1999.10.20 二十日鼠と人間 ★★★★
- ジョン・スタインベックの名作、「ハツカネズミと人間」の映画化。個性派俳優、ゲーリー・シニーズとジョン・マルコビッチの共演で、以前から見たいと思っていた作品です。監督も、ゲーリー・シニーズ。
知的障害者の大男(ジョン・マルコビッチ)と彼を支える主人公(ゲーリー・シニーズ)との人間愛の物語です。いたる所でトラブルを起こすジョンを、時には疎ましく思いながらも彼を見捨てられず、いつも一緒に行動するゲーリー。彼らの共通の夢は、ささやかな牧場を経営して動物達と一緒に暮らすこと。ようやく仕事にありついて、精を出す二人。しかし良い状態に落ち着いたと思ったのも束の間、ジョンが引き起こした事件で悲劇的な結末が・・・。
ここでのジョンの迫真の演技は、オスカーものではないでしょうか。彼の存在と境遇の哀れさ、悲しさがひしひしと伝わってきて、見ていていたたまれなくなってきます。ウマスギル!
ゲーリーの特徴ある眉毛と鋭い眼光も、いつもどおり。ニコリともしない落ち着いた演技が光ります。彼は舞台でも同じ役を演じたのだそうな。
中盤のエピソードの、皆から疎まれる老犬の運命になぞらえた構成が巧みだと思います。ただ、ラストはもう少し余韻を持たせるともっと良かったかも・・・。
原題の「(OF) MICE AND MEN」というのは生きとし生けるもの全て、という意味があるのだそうで、ジョンが可愛がるネズミや犬、ウサギにもかけているのでしょう。
それにしても、ジョンは随分大男だったのですね。
(ビデオ)
1999.10.17 ホーンティング ★★★
- 「スピード」や「ツイスター」で名を馳せたヤン・デ・ボン監督の最新作。1963年の「たたり」のリメイクだということですが、私はこちらは未見です。
ある研究者の心理実験のために、古くて大きな館に集められた男女が体験する数々の恐怖を描いたホラー・ショッカー作品。
舞台となる館の大きさと室内(もちろんセット)の豪華さに、まず目が奪われます。そしてILMの創出する驚異的なSFX映像もさることながら、「SW
エピソード1」で開発されたというEXサウンド効果にぶっ飛んでしまいます。周りを駆け巡る音の洪水と、お腹に響く超重低音がスゴイ(隣の劇場で「エリザベス」を見ているときに盛んに変な音がしていたのは、これだったのでした)。とにかくこの絵と音を楽しむには、映画館で、しかもなるべく中央の席での鑑賞が必須でしょう。
で、ストーリーの方はというと・・・。これが全然ダメ。主人公(リリ・テイラー)の生い立ちと館の主との係わりの説明が十分ではありませんし、悪霊と良い霊との力関係もなんだか不可解です。ラストもあっさりしすぎ。
今や絶好調のリーアム・ニーソンとキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。これが全くの添え物的で、活かされていません。キャサリンなどはリリの周りでただウロウロしているだけ。しかも、前宣伝でこの二人があたかも主演のようなクレジットにもなっていました。確かにリリが主人公というのは、ちょっと辛いものがあるというのは判りますが・・・。
当初はイギリスの実際の古い館でロケをしたのだそうですが、スタッフの事故が相次ぐ(!)ので、セット撮影に切り替えたのだそうな・・・。まさにポルター・ガイストですね。(・・;)
(劇場)
1999.10.12 ビッグ・リボウスキ ★★★
アカデミー賞を受賞した「ファーゴ」で有名な、コーエン兄弟監督の最新作。
