夏山の技術B

(7月17日)

 前章では 夏の高山において予想される困難な事や危険に就いて考えてみましたが 今回も引き続き”難所”と云われる残雪(雪渓を含む)や岩場の通過方法について考えてみたいと思います。
 先ず残雪ですが 一口に残雪と言いましても 傾斜の無い小さな”雪田”と云われる様なものから 通過するのに半日からほぼ1日を要し 傾斜もきつく落石の危険も有る様な大きな”大雪渓”と呼ばれるものまで 様々な規模の残雪が有ります。 傾斜の無い小さな”雪田”でしたら ルートを間違う事も無いでしょうし ゴロゴロした砂礫の道より むしろ楽な位ですが 初夏の大きな雪田や大規模な雪渓になりますと”ガス”に由り視界の悪いときのミスコースや滑落、落石そして崩壊等様々な危険が潜んで居ります。
 一般に縦走コース上に有る雪渓では 危険な場所を避ける様にルートを取り 紅ガラ等で印が付けて有りますので ルートを逸れない様に歩けば問題は無いと思います。 お天気が良く視界の良い日は 何処でも自由に歩けて危険もそれ程には無いと思いますが   一端ガスが湧いて視界が悪くなると 目標物の無い雪渓上ではどうしようも無く成ってしまいます。 此の様にコースを外れて道を付けて仕舞う事は自分達が危険に成るばかりで無く 他のハイカーの危険をも誘う事にも成りますので 呉々も注意して戴きたいと思います。 又 写真を撮る為に雪渓の端の方に乗る事やまして融けて出来た空洞の中に入る事は崩壊の危険が有りますので呉々もしない様にして戴きたいと思います。
それから上部に岩場の有る雪渓では落石も考えられます 登山者に向かって滑り落ちて来る様な場合 気がついた者は大声で下の方に合図をします。 それに拠って事故に成らずに済む場合も有りますので 仲間内でおしゃべり等は程々にして常に斜面の上部に気を配りながら気を引き締めて 行動して戴きたいと思います。
具体的な雪渓の歩き方としては しっかりした靴で有ればスパッツを付けてそのままキックステップで つまり雪に靴を蹴り込み足場を作りながら歩きます。 軽登山靴では蹴り込みが巧く往きませんので 補助的に軽アイゼン等の滑り止めを用いると良いでしょう。 そして休憩時は安全に心がけザックを滑りやすいところに置いたり 不用意に岩壁に背を向けて座り込まないようにしたいものです。
 次に岩場の通過ですが 岩場の事故で意外に多いのは核心部を少し外れた場所です 此は核心部では恐怖心からしっかりとホールドにしがみ付き 動けなく成る事は合っても余り落ちる事は無いのですが むしろ其れを過ぎて ちょっと安心し気の緩んだ場所で すれ違う時などに起きる事が多い様です。
 具体的な歩き方としては”三点支持” 詰まり手足四支点の内動かすのは一つだけ 他の三点は常に支持したままにし 急激な動作は避け”ホールド”や”スタンス”を確かめながら落石を起こさない様に移動します。 此の様に 言葉で言えば簡単な事ですが 実際には高度感も加わりますので 体で覚えて自然に動ける様で無いといけません 低い山で徐々に経験を積み充分に慣れる事が必要です。 それから岩場では雨やガスで濡れたりすると 踏み跡やコースマークが見にくくなりミス・コースし安く成ります 正規のコースを外れると極端に難しく成り 事故につながる事も有りますので おかしいと思った時はそのまま進まず コースマーク等で正しいルートを確認する様にして戴きたいと思います。
 何れにしましても 自分の技量の8割程度のレベルで計画を立てる事が安全で楽しい山歩きの 一番のポイントだと思います。