2009.12.28 アイアンマン ★★★☆
- アメコミが原作であることを冒頭シーンで知りました。それにしても、アメコミの主人公とヒロインに、薹の立ったロバート・ダウニー・Jrとグウィネス・パルトロウというキャスティングとは恐れ入ります。何か変です・・・。(^o^)
- 武器製造会社のオーナーである富豪の男(ロバート・ダウニー・Jr)がテロリスト集団に捕まったことをきっかけに正義(?)に目覚め、空をも飛べる特殊なスーツを作って彼らに立ち向かうと言うお話。
- 前半のリアルで緻密(そう)な展開に思わず引き込まれますが、次第にスーパーマン、ロボコップ、トランスフォーマーといった既視感いっぱいの普通のヒーローものになってしまうのは、致し方ないところか・・・。主人公が自ら試行錯誤しながらパワード・スーツを開発していく過程をユーモアを込めながらじっくり見せるのは、バットマンなどと違って新鮮に写ります。
- スーツを身に着けるクダリ(多分CGですね)もなかなか決まっていて、見ていて快い。クライマックスのバトルは、この手のものではよくある類型的な展開となるのは惜しいところ。もう少し捻って貰いたかった。
- 麻薬所持で何度も逮捕歴のあるロバート・ダウニー・Jrですが、演技は流石に巧いですねぇ・・・。脇を固めるのは、驚くべき変貌ぶり(私にとって)のジェフ・ブリッジス。彼が流石に大きな存在感を示しています。久しぶりに見たグウィネス・パルトロウ、相変わらず美形ではありませんが、とても良い雰囲気を持っています。
- エンド・ロールの後で、これ見よがしにサミュエル・ジャクソンを引っ張り出して、続編あります!と喧伝するのは如何なものか・・・。(-.-)
- (BS-HV)
2009.11.30 2012 ★★★★
- 如何にヒューマン・ドラマに深みが無かろうとも、この映像だけは劇場の大画面で見たいと思ったことでした。「インデペンデンス・デイ」、「デイ・アフター・トゥモロー」、「紀元前1万年」など、ストーリー展開よりもVFXを駆使したスペクタクル映像を重視するローランド・エメリッヒ監督の最新作です。
- 結論、確実に元は取れました。(^o^) もっとも何故か「元」がこの6月から1,000円になっていますが・・・。(^_^;)
- ローランド・エメリッヒの面目躍如というか、これ以上のディザスター映画はしばらく作れないのではないか、というか・・・。とにかく大規模な地割れ、大地震、都市の陥没、名所・旧跡の崩壊、火山噴火、大津波などの仰天映像が、これでもかという程見せつけられます。大スクリーン・シアターの前後左右のど真ん中というベスト・ポジションということもあって、迫力あるサラウンド音響に包まれ、臨場感も十分過ぎるほど十分。思わず下半身に力が入ります。(^_^;)
- 主人公(ジョン・キューザック)一家が余りも都合よく危機を逃れたり、知り合いがタイミング良く現れたり、彼らの飛び入りのために犠牲になる人達がいたとしても、それはこの映画の展開上、必然的なこと。それをとやかく言っても仕方ありますまい。
- ただ、やはり後半の水中シーンなどは、明らかに「タイタニック」や「ポセイドン・アドベンチャー」の二番煎じで、少々弛れてしまいます。この辺にもっと新鮮な工夫が欲しかった・・・。
- この手の映画にしては珍しく中国やインドがクローズ・アップされていますが、日本は殆ど無視されています(と言うか日本人が出ているように見えない)。
- 米国大統領の行動は、いかにも米国万歳のハリウッド流。余り知的には見えない黒人のダニー・グローヴァーの配役はミスかも。この他、準主役に黒人のキウェテル・イジョフォーが起用されていますが、彼の遅過ぎた正義感は少しイラつく感じが無きにしもあらず。狂言回し的(?)なウディ・ハレルソンは良い味を出していたと思います。ロシアの大富豪の最後はあれではちと可哀想か・・・。
- ところで、タイトルは例の「マヤ文明の暦による終末」に因んだものですが、そこをな〜んも深堀りしないのは、潔いと言えば潔い・・・。(^o^)
- (劇場)
2009.11.15 暴力脱獄 ★★★
- ポール・ニューマンの最高傑作とのこと。邦題が余りにも内容とミスマッチということで、その点は悪評を買っているようです。
- クールな主人公が刑務所から何回も脱獄を重ねるという内容は、先日NHK-BSで緒形拳の追悼番組として放映されていた「破獄」に似ていますし、また名作「ショーシャンクの空に」にも類似しています。ただし、スリリングな脱獄劇を期待しているとやや退屈に思えるかも知れません(私がそうでした(^_^;))。反骨精神溢れる主人公が周りから次第に英雄視されていく様を描いた、メッセージ性の強いヒーローものと考えた方が良さそうです。
- ゆで卵を50個一度に食べてみたり、無計画に脱走を企てたり、奇をてらった主人公の行動はイマイチ私には共鳴できませんでした。彼の目的意識がはっきりしません。だいたい、パーキングメーターを意味なく壊して刑務所入りとは・・・。2年程度の刑期であれば、大人しくしていた方が良さそうなものを・・・、ではクールなルークにはならないのでしょうがね。(^_^;)
- ラストがあれでは、後味もよろしくありません(彼が笑っていたとしても)。
- ここでのポール・ニューマンは汚れシーンが多いものの、時折ハッとするような凛々しさを見せてくれます。まさに油が乗りきっていたという感じ。共演者は牢名主的な役回りのジョージ・ケネディが印象的でした。彼は本作でオスカーを手にしています。
- セクシーな娘の洗車シーンは笑えます。今の映画ならもっと大胆なショットになっていたことでしょう。それにしても特典映像でのこの女性役の老け振りにビックリ。まあ今から40年も前の作品ですから止むを得ませんが・・・。クレジットにデニス・ホッパーの名前を見つけましたが、誰が彼だか最後まで全く分かりませんでした。(^_^;)
- (BD)
2009.11.08 ハプニング ★★☆
- 「シックス・センス」以降、「アンブレイカブル」、「サイン」、「ヴィレッジ」、「レディ・イン・ザ・ウォーター」と全てが不評を買っているインド人のM・ナイト・シャマラン監督の最新作。本作がダメダメであれば、最早「シックス・センス」がビギナーズ・ラックだったと言われても致し方ありません(いや、もう遅いか)。
- 大勢の人間が次々と自ら命を絶つという異常現象が発生し、原因が分からないまま、皆がパニックに陥っていくというサスペンス作品で、本作もシャマランさんならではの得も言われぬ奇妙な味付けがなされています。序盤のショッキングなシーンや徐々に恐怖感を盛り上げていく作りは、久々におお!と思いました。原因不明の恐怖からの逃避行は、それなりに緊迫感をもたらしています。ただ、だいぶグロいシーンもあるので、要注意です。
- やはりというか、今回も終盤で明かされる原因の説明は、やはり脱力もの。それなら、家の中が安全のはずはないでしょう。密閉できている訳ではないのだから・・・。「地球が静止する日」と同様、これも自然界から人類への警告映画ということなのでしょうか。結局、要はビックリさせたかっただけ、と言えるかも・・・。
- 主演のマーク・ウォールバーグは中々の好演。益々この人は良くなっているように思います。この手の映画に余り似付かわしくはないジョン・レグイザモも、チョイ役ながら中々よろしい。ヒロインのゾーイ・デシャネルは終始ミステリアスな表情で、この映画の恐怖心を増長させることに一役買っていたと思います(あの落ち着きの無さが演技だとしたら、素晴らしい)。本作では、ワイルド・ワンズのメンバーに似たシャマランさんの特別参加は無かったようです。
- 「シックス・センス」を越えるのは最早不可能でしょうから、別の方面を指向したらいかがでしょう?>シャマランさん(^_^;)
(BS-HV)
2009.11.03 スター・トレック ★★★★☆
- 11月6日のDVDやブルーレイ発売に先行して、一夜限りの放映とのこと。これは見逃すわけにはいきません。
- このカルト的人気を博すTVシリーズのファンを「トレッキー」などと言うのだそうな。SF好きな私ですが、このTVシリーズは全く見ておらず、わずかに「耳のとんがったエイリアン(?)が出ているB級SFテレビ映画」程度の認識しかありませんでした。
- どうやら本作品は時系列的にはTVシリーズが始まる前の、いわば「スター・トレック・ビギニング」という趣の映画のようです。「トレッキー」でない全くの初心者でも、この作品は楽しめるのでしょうか?
