2000.07.10 シビル・アクション ★★
- 実際にアメリカで起きた訴訟を小説化して、ベスト・セラーとなった作品の映画化です。
ジャン・シュリクトマン(ジョン・トラポルタ)は、訴訟を巧みなかけ引きで和解に持ち込み、多額の示談金を得ている売れっ子の弁護士。ある時、河川汚染の裁判に金の匂いを嗅ぎ付けた彼は住民側の弁護につき、医学的検査と科学的検査のために、多額の費用をを彼自身が負担します。そして巨額の和解金を手に入れるはずだったのですが・・・。
我々日本人には馴染みの薄い訴訟や弁護士の裏側の描写は、それなりに興味深く見られます。ただ、やはりノン・フィクションだけあって、ストーリーに余り大きな変化が少なく、かなり退屈・・・。金もうけ一辺倒だった主人公が、やけに正義感に燃えていく後半の展開も、やや奇異に映ります(事実なんだろうけど・・・)。主人公が凋落しても身だしなみが全く変わらないのは、ご愛嬌としても・・・。
脇を固める弁護士仲間役のウイリアム・H・メイシー(「ファーゴ」、「サイコ」など)が、相変わらず存在感、抜群。息子を亡くした住民側の代表役、キャサリン・クインランもなかなかいい。キャシー・ベイツがラストに裁判官役でチラリと出演(この人は何故かチョイ役が多い)。
(ビデオ)
2000.07.03 グラディエーター ★★★★★
- 「ブレードランナー」、「エイリアン」などのリドリー・スコット監督による最新スペクタクル巨篇。「グラディエーター」とは古代ローマ帝国の見せ物のための「剣闘士」のこと。
西暦180年の古代ローマ。相次ぐ戦いで勝利を収めている主人公(ラッセル・クロウ)は、現皇帝に信頼され次の有力な皇帝候補。ところが現皇帝の息子(ホアキン・フェニックス)に妻子を殺され、自らも奴隷の剣闘士の身に落とされてしまいます。コロシアム(円形競技場)で戦う主人公は、密かに復讐の機会を窺うのですが・・・。
卑劣な策略で凋落しても最後に正義は必ず勝つ、というヒネリも殆どないベタなストーリーであるにも係らず、154分間最初から最後まで十分楽しめます。
序盤の戦闘シーンや中盤のコロシアムでの戦車による競技シーンが、アクションとしては圧巻。ただ、ラストはややアッサリしすぎかも・・・。実物大のものを40%建設して、後はCGに頼ったというコロシアムなどの建築物の造形も素晴らしい。家族愛やかつての叶わぬ恋をも絡ませ、最後は泣かせてくれます。こういう映画は、素直に楽しみましょう・・・。
アクションシーンなどで、コマ落とし的な映像描写が多用されていますが、あれはやや見にくいですね。
三角眼のラッセル・クロウが、最後までニコリともせずに体臭が匂ってくるような男の中の男を好演します。皇帝の娘役のコニー・ニールセンが、すこぶる魅力的。そう若くないようですが、これからもっと人気が出るのではないでしょうか。
やはりこういうストレートなハリウッド映画は観ていて安心できます。例え古代ローマ人が何故か全て英語を話していたとしても・・・。(^o^)
(劇場)
2000.07.02 ワイルド・ワイルド・ウェスト ★★
- 「メン・イン・ブラック」と同様、ウィル・スミスとバリー・ソネンフェルド監督が手がけ、99年度のゴールデン・ラズベリー賞の作品・監督などの5部門を制覇した作品。60年代のTVシリーズを映画化したのだそうな。
西部劇をベースに、CGを駆使したレトロ・ムード漂うSF風コメディ、とでもいうのでしょうか。ウィル・スミス、ケヴィン・クライン、ケネス・ブラナーなどの名優を揃え、小道具やCGによる巨大タランチュラもビジュアル的にはそれなりに楽しめますし、予告編などでは結構面白そうなのに、見事本編では裏切られてしまいます。全く盛り上がらずに2時間足らずが過ぎてしまうのだ。何が悪いのだろ・・・。
下ネタはともかく、人種差別や身障者差別のギャグが満載なのも、近ごろのハリウッド映画には珍しいのでは・・・。「ビクターの犬」には笑ってしまいましたが、こんな古いネタが出るとはね。
因みにゴールデン・ラズベリー賞とは、アカデミー賞と全く逆の最悪の映画作品、俳優などに贈られるもので、今まで「ポストマン」(ケビン・コスナー)、「素顔のままで」(デミ・ムーア)、「幸福の条件」(ロバート・レッドフォード)、「ショー・ガール」(エリザベス・バークレー)などがこの賞に輝いて(?)います。(^o^)
(ビデオ)
2000.06.22 サルバドル 遥かなる日々 ★★★
- ベトナム戦争に兵士として参加して「地獄を見た」オリバー・ストーンは、その時の体験を元に名作「プラトーン」を撮り、アカデミー作品賞、監督賞を受賞しました。この「サルバドル」は彼が手がけた1986年のもう一つの戦記物です。
80年代、戦闘の絶えることの無かった中南米のエルサルバドルへ、無理やり入国した破天荒な実在の米国フォト・ジャーナリスト、リチャード・ボイルの活動を描いた作品です。
