第21話 「炎の老犬」(脚本:辻真先)
青空学園1年生の中島は、タロウという名の老犬を飼っている。
タロウは、炎の間をくぐり抜けて口にくわえた松明に火を付けるなど、見事な芸を見せる。
それも道理で、タロウは中島の父がサーカス団を経営していた頃、輪くぐりなどの訓練をされた犬だった。
新聞部はタロウのことを記事にしようと、中島の家を訪れる。
だが、中島はちょうど父と口論をしている最中だった。
会社の寮に住む中島の父は、社長が犬嫌いだから飼うことはできないと、タロウを保健所に連れて行くように言うが、中島は応じようとしない。
写真を撮りたいという一平と五郎の求めに応じてタロウの鎖を外し、ポーズを取る中島。しかし、タロウは突然中島や五郎を振り切って、「火気厳禁」の張り紙のすぐそばでたき火にあたっていた作業員に襲いかかる。
作業員は「なんだよ、この( )」と放送禁止用語で叫んで応戦するが、タロウの素早さにはかなわない。タロウは更に一平にも噛みついて、走り去ってしまった。おまけに、追いかけようとした中島は、階段を転げ落ちてしまう。
医師の診察を受ける一平と中島。そこで、医師が狂犬病の疑いがあると言い出したため、「早くしないと、一平が本当の( )だ!」と放送禁止用語で叫び、急いでタロウを探す五郎。
そば屋の出前の自転車をなぎ倒してもお構いなしに走り回るが、タロウはなかなか見つからない。
五郎は再び中島を訪れ、タロウが行きそうな所に心当たりがないか訊ねたが、捕まれば殺されると思い込んでいる中島は、逃げている間に誰か人を噛んだらどうするんだと五郎が詰め寄っても、「そんなこと知るかい」と突っぱねる。
五郎は「バッキャロー!」と叫び、自分の思い出を話して聞かせる。
五郎が小学校の頃、兄弟のように仲良くしていた犬がいたが、野良犬に噛まれて狂犬病にかかった。
五郎の父親(警察官)は、犬に拳銃を向ける。
幼い五郎は泣きながらやめるようせがむが、父は「男にはどんなに苦しく辛くても、目を開いて乗り越えねばならん時がある」と、五郎が見ている前で犬を射殺したのだった。
再びタロウを探しに行った五郎は、途中でタロウとすれ違う。タロウは、家へと戻るところだった。
慌てて追いかけると、建物から煙が。屋上の危険物が爆発し、火事になったという。
怪我をして思うように動けない中島は、まだ4階に取り残されていた。
そこへタロウが現れ、中島を助け出す。
中島の父は、サーカスで多くの動物と触れ合い、また死に目も見てきたため、タロウの死期がそう遠くないことを悟っていた。だからこそ、老いさらばえて苦しむ姿を見ないで済むよう、安楽死させようとしていたのだった。
だが、サーカスにいた頃から可愛がり、また息子の生命までも救ってくれたタロウを、息を引き取るまで飼うことにしたという。
新聞部室引っ越し記念にふさわしい気持ちのいい記事になったと喜ぶまゆみ。
頭がおかしくなったらどうしようかと冷や汗をかいたと言う一平に、「お前それでもおかしくないつもりかよ」と返し、笑い合う五郎たちだった。
危険物は爆発したが、五郎は爆発しない。
暴力も振るわない。
う〜む。
飼い犬が狂犬病だからといって、警察官が拳銃で射殺して良いものか。
しかもこの銃、古くさいSFアニメの光線銃(みたいな発射音がする。
久々の放送禁止用語の登場。しかも、頭がおかしくなることを意味する言葉らしい。
…ということは恐らく、放送禁止用語の中でも横綱級の、あの4文字の言葉か。刃物を持たせちゃいけないやつ。
そして、五郎の父は、五郎の叔父…つまり実の兄弟と、まったく似ていない。
これが最大のミステリーだろう。
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