HAMのための  工作教室

もの作りの原点・道具や材料について考えます。

 

板金の折り曲げ

最初に理解しておこう

 

万力で固定し押し板で折り曲げる方法では誤差は付き物です。
誤差発生の理由を考えてみましょう。

ハンダづけスペシャルのテーマ真鍮板を折り曲げて箱を作ってみましたか?

たぶんほとんどの方は読んだだけ、あるいは素通りしてしまったことと思います。
あなたは賢いです。なぜならハンダづけの部分はともかくあの説明だけで作るのは難しいと思います。折り曲げ手順を間違えると寸法の誤差が大きくなります。
しかし何回か手掛けたことのある人は、最後の逃げがとても参考になったはずです。
大きさについては内寸とも、外寸とも書いてありませんが板取の方法から有効部分が指定寸法に近いと理解したと思います。

すべての板を突き合わせで箱を作るとハンダの熱変化で歪みやすいことは簡単に説明しましたが、折り曲げに因る寸法の狂いはもっと大きいのです。しかしこれはあらかじめ結果をかなり正確に予測できます。

板金を折り曲げるとどんな誤差が出るのでしょうか?

曲げ加工のしやすいアルミの端切れを用意しました。
長さ100mm幅約15mmです。厚さは試料A,Bが1mm、試料Cが1.5mm 試料Dが0.5mmですDだけ長さは80mmです。端から25,50,25(Dだけ20,40,20)と罫書きを入れます。そしてこれを折り曲げてみましょう。
試料は万力で端を掴んであて板を当てて曲げます。片方が出来たら反対側から同じように曲げます。このとき角が浮き上がらないように力は曲げる角に集中します。

試料Bは2回目の折り曲げを同じ方向からやります(ひっくり返さない)。やりにくいですから普通はこんなことしないでしょう。今回は実験ですから是非やってみて下さい。

できあがったら寸法を測ってみましょう。とりあえず内寸をはかります。
A:25.0-48.8-25.1(0.0-1.2-0.1)
B:25.0-49.4-24.4(0.0-0.6-0.6)
C:25.2-47.8-25.3(0.2-2.2-0.3)
D:20.0-39.6-20.1(0.0-0.4-0.1)
となりました。カッコ内は誤差を記入しました。両端の部分に注目して下さい。幅が狭い板で実験していますのでA,Dは最高の出来です。
Bの方法は誤差に誤差を足すことになるので仕上がり寸法の計算が難しくなります。(注)
Cは板が厚いので誤差が大きくなっています。中央部はすべて(-)誤差です。内周を足すと短くなっていることが解ります。外周は長くなっています。
折り曲げたとき外周が長くなるのは理解できると思いますが内周は縮んでいるのです。
実際に作るときはA,C,Dの方法では中央部が小さくなるのでその分大きくして板取をします。
板取の寸法と誤差の関係から、板取と仕上がり寸法の関連を考えて下さい。縮具合は一折り当たり板厚の1/2+αです。
力が弱かったり、板が大きくなったり、厚さが厚くなると角がきっちり曲がらなくなり浮き上がるので誤差(α)が大きくなります。そのためCは誤差が大きくなっています。私たちが作ることが出来るのは10cm前後までです。板厚は1mmまででしょう。
私は真鍮板の時は0.4mm、アルミ板の時は0.8mmを使っています。
(注)Bの方法は一折りごとに折り線を寸法をはかり出せば正確に作ることが出来ます。また中央部を固定して両端を折り曲げれば中央部は正確に作ることが出来ます。ケースのカバーを作るときには都合が良いでしょう。
どこに誤差が出るかよく考えて板取する必要があります。

難しいテーマを取り上げていますがこれが出来るようになると後は何でも工夫次第で作れるようになります。頑張って下さい。

万力の幅より広いものを加工するときは、補助金具としてアングルなどを使用して見かけ上の万力の幅を広げます。大きいものは難しいので小さいものから作ってみましょう。


【板金を万力で固定し押し板で折り曲げる・アマチュアの出来る一般的な方法です。】
押し曲げるとき外側は延び、内側はわずかに縮みます。押し曲げる力が弱いと角が浮き上がってしまいます。これが誤差の要因です。


【試料A:写真では縦の部分を万力で固定し(すべての写真とも同じ)上の辺を板で押し曲げた。】

 
【試料C:写真がわかりにくいが上の辺が浮き上がってきっちり曲がっていない。板が厚かったり大きかったりすると人力ではうまく曲げられない。】


【試料D:板が薄いのできれいに折り曲げられている。大きな板をこのように曲げるのはとても難しい。】

 

『参照コラム』
《ハンダづけ・スペシャルテクニック》

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