トルコ旅行２００６雑感
(２) パムッカレとヒエラポリス：
トルコのパムッカレにある石灰棚は世界遺産に登録されている。
小山の中腹にある台地に、パムッカレ・テルマルという温泉プールがあり、そこから流れ出た温水が幅広く斜面を覆い、白い石灰の残留物を残して流れ落ち、ところによっては棚田のように浅い池を数段作っている。田毎の月で有名な姥捨の棚田を雪の朝に見るような、あるいは、山口秋吉台の鍾乳洞の天井を取っ払って白日の下にさらけ出したような景色である。何年か前までは写真に見るような中段の石灰棚へも自由に入れたそうだが、今では一番上の段のみが一般観光客に解放されていて、裸足で入ることができる。深さは足のくるぶしが浸かる程度である。照り輝く太陽の熱と多くの観光客の裸足の温度で温められた水かと思うほどの水温である。水の冷たさは感じられない。やっぱり温泉だから、ぬるすぎるが湯ではある。
石灰棚の上段の奥には聖なる都市ヒエラポリスの遺跡が広がっている。BC190年にペルガモン王エウメネス�鏡い砲茲辰瞳�設され、ローマ、ビザンツ時代と繁栄が続いたがセルジューク朝（1077〜1302）によって廃墟と化した。
そのヒエラポリスの奥に糸杉が一列に植わっており、その先にネクロポリスといって墓の立て込んだ廃墟がある。墓は大小さまざま、それぞれの時代様式に応じていて、長く共同墓地として使用されてきた。火葬の風習は無かったからすべて土葬、墓石は石灰石で作られており、石棺状、ハウス状、一人用から数名の家族用まで、全地下、半地下、全地上のものと、墓の展示会場のようである。
宗教の原点が祖先崇拝にあることが理解できる。このネクロポリスは、祖先の祭りをおろそかにした結果、セルジュークに潰されて廃墟になったのか、あるいは、セルジュークに潰された結果、祖先のまつりが絶えて廃墟になったのか。
この7月13日横浜ではお盆の入りの日ということで迎え火を焚くことになっていたのだが、うっかり忘れてしまった。その晩９時過ぎに私の居間に小アリの羽化が襲ってきた。最初は小バエのような小さな虫がぽつぽつと身にまとわり付いてきたので、つかまえてみると小さなアリの羽化したものであった。あっという間にその数は増し、4〜5倍の大きさの女王アリまで数限りなく居間の明かりの下を飛び交うようになった。一匹二匹を潰したところでどうなるものではない。やむを得ず明かりを消して、冷房をかけた寝室に逃げ込んでピタッと戸を閉めた。
翌朝、居間には一匹の羽アリも残っていない。台所の流し台の上に常夜灯のようにつけっ放しにしておいた蛍光灯に惹かれたのか、ほとんどが流し台の水に沈んでいた。居間も台所も窓は開けてあったがすべて網戸が閉まっていたので、羽アリの入り込む隙は無かったはずである。お盆の迎え火を焚かなかったので、先祖の中で気のきいた霊が小アリの羽化という手を使って、私に警告を与えたと考えざるを得ない。
ネクロポリスが廃墟になる前に、彼の地でも類似の警鐘現象があったのだろうか。たぶん「あった」のだろうと、今の私は信じている。
14日午前中、さっそく先祖のお墓参りにいってきた。
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