ・ワッツ)の言葉を想定しているのでしょうが、多分殆どの観客にも同時にそう思わせてくれる一風変わったミステリー映画です。
 デビッド・リンチ監督のシュールで摩訶不思議な世界を堪能するには持って来いの作品なのでしょうね。2001年カンヌ映画祭で監督賞を受賞しています。タイトルは、ロサンゼルス北部の山中にある実在の道の名前で、ロスとハリウッドを見下ろす山頂へと続いているのだそうな。
 お話は、前半と後半の二つに別れているように思われます。前半は、時々得体のしれないエピソードが挿入されますが、それでも通常のミステリー的な展開で素直に観ることが出来ます。そうこうしているうちに、登場人物は同じでありながら、今までの展開と関係ありそうでなさそうなねじ曲がった世界へと突入していくのです。参りました・・・。
 リンチ監督自身が「敢えて判りやすさを追求しない。何回も見て初めて判ってくる。」と述べていますので、一回で理解不能でも、私の頭はどうかしているなどと悩まないことにしましょう。後半のお話が現実で、前半は主人公の夢を描いている、という説もあるようですが、それこそ解釈は個人の自由でしょう。結末をどうするか、リンチ監督も大いに悩んだそうですので、キチンとした読解が成立するとも思えません。要は、そういう(?)映画なのです。
 それでも不思議なことに146分は長くは感じられません。次々に繰り出される特異で不気味なシチュエーションや人物(カウボーイ、預言者の老女、謎の小男、泣き女など)にほとほと感心して退屈しないのです。謎の女性を演ずるローラ・エレナ・ハリングのセクシーな魅力も堪能できますし・・・。
 リンチ・ファンからは熱狂的な支持を得ている作品のようですが、一般的には好き嫌いが分かれるところでしょう。嫌いな人は素直に自分の気持ちを述べましょうね。こんな支離滅裂で能天気な映画は、わたしゃ嫌いだ、と・・・。
(ビデオ)

2002.09.15 コラテラル・ダメージ ★★★☆

 2001年9月11日の同時多発テロで公開が半年延期された作品ですが、今のこのタイミングで観賞するのも良いような、悪いような・・・。
 妻子をテロで殺された消防士(アーノルド・シュワルツェネッガー)が、後先を考えずに単身コロンビアのゲリラ地域に乗り込んで犯人を探すという、アッと驚く大胆ストーリーのアクション映画。タイトルは、「ある目的に付随する犠牲」というような意味。妻子をテロで殺されたのは「Collateral Damage」であると報道されたのに対して、激怒して立ち上がるシュワちゃんなのでした。
 本作品でのシュワちゃんは「超人的英雄でない普通の男であるところがミソ」と製作者側は強調しているようですが、どうしてどうして、かなりのスーパー・マンですよ。戦闘訓練を積んだ兵士と互角で闘うし、合成しないと撮影できないほどの濁流に巻き込まれても不死身なのですから・・・。
 やや強引な展開に目をつぶればそれなりに引き込まれますし、アッと驚く(というほどでも無いか)どんでん返しも待ち受けています。昨今のこの手の映画にはお約束の、米国側の悪さも指摘されるという中立的な視点も取り入れていますしね。私は「ピース・メーカー」を思い出してしまいました。
 本作品のテーマは、テロやそれに対する軍事報復に伴う「Collateral Damage」はいずれの場合でも許されるものではない、というメッセージと受け止めるのが自然でしょう。
 ジョン・レグイザモはともかく、ジョン・タトゥーロをあのようなチョイ役で使っているのは、勿体ない。テロリスト役のクリフ・カーティスは、「トゥルー・ライズ」でのテロリストと同一人物でしょうか?その妻役のフランチェスカ・ネリーは「ハンニバル」に出ていましたね。
 それにしてもシュワちゃんは随分老けてしまいました。その分、いつになく表情豊かに見えたりもしましたが・・・。「T3」や「トゥルー・ライズ2」は大丈夫でしょうか?
(DVD)

2002.09.14 ミュージック・オブ・ハート ★★★

 一介のシングル・マザーがハーレムの低所得者層の子供達にバイオリンを教えて、最後はカーネギー・ホールでチャリティ・コンサートを開くという、極めて嘘っぽい実話の映画化。しかもその主人公をメリル・ストリープが演じるというのですから、私としては敬遠していたのでした。何もメリルが嫌いというわけではない(むしろ、大好き)のですが、彼女の完璧な演技がこの手の映画では逆に鼻について白けてしまうのではないか、などと思っていたのです。久方ぶりにBS放送による観賞でした。
 果たして完璧な予定調和で、この作品は幕を閉じます。実際、ハーレムの子供達に白人女性がバイオリンを根気よく教えるのは並大抵の苦労では無いと思うのですが、意外とサラリとその辺は描写されていて、ホントにそんなに簡単にことが運ぶのかな、などと勘ぐってしまいます。出演していた子供達の半数が、実際に彼女の教え子だというのですから、驚きです。
 ラストのカーネギー・ホールで実際にアイザック・スターンイツァーク・パールマンジョシュア・ベルマイク・オコーナーアーノルド・スタインハートなどの淙々たるプロ・バイオリニストが出演する段にいたっては、完璧に嘘っぽく見えます(でもホントの話なんですね)。ここで演奏されたJ.S.BACHのバイオリン協奏曲は、さすがに素晴らしかったですが・・・。
 結局、これは実話だと思わないで見たほうが感動が伝わるのではないでしょうか?(変なの・・・)
 主人公の教育法は、鈴木鎮一という日本人(と、断ることは無いか)が確立した「才能は生まれつきでなく、作られる」という信念による「スズキメソード」に基づいたものだそうな。でも、作り損じもいっぱいあるでしょうに、この映画ではそれに全くふれられていません。やっぱり、嘘っぽい・・・(シツコイ?)
 メリルはこの作品撮影時、50歳。かなりのドスコイ体型ながら、オスカーにノミネートされた演技はやはり完璧でした。
(NHK-BS)