まるで実写のドキュメンタリー作品を終始見ているような感じというのが、第一印象。その分、娯楽性に乏しくなるのはやむを得ないところです。余り主題と関係ないようなところを詳細に描写してみたりして、はっきり言って退屈なところも・・・。でも、緊迫した動乱の中で、いつ殺されるか判らないという状況や、主人公が愛する現地人の女性を国外に連れ出そうとする場面は、けっこうスリリングです。
ただ「プラトーン」と違ってストーン監督の訴求点が必ずしも明確には伝わらなかったのが残念。反戦、恋愛、別離、命を懸けるジャーナリストのプロ意識、などなんでしょうがね・・・。
ジェームス・ウッズは、この作品でアカデミーの主演男優賞にノミネートされ、彼の代表作品となりました。
(ビデオ)
2000.06.19 ザ・プロデューサー ★★★
- オスカー俳優、ケビン・スペイシーの第一回制作・主演作品(1995年)。公開時は「『ユージュアル・サスペクツ』以上のラストの衝撃!」というフレコミだったようですが、いかがなものでしょう・・・。
映画製作会社に就職した主人公(ベニチオ・デル・トロ)は、そこで傲慢な上司(ケヴィン・スペイシー)にこき使われることになります。昼夜を問わず呼び出され、恋人とも満足に会えぬ日々が続き、ついに彼は復讐を始めます・・・。
ケビン扮する、部下の人格を無視するような嫌みな上司を見て、思わず笑ってしまいました・・・。これを見て自分の過去、或いは現在の境遇を省みた人は多かったのではないでしょうか。いるんですよね、どこでもこういう男が・・・。ただ、この程度であのようにブチキレル主人公も、まだ忍耐が足りないといえなくもありません。あのような上司に我慢している部下は、もっと世の中にはたくさんいるのだよ・・・。
えー、そうくるか!という結末は、それまでに伏線らしきものが殆ど無く納得がいきませんし、後味もかなり悪るし・・・。
ケビンは、ここでも貫録の演技。まさに役そのものを楽しんでいるかのよう。主人公役は、ベニチオもいいけど、マット・デイモンあたりならもっとハマリそうだ・・・。
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2000.06.12 狂っちゃいないぜ! ★★
- この邦題に恐れをなしていたのですが、これだけ豪華なキャストでは見ないわけにはいきません。ジョン・キューザック(トッチャン坊や)、ビリー・ボブ・ソーントン(くせ者)、ケイト・ブランシェット(オスカー候補)、アンジェリーナ・ジョリー(ジョン・ヴォイトの娘)といった面々。
ニューヨーク航空管制センターでは、ケネディ、ラ・ガーディア、ニューアークという三つの大空港に出入りする一日に9,000機もの飛行機を監視し、離着陸誘導などでの飛行の安全を守っています。主人公(ジョン)はここでの最も優秀な管制官。ところがある日一風変わった転入者(ビリー)が来てからは、何故か彼の歯車が狂っていきます・・・。
極度の緊張をしいられ、過酷な航空管制官の仕事の舞台裏を描いたものとして、「グランド・コントロール/乱気流」がありますが、あちらがかなりシリアスだったのに比べ、こちらは恋愛(不倫)や友情をからませたコメディタッチのホームドラマという感じになっています。中々調子のいい前半とは裏腹に、中盤以降はチグハグな展開になってしまい、特に終盤は殆どテレビのホームドラマ風になって、ガッカリ・・・。
エリザベスの印象が強いケイトは、しばらくどれが彼女か見分けがつきませんでした。普通の美女だったんですね・・・。「ボーン・コレクター」でブレイクしたアンジェリーナ、鼻がもう少し高かったらもっと素晴らしい・・・。
豪華配役でも、面白くなるとは限らないという典型です。
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2000.06.05 ファイト・クラブ ★★★
- 「エイリアン3」、「セブン」、「ゲーム」などのデビッド・フィンチャーの最新監督作品。ヨーロッパでは暴力礼賛的ということでいくつかのシーンがカットされたとのこと。これはかなり好き嫌いが別れる作品ではないかと思います。
リッチなビジネスマンの主人公(エドワード・ノートン)は、極度な不眠症。難病患者が集まるセラピーなどに出席して救いを求めていますが、あるとき石鹸売りなどをしている一風変わった男(ブラッド・ピット)と出会います。彼らは、お遊びで殴り合いをしたことをきっかけに、素手で戦う素人のボクシング集団(=ファイト・クラブ)を結成します。更にこの 一団は、ブラピの指導下で次第にテロリスト集団に変貌していくのです。主人公は彼らのテロを阻止しようとするのですが、何か自分の身の回りがおかしいことに気が付いていきます・・・。
