HAMのための  工作教室

もの作りの原点・道具や材料について考えます。

 

ハンダづけスペシャルテクニック

最初から難しいテーマです

 

シールドケースを作ってみよう

箱づくりは見た目より難しいのです。 最後のハンダづけがうまくできれば電子回路のハンダづけも心配なしです。

ハムの工作では高周波回路が多いのでシールドケースが欲しくなることがあります。 そんなとき簡単に作ることが出来ると良いですね!
大きな箱はビス止めなどして組み立てますが小さい物でしたらハンダづけによる組立も簡単です。
というわけでハンダづけで作る小さい箱 がテーマです。大きさはとりあえず25X35X15とします。
リード線のハンダづけでは気が付きませんがハンダ冷えて固まるとき縮むことに注意しなければなりません。 このことを忘れるとゆがんだ箱になってしまいます。
シールドケースなど箱物を作るときは一気にハンダ付けすることなく何カ所か仮止めして、 さらに仕切り板などが入る場合それらも組み込み変形が起こりにくいように配慮してください。
紙で作る箱と金属で作る箱のちがい。  紙工作は慣れていると思いますが金属で小さい箱を作りたいとき材料はなにが良いでしょう。 身近なものとしてトタン板、ステンレス、銅、真鍮、アルミなどがあります。 アルミは普通ハンダづけが出来ません。(アルミハンダというものがありますが使ったことがありません) ビス止めによる組立になります。市販品の箱も購入できます。ステンレスは堅いので加工が難しいです。 銅は柔らかすぎて難しいです。そんな訳で私は大抵真鍮を使っています。厚さは0.4mmです。 かなり薄く感じますがこれより厚いと手に負えなくなります。
とても小さい箱ですから縁は外折りにします。内折りにすると部品の組み込みが出来ません。 失敗もごまかせません。これを作ることが出来れば大きい箱は簡単です。
板取 底板や蓋は後から作ります。側板は全周120mmですが板幅のまま200mmで高さ15+縁の分6mm=21mmを取りました。 はさみで切ることが出来ます。
折り曲げ 万力に板幅より広いアングル材(鉄)の端切れなどを当て端から3mm分を固定して、 板幅より広い木板で押し曲げます。力不足と思われるときは木板の上からハンマーで叩きながら折り曲げます。 この作業が悪いときれいな箱が出来ません。 きっちり直角になるように丁寧に仕上げます。折り曲げ完成品に端から26,35,25,36 (両端だけ1mm長い・上手になれば片側だけ長くする、後で補正しなくて良い)と罫書きを入れ切り取ります。 罫書き線のある3ヶ所は縁の部分だけはさみで切れ目を入れます。四角に折り曲げ形を整えます。 仕上がり寸法の誤差より形を優先させます。 板金を万力と押し板で寸法通りに曲げるのは至難の業です。 両端を少し長くすることで修整が効くようになります。 木台の上に置き重石などで固定して突き合わせ部分(長い方が重なってきます)をハンダづけします。
蓋を作る 蓋と底板は載せるだけですから出来た箱の寸法を確認して板取します。 底板はハンダづけでも良いです(中側から付けるときれいに見える)が蓋はビス止めにします。 箱の縁に残っている2mmの罫書き線をガイドに穴位置を決め1.5mmの穴をあけます。そして2mmのタップでねじを切ります。 蓋の方は2.5mmくらいの穴をあけます。板が薄いですからタップ縦は丁寧に、ビス止めはきつくしないでください。
必要により側面に配線用の穴をあけます。

うまく完成しましたか?
実はこれかなり難しいのです。最初の板取、折り曲げに失敗するとうまくできません。 この箱を上手に作ることが出来れば、板金の加工だけでなくハンダづけも合格です。
第1の失敗・板取がキチッと出来ない。 板金に罫書き線を入れるとき定規が滑って曲がってしまう。対策・定規の裏にビニールテープを貼ると滑らなくなります。 またはデバイダーやノギスで罫書きを入れる。ノギスの正しい使い方ではありませんが平行線を引くには有効な手段です。 ノギスの片側の丈を板金の縁に当て滑らせて平行線を引きます。
第2の失敗・折り曲げが狂った。 この字型に曲げるとき押し板が浮いて左右の幅が狂ってしまうことがあります。 誤差が1mm以下で片側の縁の幅が揃っていたら気にしないことにします。縁の幅が揃っている方を蓋の方にします。 箱形にしたとき蓋の方を下にして縁が浮き上がらないようにそろえてハンダづけします。 底の方は縁の高さがずれても気にしません。 ハンダが冷えたら底になる方を板の上に置き隙間の空いたところの縁をのばしたり曲げたりして隙間を隠せば何とかなります。
板金を折り曲げると板厚分の誤差が出ます。1mm厚くらいのアルミ板の端切れなどで試してみましょう。
第3の失敗・蓋の止め穴をあけるときドリルが食いついた。 手を怪我してなければ幸いです。もう一度作り直します。 今度穴をあけるときは板金の上に押さえ板を穴位置いっぱいに置いて下さい。

これで結構見られる箱が出来たと思います。いかがですか? さてテーマのハンダづけスペシャルです。  薄い板金を折り曲げたことによりハンダの縮に因る狂いは気にならなくなります。 強いて云えば箱形にハンダづけするとき一気にハンダづけせず所々固定しながら形を整えることです。 もしハンダこての熱が不足するならコーヒーの保温用ホットプレートの出番です。 ホットプレートの上にアルミ板(きづを付けないための保護用)を置いてその上でハンダづけしてみて下さいうまくいくと思います。 それでも熱が不足するならハンダこてが小さすぎます。
この箱を銅板で作ると真鍮より数倍難しくなります。銅板は熱伝導がよく大きなこてでないと熱不足になります。

ヒント: 道具や、腕の不十分な私たちの工作では、うまくできないときの逃げ道を考えておくときれいに出来ます。 プロの職人さんでも失敗はありますがうまくまとめる技を持っています。それも技術だと思います。

ハンダが縮む
【板をつきあわせて赤印部分をハンダづけすると冷えるとともに矢印の方へ倒れてくる。】
 板取
【寸法を正確に罫書きはさみで切り取る。折り曲げて溝型の部品を作る】

曲げ加工
【完成した溝型の部品・弓なりに反っているが問題ない】

歪みを直し整形 
【こんな感じのものが出来ます。端の部分が長いのできちっとした長方形になるようにどちらかの辺をはさみで切る。】

ハンダづけして完成
【内側からハンダづけして完成です。蓋は2mmのビスで止めますが、タップをおらないように気を付けて下さい。 穴位置は縁の中心ではなく壁に寄った方になります。】

 

『参照コラム』
板金の折り曲げ

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