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酔っ払いのおじさん
No4

今回は先日、電車の中であったことを書いてみます。

仕事が終わり帰宅途中。
乗り換え駅で一本、電車を待ち座って帰ることにしました。

最初、電車内には左程(さほど)人がいなかったのですが
時間が経つに連れて人が多くなってきて...

帰りは朝より人の流れが分散する分、朝ほどのラッシュではないけれど
やはり混んできました。

連日の酔っ払い

すると座席に座っていた僕の前にひとりのおじさんが立ちました。
そのおじさんは偶然にもその前の日も同じ電車になって...

なぜ覚えていたかと言うと
その前日も、そのおじさんは僕の前に立ったのですが
その日も酔っていたのか身体がガクガクして、おじさんの足が
座っている自分の膝に当たって
何度も何度も当たるから 『嫌だな』...と感じていたのです。

自分自身、お酒を飲めないのであまり酔うことがなく
『飲めたら楽しいだろうな』と思う反面
あまりにも羽目をはずしている人を見ると嫌悪感を感じてしまうことがあり

酔うのはいいけど悪酔いしたり泥酔するまで飲まなきゃいいのに
と思うことはあって

増してやそのおじさんは連日、飲んで
その日もガクンガクンと揺れていて...

『席を立とうかな』...とも思ったけど
せっかく待って座ったのだし、譲らなくてもいいやと思って座っていました。

それからも、しばらくそのおじさんはユラユラと揺れており
つり革を持っているから倒れはしないのだけれど
何度も何度も隣の人に当たったり僕の膝に当たったり

そのとき、僕の心の中は
『そんなに疲れているのなら毎日、飲まなきゃいいのに』
『早く帰って寝ればいいのにな』...って
そう思っていました。
こっちはこんな時間まで働いているのに...って

だから席を譲ろうという気持ちもなかった。

空席

そしてその状態で2駅、3駅と過ぎていって
おじさんは相変わらずフラフラしていました。

それから何個か駅を通り過ぎ
たくさんの人が降りる駅で電車が停まり
大勢の人が下車した。

おじさんは、まだ降りず目をつぶったまま立っていたけど
少しして空席に気付いたのか対面のシートに座ろうとした。

おじさんの疲れた顔

そして座ったのです。
けどその時におじさんの姿を見ていたら...

とっても疲れている様子で
そして小さな声で『やっと座れた』...って
本当にか細い声で
本当に弱々しい声で

座って下を向いて目をつぶっているそのおじさんは
とても疲れて、そして小さく見えました。
僕の目の前に立っている時は、気が付かなかったけれど
対面に座っている、そのおじさんは本当に疲れて見えました。

『やっと座れた』...って、そのおじさんが小さな声でつぶやいた時、
なんかいろんな気持ちが湧いてきて。

連日、お酒を飲まなきゃいけないくらい、今、辛いのかもしれないな
会社の付き合いで飲まされているのかもしれないな...って

かわいそうと言う言い方は失礼なのかもしれないけど
今、辛いのかもしれない...って
かわいそうだな...って

みんな頑張っているのですね。

その時、『さっき席を譲ればよかったな』...って
そういう思いが湧いてきて
意地悪しないで素直に席を譲ればよかったな...って

お酒を飲んで楽しそうな人を羨んでいたのかもしれません。

そして少ししてから、そのおじさんは途中の駅で降りていったのですが
その時は最初に感じた時とは違う気持ちになっていました。

みんな、いろんなものを背負って生きているのかもしれませんね。
あのおじさんだって、きっとそうだと思います。

例えそうじゃなくても
みんな必死で頑張っていることに変わりはないわけで...

自分だけが必死なわけではなく、辛いわけじゃなく
みんな必死なんだ...って

そんなことを感じました。
もっともっと人に優しくなりたいです。

(2005年8月15日up)