まずは映像の斬新さに驚きます。CGを多用しているとのことですが、過激なストーリー展開にうまく融合してしまっていて、余りそれを意識させません。サブリミナル効果を狙ったのでしょうか(?)、ところどころにお遊びの絵が挿入されています。コマ送りでいちいち確認できるのは、ビデオ観賞ならではのもの。特にラストの一コマは、あれは一体誰のモノなのでしょう?(^_^;)
終盤、あっと驚くことが明かされて、「シックス・センス」のように始めからストーリーを追いたくなってしまうこと、請け合いです。
病的なノートン、汚らしいブラピ、ちっともセクシーでないヘレナ・ボナム・カーター、そして辟易するような過激なストーリー展開で、見終えた後は、どっと疲れが・・・。(-.-)
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2000.05.29 ランダム・ハーツ ★★
- 57歳となったハリソン・フォードの最新作。飛行機事故をきっかけに、お互いの伴侶の不倫を知った男女の動揺と恋を描いた作品です。
前半はサスペンス・タッチなのですが、中盤以降はラブ・ストーリーに転じます。しかし、フォード演ずる主人公に、私は最後まで感情移入が出来ませんでした。主人公の「二人の関係はいつからだったのか」、「将来どうするつもりだったのか」という疑念、嫉妬など、ちぢに乱れた気持ちは痛いほど解ります。しかしだからといって、信頼をおいていた同僚を訳もなくなじり、悪態をつくようなキャラは、いただけません。自分の感情むき出しの、子供じみた男として終始演じられているのです。まあ、こういったのも一つの方法なのでしょうが・・・。
いきなり相手の未亡人(クリスティン・スコット・卜ーマス)と恋に落ちるのも、余りにも唐突で戸惑ってしまいます。悪徳警察官の逮捕劇であるサイド・ストーリーも、本題の邪魔をしていて、むしろなかったほうが良いと思うのですが・・・。
ただ、ありきたりのハッピー・エンドでなく、余韻を持たせたラストだったのは、正解でしょう。
「イングリッシュ・ペイシェント」にしろ、「モンタナの風に吹かれて」にしろ、不倫役の多いクリスティンも、何故か本作では魅力薄でした。
デーブ・グルーシンが担当した雰囲気あるジャズ・タッチの音楽に、内容が完全に負けてしまっていたのでした・・・。
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2000.05.28 将軍の娘 ★★★
- 米国でのベストセラー小説の映画化。「コン・エアー」のサイモン・ウエストが監督をしています。
次期副大統領候補のキャンベル将軍(ジェームズ・クロムウェル)の娘、エリザベス・キャンベル大尉(レスリー・ステファンソン)が、全裸絞殺死体で発見されます。陸軍犯罪捜査官である主人公(ジョン・トラボルタ)は、将軍からFBIが介入しないよう36時間以内に犯人を突き止めるよう要請されます。主人公が捜査を進めていくうちに陸軍内部での恐るべき事実が明らかになっていくのですが・・・、という謎解きサスペンスです。
軍という規律を重んじる特殊な世界の中で、組織と個人との葛藤がテーマになっており、個人の人間性を尊重することがいかに大切なことであるか、というメッセージは強烈です。また展開も巧みで、最後まで飽きさせることはありません。ただ登場人物がやや多すぎて焦点がボケた感じになっているのが難点。いっそ、将軍とその娘の大尉の関係だけにスポットを当てたほうが良かったかも知れません。殺されたキャンベル大尉の人物像も、ややわざとらしいところが無きにしもあらず。悲劇の原因となった、側近の忠告にいかにも安易に乗ってしまう将軍の態度にも納得できないなぁ。
トラボルタは、益々しもぶくれ度が増しているようですが、演技はさすがに熟練しています。あのトーンの高いしゃがれ声も健在でした。
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2000.05.25 ポーラX ★
- 1999年カンヌ国際映画祭に出展され、日本でも話題となって長期公開されたフランス映画。
小説家の主人公ピエール(ギヨーム・ドパルドュー)は、姉のような母親(カトリーヌ・ドヌーヴ)を持ち、美しい婚約者との結婚を間近に控えた幸せ者、らしい・・・。ところが、そこにいきなり乞食のようなジプシー女が現れ、彼の姉だと云っている、らしい・・・。彼は、何故かその女に惹かれ、今までの生活を捨てて、その女と暮らし始める、らしい・・・。
・・・というように、要はよく判らない映画なのです。背景、状況などの説明が一切無いので、観客は自分の想像力に頼るしかありません。これは大傑作だ、などと云っている人もいるようですが、どうぞご勝手に、という感じ・・・。
タイトルのポーラなる人物など一切出てこないなぁ、などと思ったら、どうやら、本映画の企画段階の暗号名とのこと(何のコッチャ)。
