鉱石ラジオ大研究C 

電波から音を取り出す検波器!
金属の酸化物が検波器のはじまり。

自分でも作れる鉱石検波器
これからはショットキダイオードが
主流になりそう。

取り込んだ電波から音を取り出さなければ、ラジオになりません。
音を取り出す装置が検波器です。その材料として金属鉱石の原石をつかったので鉱石検波器・それを使ったラジオだから鉱石ラジオ
最近はゲルマニウムを使うからゲルマニウムラジオです。

検波という仕事は本質的には整流(交流を直流に変換する)とおなじ作業ですが高周波回路における整流作業を指し完全な直流を取り出すのではなく情報信号(音声等)を取り出すのが目的です。

1800年半ばには金属の酸化物が整流作用をすることは知られていましたのでどれが良いのか暗中模索の状態で実験が繰り返されたようです。
シリコンダイオードの原点は1906年にG.Pickradが特許をとっています。方鉛鉱の検波器ができたのもほぼ同じ時期といわれています。
標準ラジオ大辞典(初版・1935年)で検波の項目を索引で引くと1/2ページにも及ぶ項目があります。その中には整流検波器、鉱石検波器、真空管検波器などのように言葉が使い分けられています。
しかし1904年にフレミングが2極真空管を発明したために金属結晶の検波器に対する関心が薄れてしまったのです。再び金属結晶が見直されるには50年の歳月が掛かりました。そのきっかけはラジオのような波長の長い電波でなく超短波の研究の要求です。真空管は構造的に波長が短くなると動作しずらくなるため関心が高まってきたのです。ゲルマニウムの物性が研究され偶然に生まれたトランジスタが発表されたのは1948年です。同時期に商品化されたゲルマニウムダイオードは鉱石ラジオの感度を驚くほど引き上げ、鉱石ラジオ黄金時代が来るかに思われましたがトランジスタに席を譲ることになります。
トランジスタの時代は黄金期を迎え素材の研究、製法の研究が進み複合化されたICが主体のようにも見えます。安定性を重視するため現在はシリコン製品が主流で更なる素材開発が進んでいます。
しかしここに落とし穴がありました。鉱石ラジオに向くゲルマニウムダイオードがなくなってしまったのです。半導体の開発はその当初は鉱石ラジオ用でしたが今はまったく別の目的ですから当然ともいえます。

金属鉱石を使った時代を第一世代とするならその時代の代表的素材は理科教材の鉱石見本の中から見つけることができます。方鉛鉱、黄鉄鉱、黄銅鉱、紅亜鉛鉱、・・・いろいろあります。また二種類の組み合わせなども考えられます。さらに鉄や銅の金属酸化物皮膜、セレンなども使えると思います。
個人レベルで実験して鉱石ラジオの楽しさが味わえる大きな部分でしょう。

第2世代はゲルマニウムダイオードの時代です。私が中学生のころは各メーカからいろいろな特性の品が市販されていました。1950~1960年のラジオ少年黄金時代です。空芯コイルからコア入りのコイルまで何でも部品の揃った時代です。しかし部品は高価で中学生のお小遣いでは買えないのが実情でした。

そして今第3世代となりました。ラジオ少年も定年を迎える年になりお小遣いにも少しのゆとりができてやりのこした鉱石ラジオ大研究を始めたのですが部品の入手には苦労します。ゲルマニウムダイオードも生産中止になりました。
BCバンドがデジタル化されればもう鉱石ラジオはまったく使えません。@でもお話したように最後のチャンスなのです。ノスタルジックな感傷に浸るもよし!新たな発想で新しい素材を使って創ってみましょう。
鉱石ラジオは子供から大人まで楽しめるおもちゃです。
ゲルマニウムダイオードの代用品としてはショットキ(ショットキバリア)ダイオードが使えます。ゲルマニウムより一回り小さくスイッチング用と間違えやすいので検波用と確認してからお求めください。

【検波器を手に入れよう】
検波器はゲルマニウムダイオードが良いのですが手に入らなければショットキダイオードを求めます。
最近はショットキダイオードのほうが安価になってきたようです。形状がスイッチングダイオードとよく似てますからご注意ください。