ボウリングにしか興味がないグウタラ生活を送っている主人公(ジェフ・ブリッジス)が、彼らの仲間とともに巻き込まれる誘拐事件を中心とした、何とも奇妙で可笑しい人間劇、とでもいいましょうか。途中で古き良き時代のミュージカル風のシーンが出たりして、楽しませてもくれます。思わず声を出して笑ってしまうようなとぼけたシーンも・・・。
誘拐事件の謎解き的展開もさることながら、とにかくユニークで奇怪な登場人物のセリフのやりとりに笑ってしまいます。何を言っても無視される可哀相なボウリング仲間を演じる怪優、スティーブ・ブシェーミ。このキャラクターは彼の真骨頂でしょう。何でもベトナム戦争に結びつけてしまう、メチャクチャな暴れん坊を演じるのは、巨漢、ジョン・グッドマン。紫の衣装に身を固め、気持ち悪い腰の動きをするボウラーに、ジョン・タートゥーロ。主役のジェフ・ブリッジスがこういう役柄を演ずるのは意外ですが、肥えた腹とダブダブの服装でだらしない男を好演しています。
ボウリング場のレーンや設備などをアップでなめる映像がとても美しい。いかにもローテクっぽいトリック撮影も雰囲気たっぷり。
とにかくコーエン兄弟自身が、楽しみながら制作したということがダイレクトに伝わってくる作品。でも一言で云うと、多分好き嫌いが別れる変な映画なんです・・・。(^_^;)
(ビデオ)
1999.10.09 エリザベス ★★★
アカデミー、英国アカデミー、ゴールデン・グローブなど、世界の映画賞で16部門の受賞に輝いたコスチューム・ドラマ(歴史劇)の大作。16世紀の英国、数々の陰謀が渦巻く中で21歳でロンドン塔に幽閉され、25歳で女王に即位した「ヴァージン・クイーン」、エリザベス一世にまつわる波乱万丈の史実を描いた作品です。監督はインド人のシェカール・カブール。
ヨーロッパの中での英国と他国との係わり、カトリックとプロテスタントとの宗教争いなどを背景に、私生児のエリザベスめぐる権力闘争が生々しく展開されます。華麗な衣装やメーキャップもさることながら、私はそのダイナミックなカメラワークに圧倒されました。上方からの目まぐるしく変わる映像に眼が廻りそう・・・。拷問で宙づりにした人間を逆に撮って、普通に立っている人間が逆さまになったり・・・。
事前に英国の歴史を勉強しておいた方がいいと云われていますが、余り知識のない私でもおおむね理解ができました。ただ、多くのエピソードを詰め込んでいるせいか説明不足の感はありましたし、意味不明なカットも多かったように思います。プロセスを省略して結果だけを描写しているんですね。
序盤がとても快調で、あの緊張感が終盤まで続くと良かったのですが・・・。
エリザベス役は、ケイト・ブランシェット。美人ではありませんが、表情が豊かで陽と陰を使い分けた巧い演技をしています。ラストで「余は英国と結婚するのじゃ!」と言い放った白塗りの顏が怖い!!
恋人役に「恋に落ちた・・・」のジョセフ・ファインズ(相変わらず寄り目です)。エリザベスの警護役にジェフリー・ラッシュ。「貫録」という言葉はこの人のためにあるような演技。「ドーベルマン」のヴァンサン・カッセルが能天気なフランス王の弟を演じていて、笑わせてくれます。
でも、エリザベス一世はヴァージンではありませんでした・・・よね?(^_^;)
(劇場)
1999.10.06 悪魔のくちづけ ★★
ユアン・マクレガー主演の、文芸的ムードを湛えたイギリス映画。原題は「The Serpent's
Kiss」で、「蛇のキス」の意。
劇場公開が99年7月中旬ですから、約2ヶ月でビデオ化されたことになります。(なんで?)