- 映画は、主人公のカーク(クリス・パイン)が誕生するところから始まり、続いて少年期を描いて、彼がいかに型破りな人間であるかを紹介して行きます。準主人公的扱いのスポック(ザカリー・クイント)も、人間とバルカン人のハーフであることなど、かなり丁寧に背景が描かれます。
- その後の展開はかなりテンポが速く、置いていかれないような集中力が私には必要でした。「トレッキー」であれば、この辺は難なくクリアなのかも知れません。それでもしっかりした構成に基づく展開や見応えのあるVFXには、十分引き込まれました。カークのイケイケ的性格に引っ張られる強引な展開も、痛快そのもの。ただし中盤以降の、未来のスポック(レナード・ニモイ:TVシリーズのオリジナル俳優らしい)が現れるあたりからは、そのタイムパラドックスがやや分かりにくいと感じました。
- ワープのVFXが余りにもチープなのは、あれはTVシリーズを意識してわざとなのでしょうか?
- エンド・クレジットで2回ビックリ。あのネロ(悪者)役は、エリック・バナとのこと。なるほど、眼と眼が離れているのは、宇宙人的メイクではなかったのですね。(^o^) もう一人は、ウィノナ・ライダーの名前を見つけたこと。どうやらスポックの母親役のようですが、全く気がつきませんでした。見直してみると確かに彼女ですが、随分老け役を引き受けたものです。
- 主人公役のクリス・パインは中々存在感があって、魅力的な俳優ですね。今後、もっとブレイクするのではないでしょうか?
- 続編も予定されているとのことですが、次は劇場の大画面で見たいと思っています。いやあ、SFって本当に良いですね・・・(お前、幾つだ?(^_^;))。
- (BS-HV)
2009.11.01 ハンコック ★★
- ハンコックと聞くと、私なんぞはすぐにジャズピアニストであるハービー・ハンコックを思い出します。(^_^)
- 本作の主人公であるハンコック(ウィル・スミス)は、予告編にあるように機関車と衝突してもびくともせず、空を自由に飛べる超人なのです。本作はそんな彼の活躍を描いたヒーローものですが、アメコミが原作ではなく、オリジナル脚本とのこと。
- まあ、黒人版スーパーマンという趣ですが、異なるのはこちらはかなりの悪ガキ風でトラブル・メーカーであるというところ。市民の危機を救う際にビルや道路を容赦なく破壊したり、いつも飲んだくれていたり、暴言を吐いたり・・・。
- そんな彼がある時列車事故から救った男に、正義のヒーローとしてのイメージ・アップ計画を持ちかけられるところから、新たな展開が始まります。
- 序盤の、彼が空を飛んだり、市民の危機を救うシーンのVFXの出来の悪さに、脱力・・・。余りにも漫画チックです(まあ、漫画ですが)。これは見る時間の無駄かななどと思いましたが、件(くだん)の男のワイフ役でシャーリーズ・セロンが出てきて、話が思わぬ方向に展開するので、我慢して見続けます。
- しかし、彼らが不老不死身の設定であるその背景の余りの荒唐無稽さや、彼らのパワーが失われる仕組みの単純さなどに、次第に見る気持ちが萎えていきます。大体、あの二人がああまで喧嘩する理由が分かりませんし、また恨みを持つ輩が、何故彼らのパワーが落ちていることに気づいたのか、得心がいきません。
- 後半はシャーリーズ・セロンの存在感だけで持っているかのようにも思われました。まあ、彼女が登場して、ただの主婦であるはずがありませんもの。
- それにしても、あの夫婦は旦那は老いてていっても妻はいつまでも若いままの訳ですから、いずれ正体がバレますね。(^o^)
- (BS-HV)
2009.09.28 ジェシー・ジェームズの暗殺 ★★☆
- アメリカ西部開拓時代に列車強盗などの悪事を働きながら、義賊的な一面を持っていた実在の人物であるジェシー・ジェームズと、彼を慕いながらも最終的には背後から彼を撃ったとして卑怯者の烙印を押されたロバート・フォード(レッドフォードではありません)の物語です。
- 見終えた印象は、西部劇というよりもシリアスな心理劇という感じ。主要人物の心理面の描写がこれでもか、という位続きます。しかも160分も。いかにも長い・・・。集中力を持って見続けるにはかなりの忍耐力が必要です。(-.-)
- 心理的に屈折したジェシー・ジェームズをブラピ(ブラッド・ピット)が演じていますが、むしろ主役はロバート・フォードを演ずるケイシー・アフレックでしょう。序盤にエヘラエヘラしていた彼が後半以降、ジェームズの不気味な心理的圧迫に次第に心を壊していく様を見事に演じています。彼はベン・アフレックの弟ですが、巧い俳優なんですね。この演技でアカデミー賞の助演男優賞にノミネートされました(受賞は無し)。
- ただ、この二人を取り巻く親戚連中の相関関係がとても分かりにくく、物語の中弛みを助長してしまっています。また、ジェームズの残虐な面しか強調されず、今なお南部の人に人気があるような義賊的面が少しも描写されないのはやや変です。従って、彼を背後からとは言え、射殺したロバート・フォードを卑怯者扱いにする理由が希薄に感じられます。
- 原題は「THE ASSASSINATION OF JESSE
JAMES BY THE COWARD ROBERT FORD」でほぼ直訳の邦題ですが、ただこの「暗殺」という言葉に違和感を覚えます。一般的に「暗殺」とは政治上の要人等を殺害することを指すのではないかと思いますが、いくら有名人でも義賊的な彼には当てはまらない気がします。「リバティー・バランスを撃った男
」という有名な西部劇映画の原題は、「THE MAN WHO SHOT
LIBERTY VALANCE」。これが正解では?
- 終始暗い描写が続き、後味も余り良くないので、日曜の午後や夕刻などでの観賞はお薦めできません。(-.-)
- (BS-HV)
2009.09.20 ベンジャミン・バトン 数奇な人生 ★★★★
- アカデミー賞の最多13部門にノミネートされたこの注目作は、いかにも奇をてらった感じがして私は食指が動きませんでした。なにせ、老人で生まれてから次第に若返る人物が主人公などというのですから、へたをすれば脱力系ファンタジーになることは明らかです。しかしながら、意外と評判が良いようで、それならばとの鑑賞です。
- 本作は所謂ウケる映画の要素が沢山盛り込まれています。まずは老人を登場させて若い時代を語らせて行くこと、モノローグを挿入すること、意外な親子関係を明らかにしていくこと、等々。本作のテーマを象徴しているかのような冒頭の逆回りをする時計のエピソードが印象的です。続く主人公が生まれるシーンは既視感があると思ったら、バットマンの第二作のペンギンマンが生まれるシーンにそっくりでした。
- 167分の長尺ですがその長さを感じさせない、かなり引き込まれる展開が続きます。分かり切ってはいるものの、終盤の主人公の運命に泣かされました。ただ、最後は乳飲み子になってしまうのは、いかにも嘘っぽい・・・。
- 幼少の主人公は、子供の体にブラピ(ブラッド・ピット)が老けメイクした頭部を合成しているようです。ですから、頭でっかちでとても変。しかもブラピの老けメイクの出来が、後半の若返った時の若者メイクに比べて余り良くありません。それに比べて、老女メイクを始めとして、若い時代、中年時代のヒロインのケイト・ブランシェットのメイクは素晴らしい。まあ、若い時代はメイクというよりもCGによる修正の賜物でしょうが・・・。それにしてもケイト・ブランシェットが名女優であることを又々認識させられたことでした。
- あと特徴的だったのは、雷に7度も打たれた男性のエピソード。その都度、古いトーキー映画のようなシーンで再現されるのには笑いました。それに、敵船から放たれる銃弾がとてもリアルで臨場感一杯の戦闘シーン。
- エンド・クレジットで監督がデヴィッド・フィンチャーであることを知り、ビックリ。「セブン」や「ファイト・クラブ」などに代表されるように、ダークで独特の雰囲気を持つ映画を撮る鬼才というイメージの彼ですが、本作では確かに暗さはありますが、彼独特の捩れたムードは薄いと思いました。
- いかにも映画らしい良質な作品。でも「奇をてらったもの」であることは間違いありません。(^o^)
- (BD)
2009.09.19 セックス・アンド・ザ・シティ ★★
- なんとも大胆なタイトルのこのTVドラマシリーズを、全く私は見たことがありません。「ブリジット・ジョーンズの日記」などと同様に、何となく男性が見てはいけないような気がして・・・。(^_^;)
- 本作品は、TVドラマの最終回から4年が経った設定なのだとか。とにかく4人の女性のキャラであるとか背景などは全く分からずに鑑賞。冒頭にその4年間の4人の状況が手短に紹介されますが、殆どついていけませんでした。
- 恋人と結婚したいルンルンの女性、年下の恋人はいるが何となく満たされていない女性、養子を貰ったら妊娠した幸せな女性、夫の一度切りの浮気を許せない女性の4人が、それぞれの境遇を乗り越えて強固な友情を確かめていく映画、という感じでしょうか?
