【6-1】メンタルなとり組み・「 布団が恐い1 」


■ どのようにバランスしようとしているかが先

ここからは内面と体を一つにした心身セラピーともいえる臨床例を中心にご紹介します。

私の場合整体操法、運動法、手当て法だけではなく自称NRTワークというセラピー的な取り組み方も行なっています。これは特に喘息のためのものではなく、多くの身体症状や悩みにも多様に活用できています。

いろいろな方が読まれていると思いますので再度注釈をつけますが、【1-1】整体と心身セラピーで書きましたように、心理的な分析はほとんど行ないません。

実は、これは原理として整体的な取り組み方と同質な要素を持っています。もう少し説明します。

整体で体のどこかの緊張を弛めたり蒸しタオルを行なうのは、体が本当は持っているのだけど発揮できていない力を発揮できるように誘導するためです。

だからそれは指導側が「 全面的にパワーをあげる 」という類のことではありません。筋肉の緊張と弛緩の流れの中での痞え(つかえ)をとり、あとは体に任せるありかたです。

ですから整体は「 治す 」というより「 治る 」ための方法と言えます。

ここには「 本来自然治癒力は本人が持っていて、その働きが正常に機能して自調するはずだ 」という着目があるのです。

NRTワークでメンタルな取り組み方をする場合もこれと同様に、

「 もっと発揮されてよい、あるいは認められていいはずの内的なエネルギーがあるはずだ 」そういう見方をしています。

別の言い方をすると、まだ見えていない価値を見出すと表現することもできます。

ですから、フツウで言う因果関係的な見方が希薄になります。原因結果の関係が希薄と言うとちょっと変ですが事実は事実です。

このため、理解しがたい面が多分にあるのです。悪い結果はでておりません。
できましたらこれから先は、「治す」この言葉をズボンの後ろポケットにでも入れておいて下さい。

実際この方法をとるとき私には「治す」という言葉がどこかへ飛んでいってしまっています。目の前の症状と心身の現象にに添うことに集中していることは確かです。

まあ、簡単には東洋的な捉え方と思ってください。

とにかく、「 症状が起きるのも自然現象の現れで、何らか安定を求めてのバランス欲求があるはずだ 」と最初から眺めているのです。

だから流れとしては「 どう変わろうとしているか 」それが先で、では何がその働きを阻害、邪魔しているかという順番に取り組むことになります。

自然治癒力の働きについてこういう求め方をしていることを先に置いて、臨床例をお読みいただければと思います。

それから臨床例については私にもそれなりの思い入れがあり、ときにエッセイめいた展開になっている部分があります。どうぞご了承ください。

また、以前メルマガで紹介した内容も入っておりますが推敲し直しております。

臨床例をお読みになっても一体どういう原理が成り立っているのかよく分からないのが実際ではないかと思います。このことについてここで説明をしていたらそれだけで時間を費やしてしまいます。

したがって各臨床例のあとに少しずつ説明を加え、後に原理について説明したいと思います。


■ 布団が恐い1

二児の母Yさんにとっては喘息はずっとコンプレックスの原因になっていました。でも整体やワークを自分でやるようになってからは随分とこれとの付き合いが楽になってきました。

彼女によりますと、何よりもそれは体や自分自身との付き合いが上手くいくようになったことが大きかったとのことです。彼女にはごくたまにメールをいただきます。以下はYさんにいただいたメールの一部です。

┌──────────────────────────────────
│Σ^)/

│  少し前まで、リアルな夢をよく見ていました。

│  12月から水をよく飲むようにしていて、1月に入ってから
│  見事、右の肩甲骨が同じように弛んで、今はすごく動いています。

│  左の肩甲骨がぐらぐらと弛み始めて、右だけが取り残された
│  感じでしたが、先日、2日間だけ続けて尾骨を温めて寝たら、
│  今度は右の肩甲骨が同じように弛んで、今はすごく動いています。

│  季節を体で感じられる喜びは、言葉にできないくらい嬉しいですね。
│  一人でも多くの人に、知ってもらいたいですね。
│  そんな話をどこででも挨拶代りにできたら、どんなにいいですかね。

│                                  >゚)) )彡
└──────────────────────────────────


あるときこんなことがありました。彼女から電話があって、

「 あのう‥‥これは前からそういうことがあったんですけど、寝る前は治っているのに、いざ布団に入ると胸が苦しくなるんです 」

「 ふーん、そうかぁ 」

「 いろいろ自分でもワークをしてみましたけど上手くいきません。何とかならないものでしょうか 」

「 ‥‥‥‥ 」

「 だから布団に入るのがちょっと恐くなってるんです 」(ーー;)

私が無反応だから、彼女の語気が少し不満めいてきました。この人は怒ると凄く恐いのです。私は心中慌てました。しかし、そのとき閃いたことに良い感触がありましたので直ぐ答えました。