ある富豪(ピート・ポスルスウェイト)が自分の力を誇示するために荒れ地に豪華な庭園を造ることを計画します。その庭園の設計者として呼ばれた男(ユアン・マクレガー)は、有名なガーデン・デザイナーの助手。富豪の魅力的な妻(グレタ・スカッキ)とやや精神的に不安定な娘(カルメン・チャップリン)の見守る中で、着々と造園作業が進められていきますが・・・。
妻の従兄の陰謀が絡んでミステリー・タッチで展開されていくのですが、どうも焦点が定まりません。主人公と、妻との危ない雰囲気や娘との淡い恋も絡ませますが、一歩踏み込みが足りなくて結果として欲求不満になってしまいます。ポスルスウェイトの圧倒的な存在感も、この虚ろな展開では為すスベがありません・・・。
カルメン・チャップリンは、チャーリー・チャップリンの孫娘。美形ではありませんが、少し危なくキレそうな娘をうまく演じています。
ユアンちゃんを見ているだけでいい、と云う人にはもちろんお薦めですが・・・。(-.-)
(ビデオ)
1999.10.03 シン・レッド・ライン ★★★★
- 過去20年間で2作品しか作らず、伝説の監督と云われたテレンス・マリックの最新話題作。ただし、本作品は第71回アカデミー賞で作品賞や監督賞の7部門にノミネートされながら、オスカーは一つも受賞できませんでした。
第二次世界大戦たけなわの、ガダルカナル島での飛行場の奪取をめぐる日米の激しい戦いを描いた作品です。タイトル(「THE THIN
RED LINE」)の「細くて赤い線」とは、正気と狂気の紙一重を指しているとのこと。
よく「プライベート・ライアン」(こちらは四つのオスカーに輝いた)と比較されますが、こちらと違って本作品では基本的にストーリーや主役が明確ではありません。兵士達の個々のエピソードをまるでドキュメンタリーのように繋げていき、激しい戦闘描写と南国の美しい自然を交互に描写していきます。エピソードは必ずしも脈絡はありませんし、効果的かと思われる兵士のモノローグも誰が語っているのか、判別できない部分もあったりします。美しい風景や動物の描写も私にはやや唐突と思われる場面もありました。
しかし、この映画の持つ反戦のメッセージは極めて強烈です。兵士一人ひとりが(例え上官といえども)、何で自分はこんな自然の中で殺戮し、また殺戮されなければならないのか、という大いなる疑問を投げ掛け、併せて彼らの死への恐怖を最大限に伝えてきます。彼らが恐れおののいた日本兵が、攻略してみると自分たちと全く同じように死の恐怖に震えている。そして呪縛のような「お前らもいずれ死ぬのだ」という日本兵の言葉に、戦争の愚かさを改めて知らされるのです。
配役は、主演級のジム・カヴィーゼルが無名です(よね?)が、ショーン・ペン、ニック・ノルティ、ジョン・キューザック、ジョン・トラボルタ、ジョージ・クルーニー、ウディ・ハレルソンなど、ソウソウたる面々。ただし、トラボルタとクルーニーはチョイ役で、あのクレジットでは詐欺だとの噂も・・・。またミッキー・ロークのように、撮影に加わりながら編集段階でカットされた不運な男もいたようです。(^o^)
(ビデオ)
1999.09.25 エスケープ・フロム・LA ★
- 監督がジョン・カーペンターで主演がカート・ラッセルと来れば、かのSFホラーの名作「遊星からの物体X」と同じなのですが、どっこい、こちらは大外れ・・・。
大地震によって孤島と化し、荒廃したLAに米国政府の秘密兵器が盗まれ持ち込まれます。政府側がそれを取り戻すために送り込んだのは、札付きの大犯罪人(カート・ラッセル)。しかも彼には10時間後には脳神経を破壊するウィルスが注射されていた・・・、という近未来SFアクション映画です。「ニューヨーク 1997年」の続編ということですが、こちらは未見です。
タイムリミット・パニックの設定はまだいいとしても、死のバスケット・ボール(何でいきなりあんなことを?)、津波でのサーフィン(嘘でしょう!)によるカーチェイス(道路と平行して津波が動くか?!)、ハンググライダー(中々降りない!)など、各々の出し物が余りにも幼稚でご都合主義。SFXのチープさと相まって、まるで幼児向けの劇画かアニメをみせられているよう・・・。
