夏山の計画

(7月 3日)

 いよいよ7月に入り山からはキスゲの開花情報もあちらこちらと聞こえて来る様に成りました。  夏休みには「何処へ行こうか」と 色々想いを廻らせて居るのではないでしょうか。 長い休みのとれる此の時期には「北アルプス等の高い山に行ってみたい」と希望する方も多いと思います。 そこで今回は 高山歩きの心構えについて 話をすすめたいと思います。
高山の”夏”は短かく 平地の梅雨明けと供に一挙に夏が訪れ お盆が明け8月も下旬頃に成ると 秋風が起ち始めます。 この僅か一月余りの間に 年間登山者の8割以上の人達が訪れる事と成ります。 何故”此の時季”に”こんなに”集中するかと言うと 勿論"学生は夏休み" "社会人もお盆休みや夏季休暇"がとれると言う 社会的条件が大きいと思います。  しかし本当の理由は”高い山”特に中部山岳の三千メートル前後の高い山では 梅雨明け前は お天気が安定しないばかりか気温も低く 残雪により 登山道もだいぶ隠されて居り同じコースでもかなり難易度が高いと言う状況です。 又、8月下旬から9月に入り秋風が起ち初めますと 定期的に接近する台風の影響で嵐に成ったり 9月半ば過ぎると 前線の通過後には急激に冷え込んで ミゾレから雪に変わる事も珍しくない時季と成り 経験豊富な登山者達の領域と言う事に成ります。 これ等の理由により 一月余りの短期間に多くの登山者達が集中する訳ですが、 中でも梅雨明けの一週間はお天気も安定すると言われ 高山植物も一斉に咲き乱れ 山全体素晴らしい輝きを観せる時で、都合が許せば誰でも此の時に出かけたいと願うものです。 
 これらの素晴らしい夏山に出かける訳ですが 幾ら安定した時季と言えども標高の高い森林限界を越えた岩稜帯等を歩く事に成りますので それなりの準備や注意が必要と言う事に成ります。  先ず 準備段階で大切な事は コースを良く研究する事です 雪渓や岩場、鎖場の有無と難易度の検討 そして自分の技術や体力と経験を照らし併せて一日の行動時間の決定、それに宿泊場所の確認と悪天候時の対処方等 数え挙げたら限が無い程有ります。 でも此等面倒な準備を殆どせずに ”たった一冊のガイドブックを観るだけ”叉は多少の経験が有る同行者が居るからと言う 他人任せで簡単に出かけて仕舞う方が居ります。  しかし其れでは安全な山歩きは望めず その時はたまたま何事も無く山行を終えたとしても ”何時か事故を起こすかも知れ無い”予備軍に成って仕舞います。  山や旅ではつきものの 事故と言う程では無い小さなアクシデントに遭遇したとしても 準備や豊富な経験のある人は”すんなり”とゆとりを持って受け入れられ むしろ楽しんで仕舞える位ですが 心の準備や装備が充分で無い方は ほんの少しの事でも嫌な想いをしたり不安に成ってしまったりして 充分に山歩きを楽しむ事が出来無いのではないかと思います。 高い山に限った事では無いのですが 我々は好く 「1回の山歩きで3度楽しむ」と言います、 それは事前の「計画や準備」 そして実際の「山行」 其れから事後の「写真や記録の整理」と言う事です。 是非皆様も 楽しみながら自分に合った計画を練って ゆとりの有る高山歩きをして戴きたいと思います。