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交響曲第6番



 シベリウスの交響曲の中で最も美しい曲。弦楽器の清らかな音の重なりに、夜空の星のようにきらきらと輝く木管楽器。ハープの音色が華やかさを添える。

 第4楽章の最後の3分間ほどが特に美しい。静かに静かに消え入るように曲が終わっていく。真っ暗な宇宙空間をすーっと飛び去っていくようであり、後には完全なる静寂が残る。この終曲部分を聴きたいがために、それまでの20数分間を聴いていると言ってもいいくらいだ。

 こんな曲だから、荒っぽい音は禁物である。金管楽器の音が割れてはいけない。指揮者によってはところどころ音が大きすぎて、がっかりさせられる。この曲に大音響は不要だと、声を大にして主張したい。

 細かいことであるが、第4楽章の真ん中あたりで、突然リズムが変わる部分がある。弦楽器(チェロだと思う)による八分音符のリズムが聞こえる。この部分、いい意味で意表をつかれるので好きなのだが、指揮者によってはとても速いスピードでこの部分を通り過ぎてしまうため、リズムの変化を楽しめない。やはりここはゆっくり、そして、はっきりとリズムを刻んでほしい。

 この2点に関しては、ベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィルと、ペトリ・サカリ指揮アイスランド響の演奏が私の好みに合っている。




ペトリ・サカリ指揮  アイスランド響

 第1楽章の始まりの弦楽器の静かなざわめき、その後に登場する木管楽器、そしてホルン・・・。いずれも清浄感があふれている。ときどき聞こえるハープの音色も美しい。決して力むことなく曲が爽やかに進んでいく。
 第1楽章の最後でテンポを落とし、その後にゆっくりとした第2楽章が続く。ふわふわと空中を漂うかのようであり、無重力空間にいるような不思議な感覚を味わうことができる。
 第4楽章の7分30秒くらいから終曲に向かう部分では、弦楽器と木管楽器が交代で登場しながらだんだんと音量が抑えられていき、最後は弦楽器の音が暗闇に消え入るように終わる。
 とても上品なシベリウスを堪能できる。私の好みの演奏である。


パーヴォ・ベルグルンド指揮  ヘルシンキ・フィル

 ペトリ・サカリ指揮アイスランド響に負けず劣らず美しい演奏。甲乙つけがたい。ペトリ・サカリ指揮アイスランド響は透き通っているのに対し、パーヴォ・ベルグルンド指揮ヘルシンキ・フィルはもう少しコクがあるように感じる。どちらも美しいことには変わりがないのであるが・・・。


ブロムシュテット指揮 サンフランシスコ響

 美しさを堪能したいこのような曲では、録音の質が大事な要素であり、音質が悪かったり雑音が聞こえたりすると興ざめである。その点、このCDの音質は素晴らしい。どの楽器もすっきりと美しく澄んだ音色を聴かせてくれる。第1楽章の7分過ぎのところではホルンのハーモニーがとてもきれいで、その音を聴いただけで感激である。第3楽章で金管の音が荒いと感じるところが少しあるが、それ以外の部分では十分に美しい音に囲まれて気持ちがよい。
 演奏は落ち着いて丁寧で、好感が持てる。天気が良くて波のない静かな海を大きな船でゆっくりと進んでいくかのような心地よさを感じる。


渡辺暁雄指揮 日本フィル

 これもまた美しい演奏で、特徴はハープが強調されていること。第3楽章で、木管楽器と少しずれて同じメロディーをハープが奏でる。ハープの音がこんなにはっきりと聴こえる演奏は珍しい。