不気味なキャラを持つスティーブ・ブシェミはいいとしても、ピーター・フォンダ(「イージー・ライダー」)やパム・グリア(「ジャッキー・ブラウン」)などの大俳優を使っているのに、ちっとも生かされていないのはいかにももったいない。特にパムは男の声色の吹き替えになっていて(性転換?)、あれではあまりにも彼女が可哀想・・・。(-.-)
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1999.09.20 マトリックス ★★★★★
- 映画評論家から「21世紀を予感させる映画」であるとか、「1999年はこの映画が登場した年として記憶されるのかも知れない」などと、従来にない賛辞を贈られているSF超話題作。「バウンド」(これも必見)でデビューしたワチャウスキー兄弟の監督作品です。
そんな前評判の一方で、私としてはどちらかというと苦手な、香港のカンフー・アクションや日本のアニメ、テレビゲームなどの要素の集合体だ、などという話にやや恐れをなしての鑑賞でした。しかし、そんな心配を吹き飛ばす、期待どおりの、いやそれ以上の素晴らしい映像とストーリーでありました。特に中盤以降の息もつかせぬ展開に思わず手足に力が入り、見終わった後はドッと疲れが・・・。(^_^;)
人工知能から進化したコンピューターが人間を支配し(=マトリックス)、バーチャルな世界にそこが現実だと思わされて人間が生かされています。そんな仮想現実の世界から人類を救おうとするグループが、彼らの救世主を探しだし、コンピューターが送りだすエージェントと壮絶な戦いを繰り広げていきます・・・。
フローモーションと呼ばれる、120台ものカメラで対象をグルリと廻るように撮っていく手法や、ワイヤーで体を支えるトリック撮影方法などを駆使した映像は、今までに無い奇妙な感覚を体験させてくれて、眼が思わず点になってしまいます。銃弾で打ち砕かれる壁や柱、無数に飛び散る薬きょうなどの描写も大迫力で、印象に残ります。
- 序盤では複雑そうに思えた状況設定も、進行するに連れて十分説明がなされますので、この手の映画としては極めて分かりやすい話の展開になっていると思います。一歩引いてみると荒唐無稽なオオボラ話には間違いないのですが、妙に納得させられるだけの説得力を持っているのが、不思議・・・。これは多分、「運命は決まっているものではなく、自分で切り開いていくものだ」というテーマに、知らず知らずに共鳴しているからかも知れません。
主人公のキアヌ・リーブス、グループ・リーダーのローレンス・フィッシュバーン、ヒロインのキャリー・アン・モスの3人の黒メガネ、黒マント姿は、これ以上ないカッコ良さ・・・。
・・・などというゴタクを読んでいないで、直ちに劇場に直行すべきです、そこのアナタ・・・。(^o^)
(劇場)
1999.09.19 ブレイド ★★
- 「ダークマン」や「スポーン」などと同様、ダーク・ヒーローのアメコミの映画化作品。ここでのヒーローは、出産直前に母親がヴァンパイアに咬まれたために、人間とヴァンパイアとのハーフ(?)で生まれた男、「ブレイド」(ウェズリー・スナイプス)です。彼は自分の不幸な生への復讐と、世界制覇を狙うヴァンパイアの絶滅のためにヴァンパイア・ハンターとして、日夜身を危険にさらしているのです。そして、自身のヴァンパイアへの変身の制止に苦しみながら、最強のヴァンパイア(ディーコン・フロスト)に戦いを挑みます・・・。
黒メガネをかけ、黒マント(ん?マトリックス?)に身を固め、剣を背中に背負ってポーズを決めるマンガチックなヒーローは、そのつもりで見れば中々カッコイイのです。カンフー映画と見間違うような格闘技の連続も、スピード感が溢れていてスカッとしますし、随所のSFXもそれなりに見せてくれます。ただしこれはアメコミの実写映画化であることを、しっかり認識して見た場合の話・・・。
そうでないとどうも全体的にチープな感じが免れませんし、ストンと納得出来ない展開も散見されます。例えば、人間から変身したのでない生粋のヴァンパイアは、何であんなに無力でいとも易々とディーコンに屈服してしまうのか。最終的に伝説の暗黒神となったわりには、なんの変哲もない(目は赤く血走ったけど)ディーコン・・・など。意味もなく東洋人(日本人?)が多く出てきたり、日本語が聞こえてきたりするのも気になりました。
