そもそも音楽理論は必ずしも創作に先んじているわけではなく、天才の創作の筋道を凡人が理論化していくという側面もあるから、音楽理論の見地からは理解できないものを切って捨てるのは芸術の霊妙を知らぬ野蛮人がすることである。 |
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許光俊 「クラシックがしみる!」p91 青弓社 |
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それというのも、ベートーヴェンにとっては、一曲一曲が、何らかの点で新しい意味を持っていなければならず、同じことのくり返しを別の曲でやる必要を、彼は全く認めなかったからだ。 (中略) そう、ベートーヴェンおいては、作品の一つ一つが、ある独自の色彩をはなっていると同時に、それらは、また、全部集まって、一つのおかしがたい全体の概念をつくりあげている。逆にいえば、一つ一つの作品は、一つ一つ独自であると同時に、この総数で一五〇にたりない作品のうちで、どんな位置にあるかをも、同時に意味している。 |
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吉田秀和 「言葉のフーガ 自由に、精緻に」p164 四明書院 |
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吉松隆 「魚座の音楽論」p206-207 音楽之友社 |