- ふ〜む、世の女性はこういう女性のキャラや状況に共感するのか・・・。ファッショナブルなドレスに身を包み、ブランド品を身に付けて(美豚とか言う)、美味しいワインと高価そうな食事を楽しむ・・・。いずれも庶民の生活感からかけ離れた裕福な生活を送ることが出来る女性ばかりですが、それがいいのかな?私には殆ど誰にも感情移入が出来ませんでしたし、別世界を垣間見た、という印象だけが残りました。
- だいたいあの主人公の馬面はどうもいただけません。スタイルは流石に良いとは思いますが。
- 肝心の(?)セックス・シーンは、一見大胆そうですが殆どリアル感がありません。ボカシも入りますし・・・(TV放送だけかな?)。
- やはりTVシリーズを見続けた女性向けの作品なんでしょうね。それにしても144分は長過ぎ・・・。(-.-)
- (BS-HV)
2009.09.06 地球が静止する日 ★
- 51年に製作されたSF映画「地球の静止する日」のリメイクですが、本作は大作(風)映画の中では近来稀な駄作ではないでしょうか?キアヌ・リーヴスはともかく、ジェニファー・コネリーやキャシー・ベイツといったオスカー女優を配しているにも関わらず、です・・・。
- 地球環境を破壊する人類から地球を守るために、エイリアンが人類を絶滅させるって、そんなバカな。ほっといて下さいな。
- それにしても不思議なくらい展開がつまらない・・・。脚本が稚拙ということなのでしょうな。わざわざあんな大掛かりなしかけで地球人を抹殺しにはるばる宇宙の彼方からやってきたのに、あんなことでそれを止めてしまうとは!
- 日本のアニメかなんかで見たことのあるような大型ロボットの、あのデクノボウぶりは何なのでしょう?何しに来たの?
- あんな洞窟のような所に身を寄せるだけで、助かってしまうご都合主義に、イスからずり落ちそうになりました。
- 見ていて退屈どころか、どうもイライラすると思ったら、ジェニファーの養子役のジェイデン・スミス(ウィル・スミスの息子です)のムカツク演技のせいでした。
- ただし、巨大スタジアムや走っているトラックが見る見るうちに崩れ落ちていくVFXだけは見ものなので、これに星一つ。
- (BD)
2009.08.31 ダウト
〜あるカトリック学校で〜 ★★★
- 小さい頃はよくこのスリリングなトランプゲームをしたなぁ、などと思いつつ・・・。本作はトニー賞、ピュリッツァー賞をダブルで受賞した戯曲の映画化なのだそうな。81回アカデミー賞で主演女優賞(メリル・ストリープ)、助演男優賞(フィリップ・シーモア・ホフマン)、助演女優賞(エイミー・アダムス/ヴィオラ・ディビス)、脚色賞(ジョン・パトリック・シャンリィ)の主要4部門にノミネートされました(いずれも受賞は無し)。
- カトリック学校を舞台に、少年に対する性的虐待の疑いをかけられた司祭(ホフマン)と、厳格な女性校長(ストリープ)の攻防が展開される心理劇です。何となく怪しいホフマンと、華やかさを一切配した(というか殆ど婆様のような)完璧なまでの役作りに徹するストリープ。つくづく巧い配役だなあと感心してしまいます。この二人の大物俳優の火の出るような丁々発止の一騎打ちに引き込まれたり、余りの激しさに逆に引いてしまったり・・・。
- 明確に結論付けられない結末に、欲求不満を感じてはいけないのでしょう。真相がどうであるかは、観客の判断に委ねられています。ただ、ホフマンのあの煮え切らない態度と、いわく付きの少年とのあの状況では、クロと言わざるを得ないでしょう。まあそうでなくとも、怪しげな雰囲気を持つホフマンを配した段階で、それは決まっているようなものですが・・・。(^o^)
- 強引にホフマンを犯罪者扱いをするストリープが、終盤に吐く言葉は「私にもダウトがある・・・」。つまり自分も同性愛指向がある、だから彼のクロを確信しているんだ、と言わんばかり・・・(当たっているならネタバレですm(_
_)m)。
- エンドクレジットのテロップで、「本作をシスター・ジェイムズに捧ぐ」とあり、映像特典では原作者であるジョン・パトリック・シャンリィの恩師だった実在の人物であることが分かります。このシスター・ジェイムズ(エイミー・アダムス)が両者の間で揺れ動く、いわば鑑賞者の気持ちを代弁する重要な役割を担っています。少年の母親役のヴィオラ・ディビスがスゴイ。鼻水を垂らしながらの熱演は、オスカーをあげても良かったのではないかな。特典映像の出演者合同インタビューでも、両御大を差し置いて、前向きな意見をバリバリ主張していたのが印象的でした。(^o^)
- 60年代のカトリック学校の状況、実情も興味深い。人種差別は基より、シスターさん達は質素な一皿料理を黙々と食べ、司祭達はビールに豪華な肉料理を談笑しながら楽しむ、などというと男女不平等の描写も面白かった。
- (BD)
2009.08.23 ナルニア国物語/第2章:カスピアン王子の角笛 ★★☆
- ディズニー作品ということもあり、子供向けであることを承知しての観賞。「ロード・オブ・ザ・リング」(LOTR)と双璧と言われている英国生まれのファンタジーで、LOTRと同様に三部作ですが、あちらと違って一作毎に一応話が完結するところがよいですね。ただ、物語性やスケール感はLOTRには遠く及びません。
- 前作から1300年後のナルニアが舞台。そこを支配している民族の王位継承者であるカスピアン王子が暗殺の危機に陥り、彼が角笛で主人公集団の4人を呼ぶ場面から物語が始まります。
- 前作から3年経っていますが、次男、次女の成長ぶりが目立ちます。特に前作ではジコチュウだった次男がとても逞しくなっているのが印象的。重要な役どころも担っています。
- 前作ではカリスマ的な存在であったライオンのアスランの登場を、あんなに引っ張ったのは意味が良く分かりません。さっさと出て来ればあんな苦労は無いものを・・・。それにしても木々が動き出すなど、LOTRの影響を受けているのが良く分かります。戦闘シーンも既視感が一杯。しかも全体的にCGの出来は余り良くありません。
- そんな中で新しいCGキャラであるネズミの騎士が中々よろしい。流石ディズニー映画です。(^o^)
- カスピアン王子が演ずるベン・バーンズが悪いのか、キャラの設定が悪いのか、イマイチ光りません。元々の主人公である4人に加えてのダブル主人公仕立てが良くなかったのかも。前作の人気キャラであったタ厶ナスさんが登場しないものやや寂しい。白い魔女(ティルダ・スウィントン)の友情出演(?)は嬉しかったのですが・・・。
- それにしても150分というのは、いかにも長過ぎ。中弛みは免れません。
- やはり本シリーズの最大の難点は、メジャーな俳優が誰も出ていないと言うことだな・・・。(-.-)
(BS-HV)
2009.08.18 潜水服は蝶の夢を見る ★★★
- 何ともシュールな邦題です。フランス映画ですが英語題は「THE DIVING BELL AND THE BUTTERFLY」、つまり「潜水鐘(服)と蝶」だけなのです。「(蝶)の夢を見る」としたのは果たして正解だったかどうか? 何となれば、夢を見るのは潜水服ではなくて、潜水服を着ている人間だから・・・。(^o^)
- 閑話休題。数えきれないほどの映画賞を受賞した本作は、突然の病に倒れ、身体の自由を奪われてしまったELLEの元編集長ジャン=ドミニク・ボビーが、唯一動く左目の瞬きで綴った自伝を映画化したもの。
- サポートする人間がアルファベットを読み上げ、該当する語で主人公が瞬きをし、それを書き留めていくという記録方法なのです(他にもっと効率的な方法がありそうですが)。自伝を書き上げるために20万回もの瞬きが必要であったとのことですので、双方の根気に敬服せざるを得ません。
- 冒頭からしばらくは、主人公の視線が疑似体験できます。視野が狭く、ぼやけた映像が続きます。瞬きでは瞬間暗くなり、涙を流すと全体が滲むなどと細かい表現方法が取られますが、観客はその圧迫感に次第に息苦しくなり、まさに潜水服を付けているような感覚に陥ります。
- 主人公が「自分を哀れむのをやめて」からは、客観映像も付加され、観客は救われた気持ちになるのですから、まんまと監督の思うつぼにはまるという塩梅です。