ウェズリー・スナイプスは自ら演出に加わったりしているようですが、相変わらず硬い演技に終始しています。なお、今や伝説の大ポルノ女優、トレーシー・ローズが冒頭出てきますのでお見のがしなく・・・。(^_^;)
(ビデオ)
1999.09.07 バンディッツ ★★★
- 本国で若者の間で大ヒットし、100万人を動員したドイツ映画。ゆうばり国際映画祭でもグランプリを獲得しました。
バンディッツ(Bandits=悪党ども)と名乗る女囚4人組のロックバンドが、刑務所外でのコンサートの機会に脱獄に成功します。かつて音楽会社に売り込んでいたテープを基にしたCDが、それをきっかけに爆発的にヒットし、バンディッツの人気も高まります。彼女らは各地でバンド演奏を行いながら逃亡を続け、国外へ脱出しようと試みます・・・。
この映画はシリアスなロード・ムービーの側面と、ビデオクリップ的な音楽映画の面とを併せ持っているように最初は思ってしまいます。シリアスな展開にこだわると、何故すぐ追手にばれてしまうコンサート活動を性懲りもなくあちこちで行うのか疑問に思うのですが、やがてそれが彼女らの求める真の自由への解放であることに気づかされ、果たしてショッキングなラストを迎えることになります。
バンドを構成する4人は、それぞれにとても個性的。特に凶暴な性格のリード・ボーカル役(ヤスミン・タバタバイ)の印象が強烈です。抜群に歌がうまいと思ったら、彼女は本物のロック歌手だそうな。挿入曲そのものもとても魅力的ですし、演奏シーンも極めてカッコよくキマッテいて、ビートルズの初期の映画を彷彿とさせます。
監督は、かつてブラピの恋人とされた美人のカーチャ・フォン・ガルニエ。そういえばこの映画にブラピとジェームス・ディーンを足して2で割ったようなハンサム青年が途中で出演しますが、そういうところも含めて「テルマ&ルイーズ」にこの映画はよく似ています・・・(ネタバレ、ごめん)。
(ビデオ)
1999.09.04 ワイルド・シングス ★★★
- 「頭が悪いとついていけない」などと観客に失礼なフレコミが付いた、大どんでん返しセクシー・サスペンス。
教育に熱心な高校教師(マット・ディロン)が、教え子の女子生徒(デニース・リチャーズ)から彼女をレイプしたと訴えられ、更に裁判では同級の女子生徒(ネーヴ・キャンベル)からもレイプされたと証言されてしまいます。教師の弁護士(ビル・マーレー)は彼女らが嘘の証言をしていることを暴き、無実を勝ち取るのですが、この事件に裏があると嗅ぎつけた刑事(ケビン・ベーコン)が捜査を進めていくと・・・。
確かに次から次へのどんでん返しにはビックリさせられてしまいますし、デニースらのこれ見よがしの色気ムンムン肢体などで退屈はしませんが、いかんせん、全編に渡ってどうもわざとらしさがつきまとっているのです。観客をハメテやろうとする意図が、余りにもミエミエ。終盤にもなると、どんな展開になろうとも驚かないぞ、などと思わず意地を張ってしまう始末です。
ケビン・ベーコンが制作総指揮をとっていますが、皮肉なことに彼の役柄がどうも中途半端で、焦点がボケルなど、展開の邪魔をしていると思います。また真犯人の犯罪を糊塗する手口は、とても共感できるものではありません。おいおい、痛いだろうにそこまでせんでも・・・という感じ。エンド・クレジットで挿入されるシーンは、本編で明かされた謎解きを単に映像で説明しているだけで、全くの蛇足。
劇場鑑賞した人たちによれば、ケビンのシャワーシーンであそこがモロ見えだったということですが、ビデオではカットされたのでしょう、全くそんな部分は確認できませんでした・・・。いえ、私は別に構いませんけど・・・。(^_^;)
(ビデオ)
1999.08.31 ソウル・フード ★★★
- 監督を始め、スタッフ、キャストが全て黒人による、いわゆるブラック・ムービーです。といっても、人種差別や虐待、プロテストなどとはほど遠い、言わば心温まるホームドラマなのです。