唯一の収穫は、今さらながらカトリーヌ・ドヌーヴの豊かなバストが拝めたことでした・・・。(^_^;)
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2000.05.23 トゥルー・クライム ★★★★
- 御年70歳となるクリント・イーストウッドによる監督・主演作品。今回の役柄は、元アル中で女たらし、しかし自分の仕事には自信を持つベテラン新聞記者です。
彼はある黒人の死刑囚を取材していくうちに、えん罪であることを直感します。ところが死刑の執行までは12時間。果たして彼は死刑囚を救うことが出来るのか・・・、というタイムリミット・サスペンスです。
上司の妻との不倫を始めとして、手当たり次第に女を口説き、仕事の合間にシブシブ家庭サービスをするような主人公のキャラクタ描写がまず面白い。その一方で、彼がただのグウタラではなく、事件の真相を見抜いてしまうような鋭い嗅覚を持ち、自己の信念を貫き通す反骨精神たくましい男として描かれているのが、ミソ。
ストーリー的には大きな仕掛けは何もないのですが、正統的にジワジワと緊迫感を盛り上げていく演出はさすがで、見応えは十分。ソツのない作りに、いかにも良い映画を見た、という満足感が得られます。
主人公の娘役はイーストウッドの実の娘(7歳!)なのだそうで、どうりで息がピッタリ合っていました。
「マジソン郡の橋」では、イーストウッドの雨に打たれて頭に張り付いた薄い髪の毛がヒンシュクものでしたが、今回は彼のたるんだお腹が・・・。(>_<)
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2000.05.14 アメリカン・ビューティー ★★★★★
- アメリカ本国で大ヒットし、第72回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞など5部門のオスカーを獲得した話題作。日本では受けないのではないか、というもっぱらの前評判でしたが、かなり好評のようですし、私も十分楽しめました。
「アメリカン・ビューティー」というのは、妻役のアネット・ベニングが丹精込めて育てていた深紅のバラとのことですが、同時にここで描かれているような病めるアメリカ人が欲している「美」をも象徴しているようです。深紅のバラが、予告編などでお馴染みのバラに埋もれる美女のシーンなど、極めて効果的、象徴的に使われています。
ストーリーとしては、一見幸福そうに見える環境の中で、実は現状に大いに不満を抱いている夫、妻、娘、娘の友達、隣家の夫、息子達それぞれが、自分の理想とする「美」を求めていく、というもの。「美」は、結局は不倫、ゲイ、恋愛などの性愛を追及しつつ、新しい自我に目覚めることとして描かれ、人間の本質をするどく突いていると思います。
間を十分とった演出で、個々のエピソードを興味深く見せてくれ、全く退屈することはありません。終始コメディ・タッチで描かれ笑わせてくれますが、最後に待ち受けているのは悲劇なのです。しかし、必ずしも後味が悪くないのは(少なくとも私にとって)、多分描かれている家庭や夫婦の関係などを自分に置き換え、感情移入してしまって、主人公の運命に安らぎに近いものを感じたからなのでしょう。全く、ケビン・スペイシー演じる主人公の言動には、他人事といって嘲笑できない何かがあります。
隣家の悩める退役軍人を演じたクリス・クーパーは、さすが。あの自己崩壊の鬼気迫る演技は、彼ならのものです。そして私が一番ドキッとしたのは、ラストでもなく、娘やその友達のヌードでもなく、アネットの天井に突き上げた逆八の字のアンヨなのでした。(^_^;)
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2000.05.08 秘密 ★★★
- 殆ど日本映画を見ることが無い私ですが、広末涼子が見たくて、もとい、最後に明かされる「秘密」が何かを知りたくての久々の邦画観賞でした。第52回日本推理作家協会賞を受賞した、東野圭吾の同名ベストセラー小説の映画化です。
母(岸本加世子)と娘(広末涼子)がバス事故に遭い、母が死亡し娘が息を吹き返します。ところが、意識を取り戻した娘には、母親の心が憑依していたのです。それからは夫(小林薫)と娘の体をもった妻との奇妙な生活が始まるのですが・・・。
最初は設定の奇抜さにぎょっとしますが、次第に引き込まれて、自分があの夫の立場だったら、あの妻(娘)の立場だったら、と考えさせられることしきり(心は妻であっても娘の体は抱けない夫、娘の体でもう一度青春をやり直したい妻、そういう妻(娘)に嫉妬する夫・・・など)。
最後に明かされる「秘密」は、やむを得ない結末だとは思いますが、そうであればあそこにたどり着くまでの過程が、いかにも観客をミス・リードしすぎだと思います。一番気になったのは、序盤で娘(の心)が亡くなったにも関わらず、夫婦が殆ど意に介してないように描かれていたこと。