- 華やかなファッション雑誌の編集長で、恋愛など何不自由なく人生を謳歌していた過去と、現在の悲惨な境遇との対比が鮮やかに描かれます。また、老いた父親との電話(もちろん一方通行)のシーンは涙無くしては見られません。どうも本作に限らず父親と息子の絡みのシーンは泣けるのだ。
- エンドクレジットで、自伝の出版後10日で本人が死亡と知らされ、何とも暗い気持ちに・・・。
- 主人公のジャン=ドミニク・ボビー役にマチュー・アマルリック。この人は「007/慰めの報酬」でチンピラ然とした悪役を演じた人ですね。本作でも健康な過去のシーンでは、やはりチンピラにしか見えませんでした。(^o^)
- 彼を取り巻く妻、愛人、看護師などが登場しますが、似ている女優ばかりで、後半は誰が誰か、見分けがつかなくなりましたぞい。(^_^;)
- (BS-HV)
2009.08.10 帰らない日々 ★★★
- ホアキン・フェニックスの陰鬱な横顔のイメージ写真の本作。夏休みに入ったばかりの休日の鑑賞には余り相応しくないかな、とも思いましたが、好きな女優の1人であるジェニファー・コネリーが出演しているということで、ディスプレイの前に座ります。(^_^;)
- う〜む、冒頭から悲惨な展開が・・・(やっぱり見なければよかったかも)。交通事故で息子を亡くした家族と、加害者の男のそれぞれの苦悩を描いた作品です。余りのリアルな展開に実話に基づく作品かなとも思いましたが、中盤以降の重なる偶然に、ああこれはフィクションだなと分かりました。
- 不幸はいきなり訪れるということと、誰でもが加害者になりうる、ということを思い知らされ、心が暗くなります。それにしても、登場人物がわざとらしく関連性があり過ぎ。主人公の依頼先があの男とは、思わずズッコケ(死語?)ました。娘の教師があの男の元妻という設定も含めて、かなりリアリティをそぐことになるということを、監督、脚本のテリー・ジョージは考えなかったのでしょうか?彼は監督し、かつ脚本を書いた「ホテル・ルワンダ」では、脚本賞のオスカーを獲得しているんですよ。
- ホアキン・フェニックスは私には「グラディエーター」での悪役のイメージが強いのですが、ここでは幼い息子を亡くし、次第に人格を崩壊させていく父親役を巧みに演じています。年齢よりも随分老けても見えます。
- 彼にも増してその演技にうならされるのは、ジェニファー・コネリー。彼女の悲しみの表情は涙無くしては見られません。この演技もオスカーものと思いますが、いかがでしょう?(「ビューティフル・マインド」にて助演女優賞を獲得済み)
- 教師役の女優はどこかで見た顔と思っていたのですが、エンド・クレジットでミラ・ソルヴィーノと分かってビックリ。ゴージャスな感じが削がれて、随分庶民的になったものです。
- ラスト・シーンには救われますが、それとは別に彼らの苦悩は一生続くのです・・・。(-.-)
- (BS-HV)
2009.08.03 アメリカを売った男 ★★★★
- 本作の原題は「Breach」。ブリーチと言えば私には洗濯用の漂白剤しか思い浮かびません(^o^)が、ここでは「法律違反」を表しているようです。
- FBI特別捜査官でありながら、20年以上もロシア、ソ連側に情報を流し続けた実在の人物、ロバート・ハンセンの逮捕前の2ヶ月を描いたサスペンス・ドラマです。彼が売った情報の被害総額は10億ドル以上で、その中にはKGBに送り込んだアメリカのスパイの名前なども含まれており、50人以上の同胞を死に追いやったとのこと。にわかには信じられませんが、事実なんですね。
- 実話でなおかつ事実関係は公表されていませんから、ドラマティックな展開は余り期待出来ませんが、それでもこの手の映画にありそうなタイムリミット手法がいくつか用いられていて、それなりにハラハラ、ドキドキはさせられます。最初は事情を知らない若い補佐官が、結局2ヶ月の間にハンセンの正体を暴いていくわけですが、その経緯が克明に描かれていて見応えは十分。重厚な仕上がりになっています。
- やや分からないのは、あれだけの情報技術に長けたハンセンが、補佐官以外にも多数の内偵者が居て調査活動を進めていたにも関わらず、それを見抜けなかったこと。またその補佐官を信じきっていたこと。
- ハンセン役は、私の好きな俳優の1人であるクリス・クーパー。情報横流しを続ける一方で、妻とのベッドシーンをビデオに納め、知人に送り付けるなどという屈折した男を怪演しています。彼が登場すると場面の空気が凍りつきます。これ以上のはまり役はないでしょう。補佐官役にライアン・フィリップ。「父親たちの星条旗」でブレイクしていますが、彼は相変わらず無表情。ここではその無表情がかえって良いのかも。補佐官の上司役にローラ・リニー。脇役専門という感じの彼女ですが、随分老けましたね。アップは可哀想。
- 逮捕されたハンセンと補佐官が偶然エレベーターで一緒となるラスト・シーンは、殆どホラー映画そのもので、かなり怖いので要注意です。(・・;)
- エンド・クレジットで、「ハンセンは終身刑で今も服役中」というテロップが流れますが、これだけのことをしておきながら死刑を免れたというのは、色々な意味で彼の実績、知識がFBIに取ってはまだまだ有用ということなんでしょうね・・・。
(BS-HV)
2009.07.26 ノウイング ★★★
- 予告編を見る限り、どうやら地球の破滅を描いたディザスター(災害)・ムービーのようです。しかも飛行機墜落や地下鉄の脱線事故のVFXを売り物としているらしい。ということで、やはりこれは大画面で見ておくべきかと、封切り2週間後の劇場観賞と相成りました。監督は「アイ,ロボット
」などのアレックス・プロヤス。
- 展開はCMなどからほぼ予測出来ますし、結末も容易に読めます。前半は謎解きサスペンス的で引き込まれますが、真相が分かってからは主人公(ニコラス・ケイジ)が全くなすすべが無く右往左往するだけなので、やや中弛み感が・・・。
- 終盤の展開は「未知との遭遇」とカブる印象でしたが、SFというよりはむしろ宗教的ファンタジーの様相が強いと思います。あれは「アダムとイブ」か、はたまた「ノアの箱船」か・・・。地球があのように破滅しても、一縷の望みを持たせるところがやはりハリウッド的。私は嫌いではありません。
- ただ、正体不明の人物の描き方はもう少し工夫があっても良かったと思います。彼らに口から火を吹かせてはいけませんよ。それに黒い石の意味が私にはイマイチよく分かりませんでした。お約束のサイド・ストーリーは、主人公と母親を亡くした息子や、主人公と断絶状態の父親との関係が絡んで、余念がありません。
- 肝心のVFXはというと、殆どCMで見せられていたような気がして、新鮮さが無く、何か損をした気分。え?飛行機事故シーンって、この程度でしたっけ?地下鉄事故は流石にリアルな描写で、ちょっとヒキます・・・。ラスト、主人公の家族が抱き合ってそれを迎えるシーンは、「ディープ・インパクト」にそっくり。
- ニコラス・ケイジはいよいよくたびれ感が強くなってきています。あの困ったちゃん顔が、益々困ったちゃん度が増しています。第一、あの髪形はどう見ても可笑しいぞ。
- 映画が終わって、ロビーへの出口の所で「意味が分からなかった」というようなことを、劇場スタッフに訴えている中年の女性がいました。そう言われてもね・・・。(^o^)
- (劇場)
2009.07.20 007/慰めの報酬 ★★
- 007シリーズの最新作(第22作目)ということで、一応チェック。前作の「カジノロワイヤル」では、ダニエル・クレイグのボンドは私としては及第点を付けましたが、本作はいけません。がっかりです。よく言えばスティーブ・マックイーン風、悪く言えば、栄養失調の猿風。ゾンビに見えるシーンもあったぞい。(^_^;)
- 第一、007シリーズでは欠くべからざる例のイントロ(横向きで歩いていて、こちらを向いて発砲し、ボンドのテーマに繋げるシーンね)が最初に出てこないのです(何とラストに出てくる)。女体をモチーフにしたオープニング・クレジットは本作では復活しましたが、セクシーさは全くありません。例のセリフ「I am Bond, James Bond.」も出てきません。このセリフを言わないボンドって、ありましたっけ?
