トルコ旅行2006雑感
(5) サクランボとバラのジャム: サクランボ トルコではあらゆる果物が自国内で生産されているとトルコ人は胸をはる。現地の日本語ガイドもそう いった。
エイルディル湖畔に一泊してから一路パムッカレに向かう道では、小さな村へ入ると道端で農婦がサク ランボを山積みにして売っていた。色はアメリカから輸入されるブラック・チェリーと日本の佐藤錦の 中間ぐらいの赤色で、多少小粒かなぁと思う。同行の御夫人達が観光バスを止めてもらって1キロ、2キ ロと買い込んだ。車中で食べてみると、なかなか甘くておいしい。エイルディル湖畔の朝食でもサクラ ンボのジュースが出ていたが、私にとってははなはだ贅沢なジュースに思えた。
サクランボをつまみながら車外を眺めていると、白い花が一面に咲いた畑がところどころで見つかっ た。ガイドによるとこれがポピー畑であり、あの麻酔や麻薬の原料のけしの花であるという。エイルデ ィル湖畔には赤いポピーがポツンポツンとさいていたが、これはヨーロッパの道端のどこにでも咲く 「アマポーラ」という雑草であり、麻薬の原料にはならない。
麻薬の原料になるケシの花は白いと聞いたことがあるが、この花の栽培はしっかりと政府に管理されて いるとガイドはいう。しかし、畑にはなんの囲いもなく、ましておや管理人の姿も見えない。
途中ウスパルタという町に入ると街路樹のように赤いバラが植えてあり、「バラ街道」といって良い。 この町はトルコ一番のバラの産地で、バラの香りのコロンつまりオーデコロンなど、バラ製品を産出し ている。バラの花びらのジャムが朝食に並ぶことがあったが、薄い蜂蜜色で、半透明のピンクの花びら がそのまま水あめの中に浮き沈みしているようであった。何となくバラの花の匂いがするようにも思え た。
帰国後NHKTVの「世界遺産フランス縦断旅行」を見て、中世の町プロヴァンでバラのジャム作りをして いることを知った。テレビで見るかぎりは、トルコのバラのジャムの方が少し色が薄いように思われ る。トルコの干しアンズが日本にも多く輸入されていることは知っていたので、旅の初め頃の朝食では もっぱらアンズジャムをパンに塗っていたが、このバラのジャムを知ってからは朝食にはこのジャムを 使うようにした。しかし。旅行仲間の中には、知らないままの人もいたかもしれない。私も最初は百合 根のシロップみたいに思っていて、バラのジャムだと確信するに至ったのは、トルコを離れる直前だっ たから、「バラだ、バラだ」と大口をたたかなかったのである。
ビュッフェのテーブルには朝でも、昼、夜でも赤いスイカと白いメロンがあった。スイカの甘さに対し てメロンはなぜか皆うらなりのように甘みに乏しかった。日本に帰ってきてすぐにスイカを食べてみた が、まだシーズン前のせいかトルコのスイカほどの甘さは感じなかった。「スイカはトルコに限る」か もしれない。
パムッカレから西へ、エフェス、クシャダスへの道は、アナトリアの高原からエーゲ海へ降りてくる道 である。道端の果樹園もサクランボから、次第にオレンジ、オリーブへと変わってくる。たしかに、ト ルコでは果物なら何でもあると豪語しても良いかもしれない。もし旧約聖書に誤りが無ければ、大洪水 の時ノアがあらゆる果物をも箱舟に積み込み、トルコの東の端にあるアララット山に漂着したのだか ら。



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