原始の島と言われる沖縄県西表島。日本本土より台湾に近く、緯度も台湾の台中市とほぼ同じ。島の90%が亜熱帯のジャングルに覆われるイリオモテヤマネコが潜む神秘の島。
そんな場所でトレッキング&キャンピングを楽しんできました。詳細は、写真の現像が済んだら順次ご紹介していくつもりですが、まだしばらく時間がかかってしまうと思うので、まずは全体の簡単なイントロダクションだけお届けいたします。
1.冒険気分満点の西表島縦断トレッキング 2.楽園を求めて 〜西表島南部海岸踏破 3.ピナイサーラの滝 デイウォーク 4.最後の贅沢 日本最南端の西表島温泉 |
上の地図のとおり、西表島には道路は海岸線沿いの1本しかありません。全長55キロ。端から端へ移動するには車でも1時間半かかってしまいます。そのため、島の東部(大原周辺)と西部(上原周辺)は、別世界という雰囲気なのが現状です。それぞれに町としての機能はちゃんとあるのですが、どちらかというと上原の方が栄えていて、例えば床屋となると西部地区にしかないという不便さを抱えています。
その昔、島を縦断する道路を造る計画が持ち上がったことがありました。しかし、ちょうど世紀の大発見といわれるイリオモテヤマネコが見つかったため、生息域の保護からこの計画は中座してしまいました。そのとき道路にする予定だったルートが現在、西表縦断トレイルとして残されていて、徒歩でなら西表島の東西を縦断することが可能になっています。
このコース、いまでは通称「西表の縦断」といって、島の最奥部に比較的簡単にアクセスできる山岳ルートとして、西表島を訪れる旅行者の間ではあこがれのトレイルとなっています。秘境西表島の山に慣れるための足慣らしのコースとして定番で、大学の探検部やワンダーフォーゲル部連中がしょっちゅう行き来しているトレッキングコースでもあります。
西表島の山間部の様相は内地(本州)とは違います。眺望の聞かない亜熱帯のジャングルに加えて、山域には毒蛇のハブが生息しているという恐怖。ハブといえば世界4大毒蛇のひとつ(さらにサソリや毒グモもいるらしい)。そのため、この縦走は、内地で山歩きをするのとはちょっと訳が違います。
気分はまさに探検。「ヒルや毒蛇がウヨウヨしているジャングルに分け入る」という、絵に描いたような体験をできるのが、なによりの人気の秘密なのかもしれません。まあ、実際に行ってみれば意外と道もしっかりしているし、ハブなんてめったにお目にかかれるモノではないし、そう困難な道のりではないのですが、鬱蒼とした森を抜けて縦走が終わった後の充実感はひとしお。山を抜けた場所にある東屋には、「○○大学ワンゲル部縦断成功!」なんて落書きがいっぱい残されています。
上の地図でオレンジのルートが途中で切れていますが、ここには軍艦岩という船着き場があり、通常はここと西部地区の間は観光船を利用することになります。というのは大河・浦内川は干潮の影響を受けるマングローブ林になっていて、このさき、人間が歩けるルートがないからです。遠巻きしたり、川を泳ぐつもりなら行かれないこともないんでしょうけど、そういう話はあまり聞きませんね。
観光船の時間が不定期なので、通常は西部地区からまず船に乗って、軍艦岩へ。軍艦岩から歩いて1時間ほどで、マリウドの滝とカンビレーの滝という景勝地があって、観光客はそれを見て引き返していきます。縦断を目指す人は、さらにその先のジャングルへ分け入っていくことになります。そして途中で一泊くらいして東部地区の大富に抜けるスケジュールが一般的なようです。
今回、ぼくは諸般の事情から、逆送コースを取りました。しかも最後はボートに乗らずに、もと来た道を引き返したというかなりの変則コース。理由は本編のなかで書いていきたいと思います。まあ、単純にいえば、フェリー代にお金を掛けたくなかっただけなんですけどね。
その気になれば、空身で8時間ほどで抜けられるコースですが、今回3泊4日かけて、のんびりと亜熱帯林のジャングルを堪能してきました。