- もちろん、初期の作品のような知的なユーモア、紳士然とした余裕などからも縁遠くなっています。例のハイテク(ローテク)秘密兵器なども登場せず、リアルさに徹しています。もはやこれは007シリーズとは言えないのではないか、などとも思ったり。
- しかもストーリーがすこぶる付きで面白くありません。ポール・ハギスの脚本というのに、一体どうしたんだ?ダムで水を止めて、水の販売で一儲けするってか?せこい!宇宙ステーションからハイテク武器をコントロールして世界征服を目論む、などというスケールの大きい悪役は出てこないのかい?
- アクションシーンはジェットコースター的に連続しますが、何せカット割りが多くて何が何だか分からない始末。これは何とかならなかったのでしょうか?
- ボンドガールのオルガ・キュリレンコも私に言わせれば落第。ボンドガールに必須の華がありません。もう一人のボンドガール(?)も、金色ならぬ真っ黒なオイルを塗られては見る影も無し・・・。
- 次回作もあるのでしょうが、007シリーズ存続の正に正念場となるでしょう。(-.-)
- (BD)
2009.07.19 告発のとき ★★★★
- 「クラッシュ」で初監督ながら、アカデミー賞で主要3部門のオスカーを獲得したポール・ハギスのそれに次ぐ監督作品ということで、大いに注目していた本作。劇場観賞を逃していたのでした。
- 実話に基づくものということですが、展開はサスペンス、謎解き仕立てです。ところが見終えて、イラク戦争を例題に、アメリカ合衆国の軍事姿勢を痛烈に批判したものであることが分かります。戦争体験により如何に兵士の人格が崩壊し、狂気に陥っていくかが、重く重く描かれていきます。
- 原題は「IN THE VALLEY OF ELAH(エラの谷にて)」で、主人公(トミー・リー・ジョーンズ)がシングルマザーの警察官(シャーリーズ・セロン)の息子にベッドで語って聞かせる、聖書の中にあるダビデとゴリアテが戦ったエピソードのこと。幼いダビデが周りから煽られ恐怖心を克服して、巨人戦士のゴリアテと闘い、勝利したというお話です。ラストではシャーリーズ・セロンが再度息子にこの話をしてあげるので、これが本作のテーマと密接なのでしょうが、関係はイマイチよく分かりません(派兵される若者がダビデで、イラク戦争がゴリアテか?)。尤も、邦題の方もピンと来ませんが・・・。
- トミー・リー・ジョーンズは、缶コーヒーCMでとぼけているオッサン(^o^)とは異なり、重厚な演技で唸らされます。オーバーアクトでないどころか、控えめな演技に終始して、不幸な父親の苦悩を見事に表現しています。シャーリーズ・セロンもここではフェロモンを封印して、乾いた演技(?)に徹しています(それにしてもヒョロヒョロと背が高いなぁ)。実話ですから出来なかったのでしょうが、二人に恋が芽生えても良かったかも。主人公の妻はスーザン・サランドン。本当に巧い人ですね、この人は。出番は少ないのですが、電話で告げられるシーン、息子と対面するシーンの名演技は涙無くして見られません。
- ラストが極めて象徴的。「このアメリカの危機的状況を誰か救ってくれ〜!」と。オバマさん、やれるかな?(^_^)
- (BS-HV)
2009.07.08 ブラックサイト ★★★
- 私がこのHPを立ち上げた当初はアクセス数が気になり、カウンタを見ては一喜一憂したものでした。アクセス数の殆どは自分のものだろう、などと軽口をたたいたのは私の息子でした。(^o^) 本作は、そのアクセス数を殺人のキーにするといういかにも今風なサスペンス・スリラーです。
- 殺人のしかけをネットでライブ中継し、そのアクセス数に応じて死に至る速度が決まるサイトを操るシリアル・キラーと、女性FBI捜査官の攻防を描いたもの。原題は「UNTRACEABLE」で、サイトを追ってもすぐさま別のミラーサイトが立ち上がることなどから「追跡不能」としたのでしょうが、サイト名である「Kill
With Me?」をタイトルとした方がより内容にマッチングするのではないかと思います。
- 全体の印象は「羊たちの沈黙」に極めて似ていますが、グロいシーンがあることもあり、後味はかなり悪し。途中で殺人の対象者をミス・リードするなど、スリリングな展開が終盤近くまで続きますが、その後がいけません。ダイアン・レイン演ずる主人公が、とてもFBI捜査官とは思えないような間抜けさで犯人に捕まってしまいます。これにはかなり脱力しました。ラストもITとは無縁の力づくでの解決方法がとられます。IT犯罪にはITで太刀打ちするなどの工夫が欲しかったぞ。
- 他にも、犯人の動機が弱い、殺人のしかけが大掛かり過ぎて非現実的(あの材料や薬品はどうやって入手した?)、FBI側のネット捜査力が余りにも無さ過ぎ(もっと進んでいるだろう?)、など突っ込みどころは多々あります。
- ダイアン・レインは殆どスッピンの老け顔で頑張っています(母親が姉のように見えた(^o^))。主人公の相棒役のコリン・ハンクスは、トム・ハンクスの息子であることを初めて知りました。そう言えばこの人は「キング・コング」にも出ていましたね。
- 最後に「How can I get this Video?」というネット書き込みが流れ、ネットの暴力を象徴的に表したのは秀逸なラストなのかも・・・。
- (BS-HV)
2009.07.05 シューテム・アップ ★★☆
- 「弾丸(たま)んねー 銃弾2万5千発のエクスタシー!」というコピーが全てを表しています。とにかくガン・アクションが満載の、脱力的笑いとそこそこのエロチシズムをフィーチャーした劇画、という感じです。
- この銃弾雨あられの前には、ストーリーも殆ど無きが如し。第一、主人公(クライヴ・オーウェン)が、行きずりの乳飲み子を助ける動機が全く持って不明で不可解。かてて加えて、次から次へと湧いてくる敵方ガンマンを、殆どあり得ないトンデモな方法で殺しまくります。人参も凶器になったりして(人参はあんなに固くはないぞ)。しかも、敵の弾は絶対主人公に当たらない・・・。(^o^)
- などという突っ込みは、この手の映画には野暮というものでしょう。休日の昼下がり、頭を空っぽにして観賞するには持ってこいかも・・・。ただし、かなり痛〜いシーンやグロ〜いシーンがあるので、要注意です。
- 「シン・シティ」といい、クライヴ・オーウェンはこの手の劇画調アクション映画のヒーローは嵌まり役のようです。007のジェームズ・ボンド役候補とも言われたようですが、やや暑苦し過ぎるかも・・・。
- 主人公の相方を演ずるモニカ・ベルッチの艶技、もとい、演技を楽しみましょう。何と母乳プレイ(?)専門の娼婦役なのです。相変わらずの超美形ですが、流石に若々しさが薄れてきていて、アップでは肌が荒れていたのが気になりました。適役はまさかのポール・ジアマッティ。「サイドウェイ」などで人間味溢れる素晴らしい演技をしていた彼が、大悪人とは!それでも見ている内に違和感が無くなるのは、やはり名優の証左でしょうか。
- いずれにしてもB級(風)映画に徹しているところが、潔いと言えるのではないかな・・・。(^_^)
(BS-HV)
2009.06.21 ターミネーター4 ★★★★
- ターミネーター・シリーズの4作目(言われなくてもわかります)。ただし、原題は「TERMINATOR SALVATION」(「ターミネーターからの救出」?)。監督は「チャーリーズ・エンジェル」などのマックGです。
- これまでの3作は全て、人類の救世主であるジョン・コナーやその母親サラ・コナーを抹殺するために、未来からターミネーターが送り込まれるという設定でしたが、本作(から)は2018年という未来でのジョン・コナーを指揮官とする人類とマシン(スカイネット)の闘いが描かれています。
