ヒラリー・ハーンのヴァイオリン独奏、エサ=ペッカ・サロネン指揮、スウェーデン放送響による2007年の演奏。
ヒラリー・ハーンのヴァイオリンは落ち着きが感じられ、丁寧な演奏が印象的。第1楽章は17分19秒と、しっかり時間をとっている。冷静を保ちながらも淡泊すぎることはなく、十分に熱がこもっていて感動的であり、音色もきれいである。独奏ヴァイオリンとオーケストラの息が合っているし、オーケストラの音量が適度で、決してうるさく感じないのも好印象。
それに加えて、音響がとてもクリアで美しいのがうれしい。オーケストラのたくさんの楽器の音が混濁することなく響いていて、その上にのる独奏ヴァイオリンの音がくっきりと聞こえる。録音の良さでは、私が持っているCDの中でトップクラスだ。録音が2007年と新しいことも功を奏しているのだと思う。
というわけで、今までに聴いたシベリウスのヴァイオリン協奏曲の中では、これが私の一押しである。先日、この演奏をWalkman で聴いていて、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を聴いていたときと同じ失敗を再び繰り返してしまった。一度ならず二度もやってしまうなんて、情けなや・・・。私にとってヴァイオリン協奏曲は鬼門のようだ。
ヤッシャ・ハイフェッツのヴァイオリン独奏、ワルター・ヘンドル指揮、シカゴ響による1959年の演奏。
とにかくハイフェッツの演奏技術に圧倒され、ハイフェッツのヴァイオリンを聴くだけで感動的ですらある。このとても難しい曲をものすごいスピードですいすいと弾いていく。第1楽章は13分37秒しかかかっていない。ヒラリー・ハーンの17分19秒と比べると、その速さがわかる。そして、スピードが速いからといって音が汚くならないのがハイフェッツのすごいところ。
第3楽章に入ると、気分が乗ってきたハイフェッツのヴァイオリンが速すぎて、バックのオーケストラがついていくのが精一杯のように聞こえるところもある。終曲部分はオーケストラがわずかに置いていかれた感がなくもない。
録音が1959年と古い割には、録音状態は悪くない。1970年代の録音と言われても信じてしまいそうだ。50年以上前の演奏なのにそれなりにきれいに聴けるのだから、ありがたいものだ。
チョン・キョンファのヴァイオリン独奏、アントレプレビン指揮、ロンドン交響楽団による1970年の演奏。
チョン・キョンファは、メンデルスゾーンやブルッフのヴァイオリン協奏曲のCDも聴いたことがあり、どちらも情熱的で、素晴らしい演奏だった。このシベリウスも同様に感情がしっかりと入っている。ネット上では評判が良いようで、それはわからないでもない。このような演奏が好きな人も多いと思う。
私は、この演奏もなかなか良いとは思いつつも、どちらかと言えば上の二人の演奏の方が好きだ。チョン・キョンファは情熱的であり、私にとっては、胸に突き刺さりすぎるようなところがある。それを求めて聴く場合には、それでいいと思うけれど・・・。
ちなみに第1楽章の長さは15分26秒であり、ハーンとハイフェッツのちょうど中間ということになる。