広末はミス・キャストだ、いや意外と演技は巧い、などと両論あるようですが、私は個人的には彼女の舌ったらずの甘えた話し方は、あれはあれでいい味を出していたのでは、などと思ったのでした・・・。
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2000.05.04 娼婦ベロニカ ★★★
- 16世紀、ベネチアの実在の高級娼婦であるベロニカ・フランコの半生記を描いた作品。タイトルから容易に想像されるような、その手の映画とは違います(念のため)。
青年貴族(ルーファス・シーウェル)との恋を身分の違いを理由に引き裂かれたベロニカ(キャサリーン・マコーマック)は、元高級娼婦でもある母の勧めと訓練により、高級娼婦となってその青年貴族に近づこうと決意。やがてベロニカは国の要人やフランス国王の相手も勤めるような売れっ子になりますが、青年貴族との愛の狭間で苦悩します。そんなときペストが流行したことをきっかけに、彼女は魔女であるとして宗教裁判にかけられてしまうのですが・・・。
事実に基づいているだけあって、中々見応えのある作品ではあると思います。当時の風俗描写も興味を引きます。群衆が見守る中で、高級娼婦達が(胸ポロリで)運河に浮かぶゴンドラで優雅に通りすがるシーンは、まるで日本の花魁道中そのもの。厚底ポックリも履いているし・・・。母親が青年を使って性技の実地訓練をするシーンにも、笑えます。
ただ、この手の大河ロマン映画にありがちな、総集編的にストーリーを追っかけてしまうという感じはここでも例外ではありません。特にベロニカが迷いながらも高級娼婦の道を選ぶ過程の心理描写が全く不足していて、あれ、そんなに安易に決心していいの?と思わず突っ込みを入れたくなるほど。
終盤の宗教裁判のシーンは文字通りのクライマックスなのですが、あの過程が本当に史実に基づいているとしたら(どうも本当のようなのですが)驚きです。やはり「最後に愛は勝つ」なのですね。(^_^)
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2000.05.02 トーマス・クラウン・アフェアー ★★
- スティーブ・マックィーン主演の「華麗なる賭け」(68年)のリメイク。大富豪で絵画泥棒のトーマス・クラウン(ピアース・ブロズナン)と保険会社の女調査員(レネ・ルッソ)の、お互いのかけ引きと恋を描いたサスペンス(?)作品です。
ピアースの鮮やかな絵画窃盗シーンや、レネの超セクシーなダンス・シーン(下着を付けていない!)など、スタイリッシュな予告編を見てかなり期待していたのですが、結局この映画は予告編以上のものは無かったことが判り、ガッカリ。序盤はともかく、以降のストーリーが平坦で盛り上がりません。中盤以降は二人の恋愛を主体とした展開になりますが、気丈でやり手の女調査員が、もろくも調査相手と簡単に恋に落ちてしまうのも、納得できず。ピアースがレネを好きになる心理描写も不足していると思うけど・・・。
オリジナル作のヒロイン、フェイ・ダナウェイがカメオ出演していますが、相変わらず美しくないし、余り意味があるとも思えません。
ラスト・クレジットで流れるスティングの歌う「風のささやき」(The
windmills of your mind)で、ホッとさせられました・・・。
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2000.04.22 グロリア ★★
- 80年に制作された同名の映画のリメイク。このオリジナルを元に、あの「レオン」が作られたということです。
フロリダで3年の刑期を終えたグロリア(シャロン・ストーン)は、元の組織のあるニューヨークに戻ります。ところが服役前の約束を守らない元情夫に彼女は激怒し、そこに捕らわれていた少年を道連れに逃亡します。しかしその少年は、組織が必死に探しているあるものを所有していたために、彼らに追われることに・・・。
「レオン」の原型だけあって序盤はそっくりな設定で引き込まれますが、後が全くいけません。元情夫の仕打ちに怒るのはまだしも、彼女が少年を連れ去る理由がよく判りませんし、その後も必然性が殆ど感じられない展開に終始します。彼女が少年に次第に母親のような愛情を覚えていく過程も、全然説得力無し。美貌のシャロンが、眉間にシワ寄せて熱演しても何か空々しいのです。
従ってこの映画の見どころは、プラダやフェンディが提供したという衣装を付けたシャロンのセクシーなファッション。あの胸元と長い足で闊歩する姿は、とてつもなくカッコイイのだ・・・。
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2000.04.17 妻の恋人、夫の愛人 ★★★★