- 「300」に代表されるような最近のこの手の映画によくあるモノクロに近い映像で、冒頭から凄まじい戦闘シーンが始まります。いやあ、この大音響は映画館ならではですね。こういったシリーズ物は、ある程度連続性を保つことがキモであると思いますが、そういう意味ではシュワちゃんことアーノルド・シュワルツネッガーが出演しないのが残念と言えば残念(現職のカリフォルニア州知事ですから当たり前か)。ただし、後半ファン・サービス的にシュワちゃんのCGが登場します。また、テーマ音楽が変わっていたのもやや残念かな。
- ファン・サービスと言えば、これまでの作品からの特徴的なシーンが幾つか再現されて、思わずニヤリ。上半身のみのしつこいターミネーターとか、水路でバイクが飛び降りてくるとか、冷却ガスでフリーズさせるとか・・・。ジョン・コナーの顔の傷が何故ついたかも明らかにされます。もちろん、あの「I'll
Be Back」も健在です。
- ただし、第2作目などにあったようなコミカルな要素は全く無く、緊張感一杯のシリアスな展開に終始します。だから、見ていてとても疲れるのだ・・・。(-.-)
- これまでのシュワちゃん役に近い存在が、脳と心臓以外の全てが機械化されている謎の男で、これが本作のキーマンになっています。第1作目で、サラを救うために未来から送り込まれるカイル・リース、つまりジョンの父親が若者ととして出ています。え〜と、ではその設定でジョンがいるということは〜、とまたしてもタイム・パラドックスの世界に混乱するのでした。(^_^;)
- ジョン・コナーを演ずるのは、今が旬のクリスチャン・ベイル。坊主頭に近いこともあり、どうも彼は日本人的な風貌に見えます。よい演技をしていると思いますよ。謎の男を演ずるのが、サム・ワーシントン(そーですか)。役柄もあって、ややぎこちないかな。ヘレナ・ボナム=カーターが思わぬ役柄で出演しますが、とても肥えていてビックリしましたぞい。(^_^)
- (劇場)
2009.06.07 最高の人生の見つけ方 ★★★★
- 性格などが正反対の二人が余命6ヶ月と診断され、やり残したことを実践しに一緒に旅に出る、というお話。う〜ん、映画を見なくてもおおよその展開が想像できますなぁ。二人を演ずるのが、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン。この配役では出来が悪かろうはずがありません。「スタンド・バイ・ミー」、「恋人たちの予感
」、「ミザリー」などの名監督ロブ・ライナーがメガホンを取っています。
- 一代で莫大な富を築いた、女好きで傲慢な実業家を演ずるジャック・ニコルソン、家族を愛する真面目で心優しい自動車整備士を演ずるのがモーガン・フリーマン。これ以上、イメージが完璧に合うキャスティングはありますまい・・・。(^_^)
- 原題(「THE BUCKET LIST」:棺桶リスト)にあるように、予め死に至るまでの「やりたいことリスト」を作っておき、それを二人が実現していく、という単純なストーリーではありますが、当然伏線やヒネリがあって楽しめます。特に「世界一の美女とキスをする」を実現するくだりには、私としては思わずジーンと来てしまいました。一方の、あれで誘惑に乗らないフリーマン、貴方はエライ!(私に言わせればバカ(^_^;))
- 「ジャンパー」と違ってテレポートではありませんが、自家用ジェットに乗って世界中を旅する観光映画的側面もあります。まあ、あんなにお金があれば好きなことも出来ますて・・・(とヒガむ)。
- 死をテーマにしておきながら、余りジメジメしないところがよろしい。とは言え、他人事とは言えなくなってきている身としては、色々考えさせられるところもあります。自分の棺桶リストは、まずあれとこれとそれと、などと・・・。(-.-)
- ここでもモーガン・フリーマンが、モノローグを担当します。彼のモノローグがいかに映画に重みを付けるかは、「ショーシャンクの空に」や「ミリオンダラー・ベイビー」が立証済み。ジャック・ニコルソンは役柄もあり、肥えていて極めて醜悪。狂言回し的役割のニコルソンの秘書役のショーン・ヘイズが好演です。
- ラストのどんでん返し(?)も爽やか。
- (BS-HV)
2009.05.31 バンテージ・ポイント ★★★
- タイトル(「VANTAGE POINT」)は、「見晴らしの良い場所」というような意味でしょうか。アメリカ大統領の狙撃事件と爆弾テロを扱ったサスペンス・アクション映画です。ユニークなのは、8人の視点から同じシーンの展開が描かれること。ただし、「羅生門」のように人によって捕え方が異なるというのではなく、現場に居合わせた8人がその時点で何に遭遇し、どういう行動を取ったか、という観点で描かれます。
- 最初はこの巻き戻し手法は面白く感じられるのですが、何回も繰り返されるとやや鼻についてもきます。そもそも8人の中で、余り重要でない人物もいたりするので、もう少し削っても良かったのかも知れません。それもあってか、後半はその繰り返しが無くなりストレートな展開になるのですが、その所為か全体のバランスが逆に悪く感じられてしまいます。
- 後半は、意外な展開となり、それなりにサスペンス溢れるシーンが続きます。ただ、明らかにルール違反的な人物構成であると思いますし、レーガン時代から行われていたという「あること」は相当嘘っぽいし、ご都合主義もあちらこちらに・・・。子供を犠牲にしないハリウッド的良心は、良しとしましょう。(^_^)
- シークレットサービスの主人公のデニス・クエイドは好演。アメリカ大統領役のウィリアム・ハートはピッタリ嵌まり役。TV局プロデューサ役のシガーニー・ウィーバーの老けぶりにギョッ。通りすがりの観光客なのに展開に大きく絡むフォレスト・ウィッテカーは、ここでも演技がクサくて、どうも好きになれません(オスカー俳優に何ということを!m(_
_)m)。
- 90分の上映時間は、短くて大変よろしい。(^o^)
- (BS-HV)
2009.05.17 天使と悪魔 ★★★★
- かなりの宣伝費を注ぎ込んでいますね。しかも大方評判が良いようです。一番魅かれたのは「分かりやすい」という風評。前作の「ダ・ヴィンチ・コード」はかなり端折られており、原作を読んでいない人には中々難解だったと思います。昨今、レッドクリフなど、分かりやすさに配意した映画作品が多くなっているようで、どんどん脳が老化していく身にとってはとても有り難いことです。(^_^;)
- 原作では本作が「ダ・ヴィンチ・コード」よりも時系列的には先で、映画はそれを逆転しているとのことですが、なに、「ロバート・ラングドン」シリーズだと思って見れば、時制の前後は全く関係ありません。
- では、それほど分かりやすかったか・・・? 確かに「ダ・ヴィンチ・コード」に比べて、目的が多面的ではなく直線的に明確になっており、また謎解きも都合が良いほど素早く主人公が答えを出してくれるので、あたかもジェットコースターに乗って身を任せていれば良い状態、ではありました。ただし、実行犯の素性は説明がありませんし、黒幕の真の動機もやや不明確で、黒幕側のグループのそれぞれの関係もイマイチ理解出来ないところがありました。やはり、原作を読んでからの方が正解でしたか・・・(文庫本3冊もあるのだ)。
- 一番の難点は、ある人物が登場した途端にそいつが真犯人であることが分かってしまうことではないでしょうか。あの大物を配したキャスティングはマズイでしょう。
- 興味深いのは、コンクラーベ(根比べ(^o^))などヴァチカンの色々な儀式やしきたりが披露されること。また前作も同様でしたが、本作もヴァチカンとローマに閉じているとは言え、観光映画的要素が満載で楽しめます。ただし、ヴァチカンでのロケは許可されなかったということなので、VFXに頼ったシーンが多かったのでしょう。
- なお、前作の「ダ・ヴィンチ・コード」を猛烈に非難したヴァチカンは、本作については「非常に商業的で歴史的事実は不正確だが、教会にとって危険ではない無害なエンタテインメント」と、好意的にコメントしているそうです。