西表島には島を2/3周する道路があるだけで、その南西部にはまったく道路は通じていません。その昔は南西部にもいくつかの集落があったそうですが、廃村となり、いまとなってはその痕跡もほとんど残っておらず、ほぼ手つかずの自然が残っているエリアといえます。特に南風見田から南の海岸をずっと歩いていったどん詰まりにある鹿川(かのかわ)は旅人の「楽園」として有名な場所です。
世間から隔離されたような開放感ある広い浜には、いくつもの沢が流れ込んでいて、長期滞在にも便利。(買い出しには最低限往復2日はかかりますが、おかずになるものは海や山で採れます。)
自分の足で歩いてしか行かれない魅惑の地。これぞトレッキングの醍醐味です。のんびりとキャンプをしながら、楽園探しの始まり始まり。
鹿川にはいろいろな伝説が残っているのもおもしろいところ。おいおい書いていきますが、有名なのは、かつて鹿川で厭世生活を送り、畑を作ろうとしていた鹿川じいさんの話。浜の西側には2つの洞窟があり、何十年かまえには、たったひとり仙人のような生活をしていたとか。洞窟には木製の扉などがしつらえてあり、なんとも南の島チックな雰囲気満点なエピソードです。
鹿川から、山を越えて裏側へ下りたところにある波も静かな入り江の浜は、ウダラ浜。ここにはつい10年ほど前まで砂川じいさんという有名人が住んでいました。西表のターザンと呼ばれて、しばしばテレビにも出ていた人です。大酒のみでほとんど、というか完全にアル中。ときどきイノシシを取ったり、貝を拾ったりして、悠々自適に暮していたそうです。その小屋跡が今も残されていて、快適なキャンプ適地になっています。
そんな、海岸線沿いと山を出たり入ったりしながら、のんびりと1週間近くかけて、南部海岸をトレッキング。その間、山菜を採ったり、貝を拾ったりしながら、静かな西表島ライフを満喫したのでした。
これは西表島西部地区の町から気軽に歩いて行かれるデイウォークです。ピナイサーラとは、現地語で白い長い髭という意味。実は沖縄県か最大の滝なのですが、ほとんど観光地化されておらず、滝へ行くには、干潮時に潮が引いた干潟を歩いて、木々のマーキングを頼りにジャングルを歩いていかなければなりません。(ピナイサーラは、ヒナイサーラとかヒナイ滝と表記されることも)
ほとんどの人は、カヤックツアーやガイドツアーで行くようですが、道さえ知っていれば個人で勝手にいくことも可能。7-8年前に行ったときは誰も人がおらず、滝壺で真っ裸で泳ぐこともできたのですが、最近ではカヤックツアーが流行っているらしく、あまりゆっくりできなかったなぁというのが正直なところ。滝自体はホント迫力あって、こんなに近づいちゃっていいの? ってくらいのスケールなんですけど。
あまり滝でゆっくりしすぎると、潮が満ちてきて広い湾が水浸しになって、場合によっては泳がなくちゃいけないってことにもなります。西表島では潮の干満の時間をチェックするのは必須です。
ずっとキャンプ生活だった旅の最後、西表島にある日本最南端の温泉「西表島温泉」へ行ってみました。1990年頃だったか、西表島に温泉が湧いたと言ってちょっと騒がれた時期がありました。そのときは高那温泉郷と呼ばれていて、リゾート開発が進んでいましたが、なぜか途中で計画倒れ。温泉施設にはなりませんでした。(もしかしたら、営業開始後、すぐに潰れたんだったかもしれない)
以前ぼくがいったときはすでに廃墟となっていて、まるでローマのパルテノン神殿の跡のよう。なぜかまんなかに噴水があって、それだけが水を拭きだし続けていました。それがいつの間にか別の会社がリゾート地に作り上げたようです。現在は西表島温泉と呼ばれています。
これまでは西表島の旅では、いつも超貧乏旅行で、1ヶ月の現地での生活費が5000円なんていう世界でやっていましたら、入浴料を払うなんてもってのほか。でも、今回は以前とは状況がだいぶ違いますので、思いきって1200円払って温泉へいってきました。昔の感覚が残ってて、トンでもない贅沢をしている罪悪感がちょっとありましたが…
西表のジャングルの景色を眺めながらの入浴は最高。思いっきり循環式の温泉でしたが、それでも泉質がはっきり温泉と分かるものでしたし。日本最南端ということもあって、なかなかいい場所じゃないっていうのが正直な感想です。
By あきば・けん e-mail address |