1.「地下鉄」の意味
昔々、大昔、今から何十億年も前、太陽系に地球が誕生したころ、地球は高温でどろどろに溶けていたと考えられています。そして長い長い時間が経過して、地球が冷えて固まりました。そのときから、鉄を多く含む石、すなわち鉄鉱石が地下に埋まっているのです。これとは別に、地表にある鉄もあります。地球の造山運動によって鉄鉱石が地表に出てきたところもありますが、それだけではなく、ずうっと時代が下って、鉄鉱石から鉄を製造するため、人間が膨大な量の鉄鉱石を地下から掘り出してきました。その結果、現在では大量の鉄が地上にあります。
このような地上にある鉄と区別するため、いつの頃からか、地下にある鉄が「地下鉄」と呼ばれるようになったのです。地下にある鉄だから「地下鉄」。あまりにも当たり前すぎて、ここで説明する必要がないようにも思われますが、もう書き始めてしまったので、続けさせていただきます。
2.地下鉄の埋蔵状況
それでは、地下鉄が豊富にある地域はどこでしょうか。皆さんも中学生や高校生の頃に地理で習ったと思いますが、日本は世界でも有数の地下鉄の産地です。特に東京には多くの地下鉄が埋蔵されています。鉄はとても細い線状で埋蔵されているため、一般に「○○線」と呼ばれています。銀座線、丸の内線、日比谷線などが古くから開発されていて有名です。最も古い銀座線は、地下の浅いところにあるうえに、渋谷で地表に露出しているため、露天掘りもできる経済的な地下鉄です。丸の内線は四谷とお茶の水で、日比谷線は中目黒で、それぞれ地表に露出しています。しかし、その後に開発された地下鉄は、だんだんと地中深くなる傾向があります。最近営業が開始された都営大江戸線は、とても深いところにあり、しかも鉱脈が細いため、採算が合わないのではないかと噂されています。
そしておもしろいことに、これらの線ごとに鉄鉱石の色が異なっています。銀座線は黄色、丸ノ内線は赤、日比谷線はグレーといった具合で、地図にも忠実に表示されています。東京には多くの地下鉄があるのに、同じ色の線はふたつとしてありません。とても不思議です。
これ以外にも不思議なことがあります。東京以外の都市でも多くの地下鉄が見つかっていて、なぜか国内外を問わず都市部に多いのです。地下鉄のあるところは人間が住みやすい場所だったということなのでしょうが、なぜそのような関係があるのか、未だに明らかになっていません。今後の研究が待たれます。
3.鉄学について
地下鉄に関する研究をしている学問は「鉄学」と呼ばれています。たいへん古くからある学問であり、あらゆる学問の基となりました。古代ギリシャ時代の鉄学者であるソクラテツは、あまりにも有名です。それに比べると我が国における鉄学の状況は必ずしも芳しくありません。星一鉄は鉄学に見切りをつけてプロ野球選手を目指しながらも挫折してしまい、武田鉄也は歌手になったと思ったら、いつの間にか中学校の先生になって第三の人生を歩んでいます。テツandトモの二人組に至っては、「なんでだろう?」と疑問を発するばかりで、いつまでたっても答を出すことができないのですから、コメディアンになったのもやむを得ないものと考えられます。どうして彼らが大晦日のNHK紅白に出場できるのか、疑問でもあります。おっとっと、つい脱線してしまいました。地下鉄の話に脱線は禁物でしたね。
4.地下鉄の最近の変化
地下鉄を掘削して地上に運び出している場所(「駅」と呼ばれています。)は、最近、大きく変わってきました。特に目につくのは、エレベーターやエスカレーターが設置されたことです。以前は人力で階段を上りながら運んでいたのですが、これでは従業員が疲労し、非効率なために、改善されてきたのです。夏季の冷房も完全になされるようになりました。一般の人の見学に対する配慮ということもあるのでしょう。首都圏では、いろいろな地下鉄を見学するためのパスネットという共通切符が販売されるようになり、とても便利になりました。私も持っています。しかし、JR(かつては国営であり、露天掘りを主としながらも部分的に地下鉄も掘っている会社。)だけはパスネットが使えないのが残念でなりません。それどころか、JRは西瓜(Suicaと表記される。)を入場券替わりにしているのです。なぜそんなに重くて、かつ、腐りやすいものを使っているのか、理解に苦しみます。
5.今後の課題
今後、その経営のあり方が課題となるでしょう。現在のところ、地下鉄の採掘は公共団体が行っていることが多いのですが、東京に限らず、新しい地下鉄ほど深く非効率になりがちであり、経済的に苦しい状況にあります。行政改革の一環として、地下鉄の民営化が進むのではないでしょうか。ちょうど道路公団が民営化されるように。また、天然資源に恵まれない我が国にとって、地下鉄はたいへん貴重な資源と言えます。鉄を地下から掘り出すだけではなく、一度使われた鉄をリサイクルし、資源を有効に利用することが今後ますます重要となるでしょう。リサイクルを進めるためには一人ひとりの心がけが大事ですから、地下鉄に関する理解を深めていくことが必要なのではないでしょうか。