◆ 奥鬼怒 湯沢温泉トレッキング 詳細レポート


1998年 5月 2日〜 5月 5日

 5月2日、土曜日の夜中12時に家を出発した。高速を使わず、横浜から、下道でトロトロ行ったため、(川俣温泉から戦場ヶ原へ向かう)三王林道の途中にあるトレッキング始点まで6時間かかった。着いたのは夜も明けた6時すぎだった。天気予報では、この日は「嵐のような天気」ということだったが、まだ降っていない。
 三王林道から分岐している閉鎖林道の前に車をとめる。路肩に駐車スペースがあり、車7、8台は駐車可だ。
 閉鎖林道へ入るとすぐに雨が降ってきた。レインウェアを着込む。未舗装ながらもガードレールもしっかりした林道を20分ほど歩くと、工事の飯場のような広場へ出た。「危険立ち入り禁止」と書いてあるが、さらに進むとすぐに分岐点に出た。「遊歩道」とかかれた看板が林道の脇の崖の下をさしている。
 下り口から100メートルくらいまでは階段が作られているが、工事途中で断念したかのように、あとは荒れ放題。急な斜面はまるきり土砂崩れの跡で、滑らないように気をつけながらおりる。
 降りきったところに堤があり、湖のようになっていた。ここからは湯沢に沿ってさかのぼるのだが、歩けそうな河原はない。
 笹をかきわけるように斜面に踏み分け道があった。ところどころに赤いビニールテープの目印がある。少し上流へ行くと河原へ下りられる。あとは水のなかをジャバジャバ歩いたり、斜面の踏み分け道に戻ったりを繰り返しながら沢をのぼっていく。
 基本的には河原をのぼっていけばまちがい。ただ、ところどころ深みなどで行く手をはばまれることがある。その時は少し戻れば巻き道が見つかる。
 1ヶ所、両岸を絶壁にふさがれてどうにも進めない部分がある。右岸の急な土の斜面にロープが下がっていて、そこを登っても行かれるが、より安全には、50メートルほど戻ったところから左の森に入り、大まわりに安全に山を巻けるルートが作られている。
 ほどなくすると、広めの河原に出て、その右の岩壁からモウモウと湯気をあげる温泉を見つけることができる(通称「広河原の湯」)。ただしこの直前、右岸を歩いていると、ちょっとしたへつりを強いられる部分がある。このキャンプサイトまでは順調にいって1時間強。靴を濡らさずにいこうなどとは思わないこと。そんなこと不可能だし時間を食うだけである。
 この広河原は、岩がごつごつしていて、テントを張れそうなスペースは4ヶ所くらいしかない。泉質は硫黄泉。源泉温度は50℃くらい。やや緑白がかった透明。ここは比較的人がくるので、たいてい湯船が掘られている。

 ここから上流に向かってさらに4ヶ所ほどの温泉が湧いている。最初の源泉はほぼ泥沼で、つづく2ヶ所は源泉部分に金属パイプが埋められていて湯量もあるが、なぜか誰も風呂を作った跡がない。地盤が固いのだろうか。
 最奥部、「湯沢噴泉塔」付近にある温泉は満足度が高い。噴泉塔は天然記念物に指定されている名勝で、二段に落ちる滝の中腹あたりの岩壁から温泉がわき、モウモウと煙を立ち上げ、硫黄泉の流れた跡が白い鍾乳石のようになっている。この噴泉塔と滝をちょうど真正面に望む斜面に温泉が湧いている。一人用のちいさな風呂だが、ロケーションと雰囲気は最高。滝が目の前で轟々と落ちるなか、優雅に風呂につかれる。

 噴泉塔までは広河原から順調に行けば1時間弱。ただし明らかに道に迷うところが2ヶ所ほどある。ひとつは、河原ぞいをどうしても突破できずに山を巻く部分だが、途中から赤テープが見えなくなり、どっちへいっていいか分からなくなる。文章で説明するのは難しいが、左手の斜面をのぼるほうにルートが作られていると書いておこう。
 もう1ヶ所は噴泉塔のすぐ手前あたり。地図にはない支流が流れ込んでいて、かなり強調された矢印がその支流を指している。しかし実際はそっちにいっても山を登っていくだけで、噴泉塔の下にはつかない。正しくは本流をさかのぼる。両脇が絶壁で通行不能に見えるが、左手の岩壁にロープがかけられているので、それを使って突破する。そこさえ越えれば5分ほどで噴泉塔に到着する。

地形図は1/25,000 川俣温泉
文章作成:1998年 5月 13 日
秋場 研



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焚き火のまえで 〜山旅と温泉記
By あきば・けん
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