フライス(X-1)
テーブル送り軸受けスラストベアリング化
【 軸受けをスラストベアリングに交換しました 】

ja1cvf  0912

フライス盤 X-1 は小型でお手頃価格でかなり人気があったのですが、小型化とコストダウンの結果多くの欠点もあります。
そのため私自身、使いながら改造を加えています。こちらに今までの改造等のlinksをまとめておきます。 直接本体改造ではないモノもあります。
また私の改造は出来るだけ市販品を使うようにして、誰でも作れること、具合が悪ければ元に戻れるように考えています。しかしどうしても元に戻れない改造もあります。

「フライスにデジタルスケールを」 (0408) 送りの読み取り精度向上のために。
「手作りCNCフライスに挑戦」 (0603) 自動化への第一歩です。
「フライス(X-1)の引きネジ改造」 (0810) ドリルチャック交換のために。
「フライス(X-1)専用切断機」 (0906) 正確な切断のためにフライスの利用です。
「コラムシャフトの補強」 (0906) 本体の基本剛性を向上させる改造です。
「スピンドルモータ換装」 (0908) パワーアップのためにモータの換装です。
「送り軸受けスラストベアリング化」 (0912) 送りネジのガタ解消のために。

この写真を初めて見る人はあまりにも部分的な写真で理解に苦しむかも知れません。
これはCNC化されたフライスX-1のテーブル送り機構部分です。

X軸、Y軸、モータ軸受け部分のベアリングを交換しました。黄色に見えるのがスラストベアリングです。
(参照:右側写真 これは原型に近い古い写真です。現在は大部様子が変わっています。

【 菱形フランジではダメでした 】

最初から気になっていたのですが、このベアリングは使い方が間違っていたのです。


これはX軸です。

右側のモータに対し左側に菱形フランジ付のベアリングで受けています。ベアリングの先はテーブルの送りネジです。
テーブルを送るためにスラスト方向に大きな力が掛かります。ラジアル方向に対してはユニバーサルジョイントで受けていますから多少の変芯は許されます。

このベアリングはラジアル方向の力に対してはその機能を発揮します。調芯機能も持っておりますので変芯も吸収できます。
しかし、スラスト方向(軸方向)の応力を掛けてはいけないのです。
ベアリング屋さんの話では
『そんな柔なモンじゃないよ』
『特別大きな力でなければ大丈夫』 と云ってたので真に受け使ってしまいました。また、その実例もあり気になりながらも『簡単にできる』と云う現実に負けました。
しかし実際に使ってみると、次第にバックラッシュが目立つようになってきました。最初は送りネジの調整不良と思ったのですがソウでないことはすぐに判りました。
確かにベアリング自体には問題が及ばなかったようですが、フランジのベアリング固定部分にガタが発生したのです。

この問題を解消するには、この場所のスラスト方向の力をキッチリ受けるスラストベアリングを使うしかありません。
スラスト、ラジアル、両方向の力を受けることが出来るアンギュラベアリングもありますが、ラジアル方向に関しては逃げがありますので簡単に使えるスラストベアリングを使うことにしました。


テーブル送りネジ

テーブル送りネジの軸は8mmで先端に6mmのネジが切ってあります。
この軸のスラスト移動を固定するには送りネジの鍔と先端にネジを利用するしか方法がありません。

テーブルに固定されるフランジ(5mm平鉄)を両側からスラストベアリングで挟んで固定します。


スラストベアリングと製作した予圧ネジ 1セット分

ベアリングは1軸に2個、予圧ネジは1個必要です。
その他予圧用のバネ、板厚補正用に平ワッシャが必要です。堅さを考慮してステンレス製を使っています。
今回はXY2軸で2セット必要になります。Z軸に関しては構造も違い最初の改造(手作りCNCに挑戦)でスラストベアリングを採用しています。

予圧ネジは旋盤で削りだすのがベストですが、簡便化のため6mmの高ナット(20mm)を利用しました。
写真で判るとおり片側8mmは8φに削ります。反対側は内側を8mmのキリを通します。深さは8mmです。こちら側は固定用の3mmタップを立てます(2ヶ所)。
これを送りネジに嵌めて使います。8mmに削った部分はモータのカップリングがつきます。


組み立てた所
スプリングワッシャが殆ど潰れるまで予圧を掛ける。

テーブル固定用のフランジ、厚さは5mm平鉄。写真では判りにくいですが、左側に平ワッシャとスプリングワッシャ2枚(少し小さく見える)を交互に入れ、次にベアリングで挟んであります。
スプリングワッシャは2枚、間にも平ワッシャを入れて(片側だけ良い)予圧ネジを締めます。
スプリングが殆ど潰れる位に締め、予圧ネジのイモネジを固定します。この時イモネジの一つは必ずキー溝に入れて緩まないようにします。
この予圧が小さいとフライス作業中にテーブルが切削力に負けて移動してしまいます。
8mmのスプリングワッシャ2枚の力は充分な抗力があるようです。それでも軸は軽く廻ります。

フランジの厚さにより締まり具合を調整するため平ワッシャを適宜使います。
スプリングワッシャは製品により滑り止めの刃が付いていることがあります。この場合は削り落とす方が良と思います。またこの部分の平ワッシャはスプリングワッシャの食い込みがないようにステンレス(硬い)ワッシャを使いました。
スプリングワッシャは1枚だと平均的に力が掛からないため必ず2枚使います。
強力なコイルスプリングを入手できればこのような面倒はありません。

この改造で送りが滑らかになったように思いますが、ついでに送り用のモータを入れ替えました。
X軸はロングテーブルに交換したためテーブルが端に寄った時重力バランスが悪くなり、トルク不足(脱調ぎみ)を感じてましたのでZ軸モータと交換して大きいモータにしました。
まだ何となく気になる所もありますがX-1本来の能力を考えると充分性能を引き出すことが出来たと思います。X-1を購入してから既に5年余を経過して、それなりに工作の助けになっております。
改造も一段落これからは作品作りにシフトしたいと思います。

送り用モータの選択について 手作りCNCフライスに挑戦 に参考記載があります。

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