トルコ旅行2006雑感
(14) 世界七不思議エフェソス:紀元前3世紀ビザンチンのフィロが挙げた世界七不思議は次の通りで あった。
(1)エジプトのピラミッド
(2)バビロンの空中庭園
(3)エフェソスのアルテミス神殿
(4)オリンピアのゼウス像
(5)ハリカレナッソスのマウソロス工廟
(6)ロードスのコロッサス大巨人像
(7)アレキサンドリアのファロス燈台
「あんな大きなものをどうやって造ったか」という不思議のようである。
三番目に挙げられたトルコのエフェソスは商都であった。エーゲ海に面した港町であった。海上から 市街地を見通せたであろう。その奥にアルテミス神殿があった。神殿の屋根は高さ9メートルの円柱 127本で支えられていた。エフェス考古学博物館に縦3メートル、横1メートルほどのミニアチュアの白 亜の神殿が展示されているが、ちょっと見には柱だらけの建物のようである。
主神は豊穣の女神アルテミスである。その博物館のミニアチュア
神殿の置いてある部屋に二体のアルテミス像が飾ってあったが
撮影禁止となっていたので、その横の禁止されていない石像の
写真をとった。これには顔も手もないが、アルテミス女神の特徴
は明らかである。つまり、胸にあるたくさんの乳房が豊穣を表し
ているのである。
アルテミス神殿にあった127本の円柱は今では一本のみが現場に残されている。しかしその姿はまるで だるま落しの駒の様な積み重ねで、なんだかその辺に転がっていた有り合わせの部分を寄せ集めたよう にさえ見える。悲しいかな、その頂上にはコウノトリが巣を作っていた。
エフェス博物館のあるセルチュクの町から海に向かって行くとアルテミス神殿跡があり、さらに海に向 かうとエフェソス(今トルコでの呼び方はエフェス)の街の遺跡に入る。
紀元前9世紀にイオニア人の都市国家として建設され、アレキサンダー大王やローマ帝国に征服されな がらも商都貿易港として栄えた。海からまっすぐに伸びて市街地に入るアルカディア道路はかってクレ オパトラとアントニウスが行列を作って街へ入る為に通ったという。
キリスト12使徒のひとりヨハネはエルサレムを追われてエフェソスに居を構え、今新約聖書に残る「ヨ ハネの書」を書いた。聖母マリアもヨハネと共にエフェソスに来て、ここを終焉の地とした。エフェソ スの遺跡からちょっと離れるが「聖母マリアの家」とされるものが残っている。聖水の出る泉というも のがあって、病が癒えると伝えられているので、私も飲んでおいた。きっと自分自身気が付いていない 病が自分自身気の付かないうちに治るものと信じている。
3世紀に入ってエフェソスはゴート人の来襲によって破壊され再び商都としての栄光を取り戻すことは 無かった。イギリスの考古学者達によってオスマン帝国時代の末期に発掘されたが、主要な遺物は持っ て行かれて、今大英博物館に展示されている。
エフェソスの遺跡で私がぜひ確認したかったのは、「娼館の公告」である。人類最初の商売は売春であ ったと認識しているから、人類最初の商売の、最初の広告ということになる。
その広告とは石畳の道路の端の歩道にハートと足跡を掘り込んだ石を埋め込んだものとあれば、ぜひ実 物を見たかった。
その石塊にはまず左の裸足の足裏が掘ってある。その左上にハートがある。これは、その道路のちょっ と先の左側、つまり、反対側にあることを示している。足跡の右側には四角の枠と人の像らしきものが 線彫りになっている。ガイドの説明によると、それは右側にあるケルスス図書館を示している。人物は エフェソス駐在のローマ帝国アジア州執政官ケルススの肖像である。冠の幾つかの四角の突起は図書館 の本を意味している。足先の、ハートの右の穴は図書館の地下室から道路の下をくぐる通路を通って娼 館の地下の入口に来いという意味であるという。本当にその地下道はあるらしい。
図書館の前で娼館が営業していて地下道で通じているというのが何とも面白い区画配置である。コイン が何枚か上のほうに掘ってあるというが、よく見えなかった。いずれにせよ有料であったことは間違 いない。
その他、エフェソスの街には大劇場あり、競技場あり、浴場あり、公衆トイレあり、個人住宅ありと、 かなり広大な大理石製の遺跡である。
エフェソスの遺跡に行く前、セルチュクの町で昼食をとった。小洒落たレストランで古い絵皿が何枚も 壁に飾ってあったりして、ゆったりくつろいだ食事ができた。食後はチャイかトルコ・コーヒーかとい う段になり、私は迷わずトルコ・コーヒーを選んだ。少し飲んだところで、うっかり手を引っ掛けてコ ーヒー・カップをひっくり返してしまった。幸い、服にかかることは無かったが、テーブルの上にはみ ごとに悪魔の姿が浮かび上がってしまった。こいつは昨年ルーマニアのトランシルヴァニア、マラムレ シュ、ブコヴィナを旅した時、そこで飲んだカフェア・トゥルチャスカ(トルコ・コーヒー)に連れて 私に乗り込んだ奴に違いない。飛んだところで正体を現してしまったわけだ。びっくりしているように 見えるところが、かわいい。しかし、こいつも、その日の午後私が「聖母マリアの家」で飲んだ聖水で きれいに消されてしまったわけだ。
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