「ソウル・フード」とは豆やチキン、ナマズ(!)などを使った黒人独特の料理のこと。三姉妹の家族を持つビッグ・ママと呼ばれているおばあさん(イルマ・P・ホール)が、皆を集めて日曜日のディナーでこの手作り料理を食べさせ、ファミリーの絆を保っています。ある時そのビッグ・ママが病気で倒れ、またそれぞれの家族のもめ事などから、ファミリーがバラバラになってしまうのですが、このソウル・フードがまた彼らの絆を取り戻していく、という過程を描いた作品です。
ストーリーはビッグ・ママの孫役の少年(ブランドン・ハモンド)の眼を通じて語られますが、彼のビッグ・ママへのけなげでひた向きな愛情に泣かされます。ただ終盤、隠し財産を巡って強引な嘘っぽい展開になってしまうのが、やや惜しい・・・。ビッグ・ママ役のイルマは典型的な黒人の肝っ玉おばあさんを演じていて好感が持てますが、栄養たっぷりで高カロリーなソウル・フードを食べ続けていて糖尿病にかかってしまうという設定は、如何にも皮肉です・・・。(-.-)
長女役は、ブラック・ビューティのヴァネッサ・ウィリアムズで、ここでは役柄もあって知的な美しさを湛えています。彼女はかつて黒人初のミス・アメリカに選ばれたのですが、その後「ペント・ハウス」に以前撮ったヌード写真が掲載されてそのタイトルを返上しなければならなくなり、かえって有名になったのでした。(^_^;)
(ビデオ)
1999.08.24 タロス・ザ・マミー ★★
- この手のものを鑑賞するときは、ある約束事があります。いかに荒唐無稽で、科学的根拠が無くて、ご都合主義であっても、そのまま素直に受け入れることです。そうしたら暑い夏の夜に、持って来いの愛すべき作品になります。
エジプトの遺跡発掘現場で、今までに一度も荒らされたことの無い墓が発見されます。ところがそれは、古代エジプトでの黒魔術にかぶれた残虐な王子が、現代に復活するきっかけを作ってしまうことになるのです。現代に復活したミイラは自分の肉体の再生を実現するために、次々とある目的を果たしていきます・・・。
ユニークなのはここでのミイラは最初のうちは骸布(ミイラを巻く包帯ですね)だけなのです。それがステップを重ねていくに連れて次第に人の形になっていくというもの。
始めはCGのチープさにじっと我慢なのですが、次第にそれにも慣れ、後半からはようやく見応えが出てきます。ただ目的達成の過程が相当かったるい。もう少しコンパクトにまとめるべきでした。
終結のさせ方はなかなか。してやられました。でも最後の大事なワン・ポイントでも、CGは安っぽかったなぁ・・・。(-.-)
(ビデオ)
1999.08.19 エントラップメント ★★★
- ハイテクを駆使して世界の秘宝を狙う大泥棒(ショーン・コネリー)と、そういう盗難で損害を被る保険会社の調査員(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)との騙しあいと淡い恋を描いたサスペンス・アクションです。監督は「コピー・キャット」、「ジャック・サマースビー」などのジョン・アミエル。
シブシブのコネリーと、美貌とナイス・プロポーションの持ち主であるゼタ=ジョーンズの共演で、あの予告編(ゼタ=ジョーンズの突き出したお尻ですね(^_^;))とくれば、いやでも期待は高まります。
なるほどこの映画では観客はタイトル(Entrapment=罠にかけること)どおり、終始騙されてしまいます。でもなんか、イマイチ物足りない・・・。ビルからの逆さ釣りや赤外線ビームのかい潜りも、既に「007」シリーズや「インディ・ジョーンズ」シリーズでご披露済みで、あまり新味はありません。まあ、高層ビルからの宙づりシーンやそこからの脱出劇など、見せ場はそこそこあるのですが、それぞれの完結の仕方が雑で緊張が長続きしないのです。そこに加えて余りにもご都合主義が目立ちすぎ・・・。特に最後の列車の乗り換えシーンはランス・バートンも真っ青な大奇術で、開いた口が塞がらなくなってしまいます。
魅力的な配役に、ハイテクを駆使したツール、世界一の高層ビルなど、いい材料が揃っているのに、あれではもったいない・・・。
