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ピアノソナタ第32番第2楽章 − 長い旅路の果て


  長い長い旅を続けてきて、もう少しで目的地に着きそうです。今までに辿ってきた長い道のりを振り返りながら、ようやくここまで来たという安堵感が深く漂っています。この曲はベートーヴェンが作曲したピアノソナタ32曲の最後の曲であり、第2楽章は最後の楽章です。そう思って聴くせいなのかもしれませんが、目指してきた目的の地は間近に迫っていることを感じさせてくれます。地球の果てまで来たようであり、それどころか、地球を飛び出して宇宙のはるか彼方まで飛んでいくようにも感じてしまいます。思いつく限りの「はるか彼方」・・・。そこはいったいどこなのでしょうか?
 あまりにも長い旅を続けてきた結果として、もう元の場所に戻ることはできそうもありません。そこは目的地であるとともに、人生の最後の場所でもあるのです。そして戻れないのは地理的な場所だけではなく、時間の経過についても同じこと。若い頃に戻って人生をもう一度やり直すことはできません。そんな諦めの必要性までも感じてしまいました。

 春まだ浅い東北地方を北に向う新幹線の中でリチャード・グードの演奏を聴いていて、じっくりと引き込まれてしまいました。今まで他の奏者の演奏で聴いて良い曲だとは思っていましたが、この曲でこんなに感動したのは初めてのことです。素直かつ丁寧な、そしてゆったりとした演奏で安心して聴けるのが良かったのでしょうし、そのときの自分の精神状態にぴったりと合っていたのだろうと思います。聴き終わってからしばらく余韻に浸りたかったのですが、すぐに新幹線を降りなければならなかったのがとても残念でした。