5月29日
山の緑もだいぶ濃くなると供に梅雨前線が段々と本州に近付いて、雨に逢う機会も多くなって来ました。
前回は、ハイキングの服装に就いて”下着も含めて、汗吸いが良く乾きの速い物で、動きを妨げないような物が良いでしょう” と言うお話をしました。 基本的にはインナーとアウターの2枚 つまり下着の上下にズボンとシャツを合わせた2枚重ねの状態で行動をします。 でも当然 雨が降れば雨具を着用しますし 又風が出て寒ければウインドブレーカーを そして”風も無く雨も降らないが気温が低く寒い”と言う時はセーターを用います。 このセーターは 現在 多く出回っているフリース素材の物でも良いと思いますが 風よけのシェルは付いてない方が組み合わせのバリエーションが出来て良いでしょう。 これら補助的に使うウエアーも大切な装備で 雨や風または寒気あらゆる気象条件から体を守る為、つまり極端に言えば 其の方法が違うだけで すべて体から熱を奪われ過ぎ無いようにする為に用いると言えます。
体から熱が奪われるメカニズムとは二つ考えられます。 一つは熱伝導で 直接寒気に接する事により体が冷やされる事ですから 断熱効果の有る物を着用すれば解決出来ます。 しかしもう一つが厄介で其れは人の体から出た水分つまり汗が蒸発しようとする時その気化熱によって体が冷やされる現象です。 人の体は安静時でも汗を出していますし 増してハイキング等の運動時は大量の汗をかきます。 此は運動時は体から熱を発散し続けるので体温が上がり過ぎないように汗をかいて調整しているのですが山歩きでは体を冷やし過ぎてしまうことがしばしばあります。 従って此の汗を巧く処理 つまり体が発熱状態にある時は出来るだけ薄着になり体温の上昇を抑えたり でた汗は素早く乾かす様にしなければ成りません。 そのために特殊な速乾性素材の下着を着用したり、休憩時に羽織る物はスキーで使う様な保温材をキルティングした物では無く 先ずは通気性の良いセーターを そして体が冷えてくると供にウインドブレーカーを組み合わせたりして調整をします。 状況に応じたこまめな”重ね着”をすると言う一見面倒な方法をとるのですが 此の”着合わせ法”の事を山では”レイヤード”と言い重要な体を守る技術とされて居ります。
雨に対しても同じで温度の高い平地では濡れてもそれ程体にダメージは有りませんが 山では濡れて風に吹かれるとかなり体温を奪われ体力を消耗してしまいますので雨具も重要な装備の一つと成るわけです。 かつての雨具は雨を遮断すると同時に蒸気の流通も止めて中が蒸れてしまいました。 でも今はゴアテックスに代表される透湿性防水素材が用いられ だいぶ解消されて来ましたので 新たに求められる方はデザインに惑わされず素材を十分に検討して選ぶと良いと思います。 しかし此の素材も多少の欠点が有ります。 それは中間に特殊フィルムを挟んだ三層の張り合わせ構造に成って居る物が多く 揉まれる事に対して弱く 永く使用すると縫い目から痛む傾向に有ります。 又表面の撥水処理が落ちると水の皮膜ができ水蒸気が放出されなくなる等の点です。 それでも今のところ これらに変わる素材は見あたらないので 巧く手入れをし 欠点が出難い様に使用すると良いと思います。 求めるときには 縫い目の少ない物を 特に”擦れる部分”つまりザックで擦れる肩や背中 また女性の方はズボンの内腿に縫い目の無い物を 呉々も色やデザインに惑わされずに機能を第一に考えて選ぶ様にしたいものです。
ウインドブレーカーと雨具は本来別の物でしたが 透湿性防水素材の利用によりこれを兼ねて使う方が増えて来ました。 しかし頻繁に使う方は傷みが早く 本来の雨具としての機能が損なわれてしまいますので別に”ウインドブレーカー”を用いる事をお勧めします。
この様に 山では沢山の荷物を持参出来ない変わりに シンプルで優れた機能を持った物を 何通りにも組み合わせて自分の体を守ります。 この”レイヤード”は”多少の知識”と”沢山の経験”によって身につくものだと思います。 幾つか試して 自分に合った素材 又は組み合わせをみつけて 不快な雨や寒さも 逆に楽しんでみては如何でしょうか。
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