トルコ旅行２００６雑感
(１６) 国境と隊商宿：トルコのヨーロッパ地区、トラキアにあるエディルネという街は、ローマ皇帝の 名前をとってハドリアノポリスと名付けられ、後にアドリアノープルとなり、1361年オスマンのスルタ ン・ムラト�祇い�アナトリアのブルサから遷都してエディルネと呼ばれるようになった。スルタン・メ フメト�鏡い�イスタンブールに遷都する1453年までオスマン帝国の首都として栄えた街ある。
エディルネ・サライ 街の中心にあるリュステムパシャ・ケルヴァンサライに宿を取った。スレイマン大帝時代リュステムパ シャ宰相が時の大建築家スィナンに造らせた隊商宿である。外から見ると二階建ての石壁が四方を固め てあり、一階の一方のみ外の道路に面した小割の商店になっていて、時計や、貴金属や、CDテープなど の店が入っている。二階には銃眼のような小窓が点々と見える。商店ならびの一ヶ所にケルヴァンサラ イの中庭に入る通路がある。小型乗用車がやっと通れるかどうかの幅である。その通路の左内側がホテ ルのレセプション窓口で、右側は螺旋階段で二階に昇るようになっている。狭い階段である。
二階は中庭に面して広い廊下があり、外側は宿泊部屋である。廊下も各部屋の区切りも石造りである。 各部屋の広さは10〜12畳でバスルームが別に付いている。部屋の外側の窓は、外から見た時の銃眼で、 幅4−50センチ、高さ1メートルほどであろうか、しかし外壁はずいぶん厚い。廊下の中庭側には風雨 を避けるためガラスが張ってあった。
一階の、外に商店の無い所は、中庭からはいるチャイハネやバーになっている。朝食はそこで取るが、 別にレストランはない。私達は外で夕食をとった。
このケルヴァンサライは中間に仕切りがあって、「日」の字のような造りになっていた。ホテルと反対 側の中庭にはレストラン用の丸いテーブルと椅子が一面に置かれていた。多少の飾り付けが見えるので 次の休日には結婚式のパーティにでも使うのではなかろうか。
荷を積んだらくだを連ねてはるばるシルク・ロードを越えてきた隊商がここに荷を下ろし、隊商幹部は 二階の私たちが休んだ部屋の一つで一夜を過ごしたのであろう。しかるべき由緒のあるケルヴァンサラ イで曲がりなりにも昔の旅を思ってみる機会に恵まれた。
パザルクレ エディルネは隣国ギリシャ及びブルガリアとの国境の街である。エディルネの街の中心から7キロのパザ ルクレにギリシャに行く出入国管理と税関のゲートがある。道路の先は赤と白のゲート・バーが道を塞 いでおり、その先には国境のメリチェ川を渡る橋があるのであろう。手前左側の木々に隠れたところに 管理事務所があるようで、時々人が出入りしている。車はめったに来ない。その事務所のあたりは撮影 禁止となっていた。このパザルクレはギリシャへ入る道路としては二次的なもので、主な出入り口はエ ーゲ海沿いにあるケシャンとアレキサンドロポリスを結ぶ道路にあるのであろう。
一方、ブルガリアとの国境はエディルネから16キロ、パザルクレの北方のカピクレにあり、道路を広げ て大きなゲートになっており、何台ものトラックやトレーラーが関門で検査を受けていた。こちらには 撮影禁止の看板は見あたらなかった。
カピクレ 西ヨーロッパとの貨物の輸送はもっぱらブルガリアを経由してこのゲートを利用しているようである。 ブルガリアとの国境ゲートは黒海側にもう一つあるようだが、そこはパザルクレのように静かで暇なゲ ートなのであろう。このカピクレのゲートの先はまっすぐ伸びて100メートルほど先にブルガリア側の ゲートがあると思われるが、平地の続きのようであり、本当の国境は何を持って定めているのかよく分 らない。ヨーロッパの地続きの国境はこのように区切りのよく分らないところが多いように思う。日本 でいえば県境のようなものであろうか、その境を意識しないで通過できるのが平和の時ということであ ろう。



Prev　 Next