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第四章 一番の原因は……?

 

 

 

 

(うーん、どこに居るんだろ)

まず最初に職員室を覗いてみたが、そこに柊さんは居なかった。

可能性の高い所から回ってみることにした僕は、次に教室を見に行った。

 

ガラガラ

 

「柊さーん。居るー?」

扉を開けながら、綺麗な夕日に染められた教室内へと入っていく。

中に人影は見受けられなかった。

「誰? ……順斗?」

誰も居ないと思ったが、声を掛けた所で、机の陰から柊さんがひょこっと顔を出した。

「うん、僕だよ。良かった、ここに居たんだね」

柊さんの元に近づいてみると、柊さんは何か作業をしているみたいだった。

何やら包帯の束を床に大量に置いている。

「包帯? 一体何をしていたの?」

「包帯じゃない、呪縛h……。忘れて」

「?」

なんだか歯切れが悪い。

気にはなったけど、柊さんはあまり間を置かずに話を続けた。

「仕掛けをしていた」

「仕掛け?」

「そう。この包帯で。ほら、よく優作を縛り付けているあれ」

「あぁ、あれかぁ」

とある日の昼休みの情景が、僕の頭の中に思い浮かんだ。

なるほど、どこから飛んできているんだろうと思ってたけど、ちゃんと仕掛けがあったわけか。

「ごめんなさい、もうすぐ終わるから」

「あ、大丈夫だよ。別に急ぎじゃないから」

「そう、じゃああと少しだけ時間を頂戴」

「分かった」

そう返すと、柊さんは作業を再開した。

少し興味があったので、僕はしばらくその様子を見守っていた。

 

 

 

「これで、最後。……お待たせ」

十数分後、どうやら作業は終了したらしい。

「お疲れ様。それじゃあ、美術室に行こう。今日は嬉しいお客さんが来てくれてるから」

廊下の方を指差しながら、そう促す。軽く埃を払いながら、柊さんは立ち上がった。

「お客さん? もしかして新入部員?」

「正解。よく分かったね」

「だって、そんなに嬉しそうな顔してるんですもの」

「えっ、そんなに顔に出てる?」

「うん、自然な笑顔。とても素敵」

「ありがとう」

廊下を歩きながら2人で談笑する。

少し歩いた所で、柊さんが急に立ち止まった。

「? どうしたの?」

「ごめんなさい。少し待ってて」

そう言うと、柊さんはその場にしゃがみ込み、窓際の壁に何かをし始めた。

「ここにもするの?」

さっきの作業の続きだと察し、柊さんに問いかけながら僕も近くにしゃがみ込む。

作業する手を休めないまま、柊さんは僕の問いに言葉を返した。

「うん、ここはよく通るから」

確かにここは、美術室に行く時に良く通っている廊下だった。

「もしかして、学校中にこの仕掛けを?」

「まぁ大体。よく利用する所を中心的に設置している」

「へぇ」

大変だな、と僕は思った。

この学校は決して小さくない。

よく利用する所を中心的に、と言っても、凄い量になっているはずだ。

「最近、消費が激しい」

「そうなの? あ、毎日のように増田がふざけるから?」

一時期鳴りを潜めてた時もあったけど、

増田のセクハラないし、おふざけは相変わらず健在である。

確かにその度に消費していれば、湯水の如く無くなっていくだろう。

「それもあるけど……」

けど? 

え、それ以外に使う場面なんてあるの?

内心少し驚いていると、柊さんは不機嫌オーラを纏いながら、こう続けた。

「一番の原因は、掃除当番が勝手に捨てていること」

「あっ……なるほど」

想像してみたら、妙に合点がいった。

確かに掃除中見つけたら、僕でも捨ててしまうかもしれない。

一瞬疑問には思うけど。

「だからこうして見つかりにくい所に付けている。それでも時々無くなってるけど」

説明する言葉にもだんだんと刺が出てきた。

どうやらだいぶご立腹のようである。

「ごめんなさい。それじゃ、行きましょ」

「あ、うん」

パパッと作業を終えた柊さんは、促すと同時に歩き出してしまった。

僕はそんな彼女に追いつくように、

最初駆け足になりながらも、一緒に美術室へと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

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