= 焚き火のまえで =
温泉大国日本。きちんと整備された温泉だけで、その数たぶん数千はくだらないと思う。それでも、なおまだ手つかずの未開発温泉があちこちに眠っている。
そんな人知れず山中でひっそりとわき出している温泉を見つけて、自分で湯船を掘って、プライベート風呂を作ってしまおうというのは、日本ならではの楽しみだと思う。
栃木県の川俣温泉近くの山中に湧く未開発温泉へ行ってきた。
鬼怒川温泉からさらに山あいに入ったところに川俣温泉郷がある。目的の未開発温泉はそこから日光方面に抜ける山王林道の途中にある。路肩に車を停めて、湯沢という沢をさかのぼること1時間半ほど。通称 "広河原" と呼ばれる場所に出る。ここが知る人ぞ知る独り占め温泉付きベストキャンプサイトなのだ。
もちろん、キャンプ場でもなんでもないので、トイレや水道などの設備はいっさいない。ただ河原に天然温泉が湧きだしていて、そのすぐほとりにテントを張るスペースがあるというだけのこと。
源泉部分にパイプが埋め込まれていて、もったいないと思うくらいにコンコンと温泉が湧きだしてきている。そのまわりに石や土砂を積み重ねて湯船を作っていく。地道に手作業でやってもいいけど、小さなシャベルがあると便利だ。
湯温はちょっと熱め。そのまま入れなくもないが、長湯をするなら沢の水を少し引き込んだ方がいいかも知れない。
このほかにも湯沢沿いには温泉が湧いている場所がいくつかある。なかでもいちばんダイナミックなのは、"広河原"のキャンプサイトから、さらに1時間ほど上流にいったところにある、滝を目の前に浸かれる温泉。場所的に一人用の小さい湯船しか作れないけど、この景色をすべて独り占めという感覚がたまらない。
この湯沢の温泉群はかなりの穴場だ。はじめて行ったのは5月のゴールデンウィークだった。2泊3日したのだけど、そこで出会ったのは千葉から来た若いカップル1組だけだった。彼らは1泊だけして先に帰っていった。ゴールデンウィークでさえそんなかんじだから、ふだんはほとんど人が来ないのだろう。7月に2度目に行ったときは雨で増水して温泉にたどり着けなかった。3回目は8月のお盆の時期。案の定、誰も来ず、快適な温泉ライフを満喫したのだった。
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