なお、クアラルンプールにある世界一高いペトロナス・タワーズが撮影に使われましたが、汚いスラム街と近代的なこのビルをわざと同時に撮影したシーンを指して、マハティール首相は、開発途上国が公的資金をむだ遣いしているように誤解されるとクレームをつけたそうです。でも確かにそう見えましたけどね・・・。(-.-)
(劇場)
1999.08.17 幻影の疑惑 ★★
- メラニー・グリフィスとトム・ベレンジャー。最近は余りパッとしませんが、二人の共演作と知って食指が動いたのでした。「グリース」などで有名な、ランダル・クレイザーの監督作品です。
辣腕女性弁護士である主人公(メラニー)は、ある富豪令嬢の惨殺事件の容疑者を弁護することになります。皮肉なことに担当する検事はかつての夫(トム)。主人公が調査を進めていくうちに、アメリカ大統領候補者の影が浮かび上がってきます・・・。
ストーリーに余り斬新なものはなく、サスペンスというには緊迫感も乏しい展開です。おまけに大統領候補者の下半身スキャンダルが絡むと来ては、またか!という感じ・・・。主人公が弁護する相手とかつて恋仲にあった、というのも何となくわざとらしい。最後に真犯人が明かされて、ムムム・・・。もう少し捻られなかったのでしょうか?これでは「火曜サスペンス劇場」も真っ青です(意味不明)。
メラニーはさすがに「ワーキング・ガール」から比べると姉御然とした感じになって、しかも今回は殆ど色気なしです・・・。(-.-) トムも変に貫録がついてしまいました。今回は損な役回りで、あれでは本人も納得してないのではないでしょうか?
(ビデオ)
1999.08.15 パーフェクト・カップル ★★
- ビル・クリントン大統領をモデルにしたアメリカでのベストセラー小説、「プライマリー・カラーズ/小説・アメリカ大統領選」の映画化。監督は「バージニア・ウルフなんかこわくない」、「卒業」などで有名なマイク・ニコルズです。
ストーリーは、だいたい察しがつきますね。大統領に立候補しているジャック・スタントン(ジョン・トラボルタ)と妻のスーザン(エマ・トンプソン)が、優秀な選挙参謀らとともに、ジャックの数々のスキャンダル(特に下半身絡みの)を乗り越えて当選を勝ち取るまでを描いたものです。そしてこれらのストーリーは、選挙参謀の一人の黒人青年(エイドリアン・レスター)の客観的な眼を通じて語られます。
成功するまでの展開の大枠はこのように決まっているので、興味の矛先は、トラブルの克服の手口は何か、いかにして対立候補を叩くか、またジョンがいかにクリントンに似ているかとか、などということに向けられます。そういう意味ではそこそこ興味深く見ることができました。ジョンはこの役作りのために、クリントンの演説ビデオなどを徹底的に研究したそうですし、また約8キロも太ったとのことです。
唯一私が気になったのは、ジャックがかなり偽善者的に描かれていたこと。(政治家なんだからあんなもんだと言えばそれまでですが・・・)特に密かに調査して判った対立候補者のスキャンダルを、利用しないとしながらも、当の本人に打ち明けて立候補することを諦めさせてしまう件(くだり)など。当然下半身がらみのトラブルも、まさに手当たり次第という感じで羨ましい限り・・・、もとい、同情の余地はありません。
途中で参謀に加わったトラブル・バスターのキャシー・ベイツは、相変わらずいい味を出していたのですが、最後に彼女がとった行動がやや唐突で不可解。
それにしてもエマのビンタは痛そうでした・・・。(>_<)
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1999.08.14 アイズ・ワイド・シャット ★★★
- スタンリー・キューブリック監督が、徹底した秘密主義の基に18ヶ月の撮影期間と1年の編集期間を費やした作品ですが、完成直前に彼は亡くなってしまいました。自ら「この作品が自分の最高傑作だ」と語っていますが、はっきり言って私には???です。
宣伝コピーによれば「キューブリックが最後に選んだテーマは『愛』」とのことですが、『愛』というよりも『セックス』、または『*ァック』でしょう。(^_^;)
