トルコ旅行2006雑感
(10) トルコ土産:トルコ旅行をして、お土産に何を買ったと思う?
ある旅行案内誌によると、絨緞、陶器、トルコ石、サフラン、キャビア、からすみ、などが代表的なも
のとされている。
絨緞はトルコの糸を結ぶ技術がペルシャや中国に伝えられたという。だからオリジナルはトルコのもの
だという。カッパドキアのネヴェシェヒルの絨緞屋では、その製作工程などを見せてもらい、羊毛と絹
の絨緞の相違についても詳しく説明してもらった。「立て板に水」というか、落語の「じゅげむ」とい
った方が良いか、一息に長文をたたみかける説明者の日本語が、わずか数ヶ月の滞日経験から生まれた
ものだとすれば、このトルコ人の言語能力は驚嘆すべきものである。「有名な『空飛ぶ絨緞』を特別に
ご覧に入れます」というと、直径3メートルほどの丸い絹の絨緞を座布団まわしの要領でくるくるとま
わしてサッと投げた。絨緞は5−6メートル空中を飛んだ。みごとなものだ。
トルコ石については、最近は技術が進んで粉末を焼き固めたものが安くでまわっている。石に不規則な
模様が入っているものが原石のようにも思うが、その模様だって技術的には製作不可能ではなかろう。
「うちはトルコ産の原石のみを扱っている」と売り子はいうが、疑い出せばきりが無い。そもそもイラ
ン、イラクやアフリカの旧オスマン領の砂漠で掘り出されたものが、イスタンブールを経由してヨーロ
ッパに入ったので「トルコ石」という名が付いたものであって今のトルコ領内での原産のものはほとん
どないといってよいともいわれる。私はトルコ石を土産にする気が全く無かったから、奥の部屋を覗き
まわっていて、海泡石製のタバコのパイプを並べているコーナーを発見した。
海泡石は英語で「メアシャム」、鉱物名をセピオライトといって、良質のものがトルコの地中海周辺で
産出される。私はシンガポール駐在時代、英国ブランドのメアシャム・パイプを買った。もう20年も前
のことであるが、以来毎日ではないがそのパイプでタバコを吸っていたので、タバコのやにが海泡石の
持つ細かな気泡を通してパイプの表面ににじみ出し、今やこはく色に変化してきている。1−2年前ある
デパートのトルコ産品展でひげ面のキャプテンだかスルタンだかの顔を彫刻した大ぶりのメアシャム・
パイプが売られていたが、値段もさることながら実用にはならない大きさだった。飾っておくだけなら
百年経っても白色のままだ。メアシャム・パイプは使って、色が変わって、始めてその価値が出るとい
うものだ。私はあと何年生きるかを考えて、小型の、つまり、少しでも早くコハク色になるパイプを買
うことにした。帰国後一ヶ月程、2−3日に一回程度そのパイプを使っていたが、ある日曜日の午後タバ
コの火をつけて少しパイプが温まった頃、わずかな手首のひねりの力でパイプの首のところがポロリと
折れてしまった。あわてて万能ボンドでくっ付けてみたが、とりあえずは何とかくっ付いたままで使え
ている。肉が薄くなれば弱くなるのが当たり前なのか、安い買物ではなかったが粗悪品だったのか。
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