AVR大研究D
Automatic Voltage Regulator

ICは便利で性能もよい!

大研究Cの放熱器の熱設計はご理解いただけましたでしょうか?予想以上に大きな放熱器が必要なことがおわかりいただけましたか?

いよいよ実際の設計です。
今までの考察を元に設計を始めました。その原型は[avr0111]です。しかしいくつかの問題点があります。
基準にする電圧源としツェナーダイオードを使っていますが普通に購入できる範囲では出力電圧を1V程度にするのに適当な電圧の物がありません。また電圧が低くなると安定度の問題で好ましくありません。そのようなわけでこの方式では最低電圧は5Vくらいが限度です。しかし最初の希望で乾電池の電圧・1.5V の出力は実験用電源として必要です。そのためには基準電圧を(−)側にずらすなどの工夫が必要になります。
さらに電源トランスにもう一つ別の巻き線が必要になります。トランスは高価な上あまりいろいろな種類がありません。ひとつで出来なければ基準電圧用にもうひとつ必要になってしまいます。

こういうときは頭を冷やして考え直すことです。

部品を調達するために秋葉原を散歩していたら[IC・LM317を使った電源キット \500]なんて云うのが目に入りました。部品集めて作ると”\1000以上掛かるなあ!”とこの製作そのものが危ぶまれる事態です。
実はこのICのことは以前から知っており、実際に他の目的で使用しています。今回は勉強と試作は別と割り切ることにしました。このICキット購入。(これにより1.2Vから出力可能)

安定化回路の入力は
さて安定化回路へ入力する電源はどうしましょう。当然直流でリップルが少ないことが要求されます。リップルとは整流後に残る交流成分のことです。1Aの負荷を流して制御トランジスタの電圧降下分より高い電圧が必要です。今回は直流で20V1A程度です。(IC・LM317の場合最低電圧差3Vで18V必要)
普通は交流の100Vをトランスで下げ整流します。ここで購入するトランスは20V1A(20W)の物でよいでしょうか?トランスに書いてある規格は交流で使う規格です。実は整流するとピーク電圧は約1.4倍くらいになります。(交流の電圧の実効値は1/√2)つまり28Vくらいです。これで1A流したら28Wですね。20Wのトランスで28W取れるんですか?落とし穴はここです。電圧が高くなった分だけ電流は少なくなると考えてください。整流回路によっても違いますが電力で考えれば間違いがありません。1.5Aくらいのトランスが必要になります。28Vという電圧も負荷がかかると下がりますし整流回路やフィルタ用のコンデンサの容量により左右されます。
必要なトランスの最低電圧を求めるのはトランスの内部抵抗、整流器の内部抵抗、整流回路、フィルタコンデンサの容量など変数が多いので少々やっかいです。
簡易的には希望電圧と同じくらいのトランス電圧でよいようです。
そんなことを念頭に見て歩くと、16V2Aとか18V2A位の製品がありました。価格は\2000程度。その他整流用ダイオード、平滑コンデンサなどが必要です。
散策を続けるとACアダプタで18V-1.8A \950なんて云うのが目に留まりました。これはスイッチング電源です。
迷うことナシに勉強と試作は別、購入しました。しかし電圧が18Vギリギリというのが気になります。

*電子回路の設計はきちっと計算しましょう。
アマチュアの研究家の場合デジタル回路をいじる人は時定数などに結構気を使ってますが、アナログを扱う人たちは私も含めて山勘が多いように見受けます。それでも結構うまくいくのですがこれは技術屋さんの仕事ではありません。(だから私は技術屋さんになりきれなかった)昔のコンデンサのなかには+誤差100%なんて云うものが珍しくありませんでした。抵抗でも±20%なんて云うのがあたりまえだったのです。そうなると計算してもバカらしくってやってられない!ついついいい加減で人生もいい加減になってしまいました。しかし最近の部品は違います。精度も良くばらつきも少ないですから高周波回路でも計算どおりにできあがります。
直流回路は比較的計算が簡単で初心者でも計算しながら設計できます。

*実は難しい直流回路
2,3行上には簡単と書きながら・・・実は長時間安定性などを考えるととても難しいのです。この辺は専門書に譲ってアマチュア的に逃避します。

大変なことになりました。
考えていた物と全く違う物を作ることになってしまいました。しかし今までの勉強は無駄になりません特に放熱に関する考察は重要です。

IC(LM317)を使った電源キット
これは秋月電子通商 のLM317を使った可変電圧の電源キットです。(\500通販可能)最大電流1.5Aというものです。これを使えば簡単に作れる!と誰しも考えるでしょう。最低電圧も1.2Vから可能です。全部基本に従って創ってみようと思ったのですが早い、安い、性能がよいとなればヤッパリICの魅力にはかないません。
皆さんもAVRの回路について理解いただけたと勝手に解釈してこのキットを使うことにします。
安定化回路の入力の電源についても同じです。今回はあっさりジャンクの電源を使うことにします。トランスは高いし重いし基本回路を理解する目的以外にメリットはありません。

回路図は次回
予定の回路は急遽変更です。仕様は次のようになります。
1.2~15V、最大電流1A保護回路はIC機能によることにしました。
この結果高い電圧設定の範囲では1.5A程度可能です。放熱に配慮すれば全電圧範囲で1.5Aが可能です。放熱不足の場合でも熱保護回路がありますから安心です。

秋月のキット
秋月のキットは一般キットメーカのものとは少し様子が違います。初心者にはハードルが高いかもしれません。その理由は説明がわかりにくい。・・・秋月はその昔ICがまだ珍しかった頃メーカのカタログから抜粋した規格や使い方をプリントしてICに付けて販売していたのです。当時そんなことをやってるお店は皆無でした。その名残で相手が多少の知識があることを想定して書かれています。部品が同等代替え品になっていることがあります。部品定数等を自分の判断で選択しなければならないことがあります。
部品があってこれなにに使えるかな?という逆転の発想から始まったキットで普通のキットやさんとスタートが違います。
これらを含めていいかげんだ!という人もいますが安くて技術資料などはキッチリありますから学生さんなどには勉強になるキットといえます。万一うまく出来ないときは混雑しない時間帯に相談してみるのもひとつの方法です。
しかしキットがうまく動作しない理由の90%以上は配線の間違い、はんだ不良で部品不良はほとんど無いようです。さらにケースなども自分で用意しなければなりません。

ICを使うメリット
目的にかなったICがあれば簡単に目的を果たせますがメリットはそれだけではありません。
すべての回路がひとつの筐体に入っているということは動作の安定性がよくなります。直流回路で一番困る長時間安定性はいとも簡単に解決されてしまいます。(ICメーカが苦労している)さらに必要な保護回路なども組み込まれています。(こわれやすいICはすぐ売れなくなります)
LM317で云えば過電流保護、最初のほうで説明した短絡保護も同様です。過温度保護(電気的な定格を超えなくても発熱による温度上昇が定格を超えることがありそれらの保護)がされています。
このICは熱的条件が厳しくそれを満たすことは困難な部分があります。しかしICの熱保護のおかげで最大電流を制限してくれますから安心して使うことが出来ます。

【 0111 ja1cvf 】

この電源回路には過電流保護(短絡保護)回路が組み込まれています。しかし短絡時にはパストランジスタの損失は最大になります。充分な放熱がされないと熱暴走を引き起こすことがあります。可変抵抗の設定位置により制御不能になる領域がありますから実用回路として使う場合は設定範囲を制限する必要があります。【ja1cvf】
*この回路は今回試作のものではありません。

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