医師である主人公(トム・クルーズ)は妻(二コール・キッドマン)から浮気心を告白され、激しい嫉妬と妄想に悩まされます。夜の街へ出た主人公には次から次へと誘惑の手が差し伸べられ、ついにある仮面パーティに参加することになるのですが・・・。
実生活でも夫婦である二人が全裸で鏡の前で絡み合う、衝撃的な予告編どおりの期待をして見ると、肩透かしにあってしまいます。あの場面はホンのちょっぴり。仮面パーティの場面を除けば(しかも遠景ですし)18禁というほど官能的なシーンはありません。(-.-)
健全な成人男子であれば羨ましい展開の連続に前半は引き込まれますが、仮面パーティの絡む中盤以降からやや説明不足となってしまい、そして最後はこの映画を象徴する言葉であっけない幕切れとなって、ストレスがたまってしまいました。まあ、これが世紀の巨匠であるキューブリックの独特の演出ということなんでしょうがね・・・。
トムと二コールはまるで我々観客にではなく、キューブリック監督に対してのみ演技をしていたように見えてしょうがありませんでした。全編を通じたクラシカルな雰囲気と、素敵なテーマ音楽は印象に残りましたが・・・。
それにしても18禁の映画を見たのは何年ぶりだろう・・・。(^_^;)
(劇場)
1999.08.09 レ・ミゼラブル ★★★★
- かの有名なビクトル・ユーゴーの名作の、最近の映画化作品です。監督は二度のカンヌ国際映画祭パルムドール賞に輝く、デンマーク人のビレ・アウグスト。
お馴染みの銀の食器をを盗む冒頭からラスト・シーンまで、弛むことなく一気に見せてくれるストーリー展開は見事です。(原作をしっかり把握していないので、細部まで忠実に描いているのかどうかよく判らないのですが・・・)
更に二人の名優の熱演もあって、大変見応えのある重厚な作品になっていると思います。ジャン・バルジャンを演ずるリーアム・ニーソン(「シンドラーのリスト」など)と、彼を執拗に追うジャベール警部を演ずるジェフリー・ラッシュ。特にラッシュは、「シャイン」同様素晴らしい演技で見るものを圧倒します。珍しくウマ・サーマンが汚れ役で大熱演(死に顔が凄かった!)しているのにも要注目です。また「ロミオ&ジュリエット」や「レインメーカー」でのクレア・ディーンもウマの遺児役で出演していますが、この人の泣き顔は物凄い形相になりますね。
ただラストでラッシュがとった行動は、やや不可解。他に選択肢はあっただろうにと思いますし、第一あれでは**ないのではないでしょうか?他にもやや腑に落ちない状況があります。主人公は恩人の司教に何故もっと早く会わなかったのか、修道院を出ての暮らしがいかにも不用心ではなかったか、など。
また、毎度ながらこういう作品を全編英語で通しているのも、違和感を感じてしまいます。
それでもたまにはこういう文芸作品もいいですね。こういう映画をみるとホントに魂が洗われる気がします、といったら言い過ぎかな・・・。(^_^;)
(ビデオ)
1999.08.07 ダウンタイム ★★
- 老朽化したビルの急降下しそうなエレベーターに閉じこめられた、男女4人のパニックを描いたもの。
封切り時にはイギリス版「ダイ・ハード」と宣伝されていたようですが、それを信じて劇場鑑賞された方はお気の毒でした。主人公のポール・マッギャンは、ブルース・ウィリスほど強くはありませんし、魅力的でもありません。勝っているのは髪の毛くらいなもの。(^o^)
仕掛けもそう大掛かりではありませんし、あっと驚くような展開もありません。例によってイギリス映画独特の暗さが全編を覆っていて、見ていて重苦しい感じが否めません。
トラブルの原因を作る不良グループは何であんなに気違いじみているのか、また彼女の自殺願望となった原因は取り除かれたのかなど、最後までよく分かりません。加えて主人公をああまで駆り立てたものはヒロイン(スーザン・リンチ)への恋愛感情なんでしょうが、その辺のところが明らかに説明不足だったように思います。
ヒロインの息子のあどけなさだけが印象に残った作品でした。
でもイギリス人というのは、どうしてあんなに訛った英語を喋るのでしょう?(^o^)
(ビデオ)
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