- ヒロインのアイェレット・ゾラーは調べてみるとイスラエル出身で何と御年40歳。「反物質」を開発した科学者という設定ですが、ラストで早々に事の解決を投げ出してしまったのは、何とも情けない・・・。
- 主人公のラングドンを演じたトム・ハンクス、前作の奇妙キテレツな長髪と違って今回は短めの髪形で、前作より若く見えましたぞい。(^o^)
- (劇場)
2009.05.16 紀元前1万年 ★★
- ローランド・エメリッヒは名前の示すとおりドイツ出身ですが、彼ほどハリウッド的大パノラマ映画を作るのが好きな監督はいないようです。
- エイリアンの地球攻撃を描いたSF映画「インデペンデンス・デイ」や、ニューヨークが氷河期に戻ってしまうパニック映画「デイ・アフター・トゥモロー」などが代表作で、いずれもストーリーよりもVFXを重視した万人受けする映画を作るのが得意という印象があります。そういう意味で、本作の出来栄えは正に彼の面目躍如と言ったところではないでしょうか。
- タイトルやマンモスの出現からは、太古の時代の映画のつもりなのでしょうが、なにせ主人公を中心とした一族は、流暢な英語を話しますし、氷河期かと思いきや、砂漠や熱帯雨林が現れますし、最後は大規模なピラミッドまでが出現する始末です。この辺になると史実は全く無視されて、殆どSFアドベンチャー映画の様相を呈して来ます。
- 見ているうちに、この映画はメル・ ギブソンの「アポカリプト」と余りにも似た設定になっていることに気がつきました。ただし、「アポカリプト」に比べてストーリー展開や人間描写などは足下にも及びません。しかも最後は「300」とそっくりなシーンも出てきますし・・・。
- 恋人を他民族に連れ去られた主人公が、ひたすら彼女を救うためだけに行動を起しているところも、なんだかなぁ、という感じがします。思わせぶりに姿をくらませた父親の存在が、何か布石になっているのかと思うとそうでもなく、最大の敵があのような一撃であっさりやられたりと、脱力することしきりです。しかもヒロインのサービス・ショットも全く無し。「恐竜100万年」のラクェル・ウェルチの爪の垢を煎じて飲みなさい!
- ただし、流石にマンモスの出現シーンや、大ピラミッドの俯瞰シーンのVFXは見応えがありました。サーベル・タイガーとの絡みももう少し引っ張っても良かったと思います。訳の分からないハッピー・エンドもエメリッヒ的と言えばエメリッヒ的だ・・・。(^o^)
- (BS-HV)
2009.05.10 グラン・トリノ ★★★★
- 「チェンジリング」に続くクリント・イーストウッドの監督作品で、かつ本人が主演した話題作。タイトルの「Gran
Torino」は、フォード社のビンテージ・カーのことです。
- 「どうやってこんな傑作をつくるのか、わからない」とは、ニューヨークタイムズ紙のコメント。人の薦めもあり、9連休の最終日であるにも関わらず(?)劇場に足を運んだのでした。
- 朝鮮戦争での凄惨な体験を持ち、元フォード社組立工員で、頑固が服を来たような爺様がイーストウッド演ずる主人公。隣に住むアジア系移民族のモン族一家を最初は毛嫌いしていたのですが、あることを切っ掛けに次第に彼らと打ち解けて行く様が描かれて行きます。で、ラストはイーストウッドらしい潔い行動を起こして、静かに幕が引かれます。
- いやあ、前半はかなり笑わせて貰いました。イーストウッド出演作で、こんなコミカルな作品は本作くらいのものでしょう。元々イーストウッドはユーモアがあり、ジョークが好きな男であるとのこと。楽しんでいる撮影現場が目に浮かぶようです。
- 差別用語も満載です。米喰いイエロー、黒んぼ、イタ公、アイルランド野郎、メキシコのガキ、など・・・。劇場の私の斜め前に座っていた外国人女性は、我々が笑うポイントとは別の部分で、ゲラゲラと笑っていました。やはり戸田奈津子の訳がマズイのかなぁ・・・。
- 主人公は時々血を吐いて、流石に自ら病院に行くのですが、その結果は最後まで明示されません。この辺の含みを持たせる演出が、巧いなぁとつくづく思います。
- この映画の最も重要なポイントとなる主人公の最後の行動は、朝鮮戦争での残虐行為の懺悔、友好的なモン族の姉弟を守ること、憎きチンピラを殺す以外で制裁を加えること、(多分)余命幾ばくも無かったことなどから、彼としてはそれ以外の選択は無かったことを、見終えて気付かされます。しみじみと彼の犠牲的心根に打たれるのでした。
- 主人公の二人の息子の家族とは、徹底して馬が合わなかった設定になっています。特にヘソピアスをしている現代的な孫娘を毛嫌いしているように描いていますが、個人的にはこの辺はもう少し寛大さが欲しかったと思います。自分はあんな風にはならないように、しようっと。尤も、相手次第ですが・・・。(^o^)
- (劇場)
2009.05.07 ノーカントリー ★★★
- 第80回のアカデミー賞で、作品賞、監督賞、助演男優賞、脚色賞の主要4部門でオスカーに輝いた話題作。ようやくBSハイビジョン放送となりました。
- 「バートン・フィンク」、「ファーゴ」、「ビッグ・リボウスキ」などの一風変わった映画を制作しているコーエン兄弟の監督作品で、本作も奇妙な味を持つという意味で例外ではありません。偶然大金を手にした男(ジョシュ・ブローリン)を追う殺し屋(ハビエル・バルデム)と、彼らを追う保安官(トミー・リー・ジョーンズ)を描いていて、ストーリーそのものは至極単純。
- 見ものは何と言ってもオスカーを獲得したハビエル・バルデム演ずる冷徹な殺し屋です。古風なおかっぱ頭にサタンのような眼をして、酸素ボンベを持ち歩く彼の存在は、本作品を身も毛もよだつ(大袈裟ではありません)強烈なスリラーに仕上げました。冒頭の手錠で保安官を締め上げる際の、恍惚の表情を浮かべているとも取れる狂気じみた彼の顔は極めて印象的です。雑貨店のレジで、意味もなくコイン・トスをしてその店の主人に表裏を当てろと言うシーンや、モーテルのドア越しで、追われる男と殺し屋がが対峙する場面の緊迫感たるや・・・。心臓に余りよろしくありません。
- ストーリーは単純ですが、例によって描写の省略が多いので、置いていかれないように想像力を巡らせて鑑賞する必要があります。あれ、彼は殺されてしまったのか?だから、ああなんだな、などと・・・。
- 原題は、「No Country For Old Men」で、「老いた者には国は無い」、つまり「老いた者には住みにくい世の中になった」というようなことでしょうか。老いて、残酷極まりない事件等についていけなくなってきたトミー・リー・ジョーンズ演ずる保安官が、リタイヤして昨夜見た夢の話をしたところで、唐突に、極めて唐突にエンド・ロールが流れ始めます。
- 殺し屋の生末は不明ですし、保安官は無力にも何も出来ませんでしたし、何となく中途半端に終わったのが不満ですが、まあ、コーエン兄弟作品と言うことで、許すとしましょうか・・・。(-.-)
- (BS-HV)
2009.04.30 ジャンパー ★★
- タイトル(「JUMPER」)は、テレポート、すなわち離れた場所に瞬間移動できる能力を持つ人間を指しています。原作はれっきとしたSF小説で、監督があの「ボーン3部作」のダグ・リーマンであるにも関わらず、脱力しまくる作品になってしまっています。
- ダメダメな点は次のとおり。
- 第1に、主人公(ヘイデン・クリステンセン)を特殊能力を持つアメコミのヒーロー的に描いていながら、かなり自己中で、KYで、テレポート能力をよいことに銀行から札束を盗みだすような悪玉キャラとして描いていること。
- 第2に、ジャンパーをこの世から抹殺するためのパラディンなる組織人(サミュエル・L・ジャクソン)や訳あり風な母親(ダイアン・レイン)が登場しますが、背景が全く描かれていないこと。