「 だったらあなたがお布団になればいいんじゃないの 」(^_-)

「 えっ?私が布団になる?」(゚.゚)

「 布団とあなたが入れ替わればいい。つまりあなたが外で布団が中になる 」

「 はい、分かりました 」

なんとも不思議なこの会話はこれで終り、私は失礼にもこの件は忘れてしまっていました。そしたら講座で会った時、

「 先日はありがとうございました! 」と明るい彼女。

「 えっ?‥‥ 」

「 あのあと、喘息が起きなくなって眠れるようになりました 」

「 おーーーそうか、それは良かった!」

「 大変勉強になりました。直ぐワークをやりました。それ以来布団に入ってから苦しくなることはなくなりました。そして、あの後から体と心がガラガラガラッて変わってきたんです。ホントニ凄く動き出したんです。もう奥の‥‥ホーーーから動き出したったって感じ 」

「 おかしいよね。これって。他の人が聞いたら我々はキチガイ扱いだろうね 」

「 うん 」

そして続けての「 ワークの内容は言えませんけど‥‥ 」の彼女の言葉に、「 ああ、分かってる。別に言わなくてもいい 」とさりげなく講座の準備をしながら、私は彼女に背を向けてしまっていました。


きっと、あの柔らかい雲みたいな布団の下に雨が降って‥‥そののち晴れだったのだろうな。私はそんな思いがよぎって、感激がじわーんと眼のまわりから湧いてきたのです。この気持ちは今この原稿で始めて白状しております。

私は「 あなたが布団になればいい 」と言った後こう思いました。喘息と布団、中と外、この構造がシンプルなだけにきっと内容が濃い展開になるだろうな‥‥と。

やればいいと、ただ言うのは簡単なことで、実行しようとしても実際にはできないことの方が多い。

でも‥‥、だから‥‥と、大脳新皮質がゴチャゴチャ喋りだすのが普通。

しかし、この主婦Yさんは苦しかったからこそ真剣だった。これまでの心身の変化を例えるなら、まるで分厚いハッサクの皮が何層にもなっている果物をグイッ、グイッと剥くみたいな変化をしてきた。

話を元に戻すと、あのときの二人の会話は、私の心にふっと浮かんだことをポーンと投げたらスポーンと受けたって感じの、それはもう気軽なキャッチボールだった。電話を切った後Yさんは直ぐにワークをやったらしい。

本当に敬服してしまう。まったく、本当に自分でワークするなんて、私はチットモお金にならない!(笑)失礼いたしました。

この彼女のパワーはどこからくるのか?

それは自分と体への素朴で強い興味としか言いようがない。

しょっちゅう夢をワークしてみたり、体を自分の動きに任せて動かしているみたいだ。こういう作業をしているとどういうことが起きてくるかというと、意識と無意識が仲良くなる、そういう現象が起きてくる。


後日、あのワークの話になると、いつも彼女は言うのです。

「 本当に悔しいんです!後になってみると‥‥、どうしてあんな単純なことが分からなかったんだろう。そして何年も何年もあんなに苦しい思いをしてきたのにって思うんです 」

そう、私もそうだけど、何か私たちは感覚が鈍っちゃったためにそういうシンプルでパワフルなタイミングを逃しながら生きているのかもしれない。

確かにこれはワークを経験するよく思うことだ。


私が予想していた大まかなワークの流れはこうだった。

彼女に気づいてほしいけど彼女が分からない何かが、布団が持つ何らかのムードの中にあった。それが彼女の心身に反映していた。彼女は布団の側に回ることでその質、内容を知り得ることができた。これで布団は役割を終えた。

もちろん、ここで言う布団とは本質的には心の中にあるエネルギーとしての布団であって、物質としての布団が無ければ、彼女は布団に象徴されるエネルギーには気づきえなかっただろうと思われる。

そしてこれは彼女の個人的プロセスであることを付け加えておきます。つまり他の人も布団の外に出てみると効果があるなどは残念ながら言えません。

Yさん、お布団さん、本当にどうもありがとうございました。


!本来原稿はここまででした。この原稿を私は家内にみせた‥‥ら‥‥。

これじゃぁ、なんのこっちゃ分からんっ!!!と大変な剣幕。
ワークについて何も書いてないし客観的な説明もついとらん!★O=(`_` )

い、いや、私は何が起きているかは大体分かって‥‥。(..;)

アナタが分かってても読者はサッパリわからんでしょっ!(`□´)

(×_×# で、では彼女に電話を‥‥。

というわけで、次回はYさんにいただきましたメールの内容からです。


次回・‥…→★ 【 布団が恐い2 】

               ■ Yさんからいただいたメール
               ■ 胸のツカエとココロの効用
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\喘息 のち 晴れ!/
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