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装備の手入れ・A


(9月 4日)

 高い山ではそろそろ「ナナカマド」等が 赤く色づく頃と成りました。夏の高山歩きも一段落し 秋の色づきとともに 標高の低いところに遊びの場が変わって来る事と思います。
 様々に変化する野山で遊ぶ為には 「色々な装備が必要です」と云うお話を以前致しましたが。 その装備の中で靴や衣類等 毎回使う物は必ず汚れたり 傷んだりしてきます 従って次により良い状態で使用する為には それぞれに適した手入れをする必要が有ります。 手に入れる時にいくら高価で優秀な道具を揃えても 手入れの如何に拠って 得られる”快適性”や”耐久性”には大きな差が出て仕舞います。 今回は 夏の間お世話に成った 道具や衣類の手入れ法について メーカー側に都合の良い事だけでない話をしてみたいと思います。
 先ず今回は 身に着ける衣類に就いてですが 手入れの面から観ると 大きく二つに分ける事が出来ます。 それは下着を始めとした 水分を良く吸い上げ拡散させて 乾きを良くし体を快適に保つ役割を担う”インナー類”と 雨具を代表とし防水叉は撥水処理のされた”アウター類”です。 前者の”アンダー類”は 汗を吸わせるのが目的ですので 当然体(皮膚)からの老廃物や油分で汚れて仕舞います。  此の汚れは「汚い」と言う一般的な感覚での不都合の他に 「機能面での効果」に不都合を生じます。 汚れてくると水分の”吸い上げ拡散効果”が薄れ 乾きが悪くなり 肝心の保温性が衰えてくると云う問題が生じます。 従って 肌に直接触れる”アンダー類”は道具としての効果面からも 特に清潔にして置く必要性が有ります。 手入れの方法としては 夏物は殆どポリエステル等の化繊を使って居りますので 洗濯ネットを使って戴ければ一般の中性洗剤を用いて洗濯機で洗う事が出来ますが 呉々も乾燥機は使用しないで戴きたいと思います。 此等の繊維は特殊な断面に加工して有りますので 熱に拠って変化(変形)して仕舞うと 肝心の効果が薄れて巧く機能しない事に成りますので注意して戴きたいと思います。
それからカッターシャツ等のウールを使った物は 防縮加工が施されて居り 一応は機械洗いが出来る事に成って居ります(製品タグにはOKマークがついている)が 長く良い状態で使用して戴く為には 手洗い陰干しをお勧め致します。
次に”アウター類”特に雨具の手入れに就いてですが これらは基本的に 極力洗わない様にした方が長く特性が維持出来ます。 と言いましても 雨や霧の中で風に煽られながら泥の中を歩く訳ですから 汚れない訳には行きません。 しかし此等の汚れはただ着いて居るだけで繊維に染み込んで居るわけでは無いので 水をかけるだけで大部分は落ちて仕舞います。 「洗うと傷む」と言いましたが 揉み濯いや洗剤に長い時間漬ける事が良くないだけで シャワーで流したり 大きな器に水をはって軽くすすぐ位は殆ど影響が無く むしろ積極的にして欲しい手入れ法です。 そして汚れが落ちたら陰干しをし 乾いたらズボンの裾、袖口、ポケット周りそしてザックで擦れる方や背中等を中心に 
フッ素系の撥水剤を用いて撥水防汚処理をして置きます。 女性の方達に多い様ですが 洗濯機で毎回洗って仕舞うと言う話も聞きます。 雨具は洗えば洗うほど汚れ安くなり 実際に使用するより洗濯する方が何倍も傷んで仕舞います。 呉々も普通の衣類という感覚は捨てて 「特殊機能を使用している」と思って 多少の汚れは気にしないで戴きたいと思います。


追記

GORE-TEX等の三層透湿防水素材について
 レインウエアーといえば9割以上がこの類のスリーレイヤー素材を使って居ります。 主となる表素材に防水透湿効果を持ったフィルムを張り其のフィルムを保護する目的でメッシュ状の裏地を張り合わせた三層構造に成って居り 多少張りのある生地です。(最近はだいぶ柔らかく成ってきた)
 構造上の欠点として剥離が有ります。 剥離すると中間層の特殊フィルムは簡単に切れてしまいますので出来るだけ揉まないように気をつけなければ成りません。 また外側と内側の素材は水蒸気を通す役目が有りますので水の皮膜や油で汚れると効果が無くなります その為に外側は撥水効果を維持し 内側は油(汗に含まれる)で汚れないように直に着用しない気遣いが必要です。

剥離
剥離状態 単なるしわでは有りません