- 第3に、ジャンパーとパラディンの攻防が延々と描かれますが、ストーリー展開にヒネリがなく、退屈極まりないこと。
- 第4に、15歳の主人公と23歳の主人公に、別の俳優を充てているので、とても奇異な感じがすること。
- 第5に、成長したヒロインが美しくなっていないこと。(^_^;)
- 第6に、こんなにつまらない映画なのに、続編があるようなエンディングになっていること、等々・・・。
- 私にとって唯一のめっけものは、瞬間移動したローマのコロッセオで、その内部が紹介されたことでしょうか。かなり以前に私がコロッセオを訪れた際は、工事中で中に入れなかったのでした。
- (BS-HV)
2009.04.20 スラムドッグ$ミリオネア ★★★★★
- 第81回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚色賞など最多8部門でオスカーを獲得した作品。インドのムンバイ(かつてのボンベイね)を舞台にしており、なおかつインド人俳優しか出演していませんが、インド映画ではなくイギリス人のダニー・ボイル監督による米英合作映画です。あの過激な「トレインスポッティング」を撮ったダニー・ボイルが、どのような心境でこういう映画を手がけたのか、はたまたメジャーな俳優が誰一人出ていない映画が何故多くのオスカーを取ることが出来たのかとても興味があり、公開2日目の劇場に足を運んだのでした。
- ムンバイのスラム街で育った主人公の青年(デヴ・パテル)が、テレビのクイズ番組の「クイズ$ミリオネア」でかつてない高額の賞金を獲得する過程で、彼の悲惨で過酷なスラムでの生活が浮き彫りにされていきます。また同じ孤児の女性(フリーダ・ピント)との純愛を絡ませており、ラブストーリーとして見ることも出来ると思います。
- 序盤のムンバイのスラム街を少年たちが走りに走るシーンを見て、また衝撃的なトイレのシーン(!)が出るに至って、ああこれは紛れもなく「トレインスポッティング」を撮ったダニー・ボイルの作品だと思いました。生命力溢れる疾走感は両作品に共通ですし、「トレインスポッティング」でもユアン・
マクレガーがトイレの中を浮遊(!)するシーンが出てくるのです。(^o^)
- 最後の問題に至るまでのテレビ・スタジオでの収録の模様と、いかさま疑惑で警察での取り調べ(拷問を含む)シーンと、そこで告白される過酷な少年時代の生き様が、交互に極めて巧く展開されて行きます。これらの練りに練った構成には唸らされました。無学の青年が次々と正解を当てていくのは、少年期からのたくましく生きていくための経験から生まれているというのは、ややご都合主義的ですが、それらは極めて説得力を持って描写されているのです。最後の問題は彼の経験に照らしても正解が分からず、言い当てられるかどうかは運次第、というのも現実味があってよろしい・・・。
- エンドロールの前に、主人公以下の大勢が駅のホームで踊りまくります。最後はインド映画っぽくしたのは、ダニー・ボイルのサービスなのでしょうか。(^_^)
- 「今晩、どんな予定があっても中止して、この映画を観に行くべきだ!」とは、ボストン・グローブ紙のコメント。私も全く同感です。ただし、ケチャップのかかったホットドッグなどを食べながら鑑賞することは、絶対お勧めしません。(^o^)
- (劇場)
2009.04.19 レッドクリフPart2
未来への最終決戦 ★★★
- CM等でクライマックス・シーンが盛んに流されていて、「もういいや」感が一杯でしたが、part1を見た関係上義務感にかられて、一応近くのシネコンへ。観客はやはり年配の方が多いようです。
- part1と同様に冒頭日本語による解説があったり、主要人物の登場シーンでは誰であるかのテロップが流れます。配給側はよほど分かり易すくすることに気を使ったようで、老化が進んだ頭には結構なことです。
- part1のラストの勢いから、すぐさま赤壁の闘いのクライマックス・シーンに突入かと思いきや、さにあらず。有名な「10万の矢」のシーンに行くまでも、かなり引っ張ります。それにしてもワラ船に大量に突き刺さった矢は映像でみると現実感が無く、CG臭さが脱けきれていません。
- もう一つの有名シーンである「火攻め」も、敵の船に衝突と同時に必ず爆発、炎上というのも何だか嘘っぽい。都合よく風向きが変わるのは許すとしても・・・。
- 後半の延々と続く大爆発、大戦闘シーンはそれなりに見応えがありましたが、長過ぎですね。80万と5万の勢力の差が余り感じられない描写にも工夫が必要でした。
- part1では中々の存在感を示していた孫権の妹である尚香(ヴィッキー・チャオ)の、今回のエピソードはまるでダメ。わざとらしいロマンチシズムに脱力すること、しきりでした。更に退屈なのは、チャン・ツィイーを更に薄〜くしたようなリン・チーリン演ずる小喬が絡むエピソード。訳の分からない行動を取って、味方に迷惑をかけるのは何故?もう一つ気になったのは、曹操(チャン・フォンイー)を徹底的な悪者とは描かず、人間味もあるような中途半端なキャラに仕立てていること。この手の映画では観客は勧善懲悪を望むのではないか?
- それにしても盾を使っての規則正しい戦術が次から次へと繰り出されるのを見ていて、北京オリンピックの開会式を想起したのは私だけでしょうか?(^o^)
- (劇場)
2009.04.12 チェンジリング ★★★★
- 78歳(!)のクリント・イーストウッドの監督作品。彼の近年の作品(「ミステック・リバー」、「ミリオン・ダラー・ベイビー」など)と同様、極めて重厚感溢れる作風となっています。アンジー姉(アンジェリーナ・ジョリー)は、本作品でアカデミー主演女優賞にノミネートされました。
- 1920年代にロスアンゼルスで実際に起きた事件に基づいた作品ということですが、正に「事実は小説より奇なり」です。
CMなどからは単なる子供の失踪事件を扱った作品であるかに思われますが、さにあらず。非道なロス警察に対抗する気丈な母親の言動に加えて、もう一つの重いストーリーが展開していきます。
- 終始重苦しい雰囲気の展開と、物悲しいフリューゲルホルンが奏でるテーマ音楽は、いかにもイーストウッド的。142分の長尺ですが、長さを感じさせません。これで終わらないだろうと思っていると、案の定次の新たな展開が・・・。かすかに希望を持たせる描写で終わりますが、エンド・クレジット前のテロップで観客はため息をつくことになります。
- 捜査ミスをあくまで隠そうとするロス警察の警部(ジェフリー・ドノヴァン)とそれに協調する精神病院の医者は、ほんまかいな?と思わせるようなステロタイプに描かれています。しかし、「L.A.コンフィデンシャル」にもあるように、ロス警察の往時の腐敗ぶりは相当なものだったのでしょう。
- 何と言っても「ウォンテッド」とは別人のようなアンジー姉の名演技が光ります。序盤の子供が発見されたと聞かされた時の喜びの表情や、終盤の「失うものは何もない」と言い切る気丈さを現す表情は、とても演技とは思えません。流石、6人の子供(3人は養子)を持つ母親です(関係ないか)。オスカーは彼女にあげて欲しかった・・・。それにしても、何故あれほど真っ赤な口紅にしなければいけないのか?唇が「大きい」を通り越して、「巨大」になってしまっています。(^o^)
- ロス警察の悪事を告発し、母親に味方する牧師役にジョン・マルコヴィッチ。相変わらず独特のセリフ廻しです。あんなことをしていてよく暗殺されないものだと思いましたが・・・。
- 「CHANGELING」を辞書で引くと、「取り替え子;おとぎ話で妖精たちが可愛い子と取り替えていった醜い子」とあって、少し背筋が寒くなりました。(・・;)
- (BD)
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