- ロック・スターのジョン・ボン・ジョヴィが、5年の演技レッスンを経て初主演したというイギリス映画。タイトルから容易に推測できるような愛憎劇なのですが、終盤サスペンス・タッチも盛り込まれ、飽きることはありません。イギリスの演劇界が舞台となっているのも興味を引かれます。
ランベール・ウィルソン扮する劇作家は、新人女優(タンディ・ニュートン)と不倫をしているのですが、妻(アンナ・ガリエナ)に知られつつあり、戦々恐々の毎日。あるときハリウッドからやってきた人気男優(ボン・ジョヴィ)から、妻を誘惑してやろうか、と持ちかけられます・・・。
主演をボン・ジョヴィとしたのは、彼に敬意を払ったからなのでしょう、展開上は劇作家の心理描写を機軸にしていて、どう見てもこちらが主人公。妻にさいなまれ、愛人との板挟みになる彼の苦悩が、痛いほど伝わってきます。更には自分で納得して仕掛けた企みが、裏目に出る羽目に・・・。身に覚えのある世の男性なら、つくづく考えさせられることでしょう。
ボン・ジョヴィの演技は、私にはやや淡泊に映りました。もっと悪魔的な性的魅力や残忍さを出せたら良かったのに・・・。黒人のタンディ・ニュートンは、最近では「シャンドライの恋」で有名になりました。
ニコール・キッドマンが、アカデミー賞のプレゼンテーターとしてカメオ出演していますが、何で・・・?
(ビデオ)
2000.04.16 ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア ★★★
- ドイツ本国で、年間興業成績が第4位となったヒット映画。セリフがドイツ語でなければ、殆どハリウッド映画の雰囲気です。
脳腫瘍と骨肉腫で余命幾ばくもないと診断された二人の男が、「海を見に行くため」に病院を抜け出します。盗んだ車はギャングのもので、大金がトランクの中に。大金があるとは知らずに銀行強盗もしてしまうので、警察とギャングの両方に追いかけられてしまう、という典型的なロード・ムービー。
暗いテーマを扱いながら、徹底的に明るく、コミカルに描いたのが成功しています。ややふざけ過ぎという感じがしなくもありませんが・・・。「海を見に行く」のは、海を見たことが無いという男にもう一人の男が、「天国じゃ、みんなが海の話をする。海を見たことのない奴は仲間外れだ」と云われるからなのですが、これがホロリとさせられるラストへとつながります。「真夜中のカウボーイ」のラストを思い出してしまいました。
脳腫瘍を持つ男役のティル・シュヴァイガーが熱演しています。一方のヤン・ヨーゼフ・リーファースも飄々とした優男を好演。間抜けなギャングの一人は、「ラン・ローラ・ラン」の恋人役、モーリッツ・ブライプトロイでした。
(ビデオ)
2000.04.10 グリーンマイル ★★★★★
- 名作「ショーシャンクの空に」と同じ、スティーブン・キング原作、フランク・ダラボン監督による話題作。原作は、毎月文庫本で全6巻が一冊ずつ刊行されるということでも、また泣けるということでも評判となりました。
双子少女のレイプ殺人で死刑宣告された大男の黒人(マイケル・クラーク・ダンカン)と、善良な看守(トム・ハンクス)との心の交流を描いたファンタジー・ヒューマン・ドラマです。グリーンマイルとは、処刑室に通ずる緑のリノリウムの廊下のこと。
同様に刑務所が舞台となった「ショーシャンク・・・」の方は全く現実的な展開に終始しますが、こちらは奇跡とも言える不思議な癒しの力がテーマになっていて、作品のイメージは随分違います。一歩引いてみると「そんなバカな・・・」の世界なのですが、ドラマが進行するに連れてグイグイ中に引き込まれていってしまうのがこの映画の凄いところ。つくづくキングのストーリー・テリングの巧さに舌を巻いてしまいます。
スピルバーグが云ったように、少なくとも4回は確かに泣けるようです(私の隣の女性は、中盤から最後まで泣き通しだった・・・(-.-))。
小動物を使って観客の情感に訴えるというのはズルイ気がしなくもありませんが、ラストでそれが大きな意味を持っていたことが判り、併せて人生というものをしみじみと想わせてくれます。老年の主人公をトム・ハンクスではなく、別の老優が演じた理由も判ります。
素晴らしいキャストの中で特に光っていたのは、悪徳看守を演じたダグ・ハッチソン。あれだけ観客に憎まれれば彼も本望でしょう。
本作品は第72回アカデミー賞の作品賞など4部門にノミネートされましたが、オスカーは一つも受賞できませんでした。ウウ、残念・・・。(;_;)
(劇場)
2000.04.05 パラサイト ★★★
- ロバート・ロドリゲス(「デスペラード」)が監督し、ケビン・ウィリアムソン(「スクリーム」)が脚本を書いたSFホラー作品。
