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ここでは、チョウゲンボウについて少し書いていみます


2001年の繁殖の様子はこちら
チョウゲンボウの都市進出について(その1)


チョウゲンボウの都市進出について(その2)
   都市における生息状況について
 前項ではチョウゲンボウが都市へ進出してきた原因を考えてみたのですが、今回は、都市へ進出してきたチョウゲンボウの生息状況について書いてみます。

 チョウゲンボウは、どおやら1950年代よりぽつぽつと都市進出をしてきたようです。僕が猛禽を見始めた1980年代前半には、既に、甲府市内のビルのテラスや鉄骨の看板塔などで『普通に』営巣していました。
 1970年代以前の状況については、良くわかっていないので、ここでは1980年代から現在に至るまでの生息状況について書くことにします。
 
●1980年代●

 この時期は、ほとんどのペアが、ビルのテラス部分を利用して繁殖活動を行っていました。甲府駅前のメインストリート沿いのビルだけでも4カ所ほど、周囲まで含めると10ペア前後が繁殖をしていました。僕の勤務しているビルも、このメインストリート沿いにあり、通りを挟んだ向かいのビルでも毎年繁殖に成功をしていて、勤務時間中に餌運搬や巣立ちの瞬間まで見ることができるくらいの所でした。
 このビル以外での繁殖活動についても、そのほとんどが、ビルの『テラス』部分を利用したり、一部のものが鉄骨の看板塔に営巣をしていました。

 この時期、郊外においては、工場や橋脚などにも営巣をしはじめた時期でもあります。ひょっとすると、70年代からこのような郊外にもかなりの数が営巣していたかもしれませんが、80年代中盤くらいから、郊外での営巣例が増えてきたように思います。そうはいっても、僕も70年代は猛禽を見ていなかったので、あくまでも推測だけなのですが・・・・・

●1990年代●
 すっかり都市部へ定着したチョウゲンボウなのですが、気をつけて見ていると、少しずつですが、変化が現れてきていることがわかります。その変化とは、換気口を利用することになったことです。80年代は、営巣地のほとんどが、テラス状のところなどが中心でしたが、『いつ頃』と、はっきりと断定することができないのですが、ビルなどの換気口を利用するようになり、90年代後半では、都市部でのチョウゲンボウの営巣地は、【換気口】が完全にメインの営巣場所になっています。
 大事なことは、なぜテラス状の場所から、換気口に移るようになったのか?・・・です。僕の想像では、カラスとの関係があるのではないのかと考えています。実際にテラス状の場所で繁殖しているチョウゲンボウがカラスに襲われている現場を見たことはないのですが、崖などで営巣しているペアを時折覗いていると、カラスに襲われている風景を(場所にもよりますが)、時折見かけることができます。
 昨年、あるペアを見ていたときのことです。その時は、メスが抱卵中で、オスは巣の前の岩に止まりながら、アッタクしてくるカラスから巣を守っている風景を見ることができました。
 この時は、3時間ほど見ていたのですが、20羽前後のカラスは、ずーっと巣の周囲にいて交替(?)で、チョウゲンボウの巣を襲っていました。その間、オスは巣の前にたたずんでいて、近くにカラスがくると追い払うために飛び出していたりして、そのほとんどの時間を巣を守るために使っていました。
 このような光景を見たときに、都市部で営巣するチョウゲンボウにも同じ事が起こったのではないのか?・・・・と、思ったのです。ビルのテラス状のところに営巣しているチョウゲンボウなどは、どうしてもカラスに襲われることになるのではないか。また、それを避けるために、換気口を利用するようになったのではないかと。すでに、今となっては実証することができませんが、チョウゲンボウとカラスとの間には、なにがしらかの関係があるのではと考えています。
 当然の事ながら、このカラスとの関係は、チョウゲンボウだけに留まらず、他の猛禽についても、何らかの関係が生じていると思いますが、それはまた、別項ででもおいおい書いてみることにいたします。

 このようなことを考えていると、チョウゲンボウが都市部へ進出した理由というのも、巷間言われている、「生息環境の悪化」・「餌環境の悪化」・「開発の影響」などというものではなく、単純に【カラスとの関係】が、主な要因ではないのかと考えています。



営巣地の様子
@塩川沿いにある岩壁の営巣地

@ここは、昔から集団繁殖地として有名な『鷹ノ巣岩』というところです。現在は、1〜2ペアが営巣するだけとなっています


Aビルのテラス状の営巣地・J

Aここは、甲府駅の北口にあるビルです。6階部分の両端に見えるところがテラス状となっていて、ここで営巣しています


Bビルのテラス状の営巣地・K

Bここは、甲府駅から500mほど南に行ったところにある5階建ての小さいビルです。ここの窓のところがテラス状になっていて、ここで繁殖していましたが、最近では、まったく繁殖しなくなりました


C鉄塔部分を利用した営巣地・T

Cここは、Bのすぐ近くにあるビルの屋上部分の鉄塔です。ここでは、以前、繁殖中にカラスが10数羽取り囲んでいた記憶がありますが、はたして、チョウゲンボウの卵やヒナを襲っていたのかは、定かではありません


D鉄塔部分を利用した営巣地・U

Dここは、貯水タンクの鉄塔部分に営巣しています。ここでも、カラスに取り囲まれている姿を目撃したことがあります


E換気口を利用した巣・J

Eここは、9階建てのビルにある換気口です。写真ではわかりにくいのですが、想像以上に小さな換気口です。こんな小さな換気口でも営巣するので、内部は思ったよりも広いかもしれません


F換気口を利用した巣・K

Fこのビルは、珍しく換気口が一つしかありません。今年の冬には、この隣のビルの屋上にハヤブサが止まっていました


G換気口を利用した巣・L

Gここは、コンビニのセ○ンイレブンです。ここでも換気口を利用して繁殖しています


H橋脚を利用した巣・J

H山梨県の場合、ちょっとした大きな橋脚には、チョウゲンボウが営巣しています。この橋も、ピンヤの部分を利用して、繁殖しています


I橋脚を利用した巣・K

Iここは、高速道路の橋脚です。真ん中に維持管理用の通路がありますが、ここを利用して繁殖しているようです


J甲府の市街地の様子

Jここは、JR甲府駅から続くメインストリートです。一見すると緑が多いように感じますが、実は、街路樹に緑があるだけで、地方都市に多いのですが、緑地面積は非常に少ないのです





 以 上

 簡単ですが、山梨のチョウゲンボウの代表的な営巣地を紹介してみました。また、営巣地の変遷過程と、変遷理由なども、ほとんど検証はできてないのですが、僕なりの視点で推測してみました。これが、チョウゲンボウの営巣地の終着点になるのか? はたまた、これからも新しい営巣地を開拓していくのか? 繁殖サイクル(世代交代)が短いと思われるチョウゲンボウですので、僕が生きている間には、まだまだ変遷していくことだろうと考えています






2001.5.6 OPEN
2002.2.1 RENEW
2002.3.26 RENEW