トルコ旅行2006雑感
(11) トルコ土産(2):
トプカプ宮殿のミュージアム・ショップで「ピリ・レイスの地図のコピーは無いか」と聞いてみた。
オスマン帝国海軍のピリ・レイス提督は「1513年のピリ・レイスの地図」を作成している。その地図に
は南アメリカの南端、パタゴニアの東海岸が、北のブランコ岬から南のマゼラン海峡の入口まで、きわ
めて正確に描かれている。ピリ・レイスは1501年元コロンブスの航海士から取り上げた地図を参考にし
て、その地図を作った。ところがコロンブスは一度も赤道の南へは行っていない。マゼランがパタゴニ
アへの航海をしてきたのはピリ・レイスの地図が作られてから何年も後のことだ。すると、誰がその地
図の原作者なのか。宇宙人が空撮した原図があったとも、1421年明の永楽帝の時鄭和の船団が測量した
ものが原図となっているともいわれている。ピリ・レイスの地図はトプカプ宮殿に所蔵されてはいるが、
非公開なので、せめてコピーか絵葉書写真でもあれば入手したいと思ったが、「無い」という。探すの
が面倒くさいのではないかと思って、隅に立てかけてある画用紙大の絵画のストックをぱらぱらとめく
ってみた所、18世紀に描かれた「ハーレムの女性楽士」と題されたミニアチュァ絵画のコピーを発見し
た。
ハーレムの中の四人の女性楽士の色彩画で一人は長い柄のマンドリン状の「サズ」という民族楽器を持
ち、二人目はタンバリン、三人目は「ナイ」というパンフルート、そして四人目はチャルメラ状の縦笛
を吹いている。その縦笛はルーマニアでは「タラゴット」と呼んでいた。「ナイ」はルーマニアでも
「ナイ」である。トルコ、ブルガリア、ルーマニアと黒海沿いに並んだ国々であるから、同じ楽器が各
国の民族楽器として使われているのであろう。
その日の午後、何でも売っているというエジプシャン・バザールに行ったところ、楽器屋があった。店
先でよく見ると「ナイ」は葦の根に近い方の太く硬い茎の長さを調節したものを13本横に並べて尺八の
ように吹く笛である。「タラゴット」はトルコ語でなんというか失念してしまったが、木管の先がラッ
パのように広がった縦笛であり、吹き口は干した麦藁のような薄い葦の茎を潰して2枚のリードになっ
ている。一枚リードのクラリネットやサキソフォンよりも二枚リードのチャルメラやオーボエのような
音がでる。「ナイ」も「タラゴット」も買ってきたが、いずれの笛もその吹き方は難しく、まず音を出
すまでが大変である。私にはそれらの楽器でメロディーが吹けるまで練習をする根気がない。女楽士の
絵の前に飾って、本物の楽器はこれだと示すのみにした。
イスタンブールには
ピエール・ロティのチャイハネという観光名所の喫茶店がある。山羊のつののように反り返った金角湾
の曲がり角のエユプの丘の上にあって、その周りはイスラムの墓地になっている。共同墓地の中の茶店
(ちゃみせ)といった感じだが、そこからはイスタンブールの街が遠くのブルーモスクやアヤソフィア
まで見えて、眺めは良い。フランスの作家、ピエール・ロティが1892年頃滞在した時足繁く通ってトル
コ女性と恋をささやいたというのも、あながちうそではないと思う。室内には彼のポートレートがかざ
ってあった。そのチャイハネに土産物売場の別室があって、高さ15センチほどのオスマン衣装の人形を
売っていた。20種類はあっただろうか、皆男性の人形である。6体ほど選んで買ってきた。箱の模様が
二種類あるので、あとで説明書をよく読んでみると、一つはオスマンのスルタン・シリーズ、もう一つ
はオスマンの兵隊シリーズであった。皆帽子をかぶっている。ターバンあり、赤いトルコ帽(フェス帽
)ありで、それを見てチューリップや七面鳥を想像してみた。オスマンのことを英語ではオットマンと
いう。英語でオットマンのもう一つの意味はトルコ人が使っていた「足載せ台」のことで、どうも英語
というのは変な言葉である。そういえば日本語もカステラ、カボチャ、ジャガ(タラ)イモ、などなど、
おかしいですなぁ。
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