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西表島 ジャングルの入門コース 西表島縦断




知る人ぞ知る西表島の縦断トレイル。島の外周2/3しか道路が存在しない西表島、その最奥部を経て島を縦断してしまおうという、かつての生活路・現トレッキングコースだ。とある有名ガイドブックではこんなふうに書かれている。「縦断に要する時間は案内人がいても約9-12時間ということだが、道らしい道などまったくないサバイバルコース」。毒蛇のハブやヒルがウヨウヨしている亜熱帯のジャングルを行く過酷な縦走。

そんなアドベンチャーチックなイメージから、春休みや夏休みともなれば全国から大学の探検部やワンダーフォーゲル部が大挙して押し寄せる。ある意味、西表島を訪れる人の間で一種のステータスにもなっている西表島縦断路を8年ぶりに歩いてみた。

>> 縦断路の概略についてはダイジェスト版もご参照ください

西表島縦断トレイルのトレッキング

西表島縦断1日目(2003.3.7) 大原港 〜 仲間川展望台(キャンプ)

いつもだったら、大原の港に着いたら、6キロほど歩いた南風見田(はえみだ)の浜でしばらくキャンプして体を慣らすところだ。しかし、今回は時間の関係で、いきなり島の縦断トレッキングに入ることにした。

大原港から大原の集落を過ぎて北へ向かう。仲間川の長い橋を渡れば20分ほどで大富の集落だ。中学校の脇の細い道を山へ向かっていくと大富林道に入る。縦断のはじまりだ。この道はかつて西表島縦断道路として開発された道だった。しかし天然記念物イリオモテヤマネコの発見を機に、工事は中断されてしまった。

農道の先から林道に入ってすぐのあたりは、墓場になっている。沖縄の墓は大きく立派なものが多い。最近は少なくなっているみたいだけど、沖縄の伝統的な亀甲墓も残されている。その名のとおり、亀の甲羅のような形をした曲線の不思議な墓。もともと女性の子宮をかたどったもので、もときた場所に帰るという意味があるらしい。それにしても古代にどうやって子宮の形を知ったのか、不思議といえば不思議な話だ。

西表島縦断/大富林道入口付近の墓場
大富林道入口付近の墓。林の奥の方を探すと昔ながらの古びた亀甲墓もみられる。

今回ここを通ったときには、いくつもののぼりが建てられた墓が目を引いた。最近埋葬されたばかりなのか、それとも法事(?)だったのか。こういう風習をみても、本土との文化の違いを感じてしまう。派手さ具合でいったら、台湾・中国に近いような気がする。

キャンプ適地 仲間川展望台

林道は途中まではかなりキレイに整備されている。大富から歩くと1時間半くらいだろうか。車が入れる最終地点に仲間川の展望台がある。ここに広い東屋があり、西表島初日はここでキャンプ。この先は林道というより歩道になり、やがて本格的な山道になっていく。

高台に位置する展望台からは、眼下に仲間川流域のマングローブ林が一望できる。緑の絨毯の中にクネクネと仲間川が流れ、遠くには海が見える。ここまでくるともう日本の景色とは思えない。(マングローブというのは、淡水と海水が入り交じる汽水域に生える熱帯植物の総称。仲間川流域のマングローブ林は日本最大の面積を持つことで有名だ。マングローブについては詳しく後述したい。)

西表島縦断/仲間川のマングローブ林を見おろす
仲間川展望台から見おろす仲間川流域。イマイチわかりにくいけど、緑の絨毯が海まで続いている。その間をクネクネと流れる仲間川。日本最大のマングローブ林。

展望台にある広い東屋(あずまや)には石造りのテーブルとベンチがあり、その両脇にテントが2張りくらいできるスペースがある。東屋のまわりも平らに整地されているので、その気になれば、いくらでもテントが張れる。

小雨が降るなかの到着だったので、迷うことなく東屋の屋根の下にテントを張った。こういうときペグが要らないセルフスタンディングのテントは便利だ。大富林道はレンタカーは乗り入れ禁止なので、夕方以降来る人もあまりない。誰にも気兼ねなく堂々と荷物を拡げることができる。

西表島縦断の入口/仲間川展望台の東屋

西表島縦断の入口/仲間川展望台の東屋
大富林道の途中にある仲間川展望台の東屋。水場がないのが難点だけど、なかなか快適な野営ができる。(やや濁った水でよければ沢水は採れる)

それにしても寒い! 風が吹き抜けるせいもあって鼻水が止まらない。夕方5時くらい、日暮れをまえにお茶を淹れて体を温めつつ夕食の準備。久しぶりの炊飯だったけど、勘所はしっかり生きていた。自画自賛のいいでき。みそ汁と缶詰で簡単な夕食。

再びお湯を沸かして、さっき石垣島で買ってきた泡盛をお湯割りにして、ボーっと暮れかかった空を眺めていたとき、雨のなか林道の方から声が聞こえてきた。人が近づいてくる。誰だろう? まさに黄昏(誰ぞ彼)時、シルエットだけでぜんぜん見えない。

こんな日が暮れてから東屋へやってきたのは、ザックを背負った名古屋の大学生2人組だった。彼らも明日から縦断に入るという。もしかしたら縦走が終わってここでキャンプする人が来るかなぁとは思っていたけど、まさか自分と同じ行程の人がいるとは。

クラブ所属の功罪?

まあ、ここであったのもなにかの縁。泡盛を飲みながら、彼らの食事につき合った。大学のワンダーフォーゲル部に所属するふたり、ワンゲルにしちゃふたりで来るなんて珍しいと思ったら、他のメンバーは沖縄本島でキャンプ宴会に興じているんだそうだ。そんなナンパな連中(後輩たち)につき合いきれず、ふたりで西表へやってきたんだとか。

西表島はワンダーフォーゲルのメッカと言えるかもしれない。島をウロチョロしていると、ほんとたくさんの大学生の集団に出合う。そんな話を彼らにしたら、「春合宿に行かれる場所って限られるじゃないですか。そうなると国内だと西表島になっちゃうんですよ」と教えてくれた。ああ、そういうわけなんだ。山岳部なら3月といったら春山に行くのだろうけど、ワンゲルといったら確かに限られそう。

思えば、これまでたくさんの大学生の集団をみてきたけど、こうやってちゃんと話をするのは初めてかも知れない。というのは、彼らには彼らの世界があって、他の旅行者との交流することはほとんどないことが多い(個人的な経験的からの独断です)。

ワンゲル部員ではあったけど、今回はほとんど個人旅行者同士の関係。いろいろ話ができた。改めてきいてみると、団体行動は団体行動でいろいろ大変そうだ。興味深かったのは、単独行にまつわる制限について。ぼくが「単独行もおもしろいよ」なんて話をしたら、「興味はあるけど、自分にはできない」という。なんでか尋ねると、団体に属している以上、事故とかにあったら「○○大学○○部部員」ということで、大学やらクラブに迷惑がかかるからだそうな。「ふーん、そうなんだ」という感じ。それがその人個人の見解なのか、クラブの方針なのかはわからないけど、なんだか窮屈だなぁと率直に思った。

(2003.3.29 up)

次回はいよいよジャングル突入です





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焚き火のまえで 〜山旅と温泉記
By あきば・けん
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