TOPへ



止まりの意味を考える

 「止まり」あるいは「パーチ」と呼ばれている止まり行動であるが、最近やっと「パーチ」から「○○○○のための止まり行動」といわれるようになってきた。当然イヌワシも無目的にとまっているわけではなく、その行動の一つ一つに意味があるのである。休息のための止まりがあったり、狩りのための「行動的な意味」を持つ止まりもある。彼らの生活や行動を理解する上でも、非常に重要な行動であり、彼らの土地利用を知る上では、もっとも大きな要因でもあります。ここでは、その止まり行動について、説明します


止まっている場所がもたらすその意味


まずは、止まっている位置関係をみてみると

  @主稜線の中でもひときわ高い山の見晴らしのよい頂上付近に止まる場合
  A主稜線上に止まる場合
  B主稜線より派生する尾根上に止まる場合
  C主稜線より派生する尾根の斜面に止まる場合
  D営巣地周辺に止まる場合
  E巣の直近に止まる場合
  F狩り場と思われる場所に止まる場合
  G地面に止まる場合

等が観察されています

 また、岩や樹木によく止まります。ほとんどの場合樹木が多いのですが、樹木であれば樹木のどこにでも止まるわけではなく、ほとんど、樹木の樹頂付近が多いことはみなさんお気づきのことと思います。しかし、当然横枝に止まることもしばしば観察されます。これは偶然なのでしょうか、それとも何か意味のあることなのでしょうか。上記の止まる場所の位置関係と併せて模式的に見てみると次のようになります

@のような場所での止まりが意味するものは、ほとんどの場合生息地全体(あるいはその大部分)の監視行動と考えてよいであろう、この場合、気をつけてみているとイヌワシは必ず前後左右や上下を見回していることが多い、これは、同種(イヌワシ)他種(クマタカ・オオワシ・オジロワシ・トビ)の生息地への侵入を警戒しているのである。この場合、止まる箇所は圧倒的に樹木の樹頂が多い(時には、岩の頂上付近であることもある)
Aのような場所での止まりは、生息地全域ではなく、生息地の一部(特に重要な地域:主な狩場などの重要な地域)を監視行動している場合が多い。この場合も、イヌワシは必ず前後左右や上下を見回していることが多く、このときにも樹木の樹頂が多い。
 時には、稜線上でありながらも樹木の中段ほどの横枝に止まっている時もあるが、このような場合は、視線の位置・周辺環境に気を付けてみることが肝要で、休息や探餌行動の場合もあります。
BCのような場所に止まるときは、営巣地の監視巣の監視探餌行動休息などの場合が考えられる。
 営巣地の監視の場合は、巣よりこの場所がかなり高い位置関係にあり、視線は、営巣地全体を監視しているため、周囲をまんべんなく見ている。当然樹頂部が多い。
 巣の監視の場合は、巣のある対岸部等に止まっているときによく見られ、この時には、視線の大部分は巣に集中している(止まっている時間の半分以上は巣を見ています)。この場合も、樹頂部にとまっている場合が多い。
 探餌行動の場合は、当然視線はオープンスペースを見ている時間が多いです。いわゆる頭を下げて下を向いている感じでいるときが多い。この場合は、特に樹頂部などにこだわることはないようで、しばしば横枝や低い位置に止まっていることを見かけます。
 休息の場合は、樹頂部へ止まることより、樹の中間部に止まるときが多く、休息をしているかどうか確認するポイントは、いわゆる羽を膨らませている状態にあり、ふっくらとしているように見え、特に視線の先など特定のところ見ているような行動はほとんどなく、よく片足立ちで止まっています。
Dのような場所に止まるときには、BやCの場合と同じく営巣地の監視巣の監視探餌行動休息などの場合が考えられ、前項を参考とされたい。
Eのような場合は、ほとんどが巣やヒナ等の監視休息の場合が考えられる。
 巣やヒナの監視の場合は、樹頂部の止まっているときが多く、見晴らしのよいところにいるとともに、いつでも飛び立てる状態にあると考えてよいでしょう。
 休息の場合は、やはり横枝に止まり、体(羽根)を膨らませていたり、片足立ちで休息していることが多い。
Fのような場所に止まるときは、ほとんど樹頂部に止まる場合が多い。当然視線の位置は、顔を下げ下を見ていることが多く、探餌行為をしていると思われます。時に大木の枯れ木の上などでは狩った獲物を採食しているときもある。
Gのような場所に止まる(降りる)ことはあまり観察されていないが、たまにごく小さな谷部の沢筋に降りたり草地や伐採跡地の樹の切り株や岩にとまるときがある。その場所のロケーションによっても変わってきますが、見晴らしのよいところでは、監視や休息の場合が多く、谷部などに降り長時間出現しない場合などは採食や水浴びしているかもしれないと推察できる


 

横枝に止まる森林棲のオオタカ 杭の先に止まる草原棲のチョウゲンボウ
photo by higuchi photo by higuchi


 以上非常に簡単に「止まり」行動の意味について、私なりにまとめてみました。実際に観察される行動が、この中のどれにも当てはまらない場合も出てくると思います。しかし、猛禽類の観察においては、別の項でも指摘しましたとおり、重要なことは「視線の位置」・「そのうの膨らみ」だけでなく、「パーチ」時においては、止まっている場所や状況あるいはその位置や状況により、行動内容が変わってくるということを、考えながら観察することが重要ということです




『飛行について』
『猛禽類の調査について』


            
2001.2.1 OPEN
2002.2.1 RENEW