この曲には、特別な思い出があります。私が飛行機に乗っていたときのこと、機内サービスの音楽をイヤホンで聴いてみると、この曲がかかっていました。とてもハーモニーが美しく、じんわりと心に響くものを感じ、私の好きなシベリウスにも通じるところがあるようにも思いました。それまでステンハンマルという作曲家については、名前も聞いたことがなく、全く知りませんでしたので、忘れないようにメモを書いておきました。
後日、CDを売っている店をいくつか回ってみても、ステンハンマルのCDはどこも置いていませんでした。当時はまだアマゾンで本やCDを買ったことがありませんでした。今なら、とても有名というわけではない作曲家のCDは、なかなか見つからないだろうから、アマゾンなどインターネットで購入しようと最初から思うところですが、当時は、そういうことをすぐには思いつきませんでした。
アマゾンで購入してから数日後、CDが送られてきました。一回経験してみるとその便利さが実感でき、その後はCDや本をネットで購入することが多くなりました。そのきっかけがステンハンマルのCDなのです。
この曲は、最初から最後までとても穏やかで、心安らぎます。だからといって決して平板ではなく、ゆったりとした中に十分なうねりもあります。ステンハンマルはスウェーデンの人だと考えているせいかもしれませんが、北欧の広大な自然を思い浮かべるようであり、その中で張りつめた緊張感も感じます。
ハンヌ・コイブラ指揮イェヴレ交響楽団の演奏は特にゆっくりとしていて、7分ほどかかって演奏されます。ネーメ・ヤルヴィ指揮イェテボリ響では4分台ですから、テンポがかなり違います。どちらの演奏も楽しめますが、どちらかといえば私はとてもゆっくりとしたハンヌ・コイブラ指揮の演奏の方が好きです。
出だしから柔らかな感触で、聴いている者を気持ちよく包んでくれます。そして、それぞれのフレーズの始まりと終わりの音の処理がとても丁寧。消え入るように終わり、そしてそっと次のフレーズに入っていきます。終曲部分は、静かに静かに、小さな火がさらに小さくなって消えていくように終わっていきます。
途中で金管楽器主体で演奏する部分があり、そこのハーモニーもとても美しいです。ゆっくりとしたテンポのもとで弱い音で入らなくてはならないので、金管楽器はそういうところで出だしを合わせるのが難しいのですけれど、ハンヌ・コイブラ指揮イェヴレ交響楽団の演奏ではとてもきれいに合っています。