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後期作品の緩徐楽章


後期(12番〜16番)の緩徐楽章

 12番以降の後期の弦楽四重奏は、有名な最後の交響曲「第9」よりも後に作曲された。ベートーヴェンの弦楽四重奏の中期(7番〜11番)では充実と躍動を感じるが、後期に入ると枯れた味わいが加わる。その印象を強く受けるのが、次に示すAdagio又はLentoの緩徐楽章である。

 12番第2楽章 Adagio, Ma Non Troppo E MoltoCantabile

 13番第5楽章 Cavatina: Adagio Molto Espressivo

 14番第1楽章 Adagio, Ma Non Troppo E Molto Espressivo

 15番第3楽章 Molto Adagio

 16番第3楽章 Lento Assai, Cantante E Tranquillo

 これらの楽章は終始ゆったりとして穏やかであり、晩年のベートーヴェンがそれまでの自分の人生を振り返るかのようである。この頃のベートーヴェンは全く耳が聞こえず、健康状態も良くなかったそうだが、達観していたのだ。決して感情をそのままほとばしらせることなく、穏やかではあるが豊かに表現している。しみじみとした味わいがある。

 15番第3楽章は演奏時間が15分以上もあり、とても長い。グァルネリSQでは19分20秒もかかっている。この第3楽章に対してベートーヴェンは「病癒えた者の神に対する聖なる感謝の歌」という説明を書いている。心静かに聴きたい曲である。