【シリコンダイオードはなぜ使えない?】
このコラムの@でシリコンダイオードでも受信できますと書いてありますが感度が悪かったり、なんだか音が歪んでいるように思われます。
電波が強いときはあまり感じないのですがあきらかに音が歪んでいます。どうしてでしょう?それは”接触電位差によるものです”と簡単に説明されてしまいますがそれはどんなものでしょう。ダイオードは整流器ですから逆方向の電流は流しません。正方向はゲルマニウムの場合電圧変化に対して直線的ではありませんがほとんど0Vを超えたところから流れ始めます。シリコンの場合は0.6Vくらいまでほとんど流れません。実際の信号を加えて見ればよくわかります。
次の画像は標準鉱石ラジオを使って測定したかったのですが誘導が多く困難でしたので信号発生器からの信号を直接をダイオードを通し整合トランスつきイヤホンを負荷(リアクタンス負荷)とした波形です。
ゲルマニウムダイオードの検波特性 ゲルマニウムダイオード
接触電位差による若干のひずみが見えるが良好な検波特性を示している。
鉱石検波器の検波特性 鉱石検波器
接触電位差によるひずみはほとんど見られないが逆方向特性が悪く高周波の漏れが多い。
シリコンダイオードの検波特性 シリコンダイオード
接触電位差が大きく立ち上がりが歪んでいる。抵抗負荷でないため波形改善がなされている。大入力では目立たなくなる。
バリキャップダイオードの検波特性 バリキャップダイオード
接合容量が多いためか高周波の通り抜けが多く使用に適さない。大入力ではある程度改善される。
ショットキダイオード
シリコンより立ち上がりは早くなっているが大きく歪んでいる。入力が大きければ気にならなくなる。

*各種ダイオードの測定においてショットキダイオードの結果について疑問を感じております。このサンプルに異常が有るように思われます。後日他の受信機ではひずみもなく感度も優れゲルマニウム以上の性能が得られています。
0807 追試の結果です。

【ja1cvf 0102】

【いろいろな検波器】
上段左・探り式検波器・右側のカップの中に鉱石を入れビスで軽く固定します。上からスプリングのついた探針で鉱石に接触させます。受信しながら良い場所を探すので探り式と呼ばれます。
上段右・私が子供のころ愛用した有名品”FOXTON”両側の電極はネジで簡単に外れます。小さな鉱石をスプリングで押さえています。筒の中央付近に小穴があり、感度が悪いときはスプリングを穴から突いて接触面をずらして調整します。一度セットすれば落としたりして強い衝撃を与えない限り安定に動作します。
下段左3本・初期のゲルマニウムダイオード。FOXTONに比べ格段に感度がよく当時の感覚では耳が痛いくらい良く聞こえた。
下段中央2本・最近のゲルマニウムダイオード写真では良く見えないくらい小さくなりました。ゲルマニウムの代用に使うショットキダイオードはもっと小さいです。
下段右2個・マイクロ波用の検波ダイオードちょっと特殊ですが感度は申し分ありません。この手のものはマイクロ波回路では使われなくなってジャンク屋にゴミのように転がっているときがあります。

鉱石検波器を作ってみませんか 黄鉄鉱(pyrite)の原石差し上げます。
*プレゼントは終了しました*

探り式が作れる5mm角程度のものと固定式(foxtonのような形)を作れる1~2mm砂粒程度のもの両方を5名様に、固定式(foxtonのような形)を作れる1~2mm程度のもの10名様に、
大きいものは1個小さいものは複数個差し上げます。
*無料ですが送料をご負担ください*
ご希望の方は掲示板にてmailアドレスをお知らせください。

作り方の説明をしないのでは見たことのない人が多い鉱石検波器を作ることは難しいとお叱りの言葉をいただきました。・・・・反省してます。・・・・この黄鉄鉱を使った検波器作り方は次回に説明します。簡単に作れる方法を検討中です。
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