アメリカのある学園で、教師や学生が次々にエイリアン(芋虫程度の)に寄生されていきます。寄生された人間を識別できたり、退治したりできるのは、ある学生が作ったドラッグ。誰が寄生されたのか、最後まで寄生されないのは誰なのか・・・、という比較的ベタなストーリー。
エイリアンに犯されたかどうか、というスリルと恐怖は「遊星からの物体X」と同趣で、そっくりな場面(顏の下、タコ状態)も登場します。余り斬新な展開はないのですが、終盤の畳み掛けなどもあってまあ退屈することはありません。とてもスムースな動きをするエイリアンなどのCGもさすがです。
ただドラッグもどきの薬がいとも簡単にエイリアンを退治できたり、巨大化したエイリアンのボスがあのような仕掛けで身動きできなくなるというのは、いかにもご都合主義。
本作品には将来有望な若手俳優が多数集められたということですが、ヒロイン格の役割のクレア・デュバルだけは、どう見てもそうは見えない恐ろしいパンダ顔なのでした・・・。(-.-)
(ビデオ)
2000.04.02 ぼくの美しい人だから ★★★★
- 年齢差と貧富の差を乗り越えられるか、というラブ・ストーリー。旧作('90年)ですが、以前から気になっていた作品です。
エリート社員の主人公(ジェームス・スぺイダー)は、ハンサムな27歳。ある時、バーガー・ショップに勤める女性(スーザン・サランドン)に無理やりベッド・インさせられます。彼女は43歳。次第に彼女の虜になっていくのですが、二人の間で生活習慣の差や年齢の差が障壁になっていきます・・・。
女性が16歳も年上というのはまだしも、貧富の差という恋愛の障壁としては古典的なテーマを扱っている割には、現代的な感じがする映画です。多分、二人が体の関係(しかもブロウ・ジョブ)から始まって、終盤でも女性に「私ほどテクニシャンはいない」などと云わせてしまうドライな感覚に終始しているせいだと思います。
体だけでなく、価値観を共有して心も一つになる、というラストの盛り上げ方は極めて正攻法であり、妙に納得させられてしまいます。ただ彼らがどの位長続きするか、というのはやはり気になるところですが・・・。
スーザンが貫録たっぷりの演技で、さすがです。彼女は実生活でも12歳も年下のティム・ロビンス(「ショーシャンクの空に」など)が夫なのですが、やはりあのテクニックで落としたのでしょうか?(^_^;)
(ビデオ)
2000.03.27 裏切りのKISS ★★★
- 誘拐事件の裏に潜む陰謀を描いたクライム・ムービー。
女一人を含む四人組が、身代金目当てにソフト会社の社長を誘拐しようとし、偶然その場に現れた上院議員夫人を射殺してしまいます。誘拐は成功したのですが、彼らに警察とFBIの厳しい追手が迫ります。彼らは身代金の受け渡しの工作を始めるのですが、次第にその裏に隠されている陰謀が明らかになっていきます・・・。
冒頭からけっこうツボを心得た展開がなされ、ストーリー的にも飽きさせることはありません。後半をもう少しテンポよく見せてくれると更に良かったと思いますが・・・。
犯人側のサブ・リーダー格の女を演じるのは、「スネーク・アイズ」のカーラ・グジーノ。彼女のセクシーな魅力が堪能できます。担当刑事役は、「ダイ・ハード」での犯人役のアラン・リックマン。中々いい味を出しています。FBIの捜査官を演じるのは、何とエマ・トンプソン。いあや彼女はこんな役、似合いませんね。彼女が拳銃を構えて凄んでも、全く様になりませんもの。
もう少しマシな邦題とカバー・ジャケットを備えていたら、このビデオのレンタル回転率はもっと上がっていることでしょう。
(ビデオ)
2000.03.26 ブロークダウン・パレス ★★★
- 「ブロークダウン・パレス」というのは、タイの地獄のような刑務所のこと。
卒業旅行でタイに出かけたアメリカの仲良し高校生二人(クレア・デインズ、ケイト・ベッキンセール)は、現地で知りあった青年に香港旅行に誘われます。香港に発つ空港で待ち受けていたのは現地の警察官と機動隊。何と彼女らの手荷物から大量のヘロインが発見されます。彼女らに下った刑期は33年(!)。果たして彼女らは無実の罪を晴らして、無事帰国できるのでしょうか・・・。
アメリカ人がアジアで味わう言葉の壁、法律の違いなどを描いている点では「レッド・コーナー」と同趣ですが、アメリカ大使館の大使やタイ国側の刑事がとんでもないワルとして描かれている分、こちらの方がフィクションっぽい作りになっています。
サスペンスものとして最後まで退屈することはありませんが、やや中途半端な展開や描写が散見されるのが気になるところ。例えば、余り役に立たないアメリカ人弁護士(ビル・プルマン)の活躍、麻薬の仲介人のその後の行方、刑務所で意地悪をするタイ人のその後の顛末、など。また、タイを小馬鹿にしているような演出もいただけません。あれではタイではなく、フィリピンでロケを行わざるを得なかったのも無理はありません。
ラストはかなり後味悪し・・・。あの選択はアリかな・・・?
クレアの物凄い形相の泣き顔は、ここでも健在でした。
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2000.03.21 ラン・ローラ・ラン ★★★★
- 本国で大ヒットし、日本でもミニ・シアター系でロング・ヒットしたドイツ映画。昨今のドイツ映画ブームに大きく貢献した作品です。
ヒロインのローラ(フランカ・ポテンテ)は、恋人(モーリッツ・ブライプトロイ)から彼の命に係わる重要なことを頼まれます。タイムリミットはたったの20分。さあ、ローラはベルリンの街を走りに走ります・・・。
まずは、赤い髪をなびかせて疾駆するローラの姿が極めてスタイリッシュ。走る人をただ眺めるのが、こんなに快く感じられるとは思いませんでした。ローラを演じるポテンテは、貧乳で美形でもないのですが、息切れもせず疾走する姿が妙に頼もしく魅力的なのです。心臓の鼓動のようなテクノ・ビートに乗って、ローラのひたすら走る映像が本作の重要なポントになってます。
あとは構成のアイディアの勝利でしょう。「スライディング・ドア」にヒントを貰った可能性がありますが、ラストのカタルシスはこちらの方が遥かに大きい。途中で結末が大体読めてしまうのですが、期待どおりに展開されるというのも観客にとっては快感につながります。私は大いに楽しめました。
ローラがすれ違う人の、その後の人生をフラッシュで見せる手法が取り入れられていますが、これがけっこう面白い。本筋に全く関係はないのですがネ・・・。
「ドーベルマン」と配給元が同じだけあって、本作もアニメが挿入されるのですが、これは私には完全に邪魔でした。
この映画を見た後、髪を赤く染める女性が増えたとか・・・。(^o^)
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2000.03.20 バッファロー'66 ★★★
つい最近まで都内で長い間単館上映されていたヒット映画。個性派のビンセント・ギャロが監督、脚本、主演、音楽を担当しています。
刑務所から出たばかりの主人公は、両親を安心させるために行きずりの女性(クリスティーナ・リッチ)を誘拐し強制的に妻を演じさせます。彼女は戸惑いながらもそれに従い、そして次第に彼に惹かれていくのですが・・・。
とにかく登場人物が皆、変なんです・・・。見えっ張りで被害妄想で、常におどおどしている主人公。理不尽なことを暴力的に強制されるのに素直に従う女。息子が初めて新妻を連れてきても、フットボールの試合展開の方が気になる母親。元歌手で、唄をリクエストされてもお腹が空いたので食事が先だと怒鳴る父親、などなど。彼らの言動や絡みの描写が可笑しくて、思わず笑ってしまうことしきり。
ユニークだったのは、彼の両親と4人で食卓を囲んでいるシーン。四方向から順繰りにカメラが向けられるのですが、正面と左右の3人しか映し出されず、カメラに背を向ける人物はもとより、その人物の食器さえも画面から消えるのです。ギャロのこだわりを感じさせられます。
狂気じみた瞳のギャロの迫真の演技もさることながら、この映画の魅力は何と言っても、厚化粧と超弩級のバストと太ももの持ち主であるリッチの存在でしょう。男の危険を察知して、行くなと懇願する切なそうな表情がとても印象的でした。「アダムス・ファミリー」の悪ガキも成長したものです。また、すっかり悪役専門と化したミッキー・ロークもチョイ役で出演。
終わってみればこの映画はラブ・ストーリーだったことが判りますが、ラストはちょっとルール違反かも・・・。
で、この映画のロング・ヒットの理由は・・・?う〜ん、よく判りません。
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