春先は山スキー

H13.3.14(水)
とちぎ読売(山想記)掲載


 そろそろカタクリの花便りが聞こえてきそうなこの時季、「花を求めてハイキングに出かけようか?」 それとも「一雨ごとに締まってくる残雪を追って山スキーに出かけようか?」と、毎年スケジュールのやり繰りに悩む事となります。 お客さんとのお付き合いや家族と出かけるのであれば、やはり花を求めてハイキングとなりますが、仲間との山行は当然スキーをとります。
 山スキーは、二十数年前、尾瀬の至仏山にゲレンデの道具を担ぎ上げ、山の鼻へと滑り降りたのが初めてでした。 青空に向かって頂上を目指し、一足飛びに初夏を思わせる日差しのなかで、360度の展望を楽しんだ後は、お待ちかねの滑降の開始です。
 下降は一気に東側の大斜面を下り、途中もう少し滑りたいのを押さえて北にトラバースし、沢の源頭を避け、山ノ鼻へと滑り込みます。 ノンストップで下れば30分もかからない、距離にして3Km足らずで、大きなゲレンデより滑走距離は短いくらいです。 でも、自分の脚で高さを稼ぎ、自分達の判断でコースを決めて滑る爽快さ。 一日にたった一本の滑走で満足してしまうという、それまでのゲレンデスキーではとうてい味わえない満足感と達成感。 それ以後は、毎年春先になると「今年は何処を滑ろうか?」とそわそわ。 時期もだんだん早くなり、ルートも一般的なツアーコースから、記録のあまりない、無雪期に見つけた滑れそうな尾根や、地図で見つけたコースに入ることも増えて来ました。
 この遊びには当然リスクがあります。 荒天、ロストコース、雪崩、けが等々。 これらのリスクを回避する為に、技術、体力、情報、経験等の山遊びの総合力を試される事となり、それがまた、この遊びの面白さでもあります。 私もご多分にもれず、大木の根回り穴に飛び込んであばら骨を折ったり、自分が乗ってる雪面が動き出したり、滑っている斜面に亀裂が走っていた事もありました。 まだ3月なのに半袖で歩きたいくらいの日もあれば、時季はずれの猛吹雪に追い返されたり、逆に雪解けが早く下部の沢が出ていて徒渉を強いられたり、といろんな事があります。
 始めた頃からすれば道具は格段に進歩して、より使いやすく機能的に、そして安全になって来ました。 でも山の状況は今も昔もお天気次第、予報システムが進み、インターネット等で情報が得やすくなってきましたが、実際には行ってみなければ解らない部分が多くあり、現場で刻一刻と変化する状況、特にめまぐるしく変化する雪の状態に応じて判断し行動する事になり、場数を踏んだ経験と情報の量がものを言います。
 一緒には出かけられなくても情報をやりとり出来る仲間と、実際に同行し互いに信頼仕合える仲間に恵まれて、毎年楽しい山行が出来ることに感謝しつつ、これからも永く楽しみ続けたいと思っております